声明・申し入れ、2020年
2020年11月04日
九州朝鮮高校「無償化」裁判の福岡高裁判決に対する事務局長見解
九州朝鮮高校「無償化」裁判の福岡高裁判決に対する事務局長見解
2020年11月4日
フォーラム平和・人権・環境
事務局長 竹内広人
10月30日、福岡高等裁判所(八尾渉裁判長)は、九州朝鮮高級学校生徒・卒業生68名が提訴した「無償化」裁判に対して、一審判決を追認し、控訴を棄却する不当判決を行った。
福岡高裁は、「公安調査庁の調査結果等は、朝鮮総聯が、朝鮮高校と密接な関係を有し、・・・朝鮮高校を含む朝鮮学校が、その教育について朝鮮総聯から「不当な支配」を受けているとの合理的な疑念を抱かせるには十分なものであったと考えられる」としている。植民地支配の歴史から生まれた予断と偏見による根拠のない疑念を、子どもたちの権利侵害の理由に挙げるとは、司法判断として許しがたい。
高校無償化法の適用によって支給される就学支援金は、「学校」に対してではなく、生徒「個人」に支払われるものである。学校はあくまでも受給権者である生徒に代わって支援金を受領する「代理受領」を行っているにすぎない。どこで学ぶかによって支給の可否が問われるべきではない。朝鮮学校の生徒を高校無償化制度から排除することは、「法の下の平等」を謳った憲法14条、人種によって教育上差別することを禁止している教育基本法4条に厳に反しており、人権侵害、民族差別である。
また、朝鮮学校の指定根拠となる規定を削除したことは、国による「教育を受ける権利(憲法26条)」の侵害であるにもかかわらず、先の広島高裁判決と同様に、福岡高裁もまた削除の評価をせず、「削除がなされていなければ・・・指定がされた高度の蓋然性があった、とはいえない」と判断を避けている。「朝鮮学校の教育内容が朝鮮総連の影響を受けている」ということを口実に無償化の指定対象から排除することは、民族教育を否定するものであり、学習権の侵害といえ、社会的正義を守るべき司法の判断とはいえない。
高校の授業料無償化から朝鮮学校だけを排除した国の判断に対して、これまで再三国連「子どもの権利委員会」から適用基準の見直しを求める勧告を出されている。さらに国連人種差別撤廃委員会、国連社会権規約委員会からも同様の指摘をされており、当然司法は国際的な見解をふまえ判断を行うべきである。
平和フォーラムは、今回の福岡高裁判決に強く抗議するとともに、引き続きすべての子どもに教育の機会を保障するために、朝鮮学園を支援する全国ネットワークに結集し、全国の仲間ともに、粘り強くとりくみをすすめていく。
以上