2023年、声明・申し入れ

2023年06月09日

私たちは既に多文化共生社会を生きている 入管法改「悪」に満身の怒りで抗議する【声明】

6月9日、参院本会議で「出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)」が、立憲民主党などの反対を押し切り賛成多数で可決・成立した。無辜の隣人に間接的に死刑執行のボタンを押すことになりかねない、入管法改「悪」を数の力によって強行採決したことに満身の怒りを込めて抗議する。

日本の難民認定率は諸外国に比べても異例ともいえる低さで、「難民鎖国」と批判を受けている。2022年の難民認定者は202人となる一方、難民不認定とされた人の数は1万人を超えており(一次審査・審査請求の合計)、難民として認定されるべき多くの人が認定されていない実態にある。

国連の人権理事会や拷問禁止委員会などの条約機関からも度々是正勧告を受け、2022年11月には、国連自由権規約委員会から入管収容体制の改善を求められている。

政府は、難民と認められなかった外国人が難民申請を繰り返すことで送還を免れようとするケースがあることを問題視し、3回目以降の申請者は「相当の理由」が示されなければ送還できることとした。このことは何らかの事情を抱え、3回以上難民申請をしている外国人が、迫害の恐れのある母国に強制送還されてしまう可能性を含むことになる。保護されるべき人の命を危険にさらすことになるこうした法案は、時間をかけて具体的な事実を共有し、徹底的な検証をはかるべきである。

入管法の審議の中では、法案の根拠とされた難民審査参与員の「難民をほとんど見つけることができない」といった発言の信憑性が疑われた。年間数千件にのぼる審査件数の約4分の1がこの参与員に集中していることが明らかとなり、こうした膨大な数の審査が可能と思うかと問われた齋藤法務大臣は「可能」と答えた同日夜に「不可能の言い間違いだった」と訂正するなど迷走が続いた。

別の参与員は、「保護されるべき人が保護されていない。誰をどのように保護するか、その仕組みの議論こそすべきで、送還の話だけが先に出ているのは順番が違う」と指摘した。

まともな法治国家であれば、現状のままでの審議は不可能なはずで、制度設計を根幹からやり直すべきである。立法事実が完全に破綻しながら強行採決されたことは、国会審議の軽視であり市民の声に耳を傾けているとは言えない。

国会での審議の過程において、全国の多くの仲間が「入管法改悪反対」「難民の人権を守れ」などと書いた横断幕やプラカードを掲げ、スタンディング行動やデモ行進、集会などに取り組まれたことに私たちは大きな希望を見出すことができる。

残念ながら入管法改「悪」の採決は強行されたが、たたかいは継続する。平和フォーラムは、「誰一人取り残さない」「迫害や貧困に苦しむ人に手をさしのべる」「性別や国籍、障害があろうとなかろうと差別も区別もしない」ことによって、「多文化共生社会」「すべての仲間とつながる包摂的な社会」を実現するために、引き続きこれまでの運動をすすめていくことを表明する。

2023年6月9日
フォーラム平和・人権・環境
共同代表 藤本泰成
共同代表 勝島一博

TOPに戻る