イラク情勢Watch vol.37 06年6月12日 発行:フォーラム平和・人権・環境 編集:志葉 玲 毎週更新(予定) Topics 1)週間イラク報道Pick up 2)アブムサブ・ザルカウィ容疑者、米軍の空爆で死亡か? 3)イラク新政権、国防相にスンニ派、内務省にシーア派〜今後の現地情勢に与える影響は?〜 4) 米陸軍「殴りこみ部隊」現役将校がイラク派遣を拒否 5)イラク人カメラマンが東京で講演 1)週間イラク報道Pick up 【06.6.11 時事】「米兵が暴行」と住民証言=ザルカウィ容疑者らしき男性に−Wポスト紙 【06.6.9 時事】イラク勝利まで撤退せず=ザルカウィ容疑者死亡でも戦争続く−米大統領 【06.6.9 ロイター】イラク聖戦アルカイダ組織、戦闘継続を表明 【06.6.7 共同】過去最悪の1400人死亡 5月のバグダッド 【06.6.4 共同】デモ暴徒化、17人負傷 サマワ、電力不足に怒り 【06.6.3 毎日】<米世論調査>「最悪の大統領」トップにブッシュ氏 2)アブムサブ・ザルカウィ容疑者、米軍の空爆で死亡か? 米軍は8日、「イラクで活動するアルカイダ幹部」アブムサブ・ザルカウィ容疑者を7日に実施した空爆で殺害した、と発表した。米軍のコールドウェル少将によると、7日夕方に米空軍のF16戦闘機が爆弾2発を投下。空爆後、イラク軍とイラク警察特殊部隊が現場に入り確認作業を行い、ザルカウィ容疑者とみられる遺体を調べた結果、「指紋は100%一致した」という。米軍だけではなく、「イラクの聖戦アルカイダ組織」も8日、ザルカウィ容疑者の死亡を確認する声明を発表した。 ザルカウィ容疑者殺害を受けて、米ブッシュ大統領も何度も「勝利」という言葉を口にするなど、成果を喜んだが、ザルカウィ容疑者殺害がイラクの安定化に直結するものではないだろう。今年4月10日のワシントンポスト紙がスクープした内部文書でも、米軍が「心理作戦」の一環としてザルカウィ容疑者の脅威を実際以上に大きくするプロパガンダ工作を行っていたことが明らかにされた。実際には、ザルカウィ一派は首をはねる等のその過激な戦術が嫌われ既にイラクでの求心力を失っていた。今回米軍がザルカウィ容疑者を殺害することに成功したのも、内部からの密告があったとされている。 依然激しい米軍への攻撃のほとんどは現地武装勢力によるものとみられる。そのため、ザルカウィ容疑者が死んだとしても、イラク情勢自体には大きな影響がないだろう。 3)イラク新政権、国防相にスンニ派、内務省にシーア派〜今後の現地情勢に与える影響は?〜 先月の新政権樹立後も難航していた治安・軍事関係の人事が、8日、決定された。新内務大臣はシーア派のジャワド・ボラニ氏、新国防大臣は、スンニ派のアブデルカデル・オベイド氏が就任することとなった。 それまで、シーア派やクルド人民兵を主体とするイラク国家防衛隊は、米軍と共にスンニ派地域での軍事作戦を展開してきた。このことが、スンニ・シーア両派の対立を招いてきた一つの大きな要因だった。だが、スンニ派の司令官が国家防衛隊を率いることによって、これまでとは違った展開になるのかもしれない。 だが、楽観もできない。シーア派有力政党幹部のバヤーン・ジャブル氏がトップだった内務省がそうだったように、新政権での国家防衛隊が身内で固められ、他の宗派である人々を殺し続けるなら、大問題となる。スンニ派の人々には、ジャブル元内相やシーア派民兵たちに対して激しい憤りがあるだけに、国家防衛隊がスンニ派主体となった時、暴走する可能性もないわけではない。 さらに、スンニ派司令官が国家防衛隊のトップとなっても、やはりスンニ派のサドゥーン・ドレイミ元国防相がそうだったように、米軍と共にスンニ派地域で活動を続けるならば、スンニ派内でも深刻な対立が生じることになり、ますます過激な武装勢力の抑えが利かなくなる恐れがある。 4) 米陸軍「殴りこみ部隊」現役将校がイラク派遣を拒否 米陸軍第一軍団の最新鋭部隊「ストライカー旅団」*に所属するアーレン・ワタダ中尉(28)は7日、イラク派遣を拒否する声明を発表した。これまで約7900人の米軍兵士がイラク派遣拒否している中でワタダ中尉は最高位の軍人で、現役将校としては初めて。 ワタダ中尉は「この戦争は、憲法の規定によってアメリカの国内法と同等とされる国際条約や国際的慣習に違反している。満足な説明もなく行われているイラク民衆への大量殺戮と残虐行為は、道徳的に重大な誤りであるにとどまらず、陸上戦に関する軍事法そのものの違反行為でもある」とイラク戦争を批判。「合衆国陸軍の将校として、重大な不正義に対して声を上げることは自分の義務である」として、イラク派遣を拒否している。 ワタダ中尉は今年一月、イラク戦争に抗議して辞職願を出したが、受理されず、軍法会議にかけられることとなった。これに対しワタダ中尉を支援しようという動きが米国で広がりつつある。支援サイトはこちら。 http://thankyoult.live.radicaldesigns.org/ 【解説】ストライカー旅団は緊急即応部隊として、有事の際には98時間以内に全世界に展開する「殴りこみ部隊」。イラク占領後最悪の虐殺とされる、ファルージャ攻撃にも参加した。ストライカー旅団を統括する米陸軍第一軍団司令部は、米軍再編でキャンプ座間に移転することでも知られている。 5)イラク人カメラマンが東京で講演 今週水曜日14日、来日中のイラク人カメラマン、イサム・ラシード氏が東京は文京区民センターで講演を行う。主催はイラクホープネットワーク、協力はWORLD PEACE NOW、フォーラム平和・人権・環境。 ラシード氏は1973年、バグダッド生まれのバグダッド育ち。イラク戦争前までは電気技士だったが、開戦後、イラク市民の犠牲を伝えるため、フリーランスカメラマンとして活動を始める。イギリスのテレビ局「チャンネル4」など、多くの報道機関で活躍、日本でもテレビ朝日やFRIDAYなどに映像・写真を提供している。04年4月、11月の米軍によるファルージャ市攻撃の際には、同市内に潜入取材。厳しい報道規制の中で、虐殺されていく市民の側からカメラを回すことに成功した、世界でも数少ないカメラマンの一人。昨年夏にも来日し、DVD「ファルージャからの証言」を各地で上映。多くの日本の市民に衝撃を与えた。今回の来日では最新の取材を収めたDVD二本を公開する。 【日時】 6月14日(水) 18:30〜20:45 (開場18:00) 【会場】 文京区民センター3A室 (東京都文京区本郷4−15−14) 【資料代】 500円 主催:イラクホープネットワーク 協力:WORLD PEACE NOW,フォーラム平和・人権・環境 お問い合わせ 志葉玲(しばれい) tell: 090-9328-9861 mail: reishiva@yahoo.co.jp ●バックナンバー 第36号 2006年06月01日 第35号 2006年05月20日 第34号 2006年05月09日 第33号 2006年04月28日 第32号 2006年04月18日 第31号 2006年04月07日 第30号 2006年03月28日 第29号 2006年03月16日 第28号 2006年03月07日 第27号 2006年02月28日 第26号 2006年02月15日 第25号 2006年02月06日 第24号 2006年01月27日 第23号 2006年01月20日 第22号 2006年01月07日 第21号 2005年12月24日 第20号 2005年11月30日 第19号 2005年11月24日 第18号 2005年11月15日 第17号 2005年11月07日 第16号 2005年10月31日 第15号 2005年10月24日 第14号 2005年10月15日 第13号 2005年10月09日 第12号 2005年09月30日 第11号 2005年09月21日 第10号 2005年09月12日 第09号 2005年08月30日 第08号 2005年08月22日 第07号 2005年08月14日 第06号 2005年08月05日 第05号 2005年07月30日 第04号 2005年07月22日 第03号 2005年07月12日 第02号 2005年07月05日 第01号 2005年06月29日 |