憲法審査会レポート、2023年
2023年04月28日
憲法審査会レポート No.16
2023年4月26日(水)第211回国会(常会)
第3回 参議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=7411
【会議録】
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=121114183X00320230426
【マスコミ報道から】
「合区」巡り対象県知事らが参院憲法審査会に出席 解消求める
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230426/k10014050241000.html
“1票の格差を是正するため参議院選挙で導入されている選挙区の「合区」をめぐって、対象となっている4つの県の知事らが参議院の憲法審査会に出席し、憲法改正などによって「合区」を解消するよう求めました。”
参院選「合区」早期解消を 参議院憲法審査会で島根・鳥取両県知事が訴え(東京)
https://www.fnn.jp/articles/-/520142
“両知事(鳥取県・平井知事、島根県・丸山知事)は、合区の弊害として、投票率の低下を招いている点や、地域の声が国政に届きにくくなっている点を指摘、憲法の改正も含め、早期解消に向けた議論を深めてほしいと訴えました。”
合区解消で改憲に言及 鳥取など4県知事ら―参院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023042601022&g=pol
“いずれの参考人も合区解消を訴え、憲法改正の必要性に言及した。”
“鳥取県の平井伸治知事は合区について「中長期的に見て民主主義を衰退させるのではないか。深刻さを感じている」と指摘。合区解消に向け「憲法の方が変わってもらわなければならないのかもしれない」と述べた。”
「合区の固定化、断じて容認できない」 参院憲法審で対象4県の知事ら【詳報あり】
https://www.tokyo-np.co.jp/article/246483
“自民党は改憲4項目で掲げる合区解消に前向きな姿勢を示した。立憲民主党は、憲法で都道府県単位の選挙区設定を規定しても、法の下の平等を定める14条が残る以上は「なぜ都道府県選出の議員だけ1票の格差が容認されるのかという問題は残る」と指摘した。”
【傍聴者の感想】
鳥取、島根各知事、高知、徳島各副知事が参考人として参議院議員選挙の合区の解消には憲法改正が必要という提言をし、それに対する質疑が行われました。
各質問に対しての参考人の答弁は憲法改正を見据えた解決策を求める内容に終始しました。立憲各会派からは憲法改正ありきの参考人の発言に対し現行の憲法下での解決が可能ではないかとの質問が続きました。
参考人が招かれていたことで焦点が定まり議場は集中力が漂っていました。参院のありかたや、投票率低下、被災時の対応、県民のプライド、広域連携など合区と関わる地方自治体が直面する問題も参考人から挙げられ、憲法改正による合区解消を掲げながらも現行の法改正でまずは早急に諸問題を解決したいという存意も見え隠れしていた気がします。
市民一人ひとりにとって何が優先なのか、必要なのかを、今後議論をさらに深め素早く解決できる公正な手段を講じてほしいと期待します。
【憲法学者から】飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)
合区解消のための改憲論の問題点
4月26日の参議院憲法審査会では「合区解消」について参考人質疑がありました。参考人は合区となった鳥取県知事、島根県知事、高知県副知事、徳島県副知事でした。彼らは「合区解消」のために憲法改正を含めた施策が必要と発言していました。
4つの県の知事や副知事が合区解消のために憲法改正も含めた施策を主張したのは当事者であるために想定できます。ただ、合区解消という「目的」は正当だとしても、その「手段」として憲法改正が本当に適切かどうかは、「全国民のため」という視点も含めた熟慮に基づく検討が必要です。
4月26日の参議院憲法審査会には、アメリカやドイツなどの「上院」は人口比で選出されていないとの資料も出されました。ドイツやアメリカのような「連邦国家」であれば「二院制」が必要で、各州の利益を擁護するため、人口に関係なく議員を選出することには納得できます。
一方、連邦国家でない日本が人口比に関係なく「参議院議員」を選出することが適切でしょうか? 世界的な傾向として、連邦国家でない国では「一院制」が多いですが、日本が二院制を採用する必要があるのか、日本が二院制を採用するのであれば何のためかを明らかにする必要があります。「連邦制」でない日本で二院制を採用する理由は、参議院議員がどのように選出されるべきかという問題と密接に関連するからです。
国会議員が「地域」を代表するのはとても重要です。ただ、憲法では衆議院議員と参議院議員は「全国民」の代表とされています(43条)。自民党たたき台素案のような改正をすれば、参議院は「都道府県の代表」と言えても「全国民の代表」と言えなくなる可能性があります。「全国民の代表」とは言えるか疑問の参議院が「国」のあり方について発言できるのか、そのことが問題となる可能性もあります。
都道府県から少なくとも一人の国会議員を出すのが必要というのであれば、憲法改正でなく公職選挙法改正で対応するのが適切です。「選挙制度」は人口の推移など、社会の状況の変化に応じて変える必要がありますが、こうした「技術的」な事柄を憲法に書き込めば、頻繁に憲法を変えなければなりません。憲法は「一人一人の個人を大切にしましょう」「国のあり方は国民が決めます」「政治家たちは戦争をしてはいけません」といった、「国の基本的な原理・原則」を定めた法です。社会の状況に応じて迅速に対応すべき事柄は「国の基本法」である憲法でなく、法律で対応する方が適切です。
そして「合区」解消のための憲法改正は、地方に強い選挙基盤を持つ自民党に有利な選挙制度をつくる憲法改正になることにも注意が必要です。『日経新聞』2018年2月20日付社説は「合区解消のための改憲論」について「まるで自民党の自民党による自民党のための憲法改正である。同党憲法改正推進本部がまとめた選挙制度に関する改憲案はあまりに自民党に有利な制度設計であり、到底受け入れがたい」と批判します。
『産経新聞』2018年2月21日付社説さえも「党利を図っている」と批判します。自民党に有利な選挙制度を設けるために憲法を変えることに賛成しますか?
【国会議員から】福島みずほさん(社会民主党・参議院議員/憲法審査会委員)
4月26日(水)、参議院の憲法審査会があった。参議院の憲法審査会では、緊急集会や合区解消について議論をしている。この日は合区解消について、鳥取県知事、島根県知事、高知副知事、徳島副知事の4人を参考人にお呼びして、意見を聞くという審査会があった。4人の知事・副知事は、合区になってしまったために投票率が下がったことや、不利益・デメリットについて語り、憲法改正も含めた施策が必要である旨述べた。そもそも合区は、自民党が、突然国会に持ち出し、強行成立させたのである。それが手のひらを返したように、今度は合区解消のための憲法改正と言っている。
ところで選挙制度は目まぐるしく変わっている。参議院の全国比例区は、個人単位だったのが政党の単位になり、そして拘束式名簿だったのが、2021年の選挙では非拘束式になった。現在は特定枠があると言う形で混在をしている。最近は女性やマイノリティーの議員を増やすために比例区を重視すべきである、あるいはクオータ制導入など、様々な意見が出ている。憲法は100年単位で考えるべきであり、目まぐるしく変わる選挙制度は、公職選挙法に委ねるべきである。また、参議院の選挙区は都道府県単位とすると憲法に書くことによって、国会議員が全国民の代表とされていることと矛盾するのではないかという質問も出された。
合区解消のために憲法改正が必要であると言う主張を論破し、阻止していかなければならない。
2023年4月27日(木) 第211回国会(常会)
第9回 衆議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=54585
※「はじめから再生」をクリックしてください
【会議録】
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/025021120230427009.htm
【マスコミ報道から】
※NHKの報道記事はありませんでした
国民投票法、議論先行を 衆院憲法審で立民
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023042701053&g=pol
“27日の衆院憲法審査会で、立憲民主党は国民投票法のCM規制などに関する議論を先行するよう訴えた。これに対し、自民党は憲法9条への自衛隊明記などを主張した。”
自民「9条には国防規定が欠落」 立民「国民投票法は課題を放置したまま」
衆院憲法審査会
https://www.tokyo-np.co.jp/article/246690
“立憲民主党の階猛氏は、国民投票法の付則にテレビCM規制などが検討事項として盛り込まれていることに触れ、「課題を放置したまま、改憲の中身の議論だけを続けることは付則が予定するものではない」と反発した。関連する資料の提出が認められなかったことに関しては「極めて遺憾」と述べた。”
憲法審査会・発言の要旨(2023年4月27日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/246691
衆院憲法審にブレーキ 開始直前、立民了承なく資料配布提案
https://www.sankei.com/article/20230427-T7RNTMIREZKELOWK53R2BZ3XNQ/
“野党筆頭幹事を担う立民の中川正春元文部科学相は今回の資料配布について、新藤氏に他党の了承を得るよう求めていたものの、「(幹事会の段階で)そういうことになっていなかった」と記者団に説明した。一方、新藤氏は資料に関して筆頭間で合意はしていないと記者団に強調。立民側への不快感を示しつつ、「憲法審を円満に運営できるようにする努力は続けたい」と語った。”
【傍聴者の感想】
今国会で9回目となる衆院憲法審査会は、定刻から約40分遅れて始まりました。立憲民主党の階幹事が衆院法制局に依頼し、国民投票法に関する論点について各会派の主張をまとめた資料の提出を拒否されたことで、幹事間で紛糾した模様です。
まず各会派を代表しての発言が行われ、自民党・新藤幹事は主に憲法9条改正に関する論点を資料付きで、立憲・階幹事は国民投票法に関する論点について資料なしでそれぞれ説明。その後、維新・三木委員から9条改正について、公明・北側幹事は緊急事態条項について、国民・玉木委員は任期延長や9条、ChatGPT(AI)のことなどについて発言。有志・北神委員は文民統制についての自説を述べたいっぽう、任期延長に議論を集中すべきと主張しました。
そんななか共産・赤嶺委員は沖縄と憲法について語りましたが、きょうの日が「4.28」の前日であることを思えば、いま改憲論議をする時間があるなら、憲法の理想から大きく乖離している沖縄の現状こそ、しっかり議論すべきであると感じました。
ほんらいは続いて委員から自由に発言する時間となるのですが、開始が大幅に遅れたことでそのまま発言を受けると予定時間を超過してしまうため、散会となりました。