声明・申し入れ、2019年
2019年12月27日
自衛隊を中東に派遣する閣議決定に抗議する声明
自衛隊を中東に派遣する閣議決定に抗議する声明
2019年12月27日
フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)
共同代表 藤本 泰成
共同代表 福山 真劫
安倍内閣は本日(2019年12月27日)、自衛隊を中東に派遣する閣議決定を行った。派遣は防衛省設置法の「調査・研究」を根拠として、護衛艦1隻とソマリア沖アデン湾で海賊対処活動をしているP3C哨戒機1機を派遣し、自衛隊員260人の規模だという。活動の範囲は、ペルシャ湾やホルムズ海峡は除外して、オマーン湾やアラビア海北部、アデン湾とし、派遣期間は1年間とした。本来防衛省設置法の「調査・研究」であれば、防衛大臣の命令だけで可能であるが、国会の関与を印象付けたい安倍内閣は、閣議決定を行い、活動が終了した際には国会に報告することも義務付けた形だ。自衛隊の活動については、公には情報収集活動をすることが目的とされているが、不測の事態が起きれば、自衛隊法に基づく海上警備行動も閣議決定の上、発令するという。これで武器を使用しての船舶の護衛が可能というわけだ。
米国がイラン核合意から一方的に離脱をし、中東情勢が悪化したことが事の発端だが、米国が求めていた有志連合「センチネル(番人)作戦」に日本は参加を見送り、歴史的に友好関係にあるイランと米国双方に配慮し、苦肉の策を弄しての今回の派遣であるという演出がなされている。
しかし、実態的には船舶の護衛と海域の監視活動であることは明らかで、この目的のために今後自衛隊の海外派遣がなし崩し的に拡げられるおそれがある。そもそも自衛隊と米軍は、平時から緊急事態までのいかなる状況においても、アジア太平洋地域及びこれを越えた地域において防衛協力することが取り決められている。これは2015年4月に日本とアメリカで結ばれた「日米防衛協力のための指針」(日米ガイドライン)に明記されているものだ。安倍政権は日米ガイドライン締結直後に、多数の反対世論を無視して安保法制(戦争法)を強行成立させた。国会承認が不要な行政協定に過ぎない日米ガイドラインを日本国内に適用させるために、必要な法整備を行ったものと考えられている。ただこの安保法制も、国会審議の際に安倍首相が「湾岸戦争やイラク戦争のようなものには参加しない」と答弁していたように、制約もあった。
今回の自衛隊派遣を通して、「自衛隊の活動に制約があり充分な対処ができない」、「法整備の必要性を痛感」などという世論が組織され、安保法制の「改正」が目論まれることもあるかもしれない。安倍政権は、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をするなど脱法行為を繰り返し、すでに日本国憲法を空洞化させている。そして憲法を越えた日米ガイドラインの内容にそった日米の軍事協力がますます進められていくおそれもあるだろう。
私たちはこのような憲法がないがしろにし、日本が「戦争ができる国」へと進むことを許してはならない。そして自衛隊員が「普通の国の軍隊」のように他国に派遣され、殺し殺される関係の中に入っていくことは何としても阻止しなければいけない。
日本はすでに危険な道を歩み始めているが、まだ引き返すことは可能だ。
平和フォーラムは憲法改悪を阻止し、安倍首相の退陣を求めた闘いに全力をあげていく。そのことが、戦争への道を阻み、わたしたちのいのちと生活を守り、自衛隊員のいのちをも守ることにつながると確信する。