憲法審査会 | 平和フォーラム - パート 2
2024年05月31日
憲法審査会レポート No.40
今国会の会期末まであと1か月を切ったいま、改憲派の主張内容はいよいよ加熱傾向にあります。
しかし、これまで見てきたとおり、現在中心的な論点となっている「参議院の緊急集会」や「任期延長」をめぐっては、自公においても衆参の温度差は明白です。
なにより、喫緊の課題である政治資金規正法改正については「いたずらに議論を引き延ば」している自民党、そして岸田首相こそ「責任放棄と言われてもやむを得な」いでしょう。
ともあれ、国会延長などの可能性も踏まえつつ、憲法審査会をめぐる動向について、引き続き注視していくことが必要です。
【参考】
【速報】「国会会期内に改憲要綱案提出を」公明・北側副代表が憲法改正めぐり訴え
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1194324
“公明党の北側副代表は、超党派の国会議員で構成される「新しい憲法を制定する推進大会」でこのように話し、「いつでも改正条項案をつくれる状況に、いまの憲法審査会はなっている」と強調しました。”
首相、憲法改正巡り野党けん制「議論引き延ばしは責任放棄」
https://mainichi.jp/articles/20240530/k00/00m/010/204000c
“岸田文雄首相は30日、国会での憲法改正議論を巡り、「国民に選択肢を示すことは政治の責任であり、いたずらに議論を引き延ばし、選択肢の提示すら行わないことになれば責任放棄と言われてもやむを得ない」と述べた。”
2024年5月29日(水) 第213回国会(常会)
第4回 参議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=7998
【会議録】
※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)
【マスコミ報道から】
緊急集会、審議に制限設けず 参院憲法審で自由討議―自民
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024052900894&g=pol
“参院憲法審査会は29日、憲法が定める参院の「緊急集会」について自由討議を行った。自民党は首都直下地震を念頭に、緊急集会は緊急性がある限り審議対象に制限を設けないと主張。立憲民主党は、緊急事態時の議員任期延長に反対した。”
自公、改憲への「壁」 衆参で足並みそろわず、迫る総裁任期のリミット
https://www.sankei.com/article/20240529-66NSEDFC2BND7J734V6U5OPDPM/
“実際、自公には衆参間で溝がある。16日の衆院憲法審では維新の岩谷良平氏が参院の西田氏の見解に触れた上で、「衆参で発言が矛盾しているのではないか」と公明をただす場面があった。また、衆院自民は改憲原案を協議する起草委員会の設置を訴えているのに対し、参院自民は慎重姿勢を崩していない。”
【参考】
(小西ひろゆき・参議院議員による上記時事通信記事についての解説)
https://twitter.com/konishihiroyuki/status/1795753441438130634
“記事が解説になってないので補足すると、今日の参院憲法審では自民、公明は衆院憲法審の任期延長改憲を否定する見解を述べています。”
“すなわち、緊急集会は緊急性の要件を満たす限り(これは法理上当然のこと)扱える議案について制限はないとしており、これは衆院の緊急集会の曲解の否定なのです。”
【傍聴者の感想】
定刻より30分遅れで開催された29日の参議院憲法審査会は、参議院法制局、内閣府防災担当からそれぞれ「災害時の立法」について説明がされた後、委員の発言という流れで、1時間半行われました。
緊急時・災害時の例として、東日本大震災時の立法措置や立法までのスピード感などの話から始まったことで、「だから議員の任期延長が必要なんだ」という結論ありきのものに終始するだろうと身構えました。
しかし、14人の委員の発言を聞き進めていくうちと、「参議院の緊急集会で何か不足があるのだろうか」という感想しか持てなくなりました。
東日本大震災直後やコロナ禍という「非常時」ですら、緊急集会が開催されなかったことを考えれば、「議員任期延長」よりも先に検討すべきことがたくさんあるはずです。
また、初めて参議院憲法審査会を傍聴したときにも、今回もですが、猪瀬委員(維新)の発言はいったいなんなのだろうかと思ってしまいます。
「衆議院の憲法審査会は午前中から議論しているのに、参議院は午後から、しかも毎週ではない、これでは衆議院に周回遅れどころか、三周遅れになっている」「改憲条文案が出ているんだから、それを早く議論しないとまとまるものもまとまらない」という趣旨の発言。
朝から議論する方がやる気があって、午後からの開始だとやる気がないということになるのか。たくさんやったら、まとまるのか。
憲法審査会が何のための会議体なのかを理解しているのかもあやしいこれらの発言は、「居酒屋談義」の水準にも達せず、そもそも国権の最高機関である国会での議論にふさわしいとは言えないのではないでしょうか。
【国会議員から】古賀千景さん(立憲民主党・参議院議員/憲法審査会委員)
私からは、東日本大震災の国会対応を踏まえ、緊急集会の権能について意見をいたします。
議員任期の延長改憲を唱える会派の中には、「衆議院の優越が憲法上認められる予算や条約を議案にすることは参議院の緊急集会の権能を超える」といった主張があります。特に、条約の承認については、昨年6月15日の衆院憲法審の論点整理において改憲5会派すべてが緊急集会の権限外としています。
こうした主張は、緊急集会の立法事実などを踏まえない暴論と言わなければなりません。緊急集会が予算や条約を議案にできることは、憲法制定時における、「災害などの突発によって緊急な立法ないしは財政措置を講ずる必要が生じた場合どうするか」、「解散中に総理大臣が死亡した場合、天災の発生した場合、あるいはまた、急に条約締結を要する場合」などのGHQと日本政府の会議録から明らかであり、また、憲法学会においても当然の通説です。
ここで、理解し難いことは、改憲の会派は、いわゆる30日ルールの衆院の優越がある予算と条約は緊急集会の権能外としながら、いわゆる60日ルールがある法律については緊急集会の権能内としている点です。緊急集会は衆院不在の際の国会代行機関であり、その権能の範囲と衆院の優越は本来関係がないものですが、改憲派の主張は一貫性を欠くという意味でも暴論との指摘を免れないと言わざるを得ません。
なお、予算のうち大震災で講じられた補正予算だけでなく本予算についても緊急集会の権能に含まれますが、昨年4月の本審査会では参議院法制局長から「緊急集会の対象となるのは緊急の必要性があるものに限られること、特別会の召集されるまでの間の暫定措置であることなどを考慮すると、通常は暫定予算などの必要な予算が緊急集会に提出されることになると思われる」と答弁されているところです。同様に、条約については、憲法七十三条三号が「時宜によっては事後に国会の承認を得ること」と定めていることなどから、一般的に「緊急の必要」が認め難いであろうというのが学会通説であると理解しています。
以上、改憲派は、「予算や条約を議案として扱えるスーパー緊急集会にするには憲法改正が必要」という、日本の中で永田町だけで目にすることが出来る独自の主張を唱えるなどしていますが、国会議員には憲法尊重擁護義務があり、憲法改正の議論をするにしても既存の憲法規範を立法事実や制定趣旨を無視して好き勝手に曲解することは許されません。また、そのような憲法改正は必然的に主権者国民を虚偽の憲法解釈で騙して行う改憲にならざるを得ません。
憲法前文には、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」と定められています。憲法を排除する、すなわち、国会議員が国民の厳粛な信託を裏切るような法の支配と立憲主義に反する憲法違反の解釈を主張し、改憲を行うことは許されません。
今、ご紹介した憲法の前文は子ども達が小学生から学んでいます。この間、衆議院憲法審では、議員任期の延長改憲のための条文の起草委員会の設置、要綱案の作成が主張されていますが、子どもに説明が出来ないことを大人が行うことは絶対に許されません。
子どもから見て恥ずかしくない憲法の議論を実施すること、そのためには、任期延長改憲の過ちを私たち良識の府の存在に懸けて正さなければならないことを訴えて私の意見といたします。
(憲法審査会での発言から)
【国会議員から】福島みずほさん(社会民主党・参議院議員/憲法審査会委員)
衆議院の憲法審査会において、起草委員会の設置や要綱案作りが提案されていることに大変な危機感を持っています。衆議院だけで暴走していくことは極めて問題です。
また、緊急事態条項、国会議員の任期期間の延長の問題点が十分理解されているとは思えません。さらに、これは参議院の否定です。参議院の緊急集会を日本国憲法が規定した意味の理解が、とりわけ衆議院で極めて不十分だと考えます。
第一に、衆議院で国会議員の任期期間の延長について、自民党などは再延長できる期間に制限を設けていません。緊急というのであれば、それは一時的、限定的、緊急のものでなければなりません。それが、半年、一年、何年も長期にわたるのであれば、それはもはや緊急ではなく、長期独裁政治そのものです。緊急事態と言い続けて半永久的に政権に居座る危険性があります。軍事独裁下の台湾では、第一期の立法院議員の任期が1948年から1991年までの43年以上も続きました。
衆議院の憲法審査会で、改憲に賛成する日本維新の会の議員が述べています。最短で三年間選挙困難事態が続いた場合には、参議院議員全員がいなくなりますので、やはり参議院においても任期延長は必要となるものと考えます。三年以上選挙をさせない、つまり、六年間の参議院の任期を九年以上延期するというものです。一回の選挙で九年近く居座ることを許容することは、民主主義を全く機能させなくするものです。数年にわたって任期延長をする緊急事態条項を機能させようとすること自体、憲法原理から許されません。
第二に、自民党日本国憲法改正草案は、緊急事態の宣言が発せられた場合においては、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができるとしています。まさに衆議院と参議院の任期延長です。緊急事態条項の中に任期延長が入っています。
自民党日本国憲法改正草案は、緊急事態の宣言が発せられたときは、内閣が法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができるとしています。ナチス・ドイツが内閣限りで基本的人権を制限できるとした国家授権法と同じ構図です。唯一の立法機関である国会を踏みにじるものです。国会は反対をしなければなりません。また、国会の予算承認権も踏みにじるものです。さらに、地方自治体の長に対して指示ができるとしていることは、憲法が規定する地方自治の本旨を明確に侵害するものです。
第三に、緊急事態条項、戒厳令は、独裁と戦争に密接に結び付いています。戦時体制をしくのに人々の基本的人権を制限していくのです。
第四に、なぜ日本国憲法は緊急事態条項を設けなかったのか。それは戦前へのすさまじい反省からです。
明治憲法は四つの緊急事態大権を規定していました。治安維持法改正を議会閉会直後に緊急勅令として行いました。戦時における財政出動や公債発行が議会を通さずに専ら緊急勅令で行われました。
1937年の日中戦争の前十年間においては、勅令数は200から400台で推移していましたが、37年には747、対英米開戦の四一年には1253まで跳ね上がります。
関東大震災の場合も、戒厳令は震災に伴う治安の危機に対処する口実で発動され、戒厳令下で軍隊、警察、自警団等によって大量の朝鮮人、中国人の虐殺、さらには社会主義者、無政府主義者の虐殺が行われました。
1946年7月15日、金森大臣は衆議院帝国憲法改正案委員会で、明治憲法の非常大権について、民主政治を徹底させて国民の権利を十分擁護しますためには、さような場合の政府一存において行いまする処置は、極力これを防止しなければならぬのでありますと述べ、臨時会と参議院の緊急集会に言及しています。
国会無視と選挙の停止を私たちは許してはなりません。
ところで、私たち野党は、2021年のデルタ株の感染爆発のときを始め、何度も臨時会の開催を求めてきました。このことに応じなかった与党などが、今度は国会がないと大変だとして長期居座りを主張することは笑止千万です。
国会議員の長期居座り、選挙の停止を図る衆議院の起草委員会の設置と大綱作りは参議院の否定であり、憲法破壊で許されません。民主主義と国会の死です。国会が選択すべきではありません。
緊急集会に対する暴論に基づく任期延長改憲のための衆院憲法審の起草委員会の設置、要綱案の作成は参議院の否定ではないかについて、本審査会及び幹事会で徹底議論することを強く求めます。
(憲法審査会での発言から)
2024年5月30日(木) 第213回国会(常会)
第8回 衆議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55278
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【会議録】
※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)
【マスコミ報道から】
緊急事態めぐる憲法改正 自民“条文案 賛成の党だけで議論も”
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240530/k10014465891000.html
“衆議院憲法審査会で、自民党は、大規模災害など緊急事態の対応をめぐる憲法改正の条文案の作成に賛成する立場の党だけで議論を進めることも排除しない考えを示しました。これに対し、立憲民主党は改正の手続きを定めた国民投票法の見直しを優先すべきだと主張しました。”
「立民抜きで起草作業に着手」と自民が言及 憲法改正条文化で賛同得られない場合
https://www.sankei.com/article/20240530-THBF7IFK5ZJPHL77HBH2F72WOQ/
“…与党筆頭幹事を務める中谷元氏(自民党)は改憲案の条文化をめぐり、立憲民主党や共産党の賛同を得られない場合、自民や公明党、日本維新の会、国民民主党など5会派で今国会中に起草作業に着手する考えを示した。”
改憲国民投票、運動規制巡り対立 自民慎重、立民は法改正求める
https://nordot.app/1168764689734336588
“自民の中谷元氏は審査会終了後、憲法改正条文案の起草作業を始めるため、6月4日に幹事懇談会を開きたいと立民に提案した。”
【傍聴者の感想】
この文章を書いている時点で、自民党の裏金事件を受けた政治資金規正法改正の見通しが立っていません。自民党案に野党の歩み寄りが見られないことを利用して、大幅な今国会の会期延長さえ囁かれています。岸田首相は9月までの自身の自民党総裁任期中の改憲を成し遂げると、再三にわたって口にしています。会期延長の間に衆院憲法審査会の議論を進めて、改憲発議にまで持っていければ、支持率低迷に喘ぐ岸田政権も息を吹き返すという見方もあるようです。しかし、こうした見方はあまりにも改憲派の希望的観測が過ぎると感じます。
共同通信が5月1日にまとめた「憲法改正世論調査」によると、憲法改正の国会議論についての問いに、「急ぐ必要はない」が65%、改憲の進め方の問いには、「幅広い合意形成を優先」が72%と、多くの市民は早急な改憲を望んではいませんし、議論を進めるにしても幅広い合意形成を優先すべきとしています。
30日の衆院憲法審査会で自民党は、6月4日の衆院憲法審査会の幹事懇談会を、憲法改正の条文案の起草作業を行う場とすることを提案しました。立憲民主党が応じなければ、与党や日本維新の会など改憲推進5会派だけで条文案作成に着手することにも言及。国民民主党の玉木代表は、「審査会の残り回数を考えると間に合わない。絶望的だ」と、改憲に向けた戦略とスケジュールを明らかにするよう発言しました。一方、参院の憲法審査会では、参院の緊急集会のあり方などの議論の充実を求める意見が与党を含めて多く出され、衆院と参院の憲法審査会の議論の内容と温度差も鮮明になっています。
この日の衆院憲法審査会では、国民投票広報協議会とその他の国民投票法の諸問題も議論され、立憲民主党の奥野議員からは、「運動資金の多寡が投票結果に影響されるのではないか」という懸念が示されました。
戦後、絶望の淵に立たされた日本人に、生きる勇気と明日に向けた希望を与え続けてきた日本国憲法が、衆院憲法審査会で「改憲ありき」の性急かつ粗雑な議論の俎上に載せられていることに胸が痛みます。紹介した世論調査でも多くの市民が性急な改憲議論を望んでいないことが明らかになっています。改憲の議論そのものを否定しませんが、冷静かつ精緻な議論を期待します。
【国会議員から】階猛さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会幹事)
先ほど河西委員が述べられたAIに対する問題意識、私も共有させていただきたいと思います。
折しも、二十一日にEUでは、AIの開発や利用に関する規制を定めたAI法が成立しました。AI法は、人間の尊厳や民主主義、法の支配を守りながら、信頼できるAIの普及を目的にしています。そのために、巨大プラットフォーマーに法的義務を課すことにしています。
こうした規制の流れを、これまでの、憲法によって国家権力を縛るという立憲主義のアナロジーで、デジタル立憲主義と呼ぶようになってきました。AIを始めデジタル技術については極力規制しないというデジタル自由主義や、デジタル技術を国家の監視、管理の下に置くデジタル権威主義、こちらはいずれも両極端であり、問題があります。
立憲民主党は、党名の示すとおり、デジタル立憲主義の立場に立って、バランスの取れた国民投票法改正案と、自己情報コントロール権、情報アクセス権、情報環境権、これらを保障するための憲法上ないし立法上の措置を提案していることをまずもって申し上げます。
その上で、私からは、国民投票法にネットないしデジタル関連の規定を設ける必要性と、当該規制に関連して国民投票広報協議会が果たすべき役割について述べさせていただきます。
先ほど奥野委員も述べたとおり、我が党は、国民投票法につき、附則四条一号の投票環境整備に関する改正だけでは不十分と考えています。附則四条二号の国民投票の公平及び公正の確保のため、放送CM規制や国民投票運動の資金規制はもとより、有料ネットCMの規制やフェイク情報対策などを盛り込んだ改正を行うべきと主張しています。
前者については、政党等に対して有料ネットCMを禁止する代わりに、国民投票広報協議会がネットでも広報活動を行い、賛否それぞれの政党等の意見を公平に伝えるようにし、一般国民が容易にアクセスできるようURLを表示する工夫も行うこととしています。
国民投票広報協議会によるネットを使った広報については、私が知る限り、大半の委員が賛同していると思っております。現在の国民投票法に明文の規定がありませんが、放送や新聞による広報においては、本日の資料3の参照条文の三ページにあるとおり、詳細な定めが置かれております。このことからすると、国民投票法を改正してネット広報の定めを置くべきであります。
この点について、先ほど橘局長からは、そもそもこの規定を法律改正によらなくても行い得るという立場があるという御紹介がありましたけれども、今申し上げました条文のたてつけからして、私は法改正が必要だというふうに考えております。この点については、政党等の有料ネットCMの禁止規定とセットで具体的な条文案を検討すべきであると私たちは考えております。
後者のフェイク情報対策については、国家権力が自らに不都合な情報の流通を阻害するデジタル検閲を行っているのではないかという疑念を国民が抱かないようにすることも考えなくてはなりません。その観点から、国民投票広報協議会が自らネット情報のファクトチェックを行うのではなく、民間のファクトチェック団体やSNS事業者からの問合せに対して必要な情報提供を行うことでフェイク情報の拡散を防ぐ、そういう間接的な手法が望ましいと考えています。この点については、まずは規制の方向性について各会派と早急に議論を詰めた上で、条文案の検討に移るべきと考えています。
なお、こうした法的な規制とは別に、ネット広告事業者等の広告掲載基準に関するガイドラインや国民にネットの適正利用を促すガイドラインの策定を国民投票広報協議会が行うことも立憲民主党は提案しています。すなわち、ネットないしデジタル関連の規制において国民投票広報協議会の果たす役割は極めて大きなものがあります。
他方で、橘局長の説明にあったとおり、国民投票広報協議会は衆参両院にまたがる組織です。前例のない国民投票広報協議会の権限を定める憲法改正案広報実施規程案なるものの検討に当たっては、衆参合同の組織で行う必要があるということも申し上げます。
(憲法審査会での発言から)
2024年05月24日
憲法審査会レポート No.39
今週は衆議院憲法審査会のみの開催でした。なお、参議院憲法審査会は来週29日の開催で合意がされています。
【参考】
参院憲法審、29日の開催で合意 「緊急集会」をテーマに実質審議
https://www.sankei.com/article/20240522-4MN2PU7QOJNMXMQWVRJCWN6SEE/
“与野党は22日、参院憲法審査会の幹事懇談会を開き、定例日の29日に実質審議を行うことで合意した。”
“衆院側では緊急時に国会議員の任期延長を可能にする憲法改正の早期実現を求める声が多いが、参院側は緊急集会を巡る議論の深化を重視するなど溝がある。”
2024年5月23日(木) 第213回国会(常会)
第7回 衆議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55259
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【会議録】
※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)
【マスコミ報道から】
衆院憲法審査会 自民“要綱作成し議論を” 立民“時期尚早”
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240523/k10014458251000.html
“衆議院憲法審査会が開かれ、大規模災害など緊急事態での国会機能の維持をめぐり、自民党が憲法改正に向けた条文案のもとになる要綱を作成して議論を進めるよう重ねて求めたのに対し、立憲民主党は時期尚早だと主張しました。”
自・立、改憲条文化で平行線 国会機能維持を議論―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024052300815&g=pol
“立民の逢坂誠二氏は、災害時の選挙の在り方を優先的に議論すべきだと主張。「条文案を考えるのは段階が早いのではないか」と慎重姿勢を重ねて示した。”
選挙困難時の規定明文化を提案 衆院憲法審で自民、拙速と立民
https://nordot.app/1166213994756719109
“自民党は緊急時の国会機能維持に関し「制度設計の詳細を議論する段階だ」と主張。衆院選が困難な事態を想定し、憲法で定める「参院の緊急集会」と議員任期延長のどちらで対応するのかを明文化すべきだと提案した。”
「責任政党」の姿勢を疑問視、改憲後ろ向きの立憲民主へ指摘相次ぐ 衆院憲法審
https://www.sankei.com/article/20240523-SFLNNZCAGRKT7KHHK5T7MN2YOQ/
“…逢坂氏は「危機を煽って、緊急時対応が過大になり過ぎて、悲惨なことを招いた歴史がある。緊急時の対応は慎重の上にも慎重さを持ってやるべきだ」と述べるにとどめた。”
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改憲をめぐる正念場!
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著者:吉田はるみ(立憲民主党・衆議院議員)
新垣邦男(社会民主党・衆議院議員)
打越さく良(立憲民主党・参議院議員)
杉尾秀哉(立憲民主党・参議院議員)
飯島滋明(名古屋学院大学教授)
編集:フォーラム平和・人権・環境
発売:八月書館
内容:A5判並製・76ページ
定価:本体900円+税
2024年05月17日
憲法審査会レポート No.38
2024年5月15日(水) 第213回国会(常会)
第3回 参議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=7953
【会議録】
※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)
【マスコミ報道から】
参院憲法審査会 憲法が規定する「緊急集会」めぐり各党が意見
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240515/k10014450171000.html
“参議院憲法審査会が開かれ、大規模災害などの緊急事態の際に憲法が開催を規定している参議院の緊急集会をめぐり各党が意見を述べました。”
緊急集会、自民意見集約求める 立民、BCP策定を提案―参院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024051501020&g=pol
“参院憲法審査会は15日、憲法が定める参院の「緊急集会」をテーマに討議を行った。自民党は、これまでの各会派による議論を踏まえ、速やかな意見集約を要請。立憲民主党は、緊急集会開催に必要な、いわゆる業務継続計画(BCP)策定に向けた議論を提案した。”
緊急時の議員任期、自公の主張割れる 参院憲法審
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15934792.html
“大規模災害などの緊急時に国会機能を維持するには、緊急集会で十分なのか、それとも、憲法改正による衆院議員の任期延長が必要なのか。各党の主張は割れた。”
「衆参で温度差」 参院自民が憲法審で論点整理提案
https://www.sankei.com/article/20240515-EYN5SU7MPZNUTP22G7EAZYWCMI/
“参院憲法審の与党筆頭幹事の佐藤正久氏(自民)は「衆参の憲法審ではかなり温度差がある。まずは参院の緊急集会の方が充実すべき論点があるとの方向が大方の意見だ」と記者団に説明した。”
【傍聴者の感想】
きょうの参議院憲法審査会では、憲法54条に規定された「参議院緊急集会」に関する意見交換が行われました。
はじめに参議院法制局長と憲法審査会事務局長から「緊急集会」の趣旨や憲法制定の審議過程での説明内容、現行法制で定められた位置づけ、実際に行われた例とその流れなどについて説明があり、その後各委員から意見表明や法制局長や事務局長への質問が行われました。
災害時などの緊急事態対応として「緊急集会」は不十分などとして(改憲のための)議論を前に進めることを求める自民党の委員に対し、「緊急集会」を相当程度整備された制度として認め、選挙困難事態の「任期延長」には否定的な公明党の委員の間に、かなりの温度差を感じました。また、衆議院の任期満了時に「緊急集会」を開催できるか否かについても意見が分かれていました。
与党内の温度差に加え、「衆参の温度差」(佐藤正久・参院憲法審与党筆頭幹事の言)も否定できないのが現実です。これで条文案の起草作業を始めようなどというのは、おかしな話です。
「沖縄の風」の高良鉄美委員が「5月15日」に言及していましたが、平和憲法の下に復帰したはずの沖縄の厳しい現状に対して、改憲のためにする議論に終始する改憲会派の委員は、すこしでも思いを致すことがあるのでしょうか。
2024年5月16日(木) 第213回国会(常会)
第6回 衆議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55235
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【会議録】
※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)
【マスコミ報道から】
大規模災害など緊急事態での国会機能維持めぐり 各党が意見
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240516/k10014451171000.html
“衆議院憲法審査会が開かれ、大規模災害など緊急事態での国会機能の維持をめぐり、自民党が条文案のもとになる要綱を作成し議論することを提案したのに対し、立憲民主党は、今の憲法で対応するための方策を検討すべきだと主張しました。”
自民、憲法審で要綱案提示を主張 緊急事態時の議員任期延長を巡り
https://nordot.app/1163677812086784537
“衆院憲法審査会が16日開かれ、自民党の船田元氏は緊急事態時の国会議員の任期延長を巡り、憲法改正の条文要綱案を提示して議論を進めるよう主張した。公明党と日本維新の会も賛同した。”
自民、条文起草作業呼び掛け 議員任期延長、立民は慎重―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024051600552&g=pol
“立憲民主党の逢坂誠二代表代行は「丁寧な協議」を求めて慎重姿勢を崩さなかった。”
大規模災害時の議員任期延長、改憲巡り溝埋まらず 「立民排除論」も 衆院審査会
https://www.sankei.com/article/20240516-E4XZASVYLVNXPETQ2AFWPMNDNM/
“かねて任期延長の必要性を提唱してきた公明党の北側一雄氏は、発災後に想定される復旧・復興に向けた議員立法や予算審議などを念頭に「被災地選出の議員がいない状況が長期間続くのは良いとはとても思えない」と強調した。”
【傍聴者の感想】
衆議院憲法審査会を半年ぶりくらいに傍聴しました。取材が全国紙、地方紙、通信社含め今までになく多く感じました。傍聴は40人くらい、昨年よりは少なく感じました。
今回も自由討議でしたが、総じて、自民党の委員は各分野で改憲を進めたいとしながらも、すでに議論が重ねられている緊急事態条項について早々に起草を始め、具体的な手続きを進めたいという考えを強調していました。
一つの事例ができればあとは容易に続いて進められることは想像に難くありません。議論されてきたことはいずれも現在の憲法の解釈によって対応が可能ということはこれまでの議論からも明らかです。憲法改正という手段を目的とするのではなく、共通の目的であるはずの社会をよくすることをめざして議論を交わし深めてほしいです。
公明党・北側委員は大規模災害などで被災地の議員が不在となることはよくないと述べつつ、1年を上限とする議員任期延長の必要性を主張していました。少なからず近年の被災地に親しい方々が多くいる身としては、気にかかります。
国民民主党・玉木委員が「首相が憲法改正を論じるのは憲法99条の憲法擁護義務違反か否か」の法制局の見解を問い、法制局長が2017年の審査会で参考人の2人の教授が反しないと述べたと回答し、それを受けて玉木委員が憲法擁護義務違反ではないと断じたことです。それだけを根拠に憲法違反でないとすることは、まったく軽率と感じます。
2024年05月10日
憲法審査会レポート No.37
2024年5月8日(水) 第213回国会(常会)
第2回 参議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=7925
【会議録】
※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)
【マスコミ報道から】
参院憲法審査会 今国会で初の実質的審議 各党が意見述べる
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240508/k10014443121000.html
“参議院憲法審査会で今の国会で初めてとなる実質的な審議が行われ、自民党が、憲法で規定されている参議院の緊急集会について議論を深めるよう求めたのに対し、立憲民主党は、政治とカネの問題で国民の信頼を失った自民党に議論する資格はないと主張しました。”
参院憲法審、初の討議 緊急集会めぐり論戦 改憲前提の衆院とは距離
https://www.asahi.com/articles/ASS583FCXS58UTFK003M.html
“大規模災害などの緊急事態時に、憲法が定める参院の緊急集会で対応が十分かという点を軸に議論を交わした。ただ、衆院憲法審のように、緊急時対応のための憲法改正を前提にした議論とは、距離をとる形となった。”
公明「緊急時でも参院議員の任期延長は不要」 参院憲法審 衆院での主張とチグハグ 不要な理由とは
https://www.tokyo-np.co.jp/article/325918
“西田氏は、選挙の実施が困難な緊急事態時の任期延長に関する議論の充実を求めた上で、「(天災などで期日を延期する)繰り延べ投票ではなぜだめなのか判然としない」と任期延長を疑問視。「民主的な正当性を確保するのには選挙が肝要だ」と指摘した。”
“4月の衆院憲法審では、公明の北側一雄副代表が「改憲案のたたき台を作成して議論を深めていくべきだ」と発言するなど、任期延長を繰り返し訴えていた。”
緊急時の国会議員の任期延長 公明、参院憲法審査会では「不要」
https://mainichi.jp/articles/20240508/k00/00m/010/177000c
“衆院憲法審では、公明も含む改憲勢力の5党派が任期延長の改憲の必要性で一致し、早期の条文案作成を主張する。公明憲法調査会副会長の大口善徳衆院議員は3日の改憲派集会で「議論は出尽くした。賛同する会派とともに改正案のたたき台を出す」と発言しており、衆参の温度差が裏付けられた形だ。”
【傍聴者の感想】
今国会の参議院憲法審査会では初めての実質的な審議となりました。各会派からの見解、その後、各委員からの意見と続きました。自民党は大規模自然災害発生などによる衆議院の不在時における、参議院の緊急集会について議論を深め具体化すべきという主張を強めており、とくに能登半島地震を例に挙げてその必要性を強調する意見が目立ちました。
この間、真剣に被災地支援にとりくみもせずに、自分たちの主張に震災を利用することに腹立たしさを感じます。被災地では、支援する姿勢や目的もなく、実績のために視察に来て手間だけかかるという不満の声もよく聞きます。
改憲の議論も同様、それで何がよくなるのか、何のためにやるのか、ではなく改憲自体が目的、実績と考えている議論に聞こえます。
震災、またLGBTQなど命や人権を侵される日々を送る人たちがたくさんいる社会にあって、将来の自分の実績ばかり考える議員たちには、改憲を語るより前に、すべての人の人命、人権を守るための議論をしていただきたいと思います。
【国会議員から】高良鉄美さん(沖縄の風・参議院議員/憲法審査会委員)
沖縄が復帰して来週で五二年になります。憲法が適用されてからということです。その憲法は、まだ沖縄に適用されていると思えません。それをまず先に言いたいと思います。
政府は、所信や外交等において法の支配の語を多用していますが、今日は、法の支配や憲法原理の観点から、現状の憲法審査会の問題点について述べたいと思います。
まず、大本の法の支配からの問題点を言いたいと思います。憲法審査会が法の支配の語を誤った理解で使用し続けているということです。法の支配は、専断的な国家権力の支配、つまり、人の支配を排し、全ての統治権力を憲法で拘束することによって国民の権利を保障することを目的とする立憲主義に基づく原理です。民主主義とも非常に関連をしています。
法の支配の内容というのは、憲法の最高法規性の概念、権力によって侵されない個人の人権、法の内容、手続の公正を要求する適正手続、権力の恣意的行使をコントロールする裁判所の役割に対する尊重と、こういったものが挙げられますけれども、現状の憲法審査会の機能や位置付けが法の支配から問題となる点が多くあります。
まず、最高法規である憲法から見た現状の憲法審査会です。憲法の改正を目的に、常に言わば常任の調査、審査をする機関として位置付けられているということが憲法上可能なんですか?ということです。
憲法制定権力は国民にあり、国民から、人権保障のために必要な改正があれば、発議の信託を受けたものであって、憲法改正権力自体が元来国会にあるわけではありません。しかも、負託されたのはその一部にすぎず、国民の最終判断が憲法改正権発動の効果発生となることとなります。したがって、憲法審査会が憲法より上位にあるかのように、網羅的に憲法条文の改憲を模索することに従事しているということは憲法構造上いびつと言っていいと思います。
憲法九六条の、国会が発議をしてから国民投票にかけると書いてあるのは憲法保障の一環なんです。そのときの国会の役割は、発議前の改憲案が国家権力の横暴や濫用を、あるいは人権侵害に及ぶのではないかということを、法の支配に基づく行動様式と良識でそれをきちんと議論するということの位置付けなんです。
だからこそ、違憲の疑いのある発議を抑えるという信頼を国会に置いているのが憲法保障なんです。現在、こういった位置付けで、位置付けと認識でこの審査会が動いていますか。
憲法九九条では、総理を含む国務大臣、国会議員などに憲法尊重擁護義務があることを定めています。仮に憲法に違反する行為等を権力者が行ったり政府が憲法上の疑義のある改憲に走ったりした場合、権力分立、チェック・アンド・バランスの一翼を担う、これは国民の代表ですから、国の唯一の立法機関である国会が政府の行為が憲法に違反しないかを議論するところであり、そういう見識を持っていると憲法上みなされているのが国会なんです。
どうも現在の憲法審査会の動きはそうなってないのではないかと、主権者国民がしっかり見ていると思います。行政監視というのは国民の代表としての国会の役割だということで、行政と一緒にやることではないということですね。
法の支配の内容の一つにまた適正手続ということがあります。この国民主権に基づく主権者の改憲要望、あるいは国民から沸き上がった改憲なのかというのが問題になります。
審査会の在り方自体も問題です。現状の審査会は、国家権力による憲法改正事項の発掘をしているような様相に見えます。お試し改憲などとも言われて、憲法という最も重たい条文のどこをどう変えるのか幾つも案を出し、明確でない中身です。
通常の改憲の必要性が国民から沸き上がり、それに応えてのための合議体、ほかの合議体を設置し、議論するのが本来の筋かもしれません。国会ではなくて、別の合議体というのが海外ではあります。改憲したいという政治的信念の押売では、法の支配に反するだけでなく、典型的な立憲主義にも反するやり方であると思います。
そして、国家権力は、憲法違反をした場合、制裁が付いてきますでしょうか。ちなみに、憲法違反を明確、故意に侵した場合に、憲法裁判所に訴追し、大統領を罷免するという手続が憲法に書かれているドイツ基本法もあります。
憲法はどのような日本国家を目指しているか。これは明白に、平和国家、民主国家、人権保障国家です。この基本原理を確認し、立憲主義に基づく憲法審査会となっているんでしょうかと。立憲主義は、国民の基本的人権などを守るため、国家権力によって、国家権力を憲法によって制約することですけれども、国家権力が憲法の制約を緩めるための方法を常時模索しているこの形に異常に問題があると映っています。
国家権力担当者が負うのは憲法尊重擁護義務であって、擁護義務と同じように課されている国会議員は、擁護義務を同じように課されている国会議員は、憲法改正案を作る義務を負っているわけではありません。これは絶対憲法に書かれていないことです。勝手に憲法上の義務をつくり出しているというのが問題だと思います。
かつて、これは一九五三年ですけれども、防衛力増強を日本がすることに対して、日本側は、とても難しいと、だから簡単に予算は付けられませんと言っています。この措置をとることに対して、法律的制約というのが憲法だというふうにアメリカに述べています。今、そのような法律的制約あるいは法的制約というものをどんどんなくしていこうという、そういう方向に向かっているんではないかと思います。
また、断ったもう一つの理由が、自然災害が多く、その対策費用が掛かるから防衛費用は増やせませんと言ったわけですね。
そして、最後に、岸田首相が任期中に改憲を行う旨の発言をしたということですけれども、これは法の支配になっていますか?人が支配しているんじゃないですか、いつまでに憲法を変えなさい、変えましょうと。そういうことは、法の支配の理解が不十分だということで、問題点はまだまだありますけれども、今の憲法審査会は違憲の問題がある、そこまで言っておきたいと思います。
(憲法審査会での発言から)
2024年5月9日(木) 第213回国会(常会)
第5回 衆議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55210
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【会議録】
※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)
【マスコミ報道から】
緊急事態条文化巡り平行線 立民慎重姿勢崩さず―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024050900512&g=pol
“自民党の中谷元氏は緊急事態の際の国会議員任期延長について「機は熟している」と述べ、具体的に条文化する「起草作業」に入るべきだと改めて主張。”
衆議院憲法審査会 憲法改正の条文案めぐり議論
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240509/k10014444221000.html
“立憲民主党の逢坂代表代行は「災害に強い選挙の在り方を十分に検討する必要があり、安易に議員任期の延長を行うのは順序が逆だ。任期を延長する事由などを誰がどう判断するかによって立憲主義を大きく毀損する可能性もある」と述べました。”
自民「緊急時の機能維持を」 憲法審、立民は議員任期延長反対
https://nordot.app/1161132791203528775
“立憲民主党の逢坂誠二氏は国会議員の任期延長に反対し、災害時の選挙に関して選挙人名簿の管理や自治体間の選挙事務の応援体制を考える必要があると指摘。「このような検討なく、安易に議員任期を延長するのは順序が逆だ」と批判した。”
「堂々巡り」で早期改憲に暗雲 自民が起草委設置要求も立民折れず
https://www.sankei.com/article/20240509-KVT77VYFINIUPOJN4GI53FSXYA/
“「大型連休後に事態は動く」(自民関係者)との期待もむなしく、起草委設置も見通せていない。”
“憲法審終了後、中谷氏は記者団に「(立民から)返事があったら設置する」と説明した。しかし、逢坂氏は記者団に起草委設置については正式に提案されていないとの認識を示した。”
【傍聴者の感想】
衆議院憲法審査会を傍聴しました。
自民、公明、維新、国民からは「議論は出尽くした。5会派が合意している起草委員会を設置して、憲法改正の条文案たたき台の作成作業を開始する段階に入っている」との発言が続きました。
立憲民主党、共産党側が、緊急事態条項の新設、緊急事態時の議員任期の延長や改憲手続き法のさまざまな問題点を指摘しました。立憲民主党の逢坂誠二議員は「災害時に選挙ができる仕組みを作るべきであり、市町村の行動マニュアルの作成が必要」と述べました。
そもそも、法律を破って裏金を作って隠蔽したり、憲法違反を繰り返している自民党に憲法を語る資格があるのでしょうか。
選挙実施困難を理由に憲法を変えようとし、改憲議論が国会議員の責任だなどという主張に憤りを覚えました。
自民党の稲田朋美議員が袴田事件を取り上げ、司法の怠慢と検察の不正、人権について熱く語っていたのが不思議で、印象的でした。
2024年04月26日
憲法審査会レポート No.36
4月25日、衆議院憲法審査会が開催され、今国会3回目となる自由討議が行われました。
いっぽう、参議院憲法審査会幹事懇談会は24日に開催され、5月8日に自由討議を行うことで合意しました。
【参考:参議院憲法審査会をめぐって】
参院憲法審、5月8日の実質審議開催で合意 参院の緊急集会は合意至らず
https://www.sankei.com/article/20240424-WUS2ZTCD2RNQHGK5BHT5H6QNLQ/
“参院憲法審査会の幹事懇談会が24日開かれ、今国会初の実質的な審議を5月8日に開催することで合意した。「憲法に対する考え方」をテーマに自由討議を実施する。自民党は衆院解散後の緊急時に参院が国会機能を暫定的に代行する第54条「緊急集会」に関して5月15日にも自由討議を行うべきだと提案したが、合意には至らなかった。”
参院憲法審査会、来月8日に初の実質討議 テーマ決めは難航の見込み
https://www.asahi.com/articles/ASS4S2RKJS4SUTFK01SM.html
“…緊急時に国会議員の任期を延長するための改憲原案づくりは、衆院憲法審で焦点となっているが、参院の緊急集会の存在意義にかかわる。そのため、公明の参院側は議論には応じるものの、任期延長のための改憲は不要との立場をとっている。”
2024年4月25日(木) 第213回国会(常会)
第4回 衆議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55188
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【会議録】
※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)
【マスコミ報道から】
自民「広報協議会の議論加速を」 衆院憲法審が自由討議
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024042500468&g=pol
“衆院憲法審査会は25日、今国会3回目となる自由討議を行った。憲法改正の発議があった際に国会に設置する「国民投票広報協議会」に関し、自民党の寺田稔氏は「規定の条文化作業など、権限や役割についての議論を加速させるべきだ」と述べた。”
自民求める改憲原案起草委、設置メド立たず 本気度に疑問の声も
https://www.sankei.com/article/20240425-BU6M3Z4AXNJF5D3OFKMKA3OTSI/
“起草委を巡っては与党筆頭幹事の中谷元氏(自民)が重ねて設置を訴えているが、実現の目途は立っていない。憲法審終了後、中谷氏は記者団に「(立民から)全く答えがないという状況だ」と述べるにとどめた。”
衆院憲法審査会で自由討議 緊急事態での議員の任期延長など
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240425/k10014432901000.html
“立憲民主党の逢坂代表代行は「大規模災害時などに議員の任期を延長すべきだという議論が出ているが非常に安易だ。『何でもいいから憲法を変えればいい』という議論に思われ、まずは災害時などの緊急時に選挙ができるような工夫を最大限行うべきだ」と述べました。”
【傍聴者の感想】
若葉が芽吹く季節、この日も国会見学の子どもたちが大勢いました。国会は国権の最高機関であって国の唯一の立法機関であること、法律の制定や予算の審議・議決、憲法改正の発議などが大きな役割であると学んだことを思い出しながら、今の政治が本当に子どもたちに胸を張れる議論が出来ているのだろうかと、疑問を抱きつつ子どもたちの背中を見送りました。
直近の衆院憲法審査会の議論は、緊急時の対応として緊急事態条項を憲法に創設し、議員任期延長を可能とすることを憲法に明記すべき、議論は出尽くしたとする主張が改憲推進5会派から続いています。この日も日本維新の会の小野委員からは、「お互いの意見が出尽くしたのであれば、採決するのが民主主義ではないか、このままだらだらと進めるのか、自民党の決断を求める」と、改憲を党是とする自民党を煽る発言がされています。
有志の会の北神委員からは「緊急事態が起きてから「想定外でした」ではだめ。国会機能の維持に絞って発議に向けて条文案作りを進めるべき」と意見が出され、自民党の山田委員は「緊急事態について「なぜ?」の段階は過ぎた」といった主張が繰り返されました。
こうした与党や一部野党の主張に対し、立憲民主党の逢坂野党筆頭幹事は、自身の自治体職員時の経験を踏まえながら、「1993年の北海道・奥尻地震の際も、苦労はしたが選挙は実施した。本当に災害時に選挙はできないのか、災害にも強い選挙方法はないのか、そういう議論こそ必要ではないのか」と、改憲推進派の主張に反論しました。
日本における参政権は、憲法第15条において「国民固有の権利である」と定められています。参政権とは国民の権利の一つであり、過去の判例においても「参政権は国民主権に由来し認められる」と判断されています。主権とは「国を統治する権力」のことです。災害時などの緊急時を例に挙げ、憲法の基本的理念の一つである「国民主権」を制限し、国会の権限を強化することは本末転倒の主張で許されるものではありません。さらに逢坂野党筆頭幹事は、度重なる岸田首相の改憲に前のめりの発言は、落ち着いた議論の阻害要因であると批判しました。
この日の議論の特徴として、憲法改正の発議があった際に国会に設置し、国民への広報に関する事務を担う「国民投票広報協議会」に関して意見が出されました。自民党の寺田委員は「既定の条文化作業など、権限や役割についての議論を加速させるべきだ」と主張。公明党の北側幹事も「国民投票は往々にして政権に対する信任投票になりがちで、改憲の内容を国民に支持してもらうためには、発議までに国民に理解してもらう努力が必要で、広報協議会の役割は重要である」と同調しました。
国民民主党の玉木委員は「今国会の審査会も残り7回である。緊急事態条項に絞って発議に向けた議論を進めるべき。いついかなるときも国会機能を維持することが目的であって、緊急事態条項という名称は国会機能維持条項に変えるべき」と主張。自民党の中谷与党筆頭幹事は「名称変更は検討したい。幹事懇で条文案作成すべきとの意見もある。反対会派にも出席をいただいて熟議を重ねる必要がある」と応じました。
今国会では、次期戦闘機の第三国への輸出を可能とすることが、国会審議も経ずに閣議決定されました。その他にも衆院を通過した「経済安全保障推進法」は、個人のプライバシーといった人権侵害の懸念があります。「地方自治法の一部改正案」は、国と地方自治体の関係を対等とする地方分権に逆行しかねない法案です。数の力で押し切る民意を無視した与党の強行姿勢は容認できません。憲法も法案も腰を落ち着けた丁寧な議論こそ必要だと感じます。
未来を担う子どもたちが、希望に胸を膨らませることができる、そうした社会をつくることは大人たちの責任です。
【国会議員から】牧義夫さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会幹事)
これまでの憲法審査会の議論が嚙み合っていないと感じています。
改憲を急ぐ皆さんのお話を伺っていると、内容はともかく改憲そのものが目的化しているようにしか聞こえません。改憲の必要性や立法事実に疑問をもつ者の一人として、その理由を述べさせていただきます。
緊急事態条項の創設について、2022年参院選の際のネット投票に関するアンケートで、各党が実現に賛成と回答しており、反対表明はありませんでした。2021年提出のネット投票法案には、国民民主党も日本維新の会も共同提出者になっています。与党が判断すれば、明日からでも実施に向けた具体的な検討に入ることができます。国会審議についても、リモート機能で対応できることはパンデミックの経験を通じて実証済みです。
次に、教育無償化についてです。現行憲法で義務教育無償化は保障されています。そのうえで、高等教育無償化についても国連人権規約(A規約)にある「斬新的無償化」の条項を、長年にわたってわが国は留保してきましたが、2012年、民主党政権によって留保が解除されています。
次に、9条についてです。岸田政権は2022年12月、専守防衛の原則に基づく従来の安保政策を大転換し、新たな防衛三文書を閣議決定しました。防衛費をGDP比2%に倍増し、「敵基地攻撃能力」つまり先制攻撃容認に踏み切りました。この時点で既に現行憲法を逸脱しています。自衛隊の明文化という意見もありますが、世界最大の軍事大国のアメリカにおける軍隊の位置づけを見ると、アメリカ合衆国憲法の第8条(連邦議会の立法権限)の12項に「陸軍の編成(歳出の承認は2年を超えない)」、13項に「海軍の創設と維持」、15項に「反乱鎮圧のための民兵団の召集」がありますが、海兵隊や宇宙軍、サイバー軍などは明記されていません。
防衛力の増強こそが抑止力の強化につながるとの意見もあります。私は現行憲法の9条1項、2項の存在こそが何よりも戦争抑止力になっていると思います。「自らは戦争しない」と謳っている国に対して武力攻撃を仕掛けることは、国際社会の中で相応の避難と制裁を覚悟しなければなりません。今回の敵基地攻撃能力保持で、その抑止力の一部が損なわれることを危惧します。
ロシアによるウクライナ侵攻は、大いに非難されるべきものではありますが、NATOの東側への拡大やウクライナのNATO加盟への意思、つまりロシアに対する挑発が無ければ、或いはロシアを侵攻に至らせなかったことも可能だったとの見方もあります。
以上、立法事実に関して述べさせていただきました。
次に、改憲推進5会派の思惑もそれぞれであることを、先週の審査会での維新委員の発言を聞いて感じました。「予算委員会のときは委員長職権で押し切られ悔しい思いをしたが、当審査会でこそ会長の職権で前に進めてほしい」という旨の意見でしたが、私は責任ある与党が軽々にそうした無責任な挑発には乗らないと信じています。
なぜならば、責任ある与党の皆さんは、現行憲法の成り立ちについて十分に理解し、現実を踏まえ、特に9条についても既に解釈改憲で事足りると考えているのではないかと思われ、岸田総理の発言も自民党支持層に向けての単なるリップサービスだと理解しています。
憲法について深い議論を重ねることは大いに歓迎しますが、かつての「首都機能移転」の時のように、最後に各論に入ったとたん、それぞれの思惑の違いから破たんすることが容易に想像されます。
先ほど「現行憲法の成り立ちについて」と申し上げました。昭和21年に成立した日本国憲法が、GHQから押し付けられたものかそうでないのかの議論をここでするつもりはありませんが、少なくとも占領下で制定された憲法であることは事実です。
本来であれば昭和26年サンフランシスコ平和条約で主権回復したことで、改めて新憲法を制定することもできたかではなくて、敢えて自らの意思で現行憲法を保持することを決めたと解すべきで、それならばポツダム宣言第12項の趣旨にも沿っています。
ここで忘れてならないのは、平和条約と同時にその陰で日米安保条約・行政協定(地位協定)が結ばれたということです。占領が解除されると同時に、アメリカが望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間だけ駐留させる権利を約束したわけです。
日米安保条約(地位協定)を見直すといった真正面からの議論であれば、「お試し改憲」のような不毛な議論よりも、もっと意味のある議論になると思います。
ブックレット『その改憲、ちょっと待った! 憲法審査会は今』、好評発売中!
改憲をめぐる正念場!
憲法審査会の現状を把握するために、ぜひ本書のご活用をお願いします。
本書は全国書店でお買い求めになれます。
著者:吉田はるみ(立憲民主党・衆議院議員)
新垣邦男(社会民主党・衆議院議員)
打越さく良(立憲民主党・参議院議員)
杉尾秀哉(立憲民主党・参議院議員)
飯島滋明(名古屋学院大学教授)
編集:フォーラム平和・人権・環境
発売:八月書館
内容:A5判並製・76ページ
定価:本体900円+税
(憲法審査会での発言から)
2024年04月19日
憲法審査会レポート No.35
4月18日、衆議院憲法審査会が開催され、今国会2回目の自由討議が行われました。
参議院憲法審査会については17日、幹事懇談会が開催されましたが開催合意に至らず、再度24日に幹事懇開催の予定です。
【参考】
参院憲法審、「脱牛歩」見通せず 「参院の緊急集会」議論に立民が異論 次回も幹事懇
https://www.sankei.com/article/20240417-MA6J4J2DBNLZJPQCQENNUAKSSM/
“この日は結論が出ず、24日の参院憲法審の定例日は再び幹事懇を開いて議論を続ける。”
“大型連休を踏まえ、佐藤氏は本格的な憲法審を5月8日に開きたい考えだが、合意には至っていない。”
2024年4月18日(木) 第213回国会(常会)
第3回 衆議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55137
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【会議録】
※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)
【マスコミ報道から】
自民、早急に改憲案作成 立民拒否「論点は多岐」
https://nordot.app/1153528746306405302
“自民党は緊急事態時の国会議員の任期延長を中心に、早急に改憲条文案の作成作業に入るよう重ねて提案した。立憲民主党は任期延長の問題点を指摘した上で「議論すべき論点は多岐にわたる。現時点では条文の起草には至らない」と拒否。数年単位で憲法全体を見渡した議論が必要だと主張した。”
衆院憲法審査会 憲法改正の条文案の起草めぐり議論
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240418/k10014425981000.html
“衆議院憲法審査会が開かれ、自民党が大規模災害など緊急事態における国会議員の任期延長などについて速やかに憲法改正の条文案の起草作業に入るべきだと改めて提案したのに対し、立憲民主党は論点は多岐にわたるとして数年単位の議論が必要だと主張しました。”
自民「早急な条文起草を」 緊急事態条項、立民は反論―衆院憲法審査会
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024041800441&g=pol
“自民党の加藤勝信氏は、大規模災害時の国会議員任期延長など「緊急事態条項」を設ける憲法改正について「必要性は共通理解が形成されてきている」と指摘。その上で「早急に条文起草作業に入るべきだ」と述べ、来週にも幹事懇談会を開催するよう求めた。”
改正条文案の「起草委」巡り討議 議論は平行線 衆院憲法審
https://mainichi.jp/articles/20240418/k00/00m/010/235000c
“維新の青柳仁士氏も「起草委員会は、やろうと思えば委員長職権でも開ける。今日にでも条文化作業に入るべきだ」と主張。公明の国重徹氏は「条文案のたたき台の作成を進めるようお願いする」と述べた。自民の中谷元・与党筆頭幹事は毎週火曜に定例の幹事懇を開催したい意向を示した。”
改憲を急かす党派に立民が待った「数年単位かけるべき」 維新「今日にでも条文化作業を」 衆院憲法審査会
https://www.tokyo-np.co.jp/article/322090
“…公明党の国重徹氏も「論点は既に出尽くした感がある」と同調した。”
“…立民の奥野総一郎氏は「任期延長された議員は選挙を経ておらず、民主的正当性に疑問が残る」と問題点を指摘。腰を据えた憲法論議の重要性を強調した。共産党の赤嶺政賢氏は改憲に反対した。”
【傍聴者の感想】
今国会の2回目の実質審議は、課題を定めない自由討議ということで、まずは各会派から1人ずつの発言で始まりました。自民党の加藤委員は、緊急事態条項の議論は相当整理されているとしたうえで、議員任期延長について、起草方法と条文作成を早急に進めるべきと発言しました。
維新の会の青柳委員は、今日にでも条文作成作業に入るべきと述べ、採決の目安を示せ、自民党は保守層を引き付けるために憲法改正を言っているだけではないかなど、憲法審の進め方について自民党を批判しました。国民民主党に対しては、9条改憲にこだわることが議論のまとめを送らせていると意見、また傍聴者から漏れる失笑などに対して、傍聴者だけが民意ではない旨を発言しました。
公明党の国重委員は、任期延長の条文案のたたき台を早期に作成して議論していくべきということを短時間述べたうえで、この間出された同性婚訴訟の判決を踏まえた立法府の役割について、人権を擁護する立場での憲法論を議論すべきということについて持ち時間のほとんどを費やしました。
国民民主党の玉木委員は、仮に憲法に自衛隊を明記したとしても、9条がそのままでは違憲の議論から逃れられない、現状の国際法と国内法を使い分けて自衛隊の性格、行動を説明するやり方は国民にもわからないし自衛隊を不安定な状態に置くものであるから、9条の改憲が必要という自説を展開しました。
有志の会の北神委員は、具体案作りに進むべきとしつつ、例えば参院集会の権限のように現行憲法において解釈に曖昧さが残るものや、オンライン国会の可否などについて明確にし、さらには自衛権の範囲の変化なども含めて改正すべきものは改正すべしという意見を述べました。
これら改憲会派の意見に対して、立憲民主党の奥野委員は、そもそも改憲の理由が不明で、立法事実も国民の要請もなく、改憲のための改憲議論であることを指摘しつつ、一方でインターネット投票や首相の専権とされている解散権の問題、憲法裁判所の設置や自己情報コントロール権、環境権、改憲手続法の付則4条の問題など議論すべきことは他に多くある旨を発言しました。
また共産党の赤嶺委員は、先の日米首脳会談において合意された、米軍・自衛隊の指揮・統制の統合は、日本の戦後の防衛政策を根本から転換するものであり、憲法違反で認められない旨を発言しました。
会派の発言が一巡したのちに、挙手による発言に移りましたが、維新の会の三木委員が、与野党の筆頭幹事で委員会運営を進めることについて、立憲の逢坂幹事は野党の代表とは認められない旨の発言をし、逢坂委員が「失礼だ!」と発言する場面もありました。維新の会、国民民主党は、審議の進め方について自民党あるいは立憲民主党を批判し、自民党、公明党は慎重に一般論や関連課題を黙々と語るという委員会が今回も繰り返されたと言えます。
終盤に、立憲民主党の本庄委員は、①任期延長はそもそも立法事実についての認識が共有されていない、そもそも長期に全国で選挙ができない状態とはどのような状態を想定しているのか、②自衛隊が明記されないとどういう不都合があるのか、③教育の充実は直ちに法律でやればいいのではないか、と中谷幹事に質問をしました。これらの課題に明快な回答はもちろんなく、そういうことも含めて今後議論していきたいという回答は、まさに議論が全く深まることなく改憲のための改憲議論を重ねてきたことの証左ともいえます。
ただ具体的には、起草委員会の設置が提起されており、今後幹事懇談会で検討をしていくということなので、その帰趨について注視をしていきたいと思います。
【国会議員から】本庄知史さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会幹事)
もとより、憲法は第96条で改正について規定しています。憲法自身がその改正を所与の前提としている以上、国会で議論を尽くし、必要があれば、改正を発議することは当然のことです。この点においては、改憲派も護憲派も、与党も野党も関係ありません。問題はその中身です。その上で、本題に入ります。
自民党・中谷筆頭幹事「議論の到達点」について
先週、4月11日の本審査会で、自民党の中谷筆頭幹事より、「これまでの議論の到達点」として3点、「緊急事態条項、特に国会機能維持」「憲法における自衛隊の明記」、そして「教育の充実」について言及がありました。
私は前回総選挙より2年半、本審査会での議論に参加してきましたが、中谷筆頭幹事が挙げた3点について、意見を申し述べたいと思います。
第一に国会機能維持、そのための議員任期の延長について、確かに議論は盛んですが、肝心の立法事実について、認識が共有されているとは思えません。そこで確認しますが、中谷筆頭幹事は、衆議院総選挙や参議院選挙の実施が「全国の広範な地域で困難」であり、かつ、それが「相当程度長期間に及ぶ場合」と述べておられますが、それは一体どういう状況でしょうか。
例えば、2011年に発生した東日本大震災では、直後の首長・地方議員選挙が数か月延期されたものの、それは東北地方の被災3県内に限られた措置でした。
1995年の阪神淡路大震災でも、直後の首長・地方議員選挙が延期されましたが、延期は40日余りで、かつ兵庫県、神戸市など4つの被災自治体に過ぎません。
さらに1923年、首都直下型の関東大震災、このときは明治憲法下の緊急勅令により、府県議会議員の任期が延長されましたが、これも東京府、神奈川県、埼玉県など一部被災地に留まっています。
また、いずれの大震災でも国会機能は維持されており、震災後の国会議員の選挙も期日通り実施されています。こういった過去の事例も踏まえた上で、日本全国で長期間選挙が実施できない状況、国会機能が維持できない状況とは一体いかなる場合なのか、中谷筆頭幹事から具体的にご説明いただきたいと思います。
第二に、憲法における自衛隊の明記ですが、これも立法事実が示されていません。私が昨年11月に本審査会で申し述べたように、現在自衛隊が憲法に明記されていないことによる法的・政策的支障は具体的に見当たらず、また、違憲論争に終止符を打つためであれば、それは、仮に自衛隊を明記しても、行使する自衛権の内容などをめぐって、合憲の自衛隊か違憲の自衛隊かといった議論は今後も続き、改正の意味を成しません。
第三に、教育の充実に至っては、無償化も含め、憲法問題ですらありません。教育を受ける権利を定めた憲法第26条が、義務教育以外の教育の充実や無償化を禁じたものでないことは文言上明らかです。むしろ、意欲と能力がありながら、経済的な理由で義務教育以上の教育を受けられない子どもたちは、第26条が規定する「その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利」を侵害されていると解すことさえできます。いたずらに憲法問題として議論する時間と労力があれば、速やかに法律と予算で対応すべきです。
以上のとおり、中谷筆頭幹事が「到達点」とされている3点は、憲法改正や条文化作業はおろか、改正を必要とする立法事実すらはっきりしないものです。憲法改正を主張される方々のご高説を伺っていると、何とかもっともらしい改正の理由を見つけようと、さながら「改憲の青い鳥」を探すがごとくですが、そのために本審査会を毎週開催する意味がどれほどあるのか、甚だ疑問です。
合憲性・違憲性を問われている立法こそ積極的に議論を
それでもなお、「開催することに意義がある」とすれば、それは、現行憲法の遵守状況、とりわけ、合憲性・違憲性が問われている立法について、本審査会で積極的に議論することであると考えます。
例えば、先ほど國重委員も取り上げた同性婚の他、昨年10月に最高裁が違憲判決を下した、手術要件を伴う戸籍上の性別変更、あるいは「国会で議論し、判断すべき事柄」として、最高裁から国会にボールが投げられたまま、長年放置されている選択的夫婦別姓などが挙げられます。
こういった現実的な憲法課題について積極的に議論し、国会における立法をリードしていくことも、本審査会の重要な役割であるということを申し上げ、私の発言といたします。
(憲法審査会での発言から)
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2024年04月12日
憲法審査会レポート No.34
4月10日、参議院憲法審査会が開催され、幹事選任の手続きのみ行われました。また、11日には衆議院憲法審査会で自由討議が行われました。
2024年4月10日(水) 第213回国会(常会)
第1回 参議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=7868
【会議録】
※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)
【マスコミ報道から】
参院憲法審、今国会で初開催 幹事を選任、進め方協議へ
https://mainichi.jp/articles/20240410/k00/00m/010/235000c
“参院憲法審査会が10日、今国会で初めて開かれ、幹事選任の事務手続きを実施した。終了後に与野党の筆頭幹事が会談し、17日に幹事懇談会を開く方向で調整することを確認した。”
参院憲法審が初開催
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024041000532&g=pol
“幹事の選任のみで、約2分で散会となった。審査会後、与野党の筆頭幹事が協議し、17日に幹事懇談会を開いてその後の日程や議題を話し合うことで合意した。”
辻元清美氏が筆頭幹事…野党「護憲シフト」 参院憲法審の実質審議は見通せず
https://www.sankei.com/article/20240410-724GSCP2R5KSPIL27UP3UD76JY/
“衆院憲法審に比べて議論の遅れが指摘されている中、参院立憲民主党は「護憲シフト」を押し出している。参院公明党も憲法改正には慎重な立場との見方が根強く、活性化は困難との空気が漂っている。”
2024年4月11日(木) 第213回国会(常会)
第2回 衆議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55137
※「はじめから再生」をクリックしてください
【会議録】
※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)
【マスコミ報道から】
緊急事態条項で起草委 自民提案、立民は難色―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024041100894&g=pol
“衆院憲法審査会は11日、今国会初の自由討議を行った。大規模災害時の国会議員任期延長など「緊急事態条項」を創設する憲法改正に関し、自民党は条文案の起草委員会を立ち上げるよう主張。立憲民主党は難色を示した。”
衆院憲法審 自民「国会機能維持の条文起草作業を」、立憲「不見識」
https://www.asahi.com/articles/ASS4C319JS4CUTFK002M.html
“衆院憲法審査会が11日に開かれ、今の国会で実質的な討議が初めて行われた。憲法改正に向けた原案づくりに自民、公明両党と、日本維新の会、国民民主党が前向きな考えを示した一方で、立憲民主党と共産党は改めて反対を主張。先行きは見通せない。”
「裏金問題解決できないのに改憲を論ずる正当性なし」衆・憲法審で立憲が批判
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000344701.html
“自民党 中谷元衆院議員
「幅広い会派間で憲法改正原案作成の協議を行う環境を早期に整備することを提案を致します」”
“立憲民主党 逢坂誠二衆院議員
「裏金問題の解決もできず、自浄作用のない自民党が憲法改正を論ずることに正当性があるのでしょうか」”
改憲案の起草委設置を自民が提案 立民反発 募る維新や国民民主の不満 衆院憲法審
https://www.sankei.com/article/20240411-U7R636PVGVOV5FMJC447GPSJNY/
“「幅広い会派間で憲法改正原案作成の協議を行う環境を早期に整備することを提案する」。中谷氏は衆院憲法審で、幹事懇談会を念頭に置いた起草委設置を提起した。憲法への自衛隊明記に関しても条文化を進めたいとの意向を表明。”
国と自治体が上下関係…「自治権の保障が壊れる」 政府が目指す「地方自治法改正」、衆院憲法審で異論
https://www.tokyo-np.co.jp/article/320695
“立憲民主党の近藤昭一衆院議員は11日、衆院憲法審査会の自由討議で、政府が今国会成立を目指す地方自治法改正案への懸念を示した。「強大な政府の権限をより強大にし、政府と地方自治体の関係に上下関係を持ち込むことになるのではないか」と述べた。”
【傍聴者の感想】
きょうの憲法審査会では、まず自民党の中谷筆頭幹事が「緊急時の国会機能の維持について、いつでも条文起草作業に入れるところまで議論が進んでいる」と述べました。馬場代表はじめ日本維新の会の幹事は、立憲民主党と日本共産党に対して「憲法改正のブレーキとなっている」と批判すると同時に、自民党に対しても「立民とのなれあい」をやめ、改正原案の合意に向けた動きを促していました。さらに、自民党の中谷筆頭幹事が緊急事態条項の起草委員会の創設に言及したことを「評価」し、スケジュールの提示と具体的な条文案を「テーブルに乗せる」ことを求めていました。ほかにも、維新の会や国民民主党からは、岸田首相の施政方針演説における「任期中=9月」という発言を言質とし、その具体化を求める発言が相次ぎました。
改憲政党の前のめりな姿勢に対し、野党筆頭幹事の逢坂衆議院議員は「憲法改正の主体は主権者である国民だが、それがゆらいでいる」と、憲法を変えることそのものが自己目的化している問題を指摘していました。共産党の赤嶺幹事も「国民の側から改憲を求める声はない」と訴えていました。
大規模災害の発生時の国会議員の任期、選挙の実施をめぐり、東日本大震災当時の自治体議員選挙について言及がありました。国会議員の任期については憲法で定められていることから、東日本大震災の発生後の2011年11月に当時の野田首相から特例法による国政選挙の延期、国会議員の任期の延長はできないという答弁が示されています。ここが改憲派の憲法改正の必要論の根拠の一つとなっていると思われます。
これを聞き、私自身は1995年1月に発生した阪神淡路大震災を思い出しました。同年4月に予定されていた統一自治体選挙のうち、兵庫県議選、神戸市議選、芦屋市議選、芦屋市長選、西宮市議選は特例法が成立し、4月から6月へと延期されました。1999年の選挙の投票期日は4月へ戻されましたが、当該自治体の議員の任期は後年にあらためて特例法で調整した経緯があります。私が関わった兵庫県議選を思い出すと、被災地で有権者の投票の権利をどう保障するかが大きな課題だったように記憶しています。候補・選対では、倒壊・焼失した自宅から避難した支持者の消息がつかめませんでした。これを有権者の側から見れば、震災発生から6カ月が経っても雇用や住宅をめぐって生活が困難な状態のままに置かれ、もとの生活が取り戻せていなかったということです。
東日本大震災や能登半島沖地震などその後の大規模災害では、人員削減により各自治体の行政機能が劣化している状況が指摘されています。インフラの再建の遅れも大きな問題です。政治に求められるのは議員の任期や選挙の期日をめぐる議論ではなく、大規模災害の発生時に行政が地域の復旧・復興に向けて確実に機能し、被災者の暮らしがいちはやく安定し、再建される社会をつくることです。
また、大規模な地震をはじめ災害の発生そのものは避けることはできませんが、戦争は平和運動の強化によって避けることができます。有事を口実にした改憲に向けた動きを許さない運動が求められている、ということが立憲野党の幹事から「主権者たる国民」への提起だったように思います。
【国会議員から】近藤昭一さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会委員)
4月11日、衆議院憲法審査会で私は以下の趣旨の発言をしました。
1.地方自治法改正案が閣議決定され、3月1日、国会に提出されました。
この法案については、総務委員会でしっかり議論されるものと思いますが、私は、憲法92条に定めた地方自治権の保障の観点から、国会法102条の6に規定されている審査会の目的のうち「日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行うこと」に関連した問題と考え、発言します。
2.そもそも、日本国憲法に、大日本帝国憲法に定めのなかった地方自治の制度の規定を設けこれを保障した意義は、第一に、中央政府から独立した地方公共団体が地方の事務を処理することによって強大な中央政府の権限を抑制すること、第二に、地域の特性に応じて処理されるべき事務は、そこに居住し、生活する住民の意思に基づいて決定し、住民の権利を保障することと言われています。前者が地方自治の分権的側面を示す団体自治であり、後者が地方自治の民主主義的側面を示す住民自治です。
こうした意義をよりよく果たしていくために重要なことは、強大な中央政府と地方自治体が対等平等な関係に立つことです。
ところが、今回の地方自治法の改正案は、強大な中央政府の権限をより強大にし、中央政府と地方自治体との関係に「上下関係」を持ち込むことになるのではないかという危惧を抱かざるを得ません。
3.具体的に地方自治法改正案の条文を見ていきます。
改正の中心は、「第14章 国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における国と地方公共団体との関係等の特例」を新設することです。
252条の26の3から252条の6の10までですが、いずれも「大規模な災害、感染症のまん延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生するおそれがある場合」に適用されます。
災害や感染症に限らず「その他」にも適用されるので、適用される事由は無制限です。戦争や内乱なども含まれるでしょう。また、被害の程度が「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」というのは、一般抽象的で恣意的運用の可能性が大です。しかも、その「おそれ」がある場合、つまり現実の被害が生じていなくても適用され、運用の恣意性は無制限に膨らむのではないでしょうか。
こうした恣意的運用の危険が大きい「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」に生じる法律効果は、国が地方公共団体に対し、「必要な措置を講ずるよう指示ができる」(252条の26の4、5)というものです。この必要な措置の「指示」にも限定・制約がありません。
しかも、以上の第14章の規定は現行法の特則として新設されるので、新設される「指示」(ただし、法定受託事務に限られる、245の7)への地方公共団体の義務違反に基づいて代執行(245の8)のできる範囲も大きく広がるのではないでしょうか。
4.以上みてきたように、地方自治法改正案は、適用事由、要件、国に与える権限、いずれについても具体的客観的な制約がなく、地方自治体に対する国の指示権限を無制限に認めるもので、国と地方自治体の関係を大きく変容させ、憲法92条の地方自治権の保障を壊しかねない重大な問題を孕んでいます。また、立憲主義の見地からも到底容認できません。
玉城沖縄県知事は、代執行の濫発を招くのではないかとの懸念を示し、元鳥取県知事の片山善博氏は、時代を逆行させるものと断じ、日本弁護士連合会は、地方自治法改正案の原案となった答申に反対する立場から意見書を提出し、国の指示権を認める法改正案文の削除等を求める会長声明を発表しています。
憲法92条「地方自治の本旨」の原点に立ち返った真摯な調査と検討が必要です。
【国会議員から】逢坂誠二さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会幹事)
日本国憲法といえども、決してすり減ることのない不磨の大典ではないと考えております。したがいまして、一字一句変えてはならないというものではありません。社会の変化に応じて不断の見直しを行うことが求められていると考えております。
ただ、その見直しを行う主体、これは憲法で命令される側の国会ではなく、主権者である国民自身です。ここに立憲政治の核心があると考えています。
ところが、最近の憲法議論を見ていると、この立憲政治の核心が揺らいでいると感じております。
一月三十日、岸田総理は施政方針演説で次のように述べました。総裁任期中に改正を実現したいとの思いに変わりはなく、議論を前進させるべく最大限努力をしたいと考えています。今年は、条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速してまいります。
本来まないたの上のコイである公権力の側の総理自身が、期限を区切った上で条文案の具体化と議論を加速することに言及したことに、私は大変驚きました。
三月三日の衆議院予算委員会で、この総理発言に対する私の質問に、岸田総理は次のように答弁しました。昨年十二月、自民党総裁として、衆参の憲法審査会の幹事など関係者に対して、国会の発議に向けて、各党と共有できるようなたたき台、案について是非議論を進めてもらいたい、党総裁としてはそういった要請をした。国会において条文案の具体化を加速していくためにも、我々自民党として、そういった議論をリードするべく、まずは自らの考え方を整理し、その議論に臨んでいかなければならない。
私は、岸田総理のこうした姿勢や答弁に触れ、憲法を変えること自体が目的化していると危惧しております。これは極めて危ういことであり、こんなことをすれば憲法の価値を毀損させてしまいます。
立憲主義を深化させる観点から憲法議論を真面目にひたむきに行うことは、憲法の役割、その意義を常に確認する観点からも極めて大切なことです。しかし、とにかく憲法を変えたい、どこか変えやすいところから取りあえず変える、こうしたことが目的化する議論は不見識です。特に、数の力でその議論を押し切る姿勢は慎まねばなりません。
さて、自民党の裏金問題、そのお金の使い道も含め、全容は全く明らかになっておりません。法律を犯しているかもしれない議員を多く抱える自民党及びその総裁が、国会議員を縛るともいうべき憲法改正を声高に叫ぶ節度のなさに驚きを禁じ得ません。裏金問題の解決もできず、自浄作用のない自民党が憲法改正を論ずることに正当性があるのでしょうか。一刻も早く裏金問題にけりをつけていただくことを強く要請します。
私は、本来の当事者である国民自身の議論を喚起することこそが重要であり、そのための素材を提供するという謙虚な姿勢で憲法議論に臨みたいと思っています。
次に、立憲民主党の綱領の話をさせていただきます。
「私たちは、立憲主義を深化させる観点から未来志向の憲法議論を真摯に行います。」。これは立憲民主党の綱領の一文です。綱領の素案は私が書きましたが、この一文も私が書いたものです。
立憲主義とは、権力者、国会議員、公務員、裁判官などの権力濫用を抑えるために憲法を制定するという考え方です。立憲主義を深化させるとは、権力者の権力の濫用を抑制する方向で考えを深めることです。
次に、未来志向。この言葉は難しいのですが、幾つかの思いを込めています。未来志向といえば、過去を一切不問に付すかのように聞こえるかもしれませんが、もちろんそうではありません。日本国憲法の国民主権、基本的人権、平和主義、この三大原則を守ることは当然です。日本国憲法の平和主義は、さきの戦争への反省に基づいて基本原則として採用されたものです。三大原則を守るということは、過去への反省を前提にした未来志向であることは言うまでもありません。
また、日本国憲法の成り立ちについていろいろな御意見があることは十分承知しております。一方、今の日本国憲法は、施行後七十年以上が経過し、この憲法の下で日本の様々な営みが行われてきたのは厳然たる事実です。その事実を消し去ることはできません。したがって、成り立ち云々に言及してはならないとは考えておりませんが、殊更強調するのは意味を成さないとも言えます。
未来は、過去の積み重ねと今の延長線上にあり、時代や社会は動いています。過去を踏まえた上で、時代の変化などに合わせて憲法をよりよくするために、変えるべきところがあれば積極的に対応する、これが私の思う未来志向の憲法議論です。
私は、立法事実の存在と国民の納得があれば、いずれかの日には憲法改正をすべき時期を迎えると思っています。しかし、その際には、多くの国民が納得する結果となるように私たちは努める必要があると考えます。よもや、国民の対立をあおり、国民が分断されるようなことはしてはなりません。憲法に関する議論を落ち着いて進めたいと思います。
(憲法審査会での発言から)
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2024年04月05日
憲法審査会レポート No.33
4月4日、衆議院憲法審査会が開催され、幹事選任の手続きのみ行われました。来週の4月11日以降、この間のような定例的な開催になるのかが注目されます。
2024年4月4日(木) 第213回国会(常会)
第1回 衆議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55104
※「はじめから再生」をクリックしてください
【会議録】
※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)
【マスコミ報道から】
衆院憲法審 今国会で初めて開催
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240404/k10014412211000.html
“今の国会で初めてとなる衆議院憲法審査会が開かれ、幹事を選任する手続きが行われました。今後の日程について、自民党は来週、審査会を開いて自由討議を行うことを提案し、立憲民主党は持ち帰って検討すると伝えました。”
衆院憲法審が初開催 裏金問題のあおり受け開催遅れ
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1095328
“衆院の憲法審をめぐっては、これまで立憲民主党などが委員のなかに自民党の派閥の裏金事件に関係した議員がいることから開催に反発。”
“自民党側が3日、処分の対象となった3人の議員を委員から外したことで開催にこぎつけました。”
衆院憲法審が今国会初開催、自由討議の11日開催で調整
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA03EMR0T00C24A4000000/
“逢坂氏は自民党の対応を「一定程度整理された」と評価した。不記載額が500万円以下だった議員2人が委員に就いたままだと指摘し「国民が納得するのか。与党には問題を明らかにしてもらいたい」とも言及した。”
衆院憲法審、11日に今国会初の実質審議へ 裏金議員の幹事3人交代
https://www.asahi.com/articles/ASS442DBVS44UTFK006M.html
“立憲の逢坂誠二・野党筆頭幹事は4日、記者団に「委員の正当性に異議があると申し上げてきたが、一定程度整理された」と理解を示した。自民の提案する11日の実質審議入りについて「今のところ開催できないという理由はない」と述べた。”
今国会初の衆院憲法審、首相の目標実現は視界不良 維新は立民を牽制「わきまえて」
https://www.sankei.com/article/20240404-N3RZBXETIFLIHG6SMINIXHQQNE/
“…自民は4日、党本部で憲法改正実現本部などの合同会議を開き、改憲項目の絞り込みなどの戦略を練った。党重鎮は首相の目標を念頭に「時間はそれほど残されていない」と述べた。”
【参考】
衆院憲法審の動き/逢坂誠二 #7765
https://ohsaka.jp/15414.html
“今回は、裏金処分議員3名の交代が行われたことを受け、一歩前進と受け止めて、審査会に臨むこととなりました。
しかし、裏金の説明は皆無、総理発言への対応も不明、さらに憲法審には処分は受けていない裏金議員がまだ2名おります。こうしたことを、これからも丁寧に与党筆頭と協議したいと思います。”
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2024年03月22日
憲法審査会レポート No.32
衆院憲法審査会開催をめぐる動き
この間、衆議院憲法審査会を開催しようという動きが続いてきました。3月21日には会長の職権で幹事懇談会が立てられましたが、野党筆頭幹事(予定)の逢坂誠二委員(立憲民主党)が出席を拒否、流会となりました。
改憲派は「裏金事件と憲法審査会は切り離すべき」「政局と一線を画して粛々と開催すべき」などと言いますが、裏金疑惑のある議員がいまだ委員として居座っている現状で不問とすることはできませんし、政局と一線を画すと言うなら自民党がみずから問題議員を全員更迭すべきです。
民意は改憲発議前提の憲法審査会早期開催など求めていません。むしろ裏金疑惑、統一協会との癒着疑惑の徹底究明こそが喫緊の課題です。腐敗した国会議員が憲法を語り、あまつさえ弄りまわそうなどというのはもってのほかで、「法を犯しているかもしれない議員を(憲法審査会に)存置したままというのは論外だ」という主張は当然と言うべきです。
3月17日、自民党大会が開催され、「総裁任期中」「年内の実現」と表現にブレはありつつも、ともかく改憲発議を叫びたてる方針を継続しています。こうした自民党の路線に急き立てられ、職権での強行開催へと突き進む可能性もありますが、その場合与野党合意のもと、静かな環境で…というこれまでの慣例を踏みにじることになります。
自民党などによる数に恃んだ横暴を許さないためにも、今後も憲法審査会をめぐる動向に、ぜひ注視していただきますようお願いします。
【参考】
立民、衆院憲法審の開催拒否 「裏金議員」説明を優先
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024031200925&g=pol
“衆院憲法審査会の与野党筆頭幹事は12日、国会内で会談した。自民党の中谷元氏が14日の憲法審開催を提案したのに対し、立憲民主党の逢坂誠二氏は自民派閥の裏金事件への対応が先だとして応じなかった。”
改憲論議阻む「立民&共産」の壁 維新と国民民主は冷ややか 不記載事件理由に審議応じず
https://www.sankei.com/article/20240313-7YSFRRJL5JJ47BVTEWIXVHKG4A/
“…国民民主の古川元久国対委員長は13日の会見で、事件の追及は重要だと指摘しつつ、「憲法審の議論はやるべきだ」と強調した。また、維新の馬場伸幸代表も産経新聞の取材に「立民には付き合わない」と断言し、憲法審の早期開催を訴えた。”
憲法審査会の状況/逢坂誠二 #7743
https://ohsaka.jp/15378.html
“裏金はいくらだったか、裏金を何に使ったか、領収書はあるのか等の説明を通して、自分の正当性を主張する必要があります。
私は、憲法審の筆頭幹事として、この説明や正当性を主張する場として、政倫審への出席をお願いしています。特段、政倫審への出席にこだわるわけではありませんが、裏金の内容説明や自己の正当性の主張は極めて大事なことです。これがやれないなら5名の裏金議員が、憲法審において最高法規である憲法の議論を行うのは難しいと考えています。”
衆院憲法審、日程協議先送り 立共、「裏金事件優先」主張
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024032101039&g=pol
“衆院憲法審査会は21日、森英介会長(自民)が職権で決めていた幹事懇談会の開催を見送った。与党は今国会初の審査会実施に向けて日程協議をしたい考えだったが、自民党派閥の裏金事件への対応が先決だとする立場を崩さない立憲民主党と共産党が欠席した。”
憲法審開催のめど立たず 裏金問題で野党が態度硬化「実態解明が先」
https://www.asahi.com/articles/ASS3P67CCS3PUTFK00H.html
“自民の中谷元・与党筆頭幹事は記者団に、政治とカネの問題は議論の場が別にあるなどとして、憲法審とは「切り離すべきものだ」と主張。だが、野党筆頭幹事に就任する見通しの立憲の逢坂誠二代表代行は「法を犯しているかもしれない議員を存置したままというのは論外だ」と反論。協議入りに応じなかった。“
恐ろしい?日本/逢坂誠二 #7751
https://ohsaka.jp/15400.html
“憲法審について、私が単に出席を拒否しているかのようは報道があります。
19日午後まで与野党筆頭間で憲法審の開催に向けて協議しておりました。
その時点での私の主張は次です。
*5名の裏金の内容説明
*裏金議員処分後の憲法審の対応方針
*岸田総理の憲法議論加速発言への対応方針
この3点を与党筆頭から伺った上で、来週28日の憲法審開催に向けて準備を検討しても良いと、私から話をしました。ところが19日夕刻、21日の憲法審幹事懇談会が、筆頭間の合意なく職権でセットされたのです。しかも懇談会で何を行うのかも知らされず。筆頭間協議の一方的な打ち切りとなったため、幹事懇談会に出席できるはずもないのです。これが経過です。
私から28日の憲法審の開催準備検討にも言及していますが、それすらも反故にしたのですから理解に苦しみます。”
総裁任期中の憲法改正へ議論加速と首相
https://nordot.app/1141929598847664926
“「党総裁任期中に実現するとの思いの下、条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速する」”
自民党大会で首相が改憲に意欲 懸念は参院の「高い壁」 公明の対応が焦点
https://www.sankei.com/article/20240317-APE7NUTFZJIIZDZCWKBVE6XVDU/
“自民党は17日の党大会で採択した令和6年運動方針で、憲法改正に関し「年内の実現」を目指す考えを打ち出した。“
※改憲の時期的目標に関する共同記事(「党総裁任期中」)と産経記事(「年内の実現」)の齟齬は、大会における総裁演説の内容と、運動方針のなかの記述との不統一が原因です。
第91回党大会 岸田文雄総裁 演説(全文)
https://www.jimin.jp/news/information/207820.html
“そして、党是である憲法改正について、総裁任期中に実現するとの思いの下、今年は、条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速してまいります。“
令和6年党運動方針
https://storage.jimin.jp/pdf/news/information/207758_2.pdf
“来年は、自由民主党結党から70年の節目の年である。本年中にわが党の党是である憲法改正実現のため、国民投票を通じ、主権者である国民の判断を仰ぐことを目指す。“
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