2020年、ニュースペーパー

2020年03月01日

ニュースペーパー2020年3月



改憲発議阻止! 安倍政権を退陣させよう!!
 2月6日、「許すな政治の私物化!STOP改憲発議!新署名スタート!安倍政権を退陣させる2・6市民集会」が北とぴあ(東京都北区)で開催され、900人が参加しました。立憲野党国会議員が登壇し、「桜を見る会」問題で紛糾する国会情勢に触れながら、市民と野党が協力し、安倍政権の退陣までともにたたかう決意を述べられました。古賀茂明さん(元経済産業省)は、安倍政権による施策を批判するとともに、マスコミが政権寄りに偏重している現状を指摘されました。変えていくためには、現状をきちんととらえたうえで、市民が批判をし続けていくことが大切であると話されました。参加者は、あらためて改憲発議阻止!安倍政権退陣!を確認しました。
 1月20日、安倍首相は通常国会の施政方針演説で「未来に向かってどのような国をめざすのか。その案を示すのは、私たち国会議員の責任ではないか。」などと述べ、今なお改憲に固執する姿勢を示しています。2月2日には、海上自衛隊護衛艦「たかなみ」が横須賀港から中東へ向け出港しました。自衛隊の海外派遣という重要な問題については、本来、国会の関与とチェックが必要だと思いますが、それも一切なく、しかも、臨時国会閉会後の12月27日に閣議決定を行うことは、民主主義の観点から許されません。まさに安倍政権による自衛隊の私物化です。
 私たちは、憲法をないがしろにし、日本が「戦争できる国」へと突き進むことを決して許してはなりません。平和フォーラムは、憲法改悪を阻止し、安倍首相の退陣を求めた闘いに全力をあげていきます。そのことが、戦争への道を阻み、私たちの命と生活を守り、自衛隊員の命をも守ることにつながると確信しています。(写真は海自護衛艦「たかがみ」の中東派遣中止を求める緊急集会2020年2月1日横須賀)

インタビュー・シリーズ:154
日本社会は破局前夜?
外交、経済、財政あらゆる分野で安部首相の大失敗にもかかわらず……
元文部科学事務次官 前川喜平さんに聞く

まえかわ きへいさん
 1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年、文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、文部科学審議官などを経て2016年、文部科学事務次官。退官後は、加計学園問題で官邸の介在を確認する文書の存在を公表したりと、安倍政権の腐敗に立ち向かっている。現在は、自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動や講演で全国を飛び回っている。

─文部科学事務次官を退官されました、その後はいかが でしたか。
 退官からほぼ3年が経ち、生活がいままでと変わりました。付き合う人が変わったことが大きな変化でした。第二の人生だなと感じています。以前とは、吸っている空気が違うと感じています。先日も東大阪の中学校にいき、中学生に人権の話をしてきました。東大阪は育鵬社の教科書を使っていますが、私を呼んでくれる学校もあるのです。

─安倍政権の支持率はどのように見ていますか。若い男 性には支持者が多いのですが。
 安倍首相に替わる適当な人がいないと見られているのでないですか。本当は自民党の中にも安倍さんよりも真っ当な人がいると思います。支持率が高いのは、はっきりわかりませんが、満足ではないが不満でもない、そこそこの生活を変えたくはない、または変わるのが怖い。そういった気分でしょうか。
 これまで安倍政権は、外交でも失敗だらけで何にも成果を残していません。政権維持のため北朝鮮による拉致問題やロシアとの北方領土問題を取り上げますが1ミリも動いていません。教育でも大学入試改革で大失敗をしました。 

─いまの状況の中で官僚は安倍政権に対して物が言えないのでしょうか。
 省庁を取り巻く情勢は、ますます悪くなっていると思います。官邸の意向に逆らえなくなっています。それは「政治主導」という名の下で、内閣官房に権力が集中し、官僚幹部の人事権を持つことになったため、結局官邸サイドの考えに近い者の登用が続いているのです。政権のために忖度できる、顔色をうかがう官僚が集まってきたということです。人事権が集中することによって、どの中央省庁も官邸の意向に逆らわないように動くようになりました。私の場合はチェックミスですね。

─いまの安倍政権をみていると、目先の政権維持のため、また改憲するためだけに腐心しているように見えます。日本の将来を見ていないのではないか。そのことが官僚の不満となっていませんか。
 そのことは若い官僚に多いのではないでしょうか。いま官僚の離職率が高く、3割ぐらい辞めている、入ったけれどもやりがいが見いだせなくなっているのではないでしょうか。
 悪い意味で政治主導がそれを助長している部分があるのではと思います。各省庁が官邸の下部機関となってしまい、自らの主体性を発揮できないでいます。そのため現場の声が政策に届かなくなり、現場の声が無視されるといったことが起きていると思います。 

─萩生田文科大臣などの発言によって大学入試問題が注目されました。それについてはどのように思いますか。
 BS放送フジの報道番組で、萩生田文科大臣は、「(英語民間試験は)自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえば」という発言をしました。これが教育格差の容認ではないかと批判が集まり、謝罪、撤回に追い込まれましたが、もともと彼の本音がでたのではないかと思います。彼自身、教育の機会均等という意味が全然わかっていない。その本質がわかっていないから、あのような発言となったと思います。

─安倍首相または安倍政権をどのように見ていますか。彼は保守主義者でもないと思いますが。
 私は、村山政権の時に与謝野馨文部大臣の秘書官をしました。それ以前自民党は長期に渡って政権を担っていましたが、社会党など野党の政策を取り入れながら政権を維持していた。「だから自民党は実は社民主義政党なんだ」と与謝野さんは言っていました。国会運営もできるだけ話し合いでやっていた。しかし、今の安倍政権は、そのようなことをせず、ドラスティックに社会を変えようとしています。非常に危うい動きだと思います。
 安倍政権は、次々に政策目標を変えてきました。それによって多くの失敗が隠されているように見えます。しかし、それによって今の若い人たちには、自民党が改革派で、野党が守旧派と見えているのではないでしょうか。イメージなのですが。
 中央省庁も劣化が進んでいます。7年間の安倍政権の人事により官邸べったりの人が、各省庁の幹部に存在します。政権が変わっても、この人事が変わらなければ危ないと思います。
 安倍政権の中枢では、経済産業省や警察庁出身の「官邸官僚」が多く存在し、そのような人々が行政を仕切っていることも問題です。また、官邸の情報を無批判に流すメディアの劣化も酷いと思います。
 日韓問題を始めあらゆる外交課題で、外務省は官邸の下請け機関となっています。外交が官邸主導となり、外務省がその下に甘んじることとなっています。その結果はどうでしょう。北方領土問題は、プーチン大統領との間では1ミリも動いていません。一方、盟友であるアメリカには、貿易でも軍事でも一方的に押し込まれています。
 今の日本は「ゆでガエル」のように見えます。今まさに、ひたひたと日本社会に破局が近づいているのではないかと思います。安倍政権は財政政策においても、赤字の拡大を放置して、国債の発行額残高を増やしています。いつかは破綻するのではないかと、非常に危機感を感じています。日銀や年金積立管理運用独立法人(GPIF)が株を持つことによって人為的に株価を支えていますが、こんな政策に持続可能性はありません。

─沖縄の基地問題をどう見ていますか
 このままでは普天間飛行場は100年たっても返ってこないのではないでしょうか。沖縄に基地の大半が押し付けられている現状は異常だし、日本中の基地の在り方について国民的議論をしなければならないと思います。

─辺野古では、沖縄平和運動センターの山城議長が逮捕され、長期間拘束されました。全日建の関西生コン支部が、徹底的に弾圧されています。法が歪められ、権力が政権維持のための道具にもなっているのではないでしょうか。安倍政権は、警察、内閣法制局、NHKなどあらゆる権力を利用しています。
 いまの安倍政権は、ある種の万能感のような錯覚に陥っているのではないでしょうか。自分は何でもできるし、何をしても許されると。そして、そのような安倍政権を支えているのが、草の根右翼である日本会議です。

─そのようなものを背景に、右翼的な体質の安倍政権が、朝鮮学校を無償化の対象からはずすなど、民族差別を露骨におこなっています。
 在日コリアンの方々は、民族教育と多文化共生社会の先駆けでもあると思います。外国にルーツを持つ人たちが増えていく中で、文化と文化をつなぐ人が必要です。日本の文化と自民族の文化の両方に通じたダブル・アイデンティティを持つ人たちの役割は大きい。今後、日本社会は多文化共生の方向をめざすべきです。
一方で政権自体がヘイト体質を色濃く持ち、偏見や差別で支持を得ようとしているところがあります。悪い形のポピュリズムが広がり、政権自体が反知性主義で、理念がありません。国会議員も2世・3世が多くなり、政治が「家業」になってきている。議員政治家の質が落ちていると感じます。

─学力低下が問題視されていますが
 文科省が学校の授業時間を増やしたことは問題だと思います。「ゆとり教育で学力が落ちた」と言われましたが、実はそれが誤解だった。2002年~2011年、ゆとり教育の時代で授業時数が一番少なかったときに教育を受けた子どもたちが、国際学力調査PISA2012では読解力も科学的リテラシーもOECD加盟国中1位でした。授業時数増は、子どもにも教師にも過重な負担となっています。PISAの読解力の成績は、脱ゆとり世代の方が落ちているのです。
 私はゆとり教育に戻すべきだと思っています。自由な発想や自由な雰囲気が必要だと考えています。

─文部科学省は、原子力研究開発を担い、高速増殖炉もんじゅ開発も担当していました。文部科学省事務次官として原子力行政をどのように見ていましたか。
 橋本龍太郎政権の時、省庁再編で文部省と科学技術庁が統合されました。原子力の研究開発が文科省にきました。なかでも「もんじゅ」は重要政策でした。原型炉であるもんじゅまでは文科省で、実証炉からあとは経済産業省の所管となっています。私は文部省出身なので次官になるまで詳しくは知りませんでしたが、個人的には原発はいらないと思っていました。
 もんじゅ廃炉は安倍政権の首席秘書官の今井尚也氏を中心に官邸主導で進められました。原発の再稼働を進めるためにスケープゴートにされたのだと思います。
 もんじゅを廃炉にしても、フランスの「アストリッド計画」に加わるので高速炉開発は進められると政府は言ってきましたが、それはほとんどフィクションです。私は、核燃料サイクルの推進ともんじゅ廃炉は矛盾していると思います。もんじゅを廃炉にする以上、当然、核燃料サイクル政策自体を止めるべきだと思います。安倍政権が進める原子力政策は破綻しており、原発から撤退することを考えるべきだと思います。

インタビューを終えて
 人間の知性を感じさせる物言いは、本質的に安倍政権とは相容れないと感じました。文部事務次官を降りてからの前川さんの、安倍政権と対峙する姿勢は、多くの人々に支持されています。政治と社会の狭間の中で、このような人の存在が大事なのだと思いました。
(藤本泰成)

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「辺野古は唯一の解決策」の破綻は明らかだ
第3回「技術検討会」への政府・防衛省報告をめぐって
毛利 孝雄(辺野古土砂搬出反対!首都圏グループ)

「第3回技術検討会」への政府・防衛省報告
 辺野古新基地工事について、政府・防衛省は沖縄県への今年度中の「設計概要変更申請」を準備している。2019年12月25日に開催された第3回技術検討会で、その概要が報告された。当初の計画では完成までに8年、総工費3,500億円以上とされていたが、今回の報告では完成までに12年、総工費は2.7倍の9,300億円に膨らんだ。大浦湾側に広がる軟弱地盤の地盤改良に伴い、工期・工法・工費の大幅な変更を強いられたためである。

工期・工費の大幅な変更
 工期・工費は、そもそも実態を無視した願望に近いものといえそうだ。
 12年は、沖縄県の設計変更承認時点からの起算であり、玉城デニー知事の不承認は確実で、さらに工期が遅れることは明らかだ。地盤改良工事前に行わなければならない、大浦湾の7万8千群体のサンゴ移植については工程自体が示されていない。また、環境影響評価制度にもとづく自然環境への負荷軽減策は無視され、工期短縮のために陸上・海上輸送の併用や様々な工事の同時進行が計画されている。制度そのものを冒とくする暴挙といわなければならない。
 さらに防衛省は、新基地完成後も20年間で26㎝の地盤沈下が予測され、6回の滑走路補修メンテナンスが必要としている。完成後も機能維持のためのコストはさらに膨らむことになる。

工法の大幅な変更
 2019年1月時点で軟弱地盤改良の工法とされていたのは、SCP工法・SD工法による砂杭7万7千本打設、そのための650万m3の海砂調達だった。
 2019年末の報告では、地盤改良区域が縮小され、さらにSCP工法区域を限定し新たにPD工法を採用することで、砂杭の数を減らし海砂の必要量を大幅に減少させている。また、埋立土砂(岩ズリ)必要量の算出を総量から年ごとの必要量に変更し、土砂・海砂ともに沖縄県内での調達が可能(確定ではない!)とした。これまでは土砂の7割強を県外(西日本各地)から搬入する計画だった。基地建設という大規模工事で、1年足らずのうちに工法が大幅に変更になることなど、信じがたい事態だ。これが現実になれば、沖縄の山と海の自然破壊は極限に達するだろう。

世論の分断をねらう政府・防衛省
 1つは、沖縄県土砂条例を回避するねらいである。沖縄県は特定外来種侵入防止対策として、全国初の土砂条例を制定し、届出や立入調査、洗浄などの駆除策について規制を設けている。防衛省はこの間、特定外来動植物の飼育・殺処分実験まで行ってきたが、対策は未だに示されていない。県内土砂による埋立の場合、土砂条例は適用されない。
 2つは、土砂(岩ズリ)・海砂をめぐる利権だ。岩ズリは採石に伴って生じる、通常は値段もつかない廃棄物に近いものである。現在、辺野古側埋立に使われている岩ズリの単価は5,370円/m3で、3年前の3倍近くになっている。利権誘導による沖縄社会や沖縄世論の分断も意識されているだろう。
 3つは、沖縄と全国の分断。西日本の土砂搬出地では「どの故郷にも戦争に使う土砂は一粒もない」を合言葉に辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会が結成され、全国的な沖縄連帯運動の新たな形を生み出してきた。同様の連帯行動は、全国で様々な形で進んだはずである。その絆を断ち問題を沖縄内部に封じ込めるねらいもあるだろう。
 見えてくるのは、辺野古工事のなりふり構わぬ強行である。

「設計概要変更申請」ではなく、新基地計画を撤回せよ!
 普天間基地の「5年から7年以内の返還」に合意してからは、すでに24年が経過した。仲井真元知事による埋立承認時の「普天間は5年で機能停止」との約束期限も過ぎた。辺野古こだわることこそが、普天間を固定化しているのである。「辺野古は唯一の解決策」とする限り、普天間は返還されず「危険性」は放置され続ける。これが、返還合意からの24年間が示す事実である。
 政府・防衛省がなすべきことは、沖縄県への「設計概要変更申請」などではない。辺野古新基地に関わるすべての工事を即時中止し、国会と沖縄県に現状を隠さず報告し、新基地計画そのものを撤回することである。「普天間の危険性除去」「沖縄の基地負担軽減」のための取り組みを進めることである。
 2019年10月、米国の環境団体は、辺野古・大浦湾一帯を日本で初の「ホープスポット」に認定した。2020年10月の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)にむけては、「2030年までに世界の陸域と海域の少なくとも30%を保護区として保全する」ための努力が始まっている。
 生物多様性や気候変動に取り組む世界の趨勢は、すでに明らかではないのか。運用50年程度の軍事基地のために、50万年の歳月で形成されたやんばるの山を削り、辺野古・大浦湾を埋め立てることに、どれだけの理があるのだろうか。
(もうりたかお)

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横田基地の現状とPFOS・PFOA問題
第9次横田基地公害訴訟原告団 団長 福本 道夫

 2018年6月23日のCV-22オスプレイ実質配備以降、横田基地は、にわかに脚光を浴びるようになりました。
 米軍横田基地は、戦後、朝鮮戦争やベトナム戦争時には戦闘機や爆撃機の出撃基地とされてきましたが、1970年代になって輸送中継基地及び在日米空軍・在日米軍の司令部機能を持つようになる中で、飛行回数は2012年までは漸減を続けてきました。しかし、2012年以降、空自航空総隊司令部の横田基地移駐、常駐機による訓練や他基地の兵士によるパラシュート降下訓練の増大、オスプレイ配備などにより、急激に騒音等の被害と事故や墜落などの危険度が高まってきています。
 そして、ここ2年の間にPFOS・PFOAによる水質汚染が大きな問題として浮かび上がってきました。
 この件について、事実経過等を報告します。

人体に悪影響を及ぼす泡消火剤
 まずは、PFOS・PFOAについて、簡単に説明します。有機フッ素化合物であるこれらの物質は、自然界では分解されにくく、生物中に蓄積されると健康に影響を及ぼすことが懸念されており、POPs条約や化審法で規制されているものの、日本では規制基準がまだ定まっていないのが現状です。(注)
 2018年12月10日、沖縄タイムスは、普天間飛行場内を原因とする水汚染を調査する際に、米軍横田基地で2010年~2017年に残留性有機フッ素化合物PFOS(ピーホス)を含む泡消火剤の量が、合計3,161リットル以上が漏出していたことを報じました。また、横田基地の内部向け文書で、基地内の井戸水から高濃度のPFOSが検出されていること、2016年に基地内井戸から採取した水からPFOSと、類似のフッ素化合物PFOA(ピーホア)を合わせた汚染物質の含有量が最大35ng/リットル(ナノグラム=ナノは10億分の1)だったことも報じました。
 なお、米環境保護局の生涯健康勧告値は、PFOS・PFOA合計で70ng/リットルですが、米保健当局は2018年6月の報告書で、PFOSの含有上限を7ng/リットル、PFOAは11ng/リットルと勧告しています。
 そして、2019月6月26日、毎日新聞は、米軍横田基地で2010年~2017年の8年間の間に航空機のジェット燃料などが流出するなどした事故が134件以上起きていたこと、このうち日本政府・外務省に通報があったのは3件しかなかったことを報じました。
 さらに、2020年1月6日に東京都の調査で横田基地周辺の井戸2箇所で高度のPFOSとPFOAが検出されていること(立川市1340ng/リットル、武蔵村山市143ng/リットル)を朝日新聞が報じました。その後、都議会生活者ネットワークが収集した情報では、これ以外に昭島市の飲用井戸5箇所から70ng/リットル以上の汚染があったことも判明しました。なお、東京都の調査のきっかけは、一昨年にPFOSを含む大規模火災用の泡消火剤が過去に基地から漏出した、と英国人ジャーナリストが報じたことだったそうです。

立ち入り調査を拒む米軍、調査請求をしない日本
 ところで、PFOS・PFOAによる水汚染に関して、沖縄防衛局が2017年と2018年度に嘉手納基地への立ち入り調査を要請したが米軍が許可せず断念したことも明らかになっています。これは、2015年9月に発効した日米地協定を補完する環境補足協定があるにもかかわらず、この協定に基づいた請求を日本政府がしなかったこと、この協定と同時に確認された日米合同委員会合意に「当該立ち入りが、合衆国軍隊の運用を妨げることなく、部隊防護を危うくすることなく、かつ施設及び区域の運営を妨げないこと。」という条件が付いており、日本側の請求を認めるか否かは米軍に裁量権があるとされているからでもあります。
 そして、東京都も、防衛省を通じて「基地内の地下水濃度や泡消火剤の使用状況などを明らかにするよう」米軍に求めましたが、いまだに回答は届いていないそうです。
 2020年2月7日の防衛大臣記者会見において、河野大臣は「防衛省が保有するPFOSを含む消火薬剤の処理について、『PFOS処理実行計画』を策定したこと、航空機の格納庫や艦艇で保有しているPFOSを含む消火薬剤について、運用上の支障がないことや必要な予算が確保されるという前提で、PFOSを含む消火薬剤の処分、交換を加速させ、2021年度末を処理期限とすること、ドック入りを要する艦艇については2023年度末までを処理目標としている」と発言しました。また、米側の状況についての質問に対し、「米側はPFOSだけでなく、PFAS全般についてと認識しており、…結論が出れば、…国防省としっかり連携をしていきたい。」と回答しました。
 これらの流れをまとめると、防衛省として検討は進めているが、(日本の)規制基準の策定については、かなり立ち遅れていること、米側には何も言えないという状況であることが、はっきりしました。
 これらに対し、私たち横田基地周辺住民団体は、2019年6月頃から様々な場で日本政府や周辺自治体に対し実態調査の解明や基地への立ち入り調査などを求める要請を行ってきましたが、過去の公害事件の「原因追及の立ち遅れ・大企業優先・被害住民無視の考え方が被害の拡大を招いた」轍を踏むかのように、日本政府や周辺自治体の動きは非常に緩慢です。
 私たちは、これらを動かすべく、早急に活動を強めていきたいと考えているところです。
(ふくもとみちお)
(注):厚生労働省は、暫定目標値として1リットル当たり50ナノグラム(PROS、PFOAの合計値)とする有機フッ素化合物の水道水質基準を、4月1日から適用する方針を示している。(編集部)

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改正水道法の施行とその後:3つの自治体の現場から
水道は投機対象ではない!いのちにかかわる水を市民の手にとりもどそう
全日本水道労働組合 書記長 村上 彰一

 2018年12月、改正水道法が可決・成立し、2019年10月1日に施行されました。改正水道法は、人口減少などによる料金収入の減少、施設更新費用の拡大などにより今後各水道事業者が財政的に厳しい状況を迎えること、また、公共部門・地方自治体の職員定数削減などによる技術力の低下などが懸念されることから、水道事業体の基盤強化を本来の目的としたものでした。

水を食い物にする市場原理主義者
 しかし、竹中平蔵氏に象徴される市場原理至上主義者たちの公的分野の民間開放を求める声によって、事実上の水道民営化である「公共施設等運営権方式」、いわゆるコンセッション方式の導入が改正法に盛り込まれたため、改正水道法は「水道民営化法案」として多くの批判を浴びました。
 水道法改正に先立ち、2018年の通常国会でPFI法改正案が可決・成立しています。これは、水道・下水道分野の市場開放が「遅れている」として水道・下水道事業に民間事業者および民間資金を投入するためのインセンティブを付加するための法改正です。コンセッション導入により、自治体が得た運営権対価を、企業債償還金の繰り上げ返済に充てることで、企業債のいわゆる金利を棒引きするという「特例」が盛り込まれたものとなっています。
 この改正PFI法とリンクした形で改正水道法が施行され、今後は内閣府の「PPP/PFI推進支援」の名の下に、各自治体にさらなる民間事業者への市場開放が強制されます。行き場を失った資金の投資先を創設するため、安定的に料金収入が見込まれる水道・下水道事業を投機対象として市場に売り渡す目的です。しかも、事業責任は自治体においたまま、民間事業者がほとんどすべての事業運営を行える「コンセッション方式」は、リスクを回避し利益だけを享受できる格好の投資先になります。

リスクは自治体、もうけは民間業者
 2019年12月、宮城県が県の水道用水供給事業(浄水の県下自治体への卸売り)、工業用水道、下水道の浄水場・処理場の運営をコンセッションで行うことができる条例改正を行いました。これを宮城県は「みやぎ型管理運営方式」と呼び、民営化ではないと言い張っています。しかし、村井知事は「とにかく民間業者がやりやすいように。投資意欲をもつ民間業者の参画、民間業者の自由度を高めた新たな発想」と、「みやぎ型」の自慢をしていますが、単に県の事業を投資対象にして企業のもうけ口を広げただけです。
 「みやぎ型」の問題点は水道を投機対象にするため、リスクの高い管路の維持管理はコンセッションの対象としていません。低リスクな浄水場・処理場の運営は民間に売り渡し、高リスクな管路維持管理は県が行うため、「利益は民間企業、リスクは市民(自治体)」という構図が明らかです。これだけを見てもコンセッション方式を改正水道法に盛り込んだ目的が浮き彫りになります。
 一方、広島県では県企業局の主導で水道広域化が進められようとしています。しかし、県は各市町村への説明はもとより、市民への情報提供や詳細な説明は何一つ行っていません。不誠実極まる拙速なやり方との批判は逃れられません。広島県では、県と水企業「水ing(スイング)」の共同出資による「株式会社水みらい広島」が設立され、同社は県の浄水場の運営などを一手に受注しています。広島県の広域化は、県が県内水道事業を広域化し、スケールメリットを出した上で「水みらい広島」がコンセッションでまるごと業務を行うという、事実上の民営化に進むことは明白です。
 一方、東京では「持続可能な東京水道に向けて」などとして、都が株式の過半を保持した「政策連携団体」である株式会社東京水道サービスと株式会社PUCを2020年4月に合併し、「東京水道株式会社」を新たに設立、そこに業務の大半を発注することを計画として掲げています。しかし、この「政策連携団体」(特に東京水道サービス)は、離職率が高いことで知られており、労組(東水労)から地裁や労働委員会に提訴されるなど、おおよそまっとうな企業とはほど遠いものです。

災害復旧支援に支障のおそれ
 ここ数年、大きな風水害が相次いでおり、断水なども頻繁に起きています。その都度、周辺自治体などから給水や復旧の支援が行われています。こうした自治体どうしの連携が速やかに行われるのは、水道事業が原則地方自治体によって運営されているからです。
 今必要なことは、水道・下水道に限らず公共サービスに対して市民が関心を持ち、事業の行方について単なる経済性や効率性という言葉に流されることなく、その本質をしっかりと見極めることが重要です。
 市民の無関心が地方公共サービスを崩壊させる要因となり、水道事業者も市民に開かれた事業でなければなりません。しかし、今進んでいるのは事実上の民営化とそれによる情報のシャットアウトです。民営化は水道を市民から遠ざけ、情報を隠し、水道を投機対象にすることです。それは市民の命が投機の対象にされてしまうことを意味します。
(むらかみしょういち)

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汚染水の海放出反対!―海洋放出ありきの議論は許さない
脱原発福島県民会議

福島県への要請行動
 2月7日、脱原発福島県民会議(県平和フォーラム・社民党県連・プルサーマル反対双葉地方住民会議)は、県庁で、「東電福島第一原発敷地内に保管されているトリチウム等を含む汚染水の海洋放出等に関する福島県への要請行動」を行ないました。(右写真)
 政府小委員会が大筋了承した「海洋放出」提言に、福島県の見解として「反対」の意思を明確に示すことを要請で求めています(下記参照)。そして、「風評被害」の問題や追加被ばくの恐れや不安などから、県民世論が汚染水を海洋放出ではなく長期保管することを求めており、被災者に寄り添い、広く県民の声を聞くことを県民は切望していると要請しました。
 これに対する県の回答は、従来の「慎重に検討」する見解から踏み出すことなく「反対」を示すには至りませんでした。加えて、政府小委員会の動向や今後の関係団体などの意見聴取を見守る回答に終始しました。また「風評被害」についても「現状の風評被害に重ねた被害」が起きることを想定していながら、その対策については、国や東京電力の責任と述べるに止まりました。さらに追加被ばくに関しては、「法律に定める一般公衆被ばく線量限度年間1mSv厳守」との要請に対して、「法律の限度内に収まるものと考える」と述べるにとどまり、一貫して主体性のない傍観者的姿勢を示し続けました。
 出席者は、漁業の実情やいわき市の復興策、農業等生産者や観光への影響、事故炉から生じる放射性核種、法律違反・人権侵害などを主張し、県の被災者に寄り添う姿勢の欠落を厳しく糾弾しました。最後に脱原発福島県民会議共同代表の角田政志(県平和フォ―ラム代表)が、住民説明会や公聴会を実施し、広く県民の声を聞くよう求めました。

トリチウム汚染水の海洋放出に対する県の反対見解明示等要請(要請文)
 報道によると1月31日、政府の小委員会は、「海洋放出の方が確実に実施できる」提言案を了承した。また、小委員会は、「風評被害に伴う経済的影響が極めて高いことを指摘し、その対策を要請した。政府は今後、処分方法を決める過程で県内の農林水産業などから意見を聞くことになる」(福島民友2/11)と掲載された。
 トリチウム汚染水海洋放出は、現実的、確実性、実績性、監視体制の容易さを評価する一方で、風評被害は避けられず、風評対策を充実、強化すべきであるとした。政府小委員会報告は、公聴会での意見や県民が求めた「長期保管」選択は一顧だにせず、はじめに結論ありきであり、被災県民を翻弄し愚弄するのもはなはだしい。
 私たちは、トリチウム汚染水(ALPS処理水)の海洋放出には反対である。漁業関係者をはじめ県民世論は海洋放出に反対している。世界に類のない廃炉行程にある事故原子炉であり、子々孫々に引き継ぐべき汚染なき海洋、また国際的影響を考えるなら、これ以上の安易な汚染水放出は許されない。
 これまで福島県産の農水産物等の安全性の確保に取り組んできた漁業、農畜産業、林業等の生産者の努力と将来への展望を根底から覆すものである。さらには、トリチウム汚染水海洋放出は明確な法律違反(敷地境界線量及び一般公衆の被ばく線量限度1mSv超/年)である。
 福島県民は、事故によって、すでに「一般公衆の被ばく線量限度」を超える被ばくを強いられてきた。今回のトリチウム汚染水海洋放出の方針は、県民にさらなる被ばくを押しつける法律違反の人権侵害である。このような国と東京電力のやり方は、復興を妨げ、被害者である県民の感情を無視し、風評被害を確実にもたらす暴挙であり、断じて許せない。
 トリチウム以外の核種についても告示濃度以下に薄めて流せば問題ないとの趣旨の見解(原子力規制委員長.2018.10.5記者会見)からすると、一度海洋に流すと際限なく長期に、他の放射性核種も含めて流すことが懸念され長期的な健康や生態系への影響リスクも生じる。また、低レベル放射性廃液の海洋投棄を原則的に禁止した「ロンドン条約」違反であり、締約国として「我が国は・・海洋投棄は選択肢としない」とした原子力委員会決定(1993.11.2)にも反する。
 私たちは廃炉処理終了に至る過程に於いて、長期保管と併せてトリチウムの分離処理を含む処理方法の検討を強く望むものである。
 今後の政府対応は、年度内の政府小委委員会の取りまとめに基づき、処分方法を決める過程で、「地元の意見を聞きながら時期や場所を決める」としている。原発立地地域の住民をはじめ多くの農林水産業関係者、県民は「被災県民に寄り添い、しっかりと意見を聞いてほしい」と切望している。
 もはや「慎重に検討―県姿勢」段階ではない。県は、被災県民に寄り添い、県民とともに政府に対し、国内外の法律や条約を遵守することを求め、トリチウム汚染水の「海洋放出反対」の意志を明確に示すこと。

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伊方原発の運転差止めとプルサーマルの行方

伊方原発3号機の運転禁止の仮処分―再再稼働の行方はますます不透明
 1月16日、四国電力は定期検査中の伊方原発3号機(愛媛県伊方町)で、プルサーマル発電で使い終わったプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料16体の取り出しを1月15日に完了したことを発表しました。プルサーマル発電で使い終わったMOX燃料を取り出したのは国内初のことでした。伊方原発3号機は、今年3月には新たにMOX燃料5体を装填(そうてん)し、引き続きプルサーマル発電を行おうとしていました。
 しかし、その伊方原発3号機に対して広島高裁(森一岳裁判長)は1月17日、運転禁止を求めた仮処分の即時抗告審において運転を認めないとする決定を下しました。これにより今春の再再稼働は潰え、その行方は不透明となりました。
 高裁決定では「福島原発のような事故を絶対に起こさないという理念にのっとった解釈が必要」との基本姿勢に立って、四国電力に対して地域住民に被害の危険性がないことの立証責任を求め、それを基にして、佐多岬半島沿岸に存在するとされる中央構造線に関わる四国電力の活断層の調査と地震動評価を不十分としました。また、調査不十分なままに提出された原子炉設置変更許可申請を問題なしとした原子力規制委員会の判断は、「その過程に過誤や欠落があったと言わざるを得ない」と厳しく批判しました。また、阿蘇山の破壊的噴火については、破局的には至らないが最大規模の噴火を考慮すべきで、四国電力の降下火砕物の想定は過小であり、それを認めた原子力規制委員会の判断も不合理であるとしました。
 原発運転を差止めるとした司法判断は、福島原発事故以降5回目、伊方原発では2度目となりました。原発に対する司法判断は、福島原発事故以降明らかに変化しつつあるように見えます。

行き場のない使用済みMOX燃料―核燃料サイクルの破綻の直視を
 さらに問題なのは、使用済みMOX燃料の行方です。
 国や電力会社は、原子炉で燃やした後のウラン燃料を再処理し、取り出したプルトニウムでMOX燃料を作り、再び原発の燃料として使う核燃料サイクル政策を基本路線として堅持し続けています。しかし現在建設中の六ヶ所再処理工場では使用済みMOX燃料の再処理には対応できず、新たな工場の建設が必要となります。そのための具体的計画について国は、「発生状況・管理状況・技術開発状況・自治体の意向など様々な要素を考慮に入れながら検討を進めていく」としていますが、進展していないのが現状です。
 使用済みMOX燃料は、通常のウラン燃料よりも長期に渡って高い熱と放射線を出し続けるため、プールで冷やしながら保管し続けなければなりません。当面は原発敷地内のプールで保管することになりますが、将来を見通した処分計画のないまま、原発敷地内に永久的に留め置かれる懸念もあります。これでは事故や災害などの対策は困難であり、不作為のリスクをかかえつづけることになります。
 問題は、核燃料サイクル政策を続ければ、危険で処理処分の困難な使用済みMOX燃料が増える続けることです。プルサーマルの導入は現在4基の原発にとどまっていますが、原発推進派は、16~18基の原発でプルサーマルの導入をめざしています。一方で福島原発事故後、原発をめぐる環境は大きく変化し、再稼働すらまともに進んでいない現状の中で、この目標の達成はほぼ不可能といって良いようです。
 さらに電力自由化により企業間競争も激化する中で、ウラン燃料と比べてもはるかに割高なMOX燃料をわざわざ使うことの意味は見出せません。

六ヶ所再処理工場の存在意義もなく、第二再処理工場など夢のまた夢
 MOX燃料はもともと、高速増殖炉での利用を主に想定していました。その高速増殖炉の原型炉もんじゅが2016年に廃炉となり、その後の開発計画が事実上破綻しました。そのなかでプルサーマル発電として一般の原発で無理やり使っているのが現状です。
 現在、青森県六ケ所村で再処理工場の建設が進められていますが、1993年の建設開始から四半世紀過ぎた今に至っても完成していません。すでに総事業費は16兆円超と言われていますが、さらに費用が膨れ上がることが予想されます。また、使用済みMOX燃料の再処理には新たな工場(いわゆる第二再処理工場)が必要となり、それには莫大なコストと時間がかかります。これまでの試算では12兆円もの費用が想定されていすが、それで済むとは到底考えられません。
 使用済みMOX燃料はもとより通常の使用済み核燃料も含め、再処理をすることは処理・処分のできないやっかいな核物質を大量に生み出していくものであり、現世代や将来世代に大きな危険と負の遺産を残すものです。すでに日本は、47トンものプルトニウムを保有し、それは核兵器に転用可能で、原爆何千発分にも相当する量であり、国際的な懸念が高まる要因となっています。
 安倍政権は、いまだ既存原発の再稼働や原発の新増設に邁進していますが、核燃料サイクル政策の行き詰まりを認め、原子力政策の根本的転換をしなければならないことは明らかです。
(井上年弘)

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高速増殖炉先進国ロシアに負けるな?

 日本では「もんじゅ」のような高速(増殖)炉の推進を訴える際、ロシアでは開発が進んでいると主張されることが多くなっています。日経新聞も、2020年1月20日、「ロシアの原子力技術が世界を席巻」と論じた記事の中で、ロシアの高速増殖炉開発の進展を強調しています。以下、ロシアの実態について簡単に整理しておきましょう。

日経の仏高速実証炉「凍結」特ダネの意味
 日経の記事は、日本がフランスと共同で進めようとしていた高速実証炉(ASTRID)の計画が打ち切られたことに触れた後、「ロシアは既に実証炉『BN-800』の運転を15年に開始。日本が夢見た商用炉建設も20年代を予定する」と述べています。実証炉、商用炉などの言葉の定義をあいまいにしたまま、ロシアが「夢」に近づいていると思わせる内容となっています。記事の最後では、「日本もかつて原子力技術の確立には国を挙げて取り組み…高速炉やウラン濃縮などの研究に取り組んだが、原発事故後は世界をリードする地位を完全に失った」と嘆いています。記事は原子力技術全体に関するものですが、ここでは高速(増殖)炉に焦点を合わせて見てみましょう。
 日経は、18年11月、ASTRIDに関し、仏政府が20年以降計画凍結の方針を日本側に伝えたと特ダネ報道をしていました。同6月に計画縮小意向を日本に伝えた際に仏政府が挙げた理由は、ウラン市場の状況から高速炉開発は「それほど緊急ではない」というものでした。
 元々、高速中性子を活用する「高速」増殖炉が夢とされたのは、ウランが近い将来枯渇するかもしれないとの想定に基づき、プルトニウムを燃やしながら使った以上のプルトニウムを生み出す炉が必要だと考えられたからです。1974年の米原子力委員会(AEC)の予測では、2010年には米国だけで原子力発電容量が100万キロワット級原発2300基分となり、高速増殖炉がその3分の2を占めるというものでした。しかし、心配されたウラン枯渇は起きず、しかも増殖炉の技術は予想以上に難しく、いつまで経っても夢は実現していません。現在の米国の原子力発電容量は約100基分、高速増殖炉はゼロというのが現実です。フランスの決定は、ウランが豊富にある中、軽水炉と経済的競争力を持たない高速炉を急いで開発する必要がないという現実に向き合うほかないと考えたからでしょう。

ロシアの高速増殖炉計画は順調か?
 実は、日経が20年代に建設を予定するとした「商用炉」BN1200について、ロシアのコメルサント紙が昨年8月に、運転開始予定が2027年から2036年に延期されたと報じました。その4年前の2015年に無期限延期が発表された際には、燃料開発の必要性と炉の経済性問題が理由として挙げられていました。そして日経の記事の2週間余り前の、今年1月2日には、ニュークリア・エンジニアリング・インターナショナル(NEI)誌が、昨年12月27日にロシア・エネルギー省が発表したエネルギー戦略ドラフト(2035年まで)にはBN1200の運転が含まれておらず、運転は2035年より後に、建設決定は21年以降になると報じました。2010年の計画では、16年に設計作業完了、30年までに3基の建設を始めるとなっていました。
 旧ソ連・ロシアのナトリウム冷却高速増殖炉の開発は、BN350(廃炉)、BN600(1980年~)、BN800(2016年「商業」運転開始)と進められてきました。600、800という数字は、それぞれ電気出力が60万、80万キロワット程度ということを意味します。実証炉という言葉は、一般に経済性を持つことを実証する炉という意味で使われますが、どの炉も経済性のないことはロシア政府が認めています。商業運転というのは送電線を通じて電力を販売しているということで、軽水炉と競争できる商業的経済性を持つという意味ではありません。
 BN-600の燃料は、プルトニウムではなく、17~26パーセントの濃縮ウランです。高速中性子炉で核分裂を起こした場合でも、ウラン235は1回の核分裂当たり1個より多くのプルトニウム原子を生み出すのに十分な中性子を放出することはできません。だからBN600は増殖炉として運転されていないのです。BN800の初期炉心は、実験的設備で作った劣化ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料が16%、残りは濃縮ウラン燃料という構成です。今年、1月28日、国営原子力企業ロスアトムがBN800に使用済み燃料を使って製造した取替え用標準MOX燃料を装荷したと発表しました。2021年末までに炉心すべてをMOX燃料にする計画とのことです。BN1200は、BN800の経験に基づいて設計・運転されることになっており、準備はまだまだということです。また、燃料としては、窒化物燃料とMOX燃料の両方が検討されてきましたが、窒化物燃料の方はBN600で実験がされた程度です。
 ロシアは、再処理で取り出した使用済み燃料を普通の原発で再利用するという計画を持っていません。高速増殖炉でもウラン燃料しか使われない中、再処理を進めたため、2017年現在、民生用プルトニウムの保有量は約59トンに達しています。核兵器7000発分以上です。ロシアにはさらに、余剰と宣言された軍事用プルトニウムが34トンあります。BN800がフルMOXになっても、軽水炉の使用済み燃料の再処理によるプルトニウムの増加を相殺することはできません。増殖炉の本来の目的はプルトニウムを増やすことですから「ブランケット」と呼ばれる部分を再処理すれば、プルトニウムは増えていきます。経済性もないのに再処理を続けるロシアの政策を口実に他国が再処理を始めれば核拡散の危険が増大します。テロリストによる盗取の可能性も高まります。ロシアの再処理・高速増殖炉計画の現状について語る場合には、このような面についても併せて論じるべきでしょう。
(「核情報」主宰田窪雅文)

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インターンを終えて
白い海が教えてくれたのは
韓喜琇(ハン・ヒス)


2019年5月17日
沖縄平和行進1日目
キャンプハンセン前にて

 東京はまた暖かい風が吹いています。毎日行き来する家の前の路地には黄色い花も咲きました。春が来ているということです。同時に、私がここ、日本に来てもう2年になるということでもあります。
 この2年間いろいろな所に行きましたが、沖縄は2回訪ねることができました。
 去年5月に初めて訪れた沖縄は、戸惑いそのものでした。これまでテレビや雑誌で見てきたキラキラした海より、島のあちこちにそびえ立っているフェンスが先に目についたからです。私は、所狭しとひしめいている島の住民たちの家と果てしなく広がる米軍基地の芝生に挟まれて歩き続けました。道路には大きな米軍の軍用車が通り、基地の前には英語の看板のお店が並んでいました。頭の上には何度もヘリが通り過ぎ、その騒音で頭が痛くなったりしました。私が知っていた沖縄とはあまりにも違う姿で衝撃を受けました。私は知らなかったのです。沖縄のごく一部しか知らなかったのです。


日韓米軍基地問題シンポの交流会で創作ダンスを披露する
(左端が筆者 2019年12月8日)

 再び訪ねた12月の沖縄は風雨が吹き荒れました。辺野古のサンゴ礁の海は依然として工事が進んでいて、人々はひるむことなく戦い続けていました。集会に参加していたおばあさんは「戦争のために土地を渡すことはできない」と言い、学校の先生は「窓を開けて授業をしたい」と言いました。それなのに、「誰か」が「平和のために基地を作ろう」としています。「戦争に備えて訓練を増やそう」と、「もっと高い武器を買わなければならない」と言っています。住民たちの日常的な平和は、もう崩れているのに。
 ここ、南の島で「海は白くもある」ことを初めて知りました。透明できれいな水の中の白い砂の底がそのまま照らされて白く見えました。「海は青」という偏見がガラガラと壊れる瞬間でした。砂や石ころの色や魚の動き、日の輝きによって変わる海の色は私自身を振り返らせました。私はどれだけ多くの思い込みと無知の中で生きてきたのか、と。


2019年8月9日、原水禁世界大会で通訳(右側)

 振り返ってみればこの2年間は毎日が気づきの連続でした。私とあなた、私と世界が接する日々でした。国会前での毎月19日行動の時も、自衛隊海外派兵に反対して平和憲法の大切さの話をしながらも、朝鮮学校の無償化からの排除や在日への差別に抗議する時も、女性に対する差別的な言葉に向き合いながらも、また戦争の残酷さを確認し、原発の恐怖を感じながらも。
 何日か前に朝起きて、窓の外を眺めました。窓の外には大きなゆずの木があります。2年前と同じように木の枝にはたくさんのゆずが実っています。しかし、同じ風景を眺める私はとても変わっているように感じます。決して同じ人間ではいられないでしょう。これは、高くて硬いように見える現実の前で皆さんと手をつないで声を上げた経験をしたからだと思います。そのたびに不思議なほど心強くなる私たちの連帯を感じたからです。お互いにお互いの勇気になることができたからのです。韓国に戻って、私が日本でみんなと一緒に得たものを発言しようとする時、白い海の衝撃もかならずよみがえる気がします。

 ハン・ヒスさんは、平和フォーラムのインターン留学生として2018年3月に韓国から来日しました。
 インターン留学はこれまでに、ヒスさんを含め2名が来日しています。そもそもこの事業は、日本と韓国の連帯運動を若い世代につなげていくために、人材を育て行くことを目的としています。

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加盟団体の活動から(第26回)
農林水産業の再建を運動の柱に
全農林労働組合

 全農林労働組合(全農林)は、1945年12月に中央省庁のなかで最初に結成された労働組合です。農林水産省及び農林水産省所管独立行政法人(6法人)に働く職員で構成し、組合員の雇用・労働条件の維持改善と社会的・経済的地位の向上を目的に結集しています。また、全農林の基本綱領では、官庁・農政の民主化や平和と民主主義を希求する民主国家をめざすことなどを掲げていますが、とくに官庁の民主化や人員整理反対などの課題は国民的な支持なくしては達成できないとの考えの下、戦後の国民的課題であった食糧危機突破の運動に連動させてその前進を図ってきました。
 農政を巡っては今日的にも、193通常国会以降の3年間に官邸主導による農林水産業改革が専横的に進められ、企業参入と競争原理の強化を主眼とした多くの農林水産業改革法が矢継ぎ早に成立されており、今後は各種施策の具体化に伴う生産現場や地域社会への影響が懸念されています。
 全農林は、持続可能な農林水産業の確立はもとより、地域経済対策の充実による農山漁村の活性化が急務との認識で対案・対置の運動を進めていますが、官庁の民主化と農林水産業再建の運動は、現在も全農林運動の変わらぬ命題となっています。
 また、これらの運動は、平和フォーラムの枠組みの中でも「食とみどり、水を守る全国集会」として、全国の構成組織の仲間の皆さんとともに前進させてきましたが、「全国集会」は一昨年の第50回集会(高崎市開催)を節目に一旦休止し、運動課題は規模を縮小した「全国活動者会議」に引き継いでいます。
 このほか、平和と民主主義を守る取組においても、「平和なくして尊厳ある労働や基本的人権の尊重は成しえない」との理念の下、護憲・原水禁運動などにも積極的に関わっていくことを毎年の運動方針にも掲げており、引き続き平和運動の前進に向け運動を強化しています。

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加盟団体の活動から(第27回)
憲法の基本理念を尊重することを活動の基本に
全日本自治団体労働組合

 自治労(全日本自治団体労働組合)は、1954年に設立されました。地域公共サービスの担い手として、県庁や市役所、町村役場、一部事務組合などの自治体職員をはじめ、公社・事業団、福祉や医療などに関わる民間労働者や臨時・非常勤等職員、競輪や競艇場などの公営競技関係労働者、地下鉄やバスなどの交通労働者、流通、小売、製造業などさまざまな労働者も自治労の仲間です。
 自治労は、47都道府県本部を通じ、組合員の労働条件に関わる課題解決のためのサポートをはじめ、一人ひとりの組合員がゆとりを持って暮らせるよう、賃金労働条件の改善、必要な人員の配置、安全で快適な職場環境の確保などに取り組んでいます。また、社会的にも年金や社会保障制度を充実させる活動を行い、トータルな生活水準の向上をめざしています。具体的には、制度や法律の設計や改正など必要に応じて、政党請願行動、省庁交渉、首長交渉などを行い、自治労組合員だけでなく労働者の生活と権利を守るために行動しています。
 豊かで平和な暮らしは、職場の中の活動だけでは実現できません。地球的規模で起きる環境破壊や経済格差、自然災害、戦争、民族紛争等、現代社会はたくさんの問題を抱えています。個人では解決できないことでも、労働組合という組織で力を合わせ、大きな力とすることで問題の解決をはかることができます。自治労はさまざまな団体等と連携し、「社会正義」の実現をめざしています。
 当面の最重要課題は、平和を脅かす安倍政権による「憲法改正」の阻止にあります。自治労は、辺野古新基地建設やオスプレイの配備・導入・整備拠点化、陸上配備型迎撃ミサイル(イージス・アショア)の配備計画などの政権が推し進める、「軍事力増強、戦争のできる国」に反対し、平和をつくる取り組みを引き続き進めます。
 原発問題については、原発の再稼働や新設・増設に反対し、脱原発社会の実現に向けた取り組みを進めています。広範な市民・住民と連携し、地域分散型再生可能エネルギーへの転換をめざすとともに、「原発ゼロ基本法案」の成立や、福島原発事故を風化させないための取り組みを進めています。
 自治労は、憲法の基本理念である平和主義、国民主権、基本的人権の尊重をすべての取り組みの基本とし、憲法前文および9条を堅持し、誰もが安心して暮らせる平和な社会の実現にむけ、平和フォーラムと連携し取り組みを進めます。

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核のキーワード図鑑


戦争のなくならない世界だから9条を!!

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2020原発のない福島を!県民大集会
日時:3月14日(土)13:00~
場所:とうほう・みんなの文化センター
主催:「原発のない福島を!県民大集会」実行委員会

安倍9条改憲NO!安倍政権退陣!3・19国会議員会館前行動
日時:3月19日(木)18:30~19:30
場所:衆議院第2議員会館前
主催:安倍9条改憲NO!全国市民アクション実行委員会
 戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

3・20さようなら原発全国集会
日時:3月20日(金・休日)13:00~/15:00~デモ
場所:亀戸中央公園(東武亀戸線「亀戸水神」、JR「亀戸」下車)
内容:発言とデモ行進
主催:「さようなら原発」一千万署名市民の会協力:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

ニュースペーパーのリニューアルについて
 みなさまにご愛読いただいている本紙・ニュースペーパーですが、2020年4月号より紙面をリニューアルし、原則8ページ(現在は12ページ)で発行致します。料金につきましては、これまで印刷費の高騰や消費税の増税等がありましたが、1部¥200、年間購読¥2,000で発行してまいりました。今後も同料金で発行し、引き続きご愛読いただけますよう取り組んでまいりますので、どうぞよろしくお願い致します。

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