憲法審査会レポート、2024年

2024年05月10日

憲法審査会レポート No.37

2024年5月8日(水) 第213回国会(常会)
第2回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=7925

【会議録】

※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)

【マスコミ報道から】

参院憲法審査会 今国会で初の実質的審議 各党が意見述べる
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240508/k10014443121000.html
“参議院憲法審査会で今の国会で初めてとなる実質的な審議が行われ、自民党が、憲法で規定されている参議院の緊急集会について議論を深めるよう求めたのに対し、立憲民主党は、政治とカネの問題で国民の信頼を失った自民党に議論する資格はないと主張しました。”

参院憲法審、初の討議 緊急集会めぐり論戦 改憲前提の衆院とは距離
https://www.asahi.com/articles/ASS583FCXS58UTFK003M.html
“大規模災害などの緊急事態時に、憲法が定める参院の緊急集会で対応が十分かという点を軸に議論を交わした。ただ、衆院憲法審のように、緊急時対応のための憲法改正を前提にした議論とは、距離をとる形となった。”

公明「緊急時でも参院議員の任期延長は不要」 参院憲法審 衆院での主張とチグハグ 不要な理由とは
https://www.tokyo-np.co.jp/article/325918
“西田氏は、選挙の実施が困難な緊急事態時の任期延長に関する議論の充実を求めた上で、「(天災などで期日を延期する)繰り延べ投票ではなぜだめなのか判然としない」と任期延長を疑問視。「民主的な正当性を確保するのには選挙が肝要だ」と指摘した。”
“4月の衆院憲法審では、公明の北側一雄副代表が「改憲案のたたき台を作成して議論を深めていくべきだ」と発言するなど、任期延長を繰り返し訴えていた。”

緊急時の国会議員の任期延長 公明、参院憲法審査会では「不要」
https://mainichi.jp/articles/20240508/k00/00m/010/177000c
“衆院憲法審では、公明も含む改憲勢力の5党派が任期延長の改憲の必要性で一致し、早期の条文案作成を主張する。公明憲法調査会副会長の大口善徳衆院議員は3日の改憲派集会で「議論は出尽くした。賛同する会派とともに改正案のたたき台を出す」と発言しており、衆参の温度差が裏付けられた形だ。”

【傍聴者の感想】

今国会の参議院憲法審査会では初めての実質的な審議となりました。各会派からの見解、その後、各委員からの意見と続きました。自民党は大規模自然災害発生などによる衆議院の不在時における、参議院の緊急集会について議論を深め具体化すべきという主張を強めており、とくに能登半島地震を例に挙げてその必要性を強調する意見が目立ちました。

この間、真剣に被災地支援にとりくみもせずに、自分たちの主張に震災を利用することに腹立たしさを感じます。被災地では、支援する姿勢や目的もなく、実績のために視察に来て手間だけかかるという不満の声もよく聞きます。

改憲の議論も同様、それで何がよくなるのか、何のためにやるのか、ではなく改憲自体が目的、実績と考えている議論に聞こえます。

震災、またLGBTQなど命や人権を侵される日々を送る人たちがたくさんいる社会にあって、将来の自分の実績ばかり考える議員たちには、改憲を語るより前に、すべての人の人命、人権を守るための議論をしていただきたいと思います。

【国会議員から】高良鉄美さん(沖縄の風・参議院議員/憲法審査会委員)

沖縄が復帰して来週で五二年になります。憲法が適用されてからということです。その憲法は、まだ沖縄に適用されていると思えません。それをまず先に言いたいと思います。

政府は、所信や外交等において法の支配の語を多用していますが、今日は、法の支配や憲法原理の観点から、現状の憲法審査会の問題点について述べたいと思います。

まず、大本の法の支配からの問題点を言いたいと思います。憲法審査会が法の支配の語を誤った理解で使用し続けているということです。法の支配は、専断的な国家権力の支配、つまり、人の支配を排し、全ての統治権力を憲法で拘束することによって国民の権利を保障することを目的とする立憲主義に基づく原理です。民主主義とも非常に関連をしています。

法の支配の内容というのは、憲法の最高法規性の概念、権力によって侵されない個人の人権、法の内容、手続の公正を要求する適正手続、権力の恣意的行使をコントロールする裁判所の役割に対する尊重と、こういったものが挙げられますけれども、現状の憲法審査会の機能や位置付けが法の支配から問題となる点が多くあります。

まず、最高法規である憲法から見た現状の憲法審査会です。憲法の改正を目的に、常に言わば常任の調査、審査をする機関として位置付けられているということが憲法上可能なんですか?ということです。

憲法制定権力は国民にあり、国民から、人権保障のために必要な改正があれば、発議の信託を受けたものであって、憲法改正権力自体が元来国会にあるわけではありません。しかも、負託されたのはその一部にすぎず、国民の最終判断が憲法改正権発動の効果発生となることとなります。したがって、憲法審査会が憲法より上位にあるかのように、網羅的に憲法条文の改憲を模索することに従事しているということは憲法構造上いびつと言っていいと思います。

憲法九六条の、国会が発議をしてから国民投票にかけると書いてあるのは憲法保障の一環なんです。そのときの国会の役割は、発議前の改憲案が国家権力の横暴や濫用を、あるいは人権侵害に及ぶのではないかということを、法の支配に基づく行動様式と良識でそれをきちんと議論するということの位置付けなんです。

だからこそ、違憲の疑いのある発議を抑えるという信頼を国会に置いているのが憲法保障なんです。現在、こういった位置付けで、位置付けと認識でこの審査会が動いていますか。

憲法九九条では、総理を含む国務大臣、国会議員などに憲法尊重擁護義務があることを定めています。仮に憲法に違反する行為等を権力者が行ったり政府が憲法上の疑義のある改憲に走ったりした場合、権力分立、チェック・アンド・バランスの一翼を担う、これは国民の代表ですから、国の唯一の立法機関である国会が政府の行為が憲法に違反しないかを議論するところであり、そういう見識を持っていると憲法上みなされているのが国会なんです。

どうも現在の憲法審査会の動きはそうなってないのではないかと、主権者国民がしっかり見ていると思います。行政監視というのは国民の代表としての国会の役割だということで、行政と一緒にやることではないということですね。

法の支配の内容の一つにまた適正手続ということがあります。この国民主権に基づく主権者の改憲要望、あるいは国民から沸き上がった改憲なのかというのが問題になります。

審査会の在り方自体も問題です。現状の審査会は、国家権力による憲法改正事項の発掘をしているような様相に見えます。お試し改憲などとも言われて、憲法という最も重たい条文のどこをどう変えるのか幾つも案を出し、明確でない中身です。

通常の改憲の必要性が国民から沸き上がり、それに応えてのための合議体、ほかの合議体を設置し、議論するのが本来の筋かもしれません。国会ではなくて、別の合議体というのが海外ではあります。改憲したいという政治的信念の押売では、法の支配に反するだけでなく、典型的な立憲主義にも反するやり方であると思います。

そして、国家権力は、憲法違反をした場合、制裁が付いてきますでしょうか。ちなみに、憲法違反を明確、故意に侵した場合に、憲法裁判所に訴追し、大統領を罷免するという手続が憲法に書かれているドイツ基本法もあります。

憲法はどのような日本国家を目指しているか。これは明白に、平和国家、民主国家、人権保障国家です。この基本原理を確認し、立憲主義に基づく憲法審査会となっているんでしょうかと。立憲主義は、国民の基本的人権などを守るため、国家権力によって、国家権力を憲法によって制約することですけれども、国家権力が憲法の制約を緩めるための方法を常時模索しているこの形に異常に問題があると映っています。

国家権力担当者が負うのは憲法尊重擁護義務であって、擁護義務と同じように課されている国会議員は、擁護義務を同じように課されている国会議員は、憲法改正案を作る義務を負っているわけではありません。これは絶対憲法に書かれていないことです。勝手に憲法上の義務をつくり出しているというのが問題だと思います。

かつて、これは一九五三年ですけれども、防衛力増強を日本がすることに対して、日本側は、とても難しいと、だから簡単に予算は付けられませんと言っています。この措置をとることに対して、法律的制約というのが憲法だというふうにアメリカに述べています。今、そのような法律的制約あるいは法的制約というものをどんどんなくしていこうという、そういう方向に向かっているんではないかと思います。

また、断ったもう一つの理由が、自然災害が多く、その対策費用が掛かるから防衛費用は増やせませんと言ったわけですね。

そして、最後に、岸田首相が任期中に改憲を行う旨の発言をしたということですけれども、これは法の支配になっていますか?人が支配しているんじゃないですか、いつまでに憲法を変えなさい、変えましょうと。そういうことは、法の支配の理解が不十分だということで、問題点はまだまだありますけれども、今の憲法審査会は違憲の問題がある、そこまで言っておきたいと思います。

(憲法審査会での発言から)

2024年5月9日(木) 第213回国会(常会)
第5回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=55210
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【会議録】

※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)

【マスコミ報道から】

緊急事態条文化巡り平行線 立民慎重姿勢崩さず―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024050900512&g=pol
“自民党の中谷元氏は緊急事態の際の国会議員任期延長について「機は熟している」と述べ、具体的に条文化する「起草作業」に入るべきだと改めて主張。”

衆議院憲法審査会 憲法改正の条文案めぐり議論
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240509/k10014444221000.html
“立憲民主党の逢坂代表代行は「災害に強い選挙の在り方を十分に検討する必要があり、安易に議員任期の延長を行うのは順序が逆だ。任期を延長する事由などを誰がどう判断するかによって立憲主義を大きく毀損する可能性もある」と述べました。”

自民「緊急時の機能維持を」 憲法審、立民は議員任期延長反対
https://nordot.app/1161132791203528775
“立憲民主党の逢坂誠二氏は国会議員の任期延長に反対し、災害時の選挙に関して選挙人名簿の管理や自治体間の選挙事務の応援体制を考える必要があると指摘。「このような検討なく、安易に議員任期を延長するのは順序が逆だ」と批判した。”

「堂々巡り」で早期改憲に暗雲 自民が起草委設置要求も立民折れず
https://www.sankei.com/article/20240509-KVT77VYFINIUPOJN4GI53FSXYA/
“「大型連休後に事態は動く」(自民関係者)との期待もむなしく、起草委設置も見通せていない。”
“憲法審終了後、中谷氏は記者団に「(立民から)返事があったら設置する」と説明した。しかし、逢坂氏は記者団に起草委設置については正式に提案されていないとの認識を示した。”

【傍聴者の感想】

衆議院憲法審査会を傍聴しました。

自民、公明、維新、国民からは「議論は出尽くした。5会派が合意している起草委員会を設置して、憲法改正の条文案たたき台の作成作業を開始する段階に入っている」との発言が続きました。

立憲民主党、共産党側が、緊急事態条項の新設、緊急事態時の議員任期の延長や改憲手続き法のさまざまな問題点を指摘しました。立憲民主党の逢坂誠二議員は「災害時に選挙ができる仕組みを作るべきであり、市町村の行動マニュアルの作成が必要」と述べました。

そもそも、法律を破って裏金を作って隠蔽したり、憲法違反を繰り返している自民党に憲法を語る資格があるのでしょうか。

選挙実施困難を理由に憲法を変えようとし、改憲議論が国会議員の責任だなどという主張に憤りを覚えました。

自民党の稲田朋美議員が袴田事件を取り上げ、司法の怠慢と検察の不正、人権について熱く語っていたのが不思議で、印象的でした。

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