憲法審査会レポート、2023年
2023年03月03日
憲法審査会レポート No.8
2023年3月2日(木) 第211回国会(常会) 第1回 衆議院憲法審査会
【アーカイブ動画】
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=54369
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【会議録】
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/025021120230302001.htm
【マスコミ報道から】
今国会で初の衆院憲法審査会 緊急事態での対応などで議論
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230302/k10013996051000.html
“大規模災害や戦争など緊急事態での対応を、憲法に規定するかどうかをめぐり、自民党が憲法改正に向けて、さらに議論を進めるよう主張したのに対し、立憲民主党は慎重な議論を求めました。”
“…自民党が「自衛隊の明記」など、4項目の改正案の議論を進めるよう求めたほか、立憲民主党は、現行憲法で同性婚が認められるか議論を深めるべきだと主張しました。”
憲法審査会が今国会で初開催「憲法は同性婚を明示的に禁止はしていないが…」 自民党・新藤筆頭幹事
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/356829
“立憲民主党は同性婚について、憲法審査会で岸田総理から見解を聴取すべきだと主張したのに対し、自民党の新藤筆頭幹事は「憲法は同性婚を明示的に禁止はしていないが、認めてもいない」との認識を示し、法務委員会で議論すべき問題だと反論しました。”
今国会初の衆院憲法審 立民は議員任期延長に慎重姿勢
https://www.sankei.com/article/20230302-BYCCJ4PJ4RONFNGDV67WVMVZTI/
“昨年の通常国会では、衆院で翌年度の予算案を審議中の2月10日に初回の憲法審が開かれ、開催は過去最多の16回に及んだ。今国会でも自民や日本維新の会などが2月中の開催を求めたが、立民が令和5年度予算案を審議中の開催に難色を示したことで先延ばしとなった。”
<社説>衆院憲法審査会 優先順位を違えぬよう
https://www.tokyo-np.co.jp/article/234293
“憲法を巡っては、同性婚の法制化に向け、結婚を「両性の合意」に基づくと定める二四条の解釈を明確にすることや、敵基地攻撃能力の保有が九条に基づく専守防衛を逸脱するのではないかなど、改憲以外の課題が山積している。”
“改憲ありきではなく、現行憲法の下で国民の暮らしや権利を守る法整備に最善を尽くすことが、憲法を尊重し擁護する義務を負う国会議員の責務である。”
【傍聴者の感想】
今国会初めてとなる衆議院憲法審査会を傍聴しました。私が前回傍聴した際は空席があった傍聴席は、ほぼ満席になりました。
しかし、審査会の内容には恐ろしいものを感じました。日本維新の会は、拙速に改憲をすすめようとする発言に終始していました。自民党に対しては憲法審査会で「本気の姿勢」を見せるべき、と主張。加えて、「ゴールが示されない仕事はあり得ない」としながら、緊急事態における国会議員の任期延長について、今国会で条文作りに入るよう迫りました。
また、公明党、国民民主党も憲法改正の条文案作りに入ることを主張していました。
こんな乱暴な議論のすすめ方は許すことはできません。私たちの運動はまさに正念場にあると感じました。
【国会議員から】中川正春さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会幹事)
本年度予算が衆議院を通過したことを受け、憲法審査会が始まりました。
立憲民主党は、これまでの基本、「立憲主義に基づく論憲」という立場で、今国会も審査会に臨んでいきます。
党の憲法調査会では、情報化社会と人権保障、地方自治、国会のあり方、安全保障の4つの分科会を設置し、憲法の課題に対し、立法事実を抽出して論点を整理しました。各分科会の中間報告では、党としての現時点の見解を明らかにしています。中間報告では、政府による現状の憲法違反の指摘も多岐にわたりました。また、提起された論点の多くは、現行憲法下で、法律の改正や必要な制度の創設によって目的の達成が可能なものです。しかし、中には、時代の変遷を経た現代においては、憲法の見直しが望ましいと考えられる課題もあります。中間報告をもとに、改憲ありきではない正しい論憲を進めていきたいと思っています。
当面の憲法審査会の課題としては、国民投票法のコマーシャル規制やネット規制の取りまとめ、さらには、同性婚と安全保障が優先的に論議されるべきだと主張しています。
【国会議員から】階猛さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会幹事)
2日、今国会で初めてとなる衆議院の憲法審査会が開かれ、「大災害や有事などで選挙が困難となった場合に国会議員の任期を延長できるよう、憲法を改正するべきか」という問題などについて、与野党の議員が持論を述べました。
与党側だけではなく、野党側からも「緊急時に国会機能を維持するために任期延長の憲法改正は必要であり、条文作りに入るべきだ」という意見が相次ぎました。しかしながら、私は、以下の理由などから、条文作りは「時期尚早だ」と発言しました。
まず、手続き上の理由として、参議院に配慮した慎重な議論が必要であるということを挙げました。憲法では、衆議院の解散によって衆議院議員がいない間に緊急の必要が生じたとき、国会の代わりに参議院の緊急集会を開いて案件を処理することとしています。そもそも緊急集会は、十分な任期を持つ議員が常に存在する参議院に認められる独自の権限です。
選挙が困難な場合に衆議院議員の任期延長を認めるなら、緊急集会が開催される可能性が狭まるということになり、参議院の権限を弱めます。参議院の利害に関する問題を、衆議院が先走って議論するのは「越権行為」です。
さらに、現実的な理由として、選挙が困難となるような緊急時には、国会議員の任期を延長して選挙を先送りするのではなく、選挙を急ぐべき場合もある、ということも述べました。すなわち、大災害によって被災地で議員が死亡した場合などは、選挙を行わなければ被災者の代表を欠いたまま国の復旧・復興の議論を進めることとなります。議員任期の延長による選挙の先送りが、常に国会機能や民主主義を維持するものだとは言えないのです。
12年前の東日本大震災では、大槌町の町長が津波で行方不明となり、町長選挙が行われるまでの半年近くの間、一時は総務課長が職務代理者となるなど、民主主義が機能しない状況が続きました。復旧復興の足かせとなったことは否めません。選挙人名簿のバックアップの仕組みや避難先から投票できる仕組みがあれば、こうした事態は避けられました。
この教訓を生かし、上記のような仕組みを整えた上で、非常事態になったら、参議院の緊急集会で必要最小限の国会機能を維持しつつ、速やかに選挙を行って通常の国会機能を取り戻すという方法の方が、憲法改正で議員任期を延長するよりも、民主主義的だと思います。
「選挙が困難なら任期延長」という制度は、権力の任期延長のために不人気の政権が濫用しかねません。被災地の議員として、結論を焦る議員らに、あえて水を差しました。
「『選挙が困難なら任期延長』は正しいのか-憲法審査会」より
https://shina.jp/a/activity/15702/