憲法審査会レポート、2024年

2024年05月31日

憲法審査会レポート No.40

今国会の会期末まであと1か月を切ったいま、改憲派の主張内容はいよいよ加熱傾向にあります。

しかし、これまで見てきたとおり、現在中心的な論点となっている「参議院の緊急集会」や「任期延長」をめぐっては、自公においても衆参の温度差は明白です。

なにより、喫緊の課題である政治資金規正法改正については「いたずらに議論を引き延ば」している自民党、そして岸田首相こそ「責任放棄と言われてもやむを得な」いでしょう。

ともあれ、国会延長などの可能性も踏まえつつ、憲法審査会をめぐる動向について、引き続き注視していくことが必要です。

【参考】

【速報】「国会会期内に改憲要綱案提出を」公明・北側副代表が憲法改正めぐり訴え
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1194324
“公明党の北側副代表は、超党派の国会議員で構成される「新しい憲法を制定する推進大会」でこのように話し、「いつでも改正条項案をつくれる状況に、いまの憲法審査会はなっている」と強調しました。”

首相、憲法改正巡り野党けん制「議論引き延ばしは責任放棄」
https://mainichi.jp/articles/20240530/k00/00m/010/204000c
“岸田文雄首相は30日、国会での憲法改正議論を巡り、「国民に選択肢を示すことは政治の責任であり、いたずらに議論を引き延ばし、選択肢の提示すら行わないことになれば責任放棄と言われてもやむを得ない」と述べた。”

2024年5月29日(水) 第213回国会(常会)
第4回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=7998

【会議録】

※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)

【マスコミ報道から】

緊急集会、審議に制限設けず 参院憲法審で自由討議―自民
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024052900894&g=pol
“参院憲法審査会は29日、憲法が定める参院の「緊急集会」について自由討議を行った。自民党は首都直下地震を念頭に、緊急集会は緊急性がある限り審議対象に制限を設けないと主張。立憲民主党は、緊急事態時の議員任期延長に反対した。”

自公、改憲への「壁」 衆参で足並みそろわず、迫る総裁任期のリミット
https://www.sankei.com/article/20240529-66NSEDFC2BND7J734V6U5OPDPM/
“実際、自公には衆参間で溝がある。16日の衆院憲法審では維新の岩谷良平氏が参院の西田氏の見解に触れた上で、「衆参で発言が矛盾しているのではないか」と公明をただす場面があった。また、衆院自民は改憲原案を協議する起草委員会の設置を訴えているのに対し、参院自民は慎重姿勢を崩していない。”

【参考】

(小西ひろゆき・参議院議員による上記時事通信記事についての解説)
https://twitter.com/konishihiroyuki/status/1795753441438130634
“記事が解説になってないので補足すると、今日の参院憲法審では自民、公明は衆院憲法審の任期延長改憲を否定する見解を述べています。”
“すなわち、緊急集会は緊急性の要件を満たす限り(これは法理上当然のこと)扱える議案について制限はないとしており、これは衆院の緊急集会の曲解の否定なのです。”

【傍聴者の感想】

定刻より30分遅れで開催された29日の参議院憲法審査会は、参議院法制局、内閣府防災担当からそれぞれ「災害時の立法」について説明がされた後、委員の発言という流れで、1時間半行われました。

緊急時・災害時の例として、東日本大震災時の立法措置や立法までのスピード感などの話から始まったことで、「だから議員の任期延長が必要なんだ」という結論ありきのものに終始するだろうと身構えました。

しかし、14人の委員の発言を聞き進めていくうちと、「参議院の緊急集会で何か不足があるのだろうか」という感想しか持てなくなりました。

東日本大震災直後やコロナ禍という「非常時」ですら、緊急集会が開催されなかったことを考えれば、「議員任期延長」よりも先に検討すべきことがたくさんあるはずです。

また、初めて参議院憲法審査会を傍聴したときにも、今回もですが、猪瀬委員(維新)の発言はいったいなんなのだろうかと思ってしまいます。

「衆議院の憲法審査会は午前中から議論しているのに、参議院は午後から、しかも毎週ではない、これでは衆議院に周回遅れどころか、三周遅れになっている」「改憲条文案が出ているんだから、それを早く議論しないとまとまるものもまとまらない」という趣旨の発言。
朝から議論する方がやる気があって、午後からの開始だとやる気がないということになるのか。たくさんやったら、まとまるのか。

憲法審査会が何のための会議体なのかを理解しているのかもあやしいこれらの発言は、「居酒屋談義」の水準にも達せず、そもそも国権の最高機関である国会での議論にふさわしいとは言えないのではないでしょうか。

【国会議員から】古賀千景さん(立憲民主党・参議院議員/憲法審査会委員)

私からは、東日本大震災の国会対応を踏まえ、緊急集会の権能について意見をいたします。

議員任期の延長改憲を唱える会派の中には、「衆議院の優越が憲法上認められる予算や条約を議案にすることは参議院の緊急集会の権能を超える」といった主張があります。特に、条約の承認については、昨年6月15日の衆院憲法審の論点整理において改憲5会派すべてが緊急集会の権限外としています。

こうした主張は、緊急集会の立法事実などを踏まえない暴論と言わなければなりません。緊急集会が予算や条約を議案にできることは、憲法制定時における、「災害などの突発によって緊急な立法ないしは財政措置を講ずる必要が生じた場合どうするか」、「解散中に総理大臣が死亡した場合、天災の発生した場合、あるいはまた、急に条約締結を要する場合」などのGHQと日本政府の会議録から明らかであり、また、憲法学会においても当然の通説です。

ここで、理解し難いことは、改憲の会派は、いわゆる30日ルールの衆院の優越がある予算と条約は緊急集会の権能外としながら、いわゆる60日ルールがある法律については緊急集会の権能内としている点です。緊急集会は衆院不在の際の国会代行機関であり、その権能の範囲と衆院の優越は本来関係がないものですが、改憲派の主張は一貫性を欠くという意味でも暴論との指摘を免れないと言わざるを得ません。

なお、予算のうち大震災で講じられた補正予算だけでなく本予算についても緊急集会の権能に含まれますが、昨年4月の本審査会では参議院法制局長から「緊急集会の対象となるのは緊急の必要性があるものに限られること、特別会の召集されるまでの間の暫定措置であることなどを考慮すると、通常は暫定予算などの必要な予算が緊急集会に提出されることになると思われる」と答弁されているところです。同様に、条約については、憲法七十三条三号が「時宜によっては事後に国会の承認を得ること」と定めていることなどから、一般的に「緊急の必要」が認め難いであろうというのが学会通説であると理解しています。

以上、改憲派は、「予算や条約を議案として扱えるスーパー緊急集会にするには憲法改正が必要」という、日本の中で永田町だけで目にすることが出来る独自の主張を唱えるなどしていますが、国会議員には憲法尊重擁護義務があり、憲法改正の議論をするにしても既存の憲法規範を立法事実や制定趣旨を無視して好き勝手に曲解することは許されません。また、そのような憲法改正は必然的に主権者国民を虚偽の憲法解釈で騙して行う改憲にならざるを得ません。

憲法前文には、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」と定められています。憲法を排除する、すなわち、国会議員が国民の厳粛な信託を裏切るような法の支配と立憲主義に反する憲法違反の解釈を主張し、改憲を行うことは許されません。

今、ご紹介した憲法の前文は子ども達が小学生から学んでいます。この間、衆議院憲法審では、議員任期の延長改憲のための条文の起草委員会の設置、要綱案の作成が主張されていますが、子どもに説明が出来ないことを大人が行うことは絶対に許されません。

子どもから見て恥ずかしくない憲法の議論を実施すること、そのためには、任期延長改憲の過ちを私たち良識の府の存在に懸けて正さなければならないことを訴えて私の意見といたします。

(憲法審査会での発言から)

【国会議員から】福島みずほさん(社会民主党・参議院議員/憲法審査会委員)

衆議院の憲法審査会において、起草委員会の設置や要綱案作りが提案されていることに大変な危機感を持っています。衆議院だけで暴走していくことは極めて問題です。

また、緊急事態条項、国会議員の任期期間の延長の問題点が十分理解されているとは思えません。さらに、これは参議院の否定です。参議院の緊急集会を日本国憲法が規定した意味の理解が、とりわけ衆議院で極めて不十分だと考えます。

第一に、衆議院で国会議員の任期期間の延長について、自民党などは再延長できる期間に制限を設けていません。緊急というのであれば、それは一時的、限定的、緊急のものでなければなりません。それが、半年、一年、何年も長期にわたるのであれば、それはもはや緊急ではなく、長期独裁政治そのものです。緊急事態と言い続けて半永久的に政権に居座る危険性があります。軍事独裁下の台湾では、第一期の立法院議員の任期が1948年から1991年までの43年以上も続きました。

衆議院の憲法審査会で、改憲に賛成する日本維新の会の議員が述べています。最短で三年間選挙困難事態が続いた場合には、参議院議員全員がいなくなりますので、やはり参議院においても任期延長は必要となるものと考えます。三年以上選挙をさせない、つまり、六年間の参議院の任期を九年以上延期するというものです。一回の選挙で九年近く居座ることを許容することは、民主主義を全く機能させなくするものです。数年にわたって任期延長をする緊急事態条項を機能させようとすること自体、憲法原理から許されません。

第二に、自民党日本国憲法改正草案は、緊急事態の宣言が発せられた場合においては、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができるとしています。まさに衆議院と参議院の任期延長です。緊急事態条項の中に任期延長が入っています。

自民党日本国憲法改正草案は、緊急事態の宣言が発せられたときは、内閣が法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができるとしています。ナチス・ドイツが内閣限りで基本的人権を制限できるとした国家授権法と同じ構図です。唯一の立法機関である国会を踏みにじるものです。国会は反対をしなければなりません。また、国会の予算承認権も踏みにじるものです。さらに、地方自治体の長に対して指示ができるとしていることは、憲法が規定する地方自治の本旨を明確に侵害するものです。

第三に、緊急事態条項、戒厳令は、独裁と戦争に密接に結び付いています。戦時体制をしくのに人々の基本的人権を制限していくのです。

第四に、なぜ日本国憲法は緊急事態条項を設けなかったのか。それは戦前へのすさまじい反省からです。
明治憲法は四つの緊急事態大権を規定していました。治安維持法改正を議会閉会直後に緊急勅令として行いました。戦時における財政出動や公債発行が議会を通さずに専ら緊急勅令で行われました。

1937年の日中戦争の前十年間においては、勅令数は200から400台で推移していましたが、37年には747、対英米開戦の四一年には1253まで跳ね上がります。

関東大震災の場合も、戒厳令は震災に伴う治安の危機に対処する口実で発動され、戒厳令下で軍隊、警察、自警団等によって大量の朝鮮人、中国人の虐殺、さらには社会主義者、無政府主義者の虐殺が行われました。
1946年7月15日、金森大臣は衆議院帝国憲法改正案委員会で、明治憲法の非常大権について、民主政治を徹底させて国民の権利を十分擁護しますためには、さような場合の政府一存において行いまする処置は、極力これを防止しなければならぬのでありますと述べ、臨時会と参議院の緊急集会に言及しています。

国会無視と選挙の停止を私たちは許してはなりません。

ところで、私たち野党は、2021年のデルタ株の感染爆発のときを始め、何度も臨時会の開催を求めてきました。このことに応じなかった与党などが、今度は国会がないと大変だとして長期居座りを主張することは笑止千万です。

国会議員の長期居座り、選挙の停止を図る衆議院の起草委員会の設置と大綱作りは参議院の否定であり、憲法破壊で許されません。民主主義と国会の死です。国会が選択すべきではありません。

緊急集会に対する暴論に基づく任期延長改憲のための衆院憲法審の起草委員会の設置、要綱案の作成は参議院の否定ではないかについて、本審査会及び幹事会で徹底議論することを強く求めます。

(憲法審査会での発言から)

2024年5月30日(木) 第213回国会(常会)
第8回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55278
※「はじめから再生」をクリックしてください

【会議録】

※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)

【マスコミ報道から】

緊急事態めぐる憲法改正 自民“条文案 賛成の党だけで議論も”
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240530/k10014465891000.html
“衆議院憲法審査会で、自民党は、大規模災害など緊急事態の対応をめぐる憲法改正の条文案の作成に賛成する立場の党だけで議論を進めることも排除しない考えを示しました。これに対し、立憲民主党は改正の手続きを定めた国民投票法の見直しを優先すべきだと主張しました。”

「立民抜きで起草作業に着手」と自民が言及 憲法改正条文化で賛同得られない場合
https://www.sankei.com/article/20240530-THBF7IFK5ZJPHL77HBH2F72WOQ/
“…与党筆頭幹事を務める中谷元氏(自民党)は改憲案の条文化をめぐり、立憲民主党や共産党の賛同を得られない場合、自民や公明党、日本維新の会、国民民主党など5会派で今国会中に起草作業に着手する考えを示した。”

改憲国民投票、運動規制巡り対立 自民慎重、立民は法改正求める
https://nordot.app/1168764689734336588
“自民の中谷元氏は審査会終了後、憲法改正条文案の起草作業を始めるため、6月4日に幹事懇談会を開きたいと立民に提案した。”

【傍聴者の感想】

この文章を書いている時点で、自民党の裏金事件を受けた政治資金規正法改正の見通しが立っていません。自民党案に野党の歩み寄りが見られないことを利用して、大幅な今国会の会期延長さえ囁かれています。岸田首相は9月までの自身の自民党総裁任期中の改憲を成し遂げると、再三にわたって口にしています。会期延長の間に衆院憲法審査会の議論を進めて、改憲発議にまで持っていければ、支持率低迷に喘ぐ岸田政権も息を吹き返すという見方もあるようです。しかし、こうした見方はあまりにも改憲派の希望的観測が過ぎると感じます。

共同通信が5月1日にまとめた「憲法改正世論調査」によると、憲法改正の国会議論についての問いに、「急ぐ必要はない」が65%、改憲の進め方の問いには、「幅広い合意形成を優先」が72%と、多くの市民は早急な改憲を望んではいませんし、議論を進めるにしても幅広い合意形成を優先すべきとしています。

30日の衆院憲法審査会で自民党は、6月4日の衆院憲法審査会の幹事懇談会を、憲法改正の条文案の起草作業を行う場とすることを提案しました。立憲民主党が応じなければ、与党や日本維新の会など改憲推進5会派だけで条文案作成に着手することにも言及。国民民主党の玉木代表は、「審査会の残り回数を考えると間に合わない。絶望的だ」と、改憲に向けた戦略とスケジュールを明らかにするよう発言しました。一方、参院の憲法審査会では、参院の緊急集会のあり方などの議論の充実を求める意見が与党を含めて多く出され、衆院と参院の憲法審査会の議論の内容と温度差も鮮明になっています。

この日の衆院憲法審査会では、国民投票広報協議会とその他の国民投票法の諸問題も議論され、立憲民主党の奥野議員からは、「運動資金の多寡が投票結果に影響されるのではないか」という懸念が示されました。

戦後、絶望の淵に立たされた日本人に、生きる勇気と明日に向けた希望を与え続けてきた日本国憲法が、衆院憲法審査会で「改憲ありき」の性急かつ粗雑な議論の俎上に載せられていることに胸が痛みます。紹介した世論調査でも多くの市民が性急な改憲議論を望んでいないことが明らかになっています。改憲の議論そのものを否定しませんが、冷静かつ精緻な議論を期待します。

【国会議員から】階猛さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会幹事)

先ほど河西委員が述べられたAIに対する問題意識、私も共有させていただきたいと思います。

折しも、二十一日にEUでは、AIの開発や利用に関する規制を定めたAI法が成立しました。AI法は、人間の尊厳や民主主義、法の支配を守りながら、信頼できるAIの普及を目的にしています。そのために、巨大プラットフォーマーに法的義務を課すことにしています。

こうした規制の流れを、これまでの、憲法によって国家権力を縛るという立憲主義のアナロジーで、デジタル立憲主義と呼ぶようになってきました。AIを始めデジタル技術については極力規制しないというデジタル自由主義や、デジタル技術を国家の監視、管理の下に置くデジタル権威主義、こちらはいずれも両極端であり、問題があります。

立憲民主党は、党名の示すとおり、デジタル立憲主義の立場に立って、バランスの取れた国民投票法改正案と、自己情報コントロール権、情報アクセス権、情報環境権、これらを保障するための憲法上ないし立法上の措置を提案していることをまずもって申し上げます。

その上で、私からは、国民投票法にネットないしデジタル関連の規定を設ける必要性と、当該規制に関連して国民投票広報協議会が果たすべき役割について述べさせていただきます。

先ほど奥野委員も述べたとおり、我が党は、国民投票法につき、附則四条一号の投票環境整備に関する改正だけでは不十分と考えています。附則四条二号の国民投票の公平及び公正の確保のため、放送CM規制や国民投票運動の資金規制はもとより、有料ネットCMの規制やフェイク情報対策などを盛り込んだ改正を行うべきと主張しています。

前者については、政党等に対して有料ネットCMを禁止する代わりに、国民投票広報協議会がネットでも広報活動を行い、賛否それぞれの政党等の意見を公平に伝えるようにし、一般国民が容易にアクセスできるようURLを表示する工夫も行うこととしています。

国民投票広報協議会によるネットを使った広報については、私が知る限り、大半の委員が賛同していると思っております。現在の国民投票法に明文の規定がありませんが、放送や新聞による広報においては、本日の資料3の参照条文の三ページにあるとおり、詳細な定めが置かれております。このことからすると、国民投票法を改正してネット広報の定めを置くべきであります。

この点について、先ほど橘局長からは、そもそもこの規定を法律改正によらなくても行い得るという立場があるという御紹介がありましたけれども、今申し上げました条文のたてつけからして、私は法改正が必要だというふうに考えております。この点については、政党等の有料ネットCMの禁止規定とセットで具体的な条文案を検討すべきであると私たちは考えております。

後者のフェイク情報対策については、国家権力が自らに不都合な情報の流通を阻害するデジタル検閲を行っているのではないかという疑念を国民が抱かないようにすることも考えなくてはなりません。その観点から、国民投票広報協議会が自らネット情報のファクトチェックを行うのではなく、民間のファクトチェック団体やSNS事業者からの問合せに対して必要な情報提供を行うことでフェイク情報の拡散を防ぐ、そういう間接的な手法が望ましいと考えています。この点については、まずは規制の方向性について各会派と早急に議論を詰めた上で、条文案の検討に移るべきと考えています。

なお、こうした法的な規制とは別に、ネット広告事業者等の広告掲載基準に関するガイドラインや国民にネットの適正利用を促すガイドラインの策定を国民投票広報協議会が行うことも立憲民主党は提案しています。すなわち、ネットないしデジタル関連の規制において国民投票広報協議会の果たす役割は極めて大きなものがあります。

他方で、橘局長の説明にあったとおり、国民投票広報協議会は衆参両院にまたがる組織です。前例のない国民投票広報協議会の権限を定める憲法改正案広報実施規程案なるものの検討に当たっては、衆参合同の組織で行う必要があるということも申し上げます。

(憲法審査会での発言から)

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