2018年、ニュースペーパー

2018年10月01日

ニュースペーパー2018年10月






さようなら原発全国集会
 さようなら原発全国集会9月17日に東京・代々木公園で「いのちをつなぎくらしを守れフクシマと共に」をスローガンに「さようなら原発全国集会」が開かれ、8000人が参加しました。同集会は2011年3月の東京電力福島第1原発事故以来、「さようなら原発」一千万署名市民の会の主催で毎年春と秋に開かれ、原発事故の責任を問うと共に、再稼働反対、エネルギー政策の転換を求めてきました。今回は「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」も協力し、安倍政権と対峙し、沖縄・辺野古新基地建設反対、同県知事選挙勝利も呼びかけました。(写真上・今井明)

インタビュー・シリーズ:137
経済人から見て原発を推進する正当性はまったくない
原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟会長・城南信用金庫顧問 吉原 毅さんに聞く

よしわら つよしさん プロフィール
 1955年東京生まれ。77年に慶応大学経済学部卒業後、城南信用金庫に入職。2010年11月に理事長就任。15年6月に退任し、相談役に。17年6月から顧問。東日本大震災以降、被災地支援を精力的に行うと同時に、原発に頼らない安心できる社会をめざして「脱原発」を宣言。17年4月に全国組織「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」を創設、会長に就いた。福島第一原発事故を受け「脱原発」を宣言した異色の金融マンとも評され、経済人として正面から原発の問題点を訴えている。多忙な日々の中で家庭菜園も手がける。「城南信用金庫の屋上でサツマイモや枝豆などを作って、職員みんなで食べるのが楽しみ」。

─東京電力福島第一原発事故後、城南信用金庫として「脱原発」を宣言したり、小泉純一郎さん、細川護煕さんの両元首相などと脱原発や自然エネルギーを推進する民間団体の「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(原自連)を結成したり、これまでの経済人と違い勇気ある決断と思いますが、なぜそのようにしようと思われたのですか。
 もし、隣の工場で爆発事故があって、被害を被ったならば、どんな社長でも怒ります。ましてやその工場が謝らなければさらに大きな怒りとなります。企業経営者としてその被害から従業員やお客様を守るということが常識です。そのことは社会正義を守ることでもあります。ところが原発事故は、不可抗力だと言って謝らない。そこがおかしい。原発については世の中の常識が通用しない現実がたくさんあります。
 私たちは、東京や神奈川で一生懸命仕事をしています。金融機関として、地域の発展・繁栄のお手伝いをさせていただいています。その地域を脅かしているのが原発で、「責任者出てこい。二度とこんなことを起こさせない」と訴えています。ところが、そのようなことが行われていないのが異常なのです。私はそういうことをごく常識的に言っているのでしかありません。ことさらに、原発のことを発言するようになったのではなく、原発のことを発言しない方がおかしいのではと思っています。
 原発は異常かつ特殊なことが多すぎます。このことに対して、私は非常に違和感を持っています。私は常識的発言をしているだけです。それに対して、非常識の世界がまかり通っていることにゾッとしたわけです。これまで原発問題や核問題に関心がなかったことを反省もしているのですが、こんな異常な世界だったのか、とあらためて感じてきたわけです。
 経済人の目から見たら、今の原発は推進する正当性がまったくなく、それどころか経済の基盤である国家や社会、国土、国民に甚大な被害を与えかねないものとなっています。それは経済活動の存続を脅かしかねない。原子力というのは、そういう存在なんです。経済社会を壊すものがまかり通ってはならないと思っています。

─そのような存在の原発がなぜ推進され、なくならないのでしょうか。
 自分の頭で考えないで、人の言うことばかり聞いているような人達が多いからです。「長いものには巻かれろ」「人の言うことを聞いている」だけの方が、自分にとって得だから。つまり目先のことしか考えないのだと思います。これこそ近代社会の弊害で、お金の弊害だと思います。「今だけ、金だけ、自分だけ」という風潮になった結果、社会全体を見通す力がなく、思考停止に陥っているのだと思います。近代社会の人間疎外の中で、人間性を失った結果だと思います。ゾンビのような人たちが、財界人や政府にも多いのです。
 なまじっか地位やお金を持っている人は、自己保身に陥ってしまいがちです。その結果、社会全体を見通す力、判断する力を失っていることになります。それは、政府や政治家、財界、マスコミなどにも多い。なまじっか地位とお金を持つと堕落するということです。

─原子力政策が行き詰っているのにもかかわらず、なぜ方向転換ができないのでしょうか。
 アメリカはさっさと原子力から降りました。東芝は米国のウエスティングハウス社を買収し、その後経営がうまくいかなくなりました。さすがに財界も「これは大変なことだ」と気づき始めました。トルコでは伊藤忠商事が原発建設計画から逃げて、三菱も逃げようとしています。そして今度はイギリスの原発から日立が逃げようと、英国政府と必死になって交渉しようとしています。大手メガバンクは100%国が保証しなければ、お金を貸さないと言ってきました。つまり「逃げた」ということです。
 このように、原発に対するリスクが明らかになり、大企業が逃げ出しているというのが実態です。民間企業は逃げ出さざるを得ない状況にありますが、国からどのような仕返しがあるかわからないから、ギリギリの所で留まっているのが、いまの財界の状況ではないでしょうか。

─原子力政策は、国も財界も電力業界も誰も責任を持たず、政策転換に向けたリーダーシップも発揮できないまま、エネルギー基本計画で原発推進だけが通っていく状況をどのように見ていますか。
 やっぱり無責任主義ということなんですね。さっき言ったように、お金に頭をやられて、「今だけ、金だけ、自分だけ」というようになる。そして社会全体に対して無責任になるというのが昔からの人間のセオリーなんです。お金というものは、自分のことしか考えなくなる麻薬のようなものなんです。そうなった時に人間は思考停止になってしまいます。と同時に無責任になります。その人たちが実際に政府や財界にいて権力を握り、そうして堕落していくというこが問題です。そこにメスを入れ直さないといけないですね。原発だけではなく、例えば軍事産業の強化など、あらゆることでも同じ問題を抱えているのではないでしょうか。

 

─吉原さんが「脱原発」の発言をしだしたときに、様々なプレッシャーはあったのでしょうか。
 ろくな反応はなくて、「せっかく原発があるのにもったいないじゃないか」とか、「将来的には安全な原発の技術ができるかも知れない」、「浜岡原発は危険だが、島根や九州の原発は安全なんじゃないか」とかいう財界人がいました。それは超無責任だと思いました。批判ではなくて愚にもつかない反論でしかなかったのです。
 しかし、財界人のなかにもまともな人もいて、三井住友銀行の元頭取の西川善文さんは、「原発なんかやめるべきだというのに大賛成だ」とブログでも書いていました。その他にも楽天会長の三木谷浩史さん、ソフトバンク社長の孫正義さんらも言っています。決してマイナーではないのです。

─今年1月に、国内原発の即時廃止をめざす「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」の骨子を発表し、政府や政党に原子力政策の転換を呼びかけました。それらを元にして、野党が共同して「原発ゼロ基本法案」を、先の通常国会に提出しましたが、議論もないまま流れてしまいました。今後この法案の行方をどう見ていますか。
 今回は、野党が共同提出し、与党が反対したということを明らかにしていくことが大事だと思います。そして、今後、原発のある地方が事故によって消滅する危険性があるので、半径250キロ圏内の自治体と協力して反対していくことが必要です。また、宗教団体、地域の中小企業などに訴え続けていくことも必要で、保守の人たちにも訴えるべきです。保守・革新を問わず、左右関係なく多くの人に訴えていくことが大切です。
 さらに、自然エネルギーに関しては、いま、海外から石油や天然ガスを輸入するために20兆円も使っているわけです。これは再生可能エネルギーを活用することで減らすことが出来ます。そのために、私たち全国の信用金庫では再生可能エネルギーを拡大するための融資も行っています。しかし、この動きを阻んでいるのが経済産業省です。


「さようなら原発全国集会」で原発ゼロ法案を訴える吉原さん
(9月17日・代々木公園 写真・今井明)

─このような動きができる吉原さんの原点とはなんでしょうか。
 会社が好きか、嫌いかですね。会社が好きだったらその会社が卑怯者でいいんですか、誇りを持って働ける会社にするべきなんじゃないかということです。人生をかけて働き、信頼を得ようとする会社が、こういったことから逃げたら、非常にがっかりしますし、そういったことは許されるものではないということです。会社の名誉を守ることでもあり、日本社会の名誉を守るものでもあります。さらに日本人の名誉を守ることでもあります。こんなこことも解決できなければ、世界から笑われてしまいます。ご先祖様にも、将来の子どもたちにも笑われます。
 私は、過去から将来に向かって考える経営をしようとしていくのが普通なんじゃないかと思っているんです。多くの人たちは、会社をただのキャッシュマシーンと思っているんではないでしょうか。私はそうは思っていなくて、会社で給料を貰って、地位と金を保証すると思っていることが大きな間違いで、そんなところに自分の人生をかけて仕事なんかできるわけはないじゃないですか。誇りをもって働ける会社にしたいと思っています。

インタビューを終えて
 短い時間の中で、ここに収め切らなかった含蓄あるお話がたくさんありました。長年、金融という世界で経済人として、経験と実績に裏付けられた確信のある言葉で、私たちが進めてきた運動にさらに自信と元気を与えていただきました。吉原さんは、各地で精力的に講演会などを展開しています。ぜひ直接お話を聞いていただければと思います。
(井上年弘)

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石垣島に対艦・対空ミサイル部隊を配備
中山市長の強権・無責任政治を撃つ
平和フォーラム沖縄事務所 山入端 魁

 2015年に防衛省は、陸上自衛隊配備の候補地を「石垣市・平得大俣(ひらえおおまた)の市有地及びその周辺」とする旨を市当局に示した。配備されるのは対艦ミサイル・対空ミサイル部隊約600名である。
 これに反対する平和団体、市民団体、労組、野党市議、個人は、地元4公民館(嵩田、開南、於茂登、川原)とともに「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」〈以下、市民連絡会〉を結成し、現在まで反対運動を展開してきた。


配備予定地の反対看板(石垣島)

「日本会議」の市長が批判を封殺
 今年8月18日の記者会見で、中山義隆・石垣市長は「陸上自衛隊の配備了解」を表明した。この表明は何重にも特異なものだった。まず、市長は「受け入れ表明か」との記者の問いに、「国防は国の専権事項だから、受け入れないとの判断は基本的にないので、その逆の言葉は使わず了解する」と答えた。国の言いなりにしかならないのであれば「了解」云々も不要のはずだ。次に、市長は「2015年以来、2年半以上議論を重ねて出尽くした」「これが最終判断だ」としている。実際この会見以降、地元への説明もなく、面談要求にも一切応じていない。
 さらに「〈地元の〉反対には事業主体である防衛省がやるべき」として、自らの説明責任を公然と放棄した。
 また、「県のアセスメント(環境影響評価)条例に引っ掛かり手続きが進まなくなるのはよくない」として、この「判断」がアセスメント逃れであることを自ら暴露してはばからなかった。ちなみに沖縄県が10月から施行する改正環境評価条例は、20ヘクタール以上の土地の造成を伴う事業を環境アセスメントの対象とするものだが、経過措置として来年3月末までに事業を実施すれば、改正規定が適用されない。市長の狙いはここにある。しかし、本来環境アセスメントは環境破壊を防止するためのものである。自治体の首長が国や県にその実施を要求するのが通例であって、市長自身が無視・回避する態度は異様としか言えない。
 そもそも中山市長は、かの「日本会議」(日本最大と言われる右派政治団体)の尖兵として、「国の専権事項」の軍事・外交に多々提言をしてきた人物である。今回に限って自ら議論を封じた理由について、現地では様々な憶測が飛び交っている。いわく「ミサイル戦の最前線に立つリスクは(莫大過ぎて)説明不能だからだ」「カラ出張、公金の不当支出、マンション贈与などの諸疑惑や1億円の株損益の処理でアップアップさ」等々。いずれにせよ無責任かつ強権政治のそしりはまぬがれない。
 会見翌日の19日、市民連絡会は抗議声明を出し、市長の「受け入れ表明」を厳しく批判。その後、市役所前で抗議集会を開催し市長への面談を求めたが、市長は職員にピケットを張らせるなどしてこれを強く拒否した。さらに同21日には基地予定地の4公民館が記者会見を開き、市長の不誠実さを批判するとともに「これは石垣島全体の問題。4地区以外の市民にも関心を持ってもらい反対への賛同を求めていく」とした。

予定地の地元は90%以上が反対
 4公民館を基盤とする花谷史郎・石垣市議は憤る。「反対する市民への説明・説得は防衛省に任せる、アセスメントは要求しないしやらない、では市長は一体何の為にいるのか」と。同時に4公民館以外の市民の関心の低下を危惧している。「地元はミサイル部隊に90%以上が反対で結束している。ただ市街地の市民は決定された事だと思い始めているようだ」。
 実はその危惧は数字の面からも裏づけられる。2017年9月、市民連絡会は「石垣島への自衛隊配備撤回を求める要請署名」14022筆を市長に提出した。47000人余りの石垣島で約3割が配備反対を表明したことになる。他方、反対集会への参加は2017年の市民集会に800人が参加したのをピークとして以降、減少傾向にある。また、直近の2018年3月の市長選でも、反対派候補と、候補地変更派候補の合計得票数は市長の得票を上回ったが、結果として中山市長の3選を阻止出来なかった。さらに9月9日の市議選でも、野党は現状維持だったが、市長の与党の1増を許した。「争点隠し」に負けたといわれている。
 この配備問題を「イデオロギーの対立として位置づけることなく、島の未来は市民が決めるという地方自治の課題として取り組みを進める」(宮里勝八重山地区労事務局長の自治研レポートより)という方針の実践が問われている。すでに始まっていると言われる買収や分断攻撃を許さず、4公民館の団結を基盤としつつ、市街地市民との連帯を重層的に生み出せるかが鍵となる。
(やまいりばたたかし)

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関東大震災の朝鮮人虐殺犠牲者への追悼を!
小池都知事にオリンピック主催の資格はない
フォーラム平和・人権・環境 共同代表 藤本 泰成

今年も追悼文は送られなかった
 1923年の関東大震災から95年目の今年9月1日、震災の混乱の中で「井戸に毒を入れた」「放火した」など様々なデマを理由に、軍・警察・自警団などの手によって虐殺された朝鮮人犠牲者の追悼式が、東京都立横網町公園で開催された。小池百合子都知事は、歴代知事が送ってきた追悼文を、昨年同様に今年も送らなかった。
 この追悼式典は「9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼実行委員会」が毎年開いてきた。横網町公園に朝鮮人犠牲者追悼碑が建設されたのは73年、事件から50年後に当時の美濃部亮吉都知事の協力もあって実現した。美濃部都知事は、碑建設の翌年の74年「(当時の)悲惨な行動は、今でも私たちの良心を鋭く刺す」という追悼文を送り、その後、歴代の都知事のほとんどが追悼文を送っている。この日、村山富市、鳩山由紀夫元首相、立憲民主党枝野幸男代表、朴元淳ソウル市長など多くのメッセージが代読されている。
 内閣府の中央防災会議が2008年3月に出した報告書には「関東大震災時には横浜などで略奪事件が生じたほか、朝鮮人が武装蜂起し、あるいは放火するといった流言を背景に、住民の自警団や軍隊、警察の一部による殺傷事件が生じた」と明確に記載されている。犠牲者数は確定できないが、最も少ない内務省警保局調査でも死亡者231人と記載されている。
 小池都知事は「民族差別という観点というよりは、さまざまな被害によって亡くなられた方々に対しての慰霊をしていくべきだというふうに思っております」と答えているが、自然災害による犠牲者と人の手による虐殺の犠牲者とは全く異なる。異なる犠牲者を一緒に扱ってしまうことは、歴史事実を改ざんしていくことに他ならない。「レイシスト・歴史修正主義者」との批判を免れない。なぜ追悼碑が作られ、毎年追悼式を続けてきたのか。その式典に、これまでの歴代知事がなぜ追悼文を送り続けてきたのか、小池知事はその事実を受け止めなくてはならない。
 2016年8月5日、就任最初の記者会見において小池知事は、舛添要一前知事が朴槿恵韓国大統領(当時)の要請を受けて都立高校跡地を韓国人学校に有償貸与するとした計画を白紙撤回した。都は、2010年に都立池袋商業高校の跡地を東京国際フランス学園に売却している。韓国人学校への売却の白紙撤回は、きわめて恣意的な差別事象に映らないだろうか。これらの事象は、小池都知事の朝鮮半島の民族への差別意識の表出に違いない。


毎年式典が行われる追悼碑(墨田区)

差別の解消が五輪憲章にこたえること
 いま、東京都は「2020東京オリンピック・パラリンピック」の準備に追われている。東京五輪競技大会組織委員会は、公式HPの中で、三つの基本コンセプトを掲げている。そのひとつが「多様性と調和」で「人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治、障がいの有無など、あらゆる面での違いを肯定し、自然に受け入れ、互いに認め合うことで社会は進歩」とある。このことは「このオリンピック憲章の定める権利及び自由は人種、肌の色、性別、性的志向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない」との根本原則によるものである。オリンピックは、すべての差別を禁止し、個人の基本的人権に立脚して個人の立場で争うことを基本にしている。
 国の違い、民族の違いを乗り越え、個人としてその能力を競うオリンピックを主催する側の小池都知事の関東大震災の朝鮮人犠牲者に対する態度は許されるものなのだろうか。組織委員会は、同じく基本コンセプトに「世界中の人々を最高の『おもてなし』で歓迎」と書いている。この「おもてなし」に「真心」は付いてくるのだろうか。
 この間、麻生太郎財務大臣のセクハラ容認発言や、杉田水脈衆議院議員の「LGBTには生産性がない」との発言など、差別的発言が横行し世界から批判の声を聞いている。2018年8月30日、国連人種差別撤廃委員会は、日本の人種差別撤廃条約の実施状況に関する総括所見(最終見解)を公表した。日本に人種差別を禁止する包括的な法律がないことを遺憾に思うとして、ヘイトスピーチが続いていること、先住民であるアイヌの人々の差別が続いていること、琉球・沖縄の人々の適切な安全を確保すること、高校就学支援金制度から朝鮮高校が除外されないことなど、様々な差別の解消をあげている。
 差別して恥じない政治、そのことを容認する日本社会、うわべのおもてなしではオリンピックは意味を持たない。今ここでオリンピックを開催する意味を問う声も大きい。その声にこたえるためにも、オリンピック憲章にこたえることだ。
(ふじもとやすなり)

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日欧EPAで食の安全はどうなるか
先進的なEUの基準を日本は無視
TPPプラスを許さない!全国共同行動実行委員/明治大学講師 山浦 康明

 日本政府は各国・地域との自由貿易協定を推進しています。これらは「保護主義から自由貿易を守る意義がある」とするメディアの論調もありますが、自由貿易の論理そのものの中に多くの問題点があることを忘れてはなりません。まもなく開かれる臨時国会での、日本とヨーロッパ連合(EU)との経済連携協定(日欧EPA)の協定審議を前に、食の安全など、市民の視点から問題点を検討してみます。

牛乳が飲めなくなる!?酪農・畑作物に大きな影響
 日欧EPAにおいては、環太平洋経済連携協定(TPP)以上に農産物貿易において譲歩したり、食の安全や食品表示などをめぐっても、欧州の厳しいルールを拒否するなど、日本政府の姿勢には多くの問題があります。国会では徹底的な議論が求められます。
 日欧EPAでは、農林水産品でTPPと同等の全品目の82%の関税を撤廃します。チーズではハード系(ゴーダチーズなど)ばかりでなく、EUにブランド力があるソフト系(カマンベールなど)にも輸入枠(3.1万トン)を設けて関税を撤廃します。これにより国内乳製品の生産額は203億円も減少すると農水省も認めているのです。
 また、EUは豚肉の生産でも世界第2位を占めますが、低価格部位やハム・ソーセージなどの調整品の輸入増加でTPP以上の悪影響があります。小麦製品のパスタも段階的に関税が撤廃されると、日本の国内産が割高となり価格競争に巻き込まれます。チョコレートでもEUブランドが強く、関税が徐々に引き下げられ11年目にはゼロとなります。国産チョコレートはEU産との価格競争に巻き込まれ、国産へ提供している砂糖の引き受け先も先細る恐れがあるのです。
 こうした結果、国内の酪農や畑作物生産に深刻な影響を与え、新鮮な牛乳が飲めなくなったり、沖縄などの離島の存続もできなくなる恐れがあります。
 日欧EPAでは、産地名などを含んだ特産物の名称をブランドとして保護する「地理的表示」(GI)の相互保護も協定発効とともに適用されます。日本は夕張メロン、神戸ビーフなど48品目、EUはチーズのゴルゴンゾーラ、ロックフォールなど71品目をそれぞれ保護することになります。政府は「日本の農林水産物をブランド化できる」と説明しますが、日本のGI産品は現在48品目であるのに対し、EUは1300品目ほどもあるといわれており、今後もGI保護の要求が拡大するでしょう。日本も対策を進める必要があります。


日欧EPA署名に抗議する官邸前行動
(7月17日)

消費者の選択権を十分に確保できる共通ルールを
 食の安全をめぐっては、日欧EPAの「衛生植物検疫措置に関する章(SPS章)」の中で、食品の安全性評価でEUが基本的とする「予防原則」が明文化されませんでした。これは、新技術などに対して、重大な影響を及ぼす恐れがある場合は、因果関係が十分証明されなくても規制をする考え方で、EUは米国との間で遺伝子組み換え食品(GMO)や牛肉生産におけるホルモン剤でも予防原則を重視しています。
 しかし、日欧EPAでは食品添加物に関する項目でも日欧間の違いは調整されず、食品添加物の承認が不当に遅延することなく行われることや、情報提供を行うことなどを規定するにとどまっています。環境影響が懸念されるネオニコチノイド系農薬や放射性物質の規制をはじめ、食品添加物においてもEUの基準は日本より厳しいものも多いのです。内分泌かく乱物質については、EUは今年6月から加工食品の防腐剤で、11月からは農薬で再評価を行い、規制基準を強化する予定です。食の安全や環境保全を進めるうえで、共通の厳しい基準を日EU間の交渉成果に盛り込むべきでした。
 また、日欧EPAの「貿易の技術的障害に関する章(TBT章)」では、製品の表示に関する規格や適合性評価手続きを規定しています。食品表示については、日EU間で異なる表示制度があった場合に調整する規定もあります。欧州では遺伝子組み換え食品の表示規制や、加工食品の原料原産地表示も厳格です。しかし、日本政府の担当者は食品表示制度の違いについて「双方の規格基準をそのまま尊重するのが原則である。必要な場合は国際規格をもとに調整をすることもありうる」「日本の新たな食品表示基準は国内制度を検討したものであり、輸出入との関係を考慮したものではない」などと、改善をするつもりがないことを強調しています。
 これでは、日本の企業は欧州向けの厳しい基準と日本国内向けの緩い基準を使い分けることになります。日EU双方が消費者の選択権を十分に確保できる共通ルールを策定すべきであり、日本だけが消費者の選択権を十分に確保できないルールに固執することは改めるべきです。TPPプラスを許さない!全国共同行動(平和フォーラムなど共同事務局)では、臨時国会での審議を注視し、行動することにしています。
(やまうらやすあき)

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チェルノブイリとフクシマをつなげて考える
原水禁世界大会に来日したジャンナ・フィロメンコさん(ベラルーシ・チェルノブィリ原発事故被災者)に聞く


原水禁世界大会で報告するジャンナさん
(8月5日・広島)

事故のことは何も知らされなかった
 1986年4月26日にチェルノブイリ原発事故が起きました。私は、原発事故当時、チェルノブイリ原発から40km離れたナローグリアという街に住んでいました。町を流れるプリペチ川の上流に原発があります。当時、事故が起きたことは私たちに知らされませんでした。28日になってタス通信が「チェルノブイリで小さな事故が起こったが、収束に向かっている」と報道しました。行政は、パニックを怖れたのか何も情報を出しませんでした。危機感を抱いた住民の中には、子どもを親戚の家に預けるなどして、週末を過ごしました。
 しかし、週が明けると、学校からは、大丈夫だから学校に出てくるように指示がありました。授業で使うガイガーカウンターを先生たちが使ってみると、カウンターが振りきれました。「何かがおかしい」と行政に伝えると、使い方が悪いといって取り上げられました。
 5月1日のメーデーは、ソ連全土でお祝いするために、子どもたちは道路の清掃などに駆り出されます。また、コルホーズ(集団農場)ではジャガイモを植え付ける時期でもあり、農作業をたくさんの子どもたちが手伝います。その子どもたちは、知らない間に放射性物質を大量に浴びていたのです。
 2日の午後になって、行政の指示で避難が始まりましたが、新学期の9月には子どもたちは帰ってきて、91年までナローグリアに住み続けました。ナローグリアの汚染レベルは、福島県飯館村と同じレベルで、年間5ミリシーベルトくらいでした。

子どもたちの病気が多発した
 その後、私はミンスクで移住する権利を求める運動を、学者や作家、市民活動家たちなど事故に関心を持つ人たちと起こしました。まずは正しい情報をくれと地域の官僚に訴えました。事故直後、知識も情報もなく、ヨードがいいと聞けば薬局で売っているものを買って飲みました。連動して、ナローグリアの工場で働いていた人たちは、ストライキを始めました。だんだんと他の団体も運動に連帯し始めましたが、国営企業などはソ連という国柄、行政から脅されたりもしました。州知事などは、市民の運動が盛り上がっていても、関係のないような様子でした。
 移住するまでの5年間、学校の先生の話では、授業中に鼻血を流すなど子どもの病気が多発していたと聞きます。また、体がだるく勉強に意欲がでない子、体育ができない子が多かったと聞きます。子どもたちは校舎内で遊び、外に出られないために朝食、昼食、おやつが無料で提供されていました。
 私には、5歳半と2歳半の子どもがいましたが、上の子は、肝臓機能の数値が高くなって病院に入院しましたが、高熱を出して障がい者となってしまいました。市の機関で被曝の影響だと認めてもらうことができました。しかし、子どもたちの健康被害が放射能の影響と証明することはなかなか困難でした。我が家以外にも被曝の認定をしてもらおうと、5人が申請し、うち2人は申請が通りましたが、3人は通りませんでした。
 チェルノブイリ法が出来てからは、子どもや医療従事者の医療費、年一回の検診や保養の無料化、引越代の無料、引越先で4カ月は元の給与が保障されるなどが措置されました。ベラルーシでは、事故当時から住んでいた人はチェルノブイリ原発事故の被災者だと認定されました。今でも入院している人には、細かい基準はありますが、医療費は無料です。しかし、住民は自由に引越をすることができません。

被爆者と交流ができて良かった
 ミンスクに引越してからのことですが、地元の人にあてがわれるはずだったアパートが、チェルノブイリ近郊から来た移住者に優先されている、移住者は医療費が無料になるなどと妬まれたりもしました。さらに、学校では隣に座りたくない、結婚のときに心配される、など、福島原発事故と同様に差別が起きていました。多くの移住者は、自分たちがどう扱われるか分かっているので、移住者であることを隠していました。ものごとの分別がつくような年長の子どもたちも同様でした。
 ナローグリアに戻りたいとは思っていません。市民活動をして、勝ち取った引越、移住なのです。孫は昔話をよく聞いていて、ナローグリアに行きたいといいますが、私はそうは思わないし、汚染されていない地域ならともかく、住めるところではないと思っています。
 原水禁大会に参加して、原爆のことを話す人達と交流ができて良かったです。被爆二世のことを聞いて、私の孫も二世にあたるのでとでも心配になりました。被爆者は自分の体験を話し続けることで、核兵器や原爆が危険だと伝え続けています。みんなが、それを理解すれば、核はなくなっていくのではないでしょうか。核兵器はもってのほか、この考え方が広まってほしいと思います。

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司法の役割と責任を放棄! 大飯原発運転差し止め訴訟控訴審判決
フォーラム平和・人権・環境 共同代表 藤本 泰成

 2018年7月4日、名古屋高裁金沢支部(内藤政之裁判長)は、関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを求めた訴訟の控訴審において、原告逆転敗訴の判断を下しました。2011年3月11日の東日本大震災に伴う福島第一原発事故以降初めてとなる高裁判決は、司法の役割と責任を放り出した「無慚(罪を犯して恥じない)」としか思えないものです。

命の尊厳を基本にした福井地裁判決
 2014年の福井地裁判決(樋口英明裁判長)は、「人格権は憲法上の権利であり、また人の生命を基礎とするものであるがゆえに、我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできない」と人間の命の尊厳を基本に据えて、「ひとたび深刻な(原発)事故が起これば多くの人の生命、身体やその生活基盤に重大な被害を及ぼす事業に関わる組織には、その被害の大きさ、程度に応じた安全性と高度の信頼性が求められて然るべきである」として、大飯原発3、4号機の安全性は信頼に足らないと運転差し止めを命じました。判決文の最後には、「コストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている」と書かれており、福島第一原発事故の重大性に鑑みて、1960年代から続いてきた、言うなれば「原子力発電」とともに歩んできた高度経済成長期の経済効率優先の考え方に警鐘を鳴らし、人間社会のあり方、私たちの生き方の哲学を示したものであったと思えます。
 「人格権」は、日本国憲法の理念の核である13条の個人の尊重と幸福追求の権利を根拠にし、民法710条における身体、自由、名誉に加え生命や信用などを侵害されない、個人に帰結する権利と解されています。控訴審判決は、「原発に欠陥があり、周辺の環境への放射性物質の異常な放出を招く危険があれば、人格権を侵害するとして原発の運転差し止めを請求することができる」としながら、「原発の危険性は、社会通念上無視しうる程度にまで管理・統制されている」として、人格権を侵害する危険性はないものと評価できるとしました。原発事故の取り返すことのできない被害は、フクシマの惨状を見れば明らかです。だからこそ、圧倒的に市民社会は「脱原発」を望んでいるのです。「社会通念」を言うならば、「脱原発」こそが今の「社会通念」となっているのではないでしょうか。
 世界一厳しい安全基準と安倍晋三首相が評する「新規制基準」をもってしても、原子力規制委員会の歴代委員長は、「絶対に安全とは言えない」と繰り返しています。

地震の想定を「過小評価」する高裁判決
 控訴審は、原告が申請した専門家10人の証人尋問を、元原子力規制委員会委員長代理の島崎邦彦東大名誉教授を除いた全員を不採用とし、地震の評価についても、唯一採用した島崎証人の「関電が使用した基準値振動の計算式は、揺れの想定を過小に評価している」との証言を排除し、「活断層の断層面積は、詳細な調査を踏まえて保守的に大きく設定されており、基準値振動が過小とは言えない」と結論づけました。福井地裁判決を書いた樋口英明元裁判長は、朝日新聞のインタビューに応えて「控訴審の判決の内容を見ると『新規制基準に従っているから心配ない』というもので、全く中身がない」と、きびしく批判しています。
 地震国日本において、全く未知の活断層が動く場合があります。2008年6月の岩手・宮城内陸地震の際には、最大加速度4022ガルの揺れに見舞われています。東日本大震災の時には2933ガル、柏崎刈羽原発が大きな被害を受けた2004年の中越沖地震は2516ガルを記録しています。大飯原発の基準値振動は700ガルから856ガルに引き上げられていますが、大飯原発に地震が来ても地震の規模は想定の範囲内に収まると誰が予想しうるのでしょうか。事業者の側の関西電力も、地震が来ることを否定していません。しかし、そうであれば現時点での地震予知の科学的な到達ラインはどこなのでしょうか。それは明らかです。地震の時期、震度、津波、被害の規模、何をとっても明確な答えを出すことは叶いません。
 9月5日に起きた北海道胆振東部地震で、震度7と言う激震が泊原発を襲っていたらと考えると身の毛がよだちます。だからこそ、樋口元裁判長は「小さな船で太平洋にこぎ出しているに等しい。運が良ければ助かるかもしれないが」と原発を評して、「一国を賭の対象にすることなど許されない」と述べているのです。

司法の判断回避は恥ずべき罪に等しい
 控訴審判決は、「(原発)の当否を巡る判断は、もはや司法の役割を超え、国民世論に幅広く議論され、それを背景とした立法府や行政府による政治的な判断に委ねられるべき事柄」として、原発の是非をめぐる判断を放棄しました。そこには、三権分立の憲法理念が何であるのか、司法の役割と責任が何であるのか、司法の本質さえ問われるような、原発政策を無批判に受け入れる正に犯罪的な言質であると思います。冒頭で「無慚」と述べたのはその意味です。これまでの日本社会の有り様を顧みることもなく、世界の潮流を学ぶことなく、市民社会の意見に耳を傾けることもない、司法判断。憲法理念が求める日本社会の理想を語ることもない司法判断。この怒りを、私たちは運動にぶつけなくてはなりません。
(ふじもとやすなり)

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安心して生きる権利の再獲得をめざして─放射線量測定システムの撤去を許さない
モニタリングポストの継続配置を求める市民の会 共同代表 片岡 輝美

反対の声が湧き上がる住民説明会
 2018年3月20日、原子力規制委員会は福島県内にあるリアルタイム線量測定システム(通称モニタリングポスト・以下測定システム)約3000台のうち、2400台を撤去する方針を出した。理由は空間放射線量が低く安定し、除染が進んだ今、継続的な測定は科学的に不要になったこと、さらに避難区域が解除になった自治体が希望すれば、移設し再活用すると説明した。
 この方針に対し、測定システムは日常的に目視で空間線量の数値を確かめることができる唯一の情報源であり、最低限度の知る権利を保障するものであることから、撤去または継続配置の決定権は原発事故後の生活を強いられている県民・市民側にあるとして、継続配置を求める市民の声が一気に広がった。
 乳児を背負い、幼児の手を引く母親や市民がともに自治体の首長に直接申し入れを行ったり、議会に陳情や請願を提出したりした。7月2日、県紙である福島民報1面には、福島民報社と福島テレビが共同で行った県民世論調査の結果として「撤去反対45.9%、賛成25.0%」が掲載された。さらに同月14日、同社は県内59市町村の4割超にあたる25市町村が撤去に反対し、10市町村議会が継続や計画中止を求める意見書を国に提出したと報道した。
 8月11日現在、原子力規制委員会による「リアルタイム線量測定システムの配置の見直しに関する住民説明会」は只見町、喜多方市、金山町、会津若松市、郡山市の5ヶ所で開催、さらに9月末までに4市町村で5回の説明会が予定され、11月まで希望する市町村で開催を続けていくという。説明会は数名から100名と参加者数は大きく違うが、どの会場でも撤去に反対する声が相次ぎ紛糾した話し合いとなる中、原子力規制庁は粛々と説明を重ねている。


飯舘村役場前のモニタリングポスト

生命とお金を天秤にかける原子力規制庁
 規制庁は住民説明会において、撤去の理由を、空間放射線量が低くなったことの他に、機器の耐久年数がきていること、さらに2020年度末をもって復興予算が終了するためと説明している。
 しかし、低くなったとする空間放射線量は事故直後と比べての数値であって、事故前の数値に戻っているわけではない。機器に故障などが見られるのであれば、原子力エネルギー政策を推進した末に事故を起こした国の責任において改良した機器を新設・増設すべきである。しかも、組織理念に謳っている「国民の安全を最優先に」を遂行するためには、継続配置に必要な新たな予算を獲得することこそが規制委員会の使命に他ならない。撤去に都合のよい科学的判断を根拠とする不毛な説明を繰り返し、国民の生命と予算を天秤にかけ、復興予算の終わりが設置の終わりとの言い分は到底受け入れられるものではない。
 市民の継続配置を求める強い声を受け、7月4日記者会見で更田豊志規制委員会委員長は「(撤去は)強行するつもりはない」と慎重に対応する見解を述べた。しかし、第2回規制庁交渉(7月20日)やその後の住民説明会で、規制庁は継続をするかしないかは自治体次第であり、測定やメンテナンス費用も自治体負担であると受け取れる方向性を匂わし始めている。当然、自治体によって測定システムのあるなしは、日々の情報の格差のみならず不測の事態における情報と被ばく防護の格差となってしまう。住民説明会で相次ぐ撤去反対意見が、自治体に測定システムを押しつけることになり、自治体間の分断の要因となるのではないか、それが規制委員会の思惑ではないかとの見方も生まれてきている。

「勝手に避難しないでください」って!?
 7年前のあの時、情報が隠蔽され何も知らされない恐怖と無用な被ばくを強いられた絶望感を経験した私たちは、今でも怒りを抱え続けている。その私たちに規制庁は言う。「今後、不測の事態が起きた場合には、勝手にモニタリングポストを見に行ったり逃げたりしないでください。無用な被ばくの恐れがありますから。今、福島県と一緒に皆さんに的確な情報を提供するシステムを作っていますから」と。
 20マイクロシーベルト/hまでは避難の必要はないと説明する規制委員会との対話は不可能のように思える。そもそも、福島原発事故廃炉の収束が全く見通せず、被害者の救済も行われていない現実がある一方で、原発再稼働の許可を出す規制委員会を私たちは信用できない。
 私たちは心身ともに疲労している。しかし、対話を続け、声を上げていかなければならない。なぜならここで諦めたら、未来の生命はさらに無用な被ばくを強いられてしまう。日本国憲法によって保障されながらも福島原発事故によって奪われた安心して生きる権利が、さらに遠のいてしまうのだから。
(かたおかてるみ)

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使用済みMOX燃料用再処理工場はできる?

 9月2~3日、共同通信配信の「MOX燃料の再処理断念電力10社、核燃サイクル崩壊」「MOX燃料、再処理せず電力10社が費用計上中止」との記事が各紙に掲載されました。これに対し、世耕弘成経済産業大臣は9月4日、次のようにツイートしています。「要約すると、共同『処理費用社内積立無くなった。再処理やめたのだ』経『違う。法改正で機構積立にした。その方が経営状態に拘わらず安定的に積立出来るから。政策変更していない』記事『社内積立無くなった→MOX再処理やめた』いかに誤報かわかっていただけるでしょうか」。
 再処理で取出したプルトニウムをウランと混ぜて混合酸化物(MOX)燃料として普通の原発で燃やすいわゆるプルサーマルの後に出てくる使用済みMOX燃料を再処理する工場ができるかどうかという話です。世耕大臣の主張が正しいか検討してみましょう。

第二再処理工場用が43年までに3.2万トン発生?
 「MOXの使用済燃料を再処理するためには新しい再処理工場を造らなくてはいけない…高速炉を動かさない限りは、処理したMOX燃料は使えない」と田中俊一原子力規制委員会委員長(当時)が2014年11月19日の記者会見で述べています。六ヶ所に続く第二再処理工場が建設され、多数の高速炉が稼働する状況にならないと、発熱量が大きな使用済みMOX燃料が地下処分場に「直接処分」されることになります。処分場の容積は廃棄物の発熱量に左右されるため、再処理推進派の主張する再処理による廃棄物「減容」効果がなくなってしまいます。
 第二再処理工場計画は「2005年度から2043年度までに発生する使用済燃料約3.2万トン(現在運転中の55基に2006年度電力供給計画における『原子力発電所開発計画』に記載の13基を追加したプラントで発生する使用済燃料を想定」。運転開始は48年です(06年11月30日電気事業連合会資料)。2006年8月8日に総合資源エネルギー調査会の電気事業分科会原子力部会が出した報告書「原子力立国計画」では、同工場は45年頃に完成し、六ヶ所の容量を超える使用済みの普通の燃料及びMOX燃料に加えて、使用済み高速増殖炉燃料も再処理することになっています。

2段階で変更された制度で費用は積み立てられる?
 2005年に導入された制度では、電力会社内部で積み立てていた再処理費用が外部の資金管理法人に移されました。しかし、第二再処理工場は対象外。さらに、方針が未定のため、電力会社内部での引当・積立の規定もありませんでしたが、その後、07年3月から電力会社内部で積み立てることが決まります。費用は六ヶ所再処理工場と同程度と仮定して計算。約12兆円を43年までに積み立てることになりました。
 2016年に使用済燃料再処理機構が設立された際、各社内部の第二工場用引当金も機構に移行となります。設立時点以後発生の第二工場向けの分についても、六ヶ所向けと同様、発電時に機構に毎年拠出されることになりました。これで第二工場用積み立ては機構内で行われる格好になったわけです。両工場向けの燃料は区別なく、重量当たり同額が拠出される仕組みです。

国会及びマスコミは第二再処理工場について議論を
 ここで世耕大臣のツイートについて振り返ってみましょう。大臣の記事要約より正確なのは、「第二再処理工場用の社内積立がなく、使用済みMOX燃料の再処理ができない、やる気がない」でしょう。前半について「法改正で機構積立にした」との反論はその通りです。しかし、それで第二工場の資金がたまるか否かの方が重要な問題です。
 下の図は前述の電事連の2006年の資料にあるものです。濃い灰色の部分が第二工場行きです。福島事故後、六ヶ所行きの部分(薄い灰色)ですらわずかしか発生していない状態で、第二工場向けの資金は六ヶ所向けと別に積み立てられているのか?これまでの第二工場用積み立て額は?今後の見込みは?使用済みMOX燃料(及び高速増殖炉燃料)を扱う工場の実際の費用は?
 六ヶ所村の再処理工場とMOX燃料製造工場の完成予定はそれぞれ2021年と22年。炉心全体でMOX燃料を使う大間原発の運転開始予定は26年。国会やマスコミは、機構内の積み立ての仕組みについて早急に具体的情報を入手して、国民の前に明らかにすべきです。世耕大臣には、共同通信の「誤報」を非難する前に、現在の仕組みで45~48年頃完成予定の工場の資金が「安定的に積立出来る」と断言する根拠を示す責任があります。
(「核情報」主宰田窪雅文)


費用試算の対象となる使用済燃料の発生年度展開
2006年11月30日総合資源エネルギー調査会・電気事業分科会提出資料(電事連)

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加盟団体の活動から(第9回)
苦難に満ちた闘いから平和を求める闘いへ
国鉄労働組合書記長 松川 聡


国労フクシマ交流学習会
(11月26日・郡山市)

 国鉄労働組合(国労)は、戦後、日本国内が混乱する中、1946年に産声を上げました。結成から72年が経過しましたが、その中で労働者の権利を獲得し、生活や労働条件、さらには政治課題に取り組み、特に職場からの取り組みに力点を置き、労働運動を構築してきました。
 しかし、80年代に入り、当時の総評労働運動の解体と国鉄資産の搾取を目的に国鉄分割・民営化が政府により推進されました。国労は、鉄路の分断を許さない立場で国鉄分割・民営化反対闘争に突入しました。国家的不当労働行為を含む熾烈な攻撃は、当時の中曽根康弘首相が「国鉄分割民営化の真の目的は、国労の解体にあった」と後日談で述べるなど、狙いは明らかでした。
 結果として87年4月、国鉄は115年の歴史に幕を閉じ、JR会社が発足しました。国労が歩んできた道のりは苦難に満ちた闘いの連続でしたが、現在もJR各社に組合員を有し、JRの安全・安定輸送の確立や、平和を求める闘いに全国で取り組んでいます。
 国労は東日本大震災の発生以降、震災からの復興と原発問題を風化させない観点から、「国労フクシマ交流」を取り組み、反原発、平和を願い、仲間との学習・交流などに取り組んでいます。昨年は、11月に原発事故で被災した常磐線沿線の除染・復旧工事や開通区間の現状などを視察し、福島県平和フォーラムとともに、原発周辺の現状や学校現場の問題などの学習を行い、高校生平和大使からの報告を受けるなど、全国の原発立地地域の仲間が参加して交流しました。(写真は郡山市内のホテルで行われた「国労フクシマ交流学習会」)
 現在常磐線は、帰還困難区域を含む富岡駅~浪江駅間が不通ですが、それ以外は運転を再開しています。富岡町は、地震と25メートルの津波により崩壊した駅舎が新しくなり、街づくりが始まっていました。
 一方、浪江駅では線量計が設置され、視察時には0.35マイクロシーベルトが示され、空間線量は国の基準を超えて高い状態でした。震災で壊れたものは、徐々に建替えが進んでいますが、放射線量は依然として高く、色も匂いもない放射能を人類はコントロールできない現実をあらためて実感しました。現地で働く労働者、住民の健康が気掛かりであり、核とは共存できない気持ちを新たにしました。
(まつかわさとし)

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〔漫画の紹介〕
『お前はまだグンマを知らない』
井田ヒロト作/くらげバンチ連載

 本年11月30日~12月1日に開催の「第50回食とみどり、水を守る全国集会」の開催地は、群馬県高崎市に決定し、記念すべき50回集会ということで、集会実行委員会も結成、集会の概要も確認され、実務的な準備が進められています。
 「今年は高崎で開催ですか。ところで、高崎ってダルマ以外に何がありましたっけ…」と名物や名産品を思い浮かべようとしましたが、知識不足が否めませんでした。ちょうどそのころ、アニメ化となり、群馬県が何たるかを教えてくれたのが、インターネット漫画といわれる『お前はまだグンマを知らない』でした。
 主人公は、千葉県から群馬県に引っ越すことになった高校生の神月君。第一話では、引っ越し先はどんなところだろうかとネットで群馬県を調べてみると、そこに表示されるものは恐るべき内容ばかり。「地球上唯一残された秘境」「とりあえず一番いい装備でいけ」等と表示され、引っ越し先の群馬はどんなところなのだろうかと戦々恐々としてしまう。
 各話、群馬県に関するトピックを面白おかしく紹介していて、名産品や観光地だけでなく、運動会のルールなど、ガイドブックでは得られない情報がたくさんあります。作者の井田ヒロトさんは、群馬県高崎市在住の、群馬をこよなく愛する漫画家とプロフィールに紹介されるほどに群馬県への愛に溢れた作品です。
 2週に一度更新されるインターネットの漫画は今も連載が続き、群馬県の魅力を伝え続けています。アニメ化されたものは、DVDとしても刊行されています。
 「第50回食とみどり、水を守る全国集会」の開催地だからこそ、群馬県の魅力をしっかりと知り、食の安全や農林業政策、循環型社会の形成、水・環境問題など、今後の運動課題について検討していくのはいかがでしょうか。以下のネットで検索してください。
(橋本麻由)
https://kuragebunch.com/episode/10834108156628842700

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核のキーワード図鑑


地球汚染

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当面の集会・行動のご案内

 自民党総裁3選を果たした安倍晋三首相。憲法「改正」に向けて臨時国会では党改憲案を提出する意向を表明しました。日本国憲法の三大原則である国民主権・基本的人権の尊重・平和主義を守り、絶対に「改正」させないたたかいが続きます。一刻も早く安倍政権を倒しましょう!10月以降開催の主な集会等のご案内です。

朝鮮学園の子どもたちに学ぶ権利を!
日時:10月12日(金)18:30~20:30
場所:連合会館2階大会議室
主催:朝鮮学園を支援する全国ネットワーク

安保法制違憲訴訟「差し止め」裁判傍聴
日時:10月15日(月)13:30~16:30
    アピール行動12:30~
    傍聴席抽選12:55~
場所:東京地裁103号法廷
主催:安保法制違憲訴訟の会

安倍内閣の退陣を要求する10.19行動
日時:10月19日(金)18:30~19:30
場所:衆議院第2議員会館前
主催:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

止めよう!改憲発議―この憲法で未来をつくる11.3国会前大行動―
日時:11月3日(土・祝)14:00~15:30
場所:国会議事堂正門前
主催:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

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