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朝鮮半島への視点 第6回 話し合いの手順調整がカギ

2010年1月27日

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朝鮮半島への視点 第6回 話し合いの手順調整がカギ
                                                       連絡会事務局長 石坂浩一

 みなさん、昨年中はたいへんお世話になりありがとうございました。いよいよ2010年が幕を開けました。朝鮮植民地化の年から100年目。意味のある年にしたいものです。力を合わせて頑張りましょう。

〈平和協定の話し合いは必然〉
 12月のボズワース特別代表の訪朝以降、すぐには変化が見えませんでしたが、1月11日になって北朝鮮の外務省報道官が声明を発表し、平和協定締結交渉を要求するという本質的なところに一気に切り込んできました。すでにボズワース訪朝において、平和協定について話し合う必要があるという点は合意していたと思われます。実際、2005年の六者協議における9・19声明では、朝鮮半島の平和体制について話し合うフォーラムを別途に開催することが盛り込まれています。9・19声明を確認したということは、この確認も生きているということです。問題は、何をどのようにして実行していくかの手順だと思われます。とりあえずは、核放棄の約束が先か、制裁解除と平和体制協議確約が先か、という争いですが、核放棄も平和体制協議もその実行は1カ月や2カ月では済まない問題ですから、結局並行して実行していくしかありません。そのためのロードマップ作りこそ重要になります。その大枠について合意が形成されれば、六者協議は動き始めるでしょう。
 北朝鮮外務省の声明に対して、米国は核放棄の約束が先という原則を繰り返してはいますが、北朝鮮の声明に対して全面否定ではありませんでした。ただし、クリントン国務長官やボズワース代表が述べた「戦略的忍耐」という言葉を思えば、北朝鮮ペースで状況が動いていると見られることを、オバマ政権は嫌っているし、不信感も根深いのが事実です。北朝鮮当局も柔軟に対応すれば、一致点は出てくるでしょう。
 4月には核サミット、5月には核拡散防止条約再検討会議が予定されていて、オバマ政権としても何らかの成果は見せなくてはいけないところですし、この機会が生かされることを望むばかりです。もう少したつと、対話局面に入る可能性はあるはずです。
 北朝鮮側は南に対しては、硬軟両様で対応しているようです。昨年、南北の秘密接触があり、首脳会談も議題になったといいますが、結局うまくいきませんでした。北側からは、李明博政権内部の保守派が邪魔をしたという批判がメディアの論評などを通じて出ていて、玄仁沢統一部長官や柳明桓外相が槍玉にあげられています。とはいえ、南北接触は北朝鮮側から見ても、韓国政府が米朝直接対話を妨害しないための保険の意味が大きいわけですから、交渉や首脳会談の成否が最重要というわけではなかったのだろうと思います。これから当分、南北間ではこうした駆け引きが続くことでしょう。

〈経済活性化へ動く北朝鮮〉
 ところで、例年北朝鮮の方向性を表明する『労働新聞』など3紙の共同社説が今年も発表されましたが、その内容は興味深いものでした。社説は「昨年、強盛大国の大門をたたく驚くべき出来事が立て続けに起こった」と述べていますが、それは人工衛星・光明星2号発射や150日戦闘・100日戦闘の「大高潮」を指しています。その上で、2010年は昨年の「勝利と成果」に基づいて「人民生活向上に全党的、全国家的な力を集中すべき総攻勢の年」だと位置付けています。
 そのスローガンは「党創立65周年を迎える今年、もう一度軽工業と農業に拍車をかけ人民の生活において決定的転換をなしとげよう」というものです。あとのほうで、「わが人民はこの世界で最も強い精神力を持った偉大な人民」といった精神論も登場しますが、「決定的転換」を必要とするほど現実が厳しいというリアルな認識を基本に持っているという意味では、これまで以上に人民の物質的生活向上を考えるという表明と受け取れます。
 たとえば「人民生活に関連した部門に対する国家的投資を決定的にふやし」「軽工業品生産に必要な原料、資材を即時、円滑に保障しなければならない」「対外市場を拡大し対外貿易活動を積極的に繰り広げ経済建設と人民生活向上に貢献しなければならない」という一連の表現は、これまでになかったものです。
 これまでであれば「自力更生」「計画経済」という朝鮮の社会主義の原則が合わせて出てくるところですが、今年はありません。むしろ対外市場や貿易といったことを正面からうたっていることは、異例といってもいいでしょう。少なくとも議論の上では、本気が出ていると見ていいようです。
 実は、対外市場、対外貿易という言葉は、昨年末の12月16日、金正日国防委員長の羅先訪問の際にすでに出ていました。そして、共同社説を受けてということでしょう、1月4日には最高人民会議から羅先の特別市への格上げが発表されました。
 そのことと関連して、「南北関係改善の道を開いていかなければならない」「今日、朝鮮半島と地域の平和と安定を保障する上での根本問題は丁背に関の敵対関係を終息させることである。対話と交渉を通じて朝鮮半島の強固な平和体制を作り非核化を実現しようとするわれわれの立場は一貫している」と述べたことは注目され、ここは日本のマスコミにも報道されました。これを受けた動きが1月11日の外務省声明にほかなりません。こうしてみると、共同社説に1月に入っての動きはみな説明されているということです。
 もちろん、これまでも北朝鮮当局は経済改革を構想したことがありましたが、対外関係の悪化と内部的限界で実現しませんでした。その意味で今年は、かなり腹をくくった方針表明になっているといえるのではないでしょうか。ただ、それが実現するには共同社説にあるように実質的対外関係改善が必須ですから、これからの外交が正念場です。東北アジアにとって、北朝鮮の人民にとって、本当に良い年になるよう願わずにはいられません。

〈日朝基本条約の課題を広く提起しよう〉
 連絡会では、植民地化から100年という歴史の節目の年に日朝基本条約を具体的に提起し、政党・議員に必要性を訴えて、社会的関心を喚起していくため、今年そうそうから政党や国会議員にパンフレットを配ってアピールしていくと同時に、2月16日(火曜日)13時からは参議院議員会館第6会議室で日朝基本条約に関する提起の勉強会を開催します。また、2月24日(水曜日)18時半からは総評会館501号室で日朝基本条約案検討会を行なう予定です。今後の行動も、引き続き検討し提起させていただきます。どうか、よろしくお願いいたします。
 

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