ニュースペーパー、沖縄コーナー
2020年05月01日
辺野古新基地建設反対運動の現状と課題
沖縄平和運動センター議長 山城 博治
不要不急の辺野古工事は即時中止を
新型コロナウイルスの猛威が世界を覆っている。沖縄も例外ではない。3月いっぱい比較的抑えられているかに見えた感染者は4月に入ると急激に増えだし、ついに三桁に迫る勢いになった。このままいくと4月中には沖縄全県下に拡散していく情勢だ。政府は4月7日、緊急事態宣言を発し大都市圏では不要不急の外出自粛が徹底されるようになった。本来この感染拡大を受けて、「不要不急」の外出自粛を言うのなら、当然辺野古の埋め立て工事を中止し、工事用ゲートに流れ込む人々の動きを抑えなければならない。しかし安倍首相や閣僚からは「辺野古新基地建設は米国との公約。粛々と進めさせてもらう」のみ。1日千台を超える土砂搬送のダンプトラックが行き交い、それに抗識する市民が連日各ゲートに押しかけ、その行動を規制しようとする県警機動隊や防衛局雇用の警備員またそれを指揮する防衛局職員など毎日数百人が工事用ゲートに集まる。即座に工事の中止を決定し、まさに、「不要不急」の集まりを解消すべきである。しかし政府は動かない。あからさまな二重基準に怒りが沸き立つ。
大浦湾をのぞむ瀬嵩海岸で行われた平和行進出発式 2015年5月15日
設計概要の変更申請間近に 新基地建設新たな局面へ
2018年12月、辺野古海域側の埋め立てが開始され、上述したように何が何でもの工事強行が続けられている。これまであらゆる機会で示された“新基地NO”の県民意思は一切顧みられなかった。その政府がさらに強行策に打って出る動きを強めている。沖縄県政に対する新基地建設設計概要の変更申請が今月中にも行われると地元紙は報じている。
辺野古新基地建設工事が開始された2014年に政府が発注した6件の護岸・岸壁工事を3月末で打ち切る、大きな問題が明るみに出た。政府はこの間市民団体から明らかにされ、2018年8月の沖縄県の埋め立て承認撤回の有力な根拠ともなった90mに及ぶ深海の存在とそこに60mの層で堆積する「マヨネーズ」状の軟弱地盤の存在を無視してきた。「海底の地盤改良で対応できる」と開き直り、また70m以上の深い海での改良工事の経験がこれまで皆無でかつ現在の土木技術では対応が不可能だという識者の指摘に「改良に用いる砂杭が70m以上に及ばなくても問題はない」と強弁するだけでなく、「70m地点から下の地盤は近隣の調査済みポイントから類推するに硬質な地盤である」、よって問題はないと驚くべき詭弁を弄してきた。しかし表向きの言い訳とは裏腹に、2014年に発注された護岸工事が着手されることなく契約更新で先送りされ続けたものの、ついにここにきて工事中止を表明せざるを得なくなった。
県民のたたかい、そして全国の支援がついに政府を大浦湾工事の中止に追い込んだと喜びたい。普通ならここで勝負ありのはずだ。工事は中止され計画は白紙撤回されるべきである。しかし政府はここに至ってもなお工事をあきらめるのではなく、むしろ工事中止を正式表明したのは、沖縄県に埋め立てに関する設計概要の変更申請を行うために踏まなければならない手統きであったにすぎないこと、さらにこの県政に対する変更申請が4月中にも行われるだろうということが報道で明らかになった。
沖縄県政そして県民のたたかい
辺野古新基地建設に関する政府の杜撰な計画は、単に大浦湾側の深海と軟弱地盤問題だけでなく、その他に5000年の際月が織りなしたといわれる巨大なサンゴ群落の移植問題、さらに埋め立て土砂2000万立米の8割近くを全国から調達搬入するはずの計画を、全て県内調達にするとんでもないそれ自体の自然破壊・環境破壊の問題、あるいは埋め立て予定地のど真ん中に注ぐ美謝川(びじゃがわ)の水路変更問題等、工事を継続するために立ちはだかる諸課題は山の如し。どう越えるのか。沖縄県玉城デニー県政は簡単には政府の要請に応じない。また県民が許さない。しかしここはあからさまな沖縄差別を意に介さない安倍内閣。その奇策はすでに示されている。政府の変更申請に応じない県政の判断を違法として訴訟に持ち込むだろう。先に「国の関与」訴訟で最高裁は県に敗訴を言い渡した。まさに国家権力、三権が一体となって襲い掛かる構図だ。全国の皆さん注視してください。追い込まれているのは政府です。県民は政府の圧政を許さず闘ってまいります。全国連帯で辺野古新基地建設を断念させましょう!(やましろ ひろじ)