声明・申し入れ、2007年
2007年06月07日
防衛省・陸上自衛隊による違法な平和運動監視に強く抗議します
フォーラム平和・人権・環境
防衛省と陸上自衛隊が、自衛隊のイラク派兵に反対する平和運動団体や個人を監視し調査報告書を作成していたことが、日本共産党によって明らかにされました。共産党が公表した自衛隊の内部文書は166ページにおよび、全国41都道府県の289団体・個人の活動状況や写真が記載されています。防衛省の守屋武昌事務次官は記者会見で「この種の資料を作成した」と述べ、平和運動に対する調査を実施していたことを認めました。対象となった団体には、平和フォーラム(報告書では平和運動フォーラムと誤記)をはじめ、平和フォーラムに加盟する都道府県平和運動組織や労働組合が、多数含まれています。平和フォーラムは、防衛省・自衛隊が法的根拠も無く平和運動を監視していたことに強く抗議し、一切の事実関係を明らかにし、責任者に対する厳重な処罰を行うことを求めます。
日本国憲法は第19条で「思想及び良心の自由」を、第21条で「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」を保障しています。国家機関の一部であり24万人の武装集団である自衛隊による集会やデモの監視は、明らかに憲法に違反するものです。調査報告書の中には、自治体議員などによる駅頭での早朝演説や、平和団体が繁華街で短時間行ったチラシ配布などの報告も掲載されています。ここから、自治体議員や平和運動団体を、自衛隊が日常的に監視下においていたことが推察できます。また、屋内集会での参加者や発言内容を記載しているか所もあります。これは、自衛隊員が身分を隠匿して集会に潜入していたとしか考えられません。公務員が業務従事に際して身分を隠匿すること、許可を得ずに施設内に侵入することが違法であることは明らかです。集会やデモの参加者を撮影した写真も添付されています。国家機関による本人の承諾を得ない写真撮影は違法です。最高裁は1969年、「京都府学連事」の判決に際して、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定めた憲法第13条から、「国民私生活上の自由が、警察権等の国会権力の行使に対しても保護されるべきことを規定している」とし、「人にはみだりに撮影されない自由」があることを認めました。
これらの違法な調査活動に対して、防衛省の守屋武昌事務次官は記者会見で、「防衛省設置法に基づく調査・研究であり(陸上自衛隊の)訓練で情報保全隊に与えられた情報収集活動」と違法性を否定しました。また久間章生大臣は参議院の審議で「デモの状態、抗議行動の写真を撮る事は差し支えないと思う。とっている場合もある」「マスコミの取材の場合はよくて、自衛隊ならだめだという法律の根拠はない」と開き直りました。こうした言い分を認めてしまえば、警察でさえ行えない捜査や情報収集を、自衛隊が行えることになってしまいます。
防衛省・防衛施設庁は5月18日、名護市辺野古沖合での新基地建設のため、環境アセス法に違反する事前調査を強行し、その際に海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」とダイバーを投入しました。防衛施設庁は海上自衛隊が出動した根拠を、国家行政組織法第2条第2項による「官庁間協力」であると強弁しています。在日米軍再編の推進をはじめとして、安倍内閣が米国の軍事政策に追従する中で、私たち平和運動の前に、武装組織として、治安維持組織として自衛隊が立ちはだかろうとしています。一方で自衛隊の内部からは、いじめ・自殺・セクハラ問題が表面化し、武器や装備の購入をめぐる不正も後を絶ちません。こうした問題の根幹には、自衛隊が外部からの情報流入を遮断した組織であること、自衛隊に関する情報が「防衛機密」の名のもとに外部に公開されないことにあります。
私たち平和フォーラムは、防衛省・自衛隊による平和運動への敵対を強く跳ね返すとともに、自衛隊員の人権の擁護や、防衛省・自衛隊の情報開示を強く求め、今後も活動を続けていきます。