ニュースペーパー
2020年12月01日
きれいな水といのちを守る全国集会にむけて
オンラインシンポジウムを開催
10月10日、「きれいな水といのちを守る全国連絡会」の第31回総会がオンラインで開催され、それに続き、「きれいな水といのちを守る全国オンラインシンポジウム」が行われました。岐阜県垂井町で開催予定であった第36回全国集会は1年延期となりましたが、運動継続の観点から、オンラインシンポジウムを実施したものです。
開会のあいさつを兼ね、岐阜県実行委員会の岩間誠実行委員長(西濃環境NPOネットワーク)から、オンラインシンポジウム開催の経緯、来年へ向けて継続的に準備を進めていくことなどが説明されました。
シンポジウムの第1部では、垂井町の会場(写真)から現地実行委員を代表して、神田浩史さん(NPO法人泉京・垂井/副代表理事)が、「多彩な水環境から学ぶ私たちの未来 樽井・揖斐川流域で紡ぐ穏豊社会」をキーワードに、垂井の多彩な水環境について多くの写真を用いて報告しました。続いて、揖斐川流域の様々な取り組みをテーマに、3人が報告を行いました。小寺春樹さん(NPO法人「山菜の里いび」理事長)は、「織田信長の薬草園再生プロジェクト」のほか、地元の小学生に森の未来を考えてもらえるようにフィールドワークを実施していることを報告するとともに、林業衰退で山が荒れてきていることに警鐘を鳴らしました。松久幸義さん(NPO法人「里山会」副理事長)は、高度経済成長を経て燃料としての木材が不要になったことから林業が衰退していること、荒れた山は大雨の影響で山林崩壊につながることを指摘しました。地元自治会と共同で山の清掃をし、里山つくりに力を入れていることが報告されました。安田裕美子さん(NPO法人「ピープルズコミュニティ」理事長)は、NPO法人を立ち上げたきっかけが「生ごみの回収」の不経済性であったこと、身近なごみの分別が未来の環境問題の解決につながり、循環型社会に寄与することの大切さを訴えました。
第2部では、岐阜県垂井市と東京の全水道会館のそれぞれの会場をつなぎ「水から考える私たちの未来」をテーマにディスカッションを行いました。オンラインでの開催を考慮し、配信会場全体の様子がうかがえるような画角も取り入れるなどの工夫を行いました。
シンポジウムの進行は、現地実行委員の神田浩史さんが担当し、登壇者各々に簡単な活動報告を求める形で始まりました。片岡栄子さん(ふぇみん婦人民主クラブ)が「石けんの共同購入から合成洗剤追放運動を始めた」と自身の体験談を交えて話し、水俣病、琵琶湖の汚染問題、東京の下水処理問題など、日本が公害列島であったことを提起しました。また、熱帯雨林破壊の問題をフィールドワークで目の当たりにした経験から、グローバルな視点でとらえていく必要性を訴えました。全国実行委員会の辻谷貴文事務局長は、全水道として水道事業にかかわっている経験から、「蛇口の向こう側」をキーワードに、地域コミュニティがあるところは上下水道職員が存在し、エッセンシャルワーカーとして奮闘しているが、人員削減、効率化が進み、大変なことになっていると訴えました。大坪久美子さん(NPO法人「Nプロジェクトひと・みち・まち」理事長)は、持続可能な社会をめざし、SDGsにある「ジェンダー平等」を推進していると報告しました。老若男女共同参画こそが、災害時にも対応できる環境づくりをすることができると、自身の取り組みを具体的に話しました。中村賀久さん(西濃環境NPOネットワーク会長)は、河川へのごみ散乱問題が自身の活動のきっかけであるとして、子どものころは川に入って遊べたのに、そうできないのは、自分たちの世代が汚してしまったという反省から清掃活動を始めたと話しました。今井和樹さん(22世紀奈佐の浜プロジェクト・学生部会代表)は、大学3年生であり、環境教育サークルでの活動を楽しみながらやっていると発言しました。活動のポリシーは「答志島だけではなく流域全体の問題であり、ごみを拾うことを目的にせず、問題の現状をしり、学びながら活動をつなぎ、広めていく」ことだとし、自分事として考え、持続可能な活動をしていくことの必要性を訴えました。
登壇者の報告に続き、お互いに質疑応答を行いました。報告に対するもののみならず、コロナ禍の対策など、今だからこそ話し合うべき事項が取り上げられました。最後に、神田さんが、「オンラインにすることで若者との交流が広がる。岐阜県と東京をつないで開催すると考えられたのも、コロナ禍だからこそ」と述べ、岐阜県の揖斐川流域の話だけではなく、水の問題を世界に訴えていかなければならないとまとめました。
きれいな水といのちを守る全国集会は、2021年の岐阜県内での実施を目標に、引き続き準備していきます。(橋本 麻由)