声明・申し入れ、2014年

2014年03月17日

文部科学省による沖縄県竹富町教育委員会への教科書採択に関する是正要求に対する見解

「文部科学省による沖縄県竹富町教育委員会への教科書採択に関する是正要求に対する見解」

 沖縄県竹富町が、教科書採択地区協議会の決定とは異なる教科書を使用している問題で 、3月14日、下村博文文部科学大臣は、竹富町教育委員会に対し「地区協議会の決定に従うこと」とする地方自治法に基づく是正要求を行いました。平和フォーラムは、この是正要求に対して、①このことを引き起こした原因は文部科学省にある、②竹富町への是正要求は地方自治法が定める法の趣旨を超えている、③教科書採択権限は教育委員会にある、④教科書採択は地域社会、教育現場、保護者の意見を尊重すべきである、⑤育鵬社版教科書の内容が沖縄県にふさわしくないとする竹富町教育委員会意見に賛同する、などの立場から文科省の竹富町教育委員会に対する是正要求の撤回を求めます。

 文科省は、1990年3月の都道府県教育長宛通知「教科書採択の在り方の改善について」において、教科書採択に関しては「保護者の意見を取り入れること」を指示し、1997年9月の同通知では、「地域の実情に応じ、教科用図書採択地区の小規模化」を求めています。このことは平成14年の同通知においても同様です。この間、文科省は一貫して「採択地区を小規模化し地域の実情と保護者の意見を参考に教科書を採択すること」を基本に「採択地区がより適切なものとなるよう普段の見直しに努める必要がある」としてきました。また、2002年の同通知では、採択権限が各教育委員会にあることを基本にして「採択地区の中で協議が整わない場合には、都道府県教育委員会が指導・助言を行い、採択の適切な実施を図ること」としています。文科省自身が、この通知の中で教育委員会に採択権限があるとする地方教育行政法と採択地区内に同一教科書を求める教科書無償化措置法の矛盾を指摘しています。

 今回の文科省による竹富町への是正要求は、そもそも文科省の怠慢と不作為が招いた問題であり、かつ、竹富町が現場の意見を踏まえた調査員の推薦に従って「育鵬社版教科書が先の大戦において日本の歴史上かつてない悲惨な地上戦を経験した沖縄県にふさわしくない」とした判断は、地域の実情と住民の思いを反映したものです。沖縄県教育委員会は、「学校現場に混乱はない」として判断を先送りしてきました。是正要求は、緊急対応が必要な場合に認められるもので、今回の措置は法の趣旨を超えて竹富町へ無用な混乱を持ち込むものと言えます。
 現在、急がれるべきは竹富町への是正要求ではなく、「採択地区の小規模化」というこれまでの文部科学省の方針に基づき、教科書無償化措置法を、採択権限が教育委員会にあるとする地方教育行政法にあわせて改正することです。そのことによって、根本的な解決が図られ、保護者や地域住民による責任ある教育を保障することができるでしょう。

 教育行政は、教育の条件整備に力を注ぐことを基本にすべきです。子どもたちの教育は、憲法の理念を基本に、地域社会、地域の教育委員会、学校現場、保護者にゆだねられるべきと考えます。この間の文科省を中心とした教育改革の方向は、教育委員会制度、教科書検定制度、道徳教育の教科化など、政府の教育施策を一方的に市民社会に押しつける強権的なものでしかありません。平成11年度の「『教育立国』を目指して」とする教育改革プログラムでは、「地方自治体や学校が自らの責任の下で主体性のある学校づくりを行うなど、現場の自主性を十分に発揮することが必要である」としています。平和フォーラムは、文部科学省がこの基本姿勢を忘れることなく、今回の是正要求を撤回し、竹富町の判断を優先して事態の収拾を図るべきと考えます。

                                                                                      以  上
 

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