ニュースペーパー
2021年02月01日
立法府の責任で同性婚の制度化を
コロナ禍の中、同性パートナーのつらい現実
立憲民主党 衆議院議員 尾辻かな子
立法府の責任で同性婚の制度化を
新型コロナウイルスの感染拡大は、社会で周縁化されてきた層を浮かび上がらせる結果となりました。例えば女性の貧困、今や女性の半数以上が非正規で働き、コロナによる業績悪化によりサービス業などで失業、賃金減少が起こっています。同性パートナーと暮らす人々もまた、コロナの中で様々な課題にぶつかりました。例えば、自らのセクシュアリティが他者に知られてしまう問題です。コロナに感染した場合、どこでどのようにして感染したのか、濃厚接触者は誰なのかを保健所で調査することになります。同性のパートナーと同居し、そのパートナーが感染した場合、同居の方も濃厚接触者として、検査することになります。自らが濃厚接触者となったこと、そのため欠勤すること、検査に至る理由を職場に伝える必要がでてきます。正直に伝えるとカミングアウトすることになりますが、職場に知られたくない当事者も多くいます。一大事の時に、切羽詰まっている状況にも関わらず、ある程度のごまかしを混ぜながら話をしないといけない状況ができてしまいます。
次に、感染したパートナーが入院した場合、そして人工呼吸器装着などになった場合にキーパーソンとして説明を受けられるのかという問題が出てきます。ここも、カミングアウトをどこまでしているのかに関わってきます。入院された方が家族にカミングアウトしておらず、キーパーソンに何も知らない家族がなった場合、パートナーは遠ざけられてしまいます。医療関係者、家族へ自分たちの関係を明かすかどうか決断しなければいけない状況です。
万が一、相手が亡くなってしまった場合は、遺言がない限り、同性パートナーのできることは限られてしまいます。カミングアウトや家族の受け入れ状況により、葬儀の喪主は、相手の家族になり、親族席には座れず、同居の友人として別れることになるかもしれません。相手名義の財産は、その家族が相続人となります。
以前から、同性パートナーの法的保障が必要な場面は、病・老・死・別れの場面であると言ってきました。(それ以外の大きな困難としては、国籍の違うカップルのビザの問題もあります。)
いざという時に、自分たちの関係がいかに守られていないか思い知ることになります。今回のコロナ感染についても、その不安は増すばかりです。
自治体の証明書発行が増えてきました
一方で、2015年の東京都渋谷区、世田谷区から始まった同性パートナーシップを自治体が認める動きは広がってきました。2021年1月時点で74自治体。政令指定都市では、全20市のうち16市で認めることになりました。都道府県単位での証明書発行も増えてきています。ただ、これらの証明書には、法的な裏付けがありませんので、扶養、財産相続や配偶者ビザの権利などはありません。アナウンス効果に加え、自治体の公営住宅の入居、公立病院で家族同様の取り扱い、自治体職員への慶弔休暇取得拡大など限定的にならざるを得ない状況があります。やはり、国が同性婚を可能とする法改正をする必要があります。私が事務局長を務める立憲民主党SOGIに関するPTで原案を作り、2019年6月に立憲民主党、日本共産党、社会民主党の共同で同性婚を可能とする民法改正案を日本で初めて国会に提出しました。オランダが世界で初めて同性婚を可能としたのが2000年、そこから約20年がたっています。2015年にはアメリカも連邦最高裁で同性婚を認めないことが憲法違反だと判決を下しました。2019年、台湾でも同性婚が可能になりました。主要先進7カ国の中で同性婚が可能なのは、米英仏加独の5カ国。イタリアにも、シビルパートナーシップという結婚に準じた形があります。日本のみ、この流れに取り残されています。2019年から日本でも同性婚を求める訴訟も始まっていますが、司法任せにせずに、立法府としての国会の役割として、一刻も早い法改正が必要です。
世論とズレている国会
日本の世論調査でも、同性婚の是非を問うことが増えてきました。どの社の調査でも賛成派が反対派を上回ります。調査結果を見ると、男性より女性の賛成が多く、高齢世代より若い世代の方が、賛成が多い傾向が見られます。問題は、世論と国会議員の意識のズレです。次の総選挙では、同性婚法制化の是非についても大きな論点として投票の際の判断基準にして頂ければと思います。
多様な家族がそのままでいられる社会に
家族の多様性という意味では、選択的夫婦別姓を可能とする法改正も喫緊の課題です。2021年は最高裁大法廷での審議が予定されており、従来の判例の見直しがあるのではないかと期待されています。今年は選択的夫婦別姓と同性婚を実現する年にできるよう、皆さんと力を合わせて頑張ります。(おつじ かなこ)