ニュースペーパー
2021年01月01日
第52回食とみどり、水を守る全国活動者会議
農林水産業労働の意義を再確認
52回目の開催
「食・みどり・水」の課題を共有し、運動の学習と交流の場として開催されてきた「全国集会」が、2018年11月に群馬県高崎市で開催された第50回を区切りとしていったん休止し、2019年11月、東京都千代田区の「日本教育会館」を会場に100人規模で「第51回食とみどり、水を守る全国活動者会議」として開催されました。
名称や参加規模の変更などはありましたが、「食・みどり・水」をめぐる様々な課題に対し学習を深め、問題意識を共有し、職場や地域での運動へとつなげていくとりくみとして、2020年も11月27日、日本教育会館を本会場とし、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点からWEB配信をする形で「第52回食とみどり、水を守る全国活動者会議」を開催しました。
食・みどり・水を取り巻く情勢
活動者会議は、武藤公明実行委員長(全農林)の挨拶で始まり、「経済連携・貿易交渉の動向」、「食料・農業・農村基本計画」、「森林・水問題」と3点の課題と情勢があげられました。自然災害が頻発する日本において、農林水産業の果たす多面的機能は必要不可欠であり、食・みどり・水の何れもが人の命に関わる極めて重要な問題といえます。
有機的に10年後を展望する
活動者会議の中心となる講演は、谷口信和さん(東京大学名誉教授)が「新食料・農業・農村基本計画はコロナ後を見据えているのか―求められる10年後を展望した長期計画―」と題し、効率性ばかりを求める日本の農業政策の姿勢を指摘しました。コロナ禍にあって、マスク不足が問題となったことを例示し、自給しなければならない資材さえも輸入に頼ることで、国内需要の急増に耐えられない産業構造の問題点を整理しました。労働力が安いことでひたすら効率主義を求めた結果、日本は、中国からの輸入依存となってしまい、マスク騒動が起こったといえます。同様に、日本の食糧問題を考えた場合、コスト重視、効率主義という前近代的な考え方では、アメリカなどの輸入を頼っている国に問題が発生した場合に取り返しがつかなくなります。最低限の食料の自給は行うべきであり、国家の問題として考える必要があります。
続いて、5年ごとに変更が行われ2020年3月31日に新たに閣議決定された食料・農業・農村基本計画の評価がなされました。新基本計画に対し官邸主導型から農水省主導型へ移行すること、内需主導型農業発展戦略への移行を期待するとともに、コロナウイルス対応の暫定性など、決定過程の特徴があげられました。特に、新基本計画の中で、「食料自給率向上に正面から向き合っているか」、「担い手の問題への軌道修正がなされているか」、「地域農業の危機は打開できているか」をポイントに、表やグラフを多用して解説しました。
みどり・水に関する報告
講演に続いて、佐藤賢太郎さん(森林労連)から、「森林・林業・木材関連産業政策の推進と林業労働者の処遇改善に向けて」と題する報告がなされました。多くの恩恵をもたらしている森林の多面的機能や林業労働力の確保が重要であり、処遇改善や安全確保、木材価格を上げるなど、人への投資を行うことを政策で確保する必要性が訴えられました。
辻谷貴文さん(全水道)は「水を考えるは地球を救う~健全な水循環で暮らし方の好循環、地域を元気に~」と題し、地域の水道の問題を中心に報告をしました。その中で、「水について考えることは地域を考えること、そして地域を活性化させることができる」と力強く訴えました。
命を守るとりくみ
コロナ禍での変則的な開催となった「食とみどり、水を守る全国活動者会議」ですが、全国の仲間と切磋琢磨しながらこのとりくみを継続発展させていくことを確認して、活動者会議は幕を閉じました。かけがえのないものを次世代に残していくため、私たち一人ひとりが、自覚を持って行動することが必要です。「食とみどり、水を守る」ことは、イコール「命を守る」ことです。(橋本 麻由)