声明・申し入れ、2020年

2020年06月22日

敵基地攻撃能力の保有をふくむ「国家安全保障戦略」の初改定に対する見解

「地上配備型イージスシステム(イージス・アショア)」計画停止の方針を受け、安倍政権は、年内にも、「国家安全保障戦略」(NSS)を初めて改定する方針を固めた。国家安全保障会議(NSC)を開催し、「イージス・アショア」配備計画の撤回を正式決定したのち、①「イージス・アショア」にかわる新たなミサイル防衛体制、②新型コロナウイルス収束後の国際協調のあり方、③知的財産の管理をはじめとした経済の安全保障、④「敵基地攻撃能力」の保有の是非、などが議論される見込みである。あわせて、今年末を目途に防衛計画の大綱(防衛大綱)、中期防衛力整備計画(中期防)を見直して正式決定するとしており、特に、ミサイル防衛体制については、2021年度予算編成の概算要求(9月末締め切り)までに取りまとめる方針と伝えられている。

安倍政権は2015年の集団的自衛権行使を認める安保関連法の成立強行以降、2018年には「防衛大綱」と「中期防衛力整備計画」を策定し、ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)の「いずも」「かが」の事実上の空母化や、MV-22オスプレイ、F-35A搭載の長距離巡航ミサイル導入などを進めてきた。青森県車力と京都府経ヶ岬に設置された米軍のXバンドレーダー基地は、韓国慶尚北道星州(ソンジュ)に配備されたTHAAD(高高度ミサイル防衛ミサイル)とともに、米軍による一体的運用が行われつつある。すでに運用次第で「敵基地攻撃能力」を獲得できる状態にあるのが現状だ。

「敵基地攻撃能力」は、迎撃困難な敵国のミサイルが発射される前に発射台などを破壊し、封じ込める考え方であり、2018年の「防衛大綱」でも明記は見送られている。しかし、今回の「国家安全保障戦略」(NSS)の改定によって、公式に「敵基地攻撃能力」の保有が認められる可能性があり、極めて問題である。

米国は、防衛政策の基本に「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」構想を据えている。この構想は、迎撃ミサイルのみではなく、早期警戒機や戦闘機など全ての兵器を連携させ、敵基地攻撃も含んだ構想となっている。このことは、平和憲法の下での「専守防衛」というこれまでの日本の防衛構想の基本を覆すものであり、極めて危険な政策である。「敵基地攻撃能力」の保有によって、米軍と一体になった世界展開が可能となり、日本の自衛隊は、米軍の指揮下で軍事展開する「日米統合軍」として組み込まれかねない。

朝鮮半島や中国・ロシアとの対立をあおる外交・軍事政策は、日本の平和と安定、および繁栄を危うくするものである。米軍との軍事一体化は、アジアの繁栄を阻害する要因になりかねない。平和フォーラムは、「敵基地攻撃能力」の保有を絶対に許さず、引き続き、国家安全保障会議(NSC)の議論を注視し、取り組みを強化していく。

2020年6月22日

フォーラム平和・人権・環境
事務局長 竹内 広人

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