憲法審査会レポート、2025年

2025年04月18日

憲法審査会レポート No.52

今週は参院憲法審査会が開催されました。いっぽう衆院憲法審査会は開催されず、17日の幹事懇談会の後に国民投票広報協議会規程についての意見交換会が行われています。

【参考】

【憲法審査会】国民投票広報協議会規程について。
https://yamahanaikuo.com/20250417k/
“(審査会の形で開催しなかったのはなぜ?)技術的・細目的な問題であること、そもそも何が論点となるかについて認識が共有されていないことなどから、審査会本体で扱っても議論が拡散すると考えられたからです。また、正式な会とすると、会派ごとに発言時間なども均等にしますから、柔軟な運営ができないことも理由です。どこかのタイミングで、議論の要旨については審査会に翻刻される予定です。”

2025年4月16日(水)第217回国会(常会)
第2回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=8458

【マスコミ報道から】

参院憲法審、緊急集会を議論 自・立、主張に違い
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025041600798&g=pol
“参院憲法審査会は16日、緊急事態における参院の「緊急集会」について議論した。自民党は緊急集会の機能を明確にするため、憲法改正による緊急事態条項の創設を主張。立憲民主党は、機能強化に必要な法整備を議論するよう唱えた。”

自民、緊急事態へ改憲主張 立民は法整備訴え、参院憲法審
https://www.47news.jp/12457337.html
“参院憲法審査会は16日、衆院解散後の緊急時に参院が国会権能を暫定的に代行する「参院の緊急集会」を巡り討議した。自民党は緊急集会の機能の明確化や、憲法改正による緊急事態条項の創設を主張した。立憲民主党は機能強化に向けた法整備を論議すべきだと訴えた。”

参院憲法審、緊急集会を討議 自民に衆参「統一見解」求める意見も
https://digital.asahi.com/articles/AST4J3C3PT4JUTFK00RM.html
“今月2日の憲法審に続き、自民党の佐藤正久・与党筆頭幹事は「(緊急集会の)権能は原則として国会の全てに及ぶ」と指摘。憲法が衆院に先議権を与える予算案も「対応可能」とした。立憲民主党の小沢雅仁氏も「衆院の優越事項を緊急集会の権能制限の根拠とするのは本末転倒だ」と同調した。”

参院憲法審、与党もさらなる議論を要求 緊急事態下の国会機能維持を巡る改憲も波高し
https://www.sankei.com/article/20250416-45SHEGQJEZMTJFI5AT7WL2NMEM/
“衆院憲法審で緊急事態下の国会機能を強化するための改憲論議が煮詰まる中、参院側の意見集約は困難が予想され、早期の憲法改正は見通せない状況だ。”
“衆院では最も実現に近いと評されてきた改憲項目だが、与党もさらなる議論を要求している「参院の壁」は高そうだ。”

【国会議員から】熊谷裕人さん(立憲民主党・参議院議員/憲法審査会幹事)

会派を代表して、緊急集会について意見を述べます。

わが会派は、2023年6月7日の会派代表意見において、ナショナルエマージェンシーという大震災等の深刻な国家緊急事態をも想定した憲法制定時の立法事実、戦前の権力暴走の反省に基づく制度趣旨、一刻も早い総選挙の実施を必然とする平時への強力な復元力の仕組みなどを踏まえ、緊急集会は国民主権、国会中心主義、基本的人権の尊重、平和主義という憲法の基本原理に基づき、かつ、これらの諸原理を守り抜くための制度であり、良識の府である参議院が世界に誇るべき制度と評価してまいりました。

そして、平成26年6月11日の本審査会附帯決議にも明記されている法令解釈のルールに基づく論究によって、衆議院議員の任期満了時については、54条2項の類推適用により緊急集会は開催可能と解すべきこと、緊急集会で参議院議員が発議できる議案は総理大臣の示した案件に関連のあるものに限る現行の国会法の制約は妥当なものであること、また、緊急集会の権能については、国に緊急の必要があるときに国会の機能を一時的に代行するものとして、法律、予算など広く国会権限に属するものに及ぶ一方、衆議院の単独議決や緊急の必要性の観点から、憲法改正の発議、内閣不信任決議は認められず、総理大臣の指名は臨時代理制度が適用できないほどの人的被害が生じた場合には、法律上は認め得るものとの見解を示してまいりました。

特に、発議議案については、内閣による新案件の追加のほか、参議院が内閣に新案件の追加を促し、必要に応じて内閣に代替措置の検討も含めた説明責任を果たさせる国会法の改正による緊急集会の権能強化策の提言もいたしました。

他方、任期延長改憲の論拠である緊急集会、平時の制度、70日間限定、単純な二院制の例外説等に対しては、緊急集会の立法事実や根本趣旨、憲法54条1項の解散時の内閣居座り排除の趣旨、二院制の補完制度としての制度趣旨などを繰り返し示し、それこそが憲法が起草されたときの立法意思であると考えているところであります。

こうしたわが会派の見解は、4月2日の自民党・佐藤筆頭幹事が述べた自民党会派の見解とも基本的に整合するものと認識しています。また、任期延長改憲の根拠である選挙困難事態について、その70日超という長期性の定義要件が70日限定説を根拠とすることに異を唱えていることについても認識を同じくしていることには深い敬意を表します。

また、わが会派は昨年の常会で、東日本大震災の際の立法例などを踏まえた緊急集会を動かすための課題検証を通じて、緊急集会は制度面、運用面の双方において基本的な仕組みは整備されており、現状でも国民のために機能することが可能であるとの見解を示す一方で、いわゆる議員版BCPの策定、災害対策基本法などにおける衆議院の任期満了の際の緊急集会の対処の明確化の法改正などを提起してまいりました。

ここで、昨年6月の参議院改革協議会の下の選挙制度専門委員会の報告書の本文において、二院制における参議院の機能、役割として、災害対応について、緊急集会の機能の充実強化が明記されており、まさに緊急集会の活用は参議院のあり方論の中核論点と言うべき位置づけになっております。この意味において、緊急集会70日限定説などに依拠する任期延長改憲の議論は、わが参議院の自律への不当な干渉であると言わざるを得ません。

本審査会において、緊急集会において法の支配、立憲主義に基づく議論を徹底すること、並びに、今後改革協議会の議論に憲法論から貢献するためにも、緊急集会の機能強化とその必要な法整備、さらには選挙制度との連携も含めた運用改善等の議論を精力的に行っていくことを提言して、私の意見とさせていただきます。

(憲法審査会での発言から)

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