声明・申し入れ、2009年、東北アジア平和キャンペーン
2009年03月24日
日朝両政府の自制と「ピョンヤン宣言」に基づく関係回復への努力を求める声明
フォーラム平和・人権・環境事務局長 福 山 真 劫
朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮)は、試験通信衛星「光明星2号」の打ち上げのために、国際宇宙条約に加入し、関係国際機構に対して航空機・船舶の安全のための情報を発信したと伝えられました。中国・ロシアを始め各国は、北朝鮮政府に対して強く自制を促しています。北朝鮮政府の意図とは別に、打ち上げの強行は、東北アジアにおける緊張を高めることは必至であり、今後の 6カ国協議や日朝協議に対しても前向きの影響を与えるとは思えません。そうした立場から、平和フォーラムは、北朝鮮政府に対し、世界各国の声に耳を傾け、国際協調の視点に立って、今回のロケット発射を中止するよう強く要請します。
日本においては、連日のように「日本上空の通過は許さない、打ち落とすべき、戦争も辞さない」など、日本の政府首脳から強硬な主張が行われています。日本海には迎撃ミサイルSM3搭載艦の派遣を、秋田・岩手県内に地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)の配備を検討するなど、「北朝鮮脅威」の世論を煽っています。神奈川県ではこのような情勢を受けて、安全防災局危機管理対策課長名で「北朝鮮ミサイル発射への対応態勢について」なる文書が発出され、新聞報道の情報を鵜呑みにし、緊急体制を全県組織に要請する事態が引き起こされています。朝鮮籍の子どもたちも通う県立高校にも、同様の趣旨の文書が配布され、子どもたちの心情に配慮しない状況が招来しています。経済制裁などを基本にした日本政府の北朝鮮への敵視政策とも思える外交姿勢は、強制連行などで、しかたなく日本を生きる場にしてきた朝鮮半島出身の仲間やその子どもたちに対する言われなき差別を助長しています。2002年の「日朝ピョンヤン宣言」は、日朝間の国交正常化に向けてのスタートでした。過去の歴史的過ちを真摯に認め、その地平から相互理解と信頼をつくり出そうというのが、「日朝ピョンヤン宣言」で確認した姿勢であると確信します。しかし、この間の日朝関係は、相互の真摯な会話も、交流もないままに、冷戦状態とも思える状況が続いています。正常化への歩みは停滞したまま、相互不信がより増大しています。
平和フォーラムは、日本政府に対して、正常な日朝関係をつくり出すために、今回の事態に対しては慎重を期し、国民の不安と不信を煽るような言動を強く自制することを要請します。自民党の拉致問題対策特命委員会は、4月13日に期限切れとなる制裁措置の延長問題に対して、輸出の全面禁止など、より強化するよう政府に求めるとしていますが、日朝間にある多くの政治的課題は、このような北朝鮮敵視ともとれる制裁措置で解決することはありません。平和フォーラムは、北朝鮮の国民生活に大きな影響を与えてきた経済制裁措置を即時に中止し、話し合いのテーブルをつくる努力を日本政府が行うことも重ねて要請します。
平和フォーラムは、東北アジアの非核と平和の醸成のために、これまでも制裁措置の発動に反対し、北朝鮮政府および朝鮮半島出身の多くの仲間と共通理解を求めてとりくんできました。日本国内において、朝鮮学園を支援する会などの活動や繰り返される差別と闘う仲間の連帯も広がりつつあります。 私たちは、今後も日朝国交正常化に向けて、取り組みを強化する必要があることを確認し、現在の不幸な関係を打開するために、過去の歴史の過ちの反省に立って、相互に信頼できる関係の構築に、いっそうの努力をつくします。