声明・申し入れ、2010年
2010年12月09日
新たな「防衛計画の大綱」策定に関する申し入れ
2010年12月9日
内閣総理大臣 | 菅 直人 | 様 |
防衛大臣 | 北澤 俊美 | 様 |
フォーラム平和・人権・環境事務局長 藤本 泰成
新たな「防衛計画の大綱」策定に関する申し入れ
今年8月27日、「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会(新安防懇)」が「新たな時代における日本の安全保障と防衛力の将来構想について」とする報告書を提出しました。また、民主党の「外交と安全保障に関する調査会」も、「『防衛計画の大綱』見直しに関する提言」をまとめるとしています。それらを踏まえ政府は12月中には新たな「防衛計画の大綱」を策定すると聞いています。平和フォーラムは、新政権の下での安全保障政策が、民主党の基本政策に基づいて東アジアとの関係強化を念頭に置いたものであることを望んでいます。
新安防懇報告は、これまでの基盤的防衛力構想をすでに過去のものとし、高い運用能力を備えた「動的抑止力」の重要性を強調しています。また、中国の軍事的脅威を強調しながら離島・島嶼の安全確保を求めるとともに、日米共同運用の強化にも言及しています。
東アジアは、尖閣諸島問題や南北朝鮮間での軍事衝突、北朝鮮のウラン濃縮問題など極めて緊張した情勢にあります。平和フォーラムは、このような情勢の中でこそ、新たな「防衛計画の大綱」の策定には、周辺諸国の脅威へ対抗するのではなく抑制的な姿勢が重要であると考えます。
1976年に初めて策定された防衛計画の大綱は、冷戦下のデタントの中で防衛費の伸びを抑える役割を果たしました。「脅威に直接対抗せず自らが不安定要因にならないよう必要最低限度の防衛力を持つ」とする考え方は、憲法の平和主義の中で「専守防衛」という安全保障の基本路線を決定してきました。加えて、集団的自衛権の行使を禁じ武器禁輸政策を展開するなど、抑制的な防衛政策の中で、侵略戦争と植民地支配の歴史を越えて世界の信頼を勝ち得てきました。
平和フォーラムは、日本政府が「東アジア共同体」の構想を提起し、友好的な相互互恵のアジア諸国との関係を構築していくためにも、新たな「防衛計画の大綱」の策定に関しては、以下の項目に配慮されるよう要請いたします。
- 脅威対抗型の軍拡路線に傾斜することなく、自衛隊は、民主党の基本政策である「専守防衛」に徹することし、「抑止力」との位置づけを行わないこと。
- 民主党基本政策にある「アジア地域における新たな安全保障体制を模索する」ことを基本に、アジアの平和外交へ「共通の安全保障」の提言など日本のイニシアチブを発揮すること。
- 離島への自衛隊配備や日米共同の軍事行動強化などに踏み込むことで日本の防衛政策がアジアの脅威になることないよう抑制的に対応されること。
- 過去の歴史の反省にたって、日本国憲法の平和主義を元に戦後の政治の中で作り上げてきた「武器禁輸政策」や「非核三原則」「PKO五原則」などの見直しを行わないこと。
- きびしい国家財政のなかで、防衛予算については抑制の方向性を明確にすること。