2018年、ニュースペーパー

2018年07月01日

ニュースペーパー2018年7月



安倍政権の退陣を要求する6・10国会前大行動
 6月10日、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」を中心に、23の団体で構成された「6・10国会前大行動実行委員会」が主催して、「安倍9条改憲NO!政治の腐敗と人権侵害を許さない安倍政権の退陣を要求する6・10国会前大行動」が、激しい雨の中、国会正門前で開催され、2万7000人が参加しました。「安倍政権をみんなで倒そう!」「森友・加計疑惑徹底追及!」「改憲発議みんなで止めよう」「あきらめないぞ!」などのコールが国会前に響き渡りました。
 主催者を代表して福山真劫さん(戦争をさせない1000人委員会、平和フォーラム共同代表)が「安倍政権の暴走が続き、ウソだらけの政権になっている。これを許せば平和と民主主義、未来も壊される。野党と全国の仲間がたたかえば必ず安倍政権を倒すことができる。確信をもってともに闘おう!」と訴えました。
 各政党を代表して、立憲民主党の福山哲郎幹事長、社会民主党の吉川元衆議院議員、共産党の小池晃書記局長、無所属の会の田嶋要衆議院議員が登壇。野党の力をあわせて、安倍政権の退陣に向け、ともにたたかう決意を述べました。

インタビュー・シリーズ:134
外務省のやっている核戦争のリスクを高める政策
憂慮する科学者同盟 グレゴリー・カラキーさんに聞く

プロフィール
 中両国の学会、政府、専門家団体の間の交流を推進する仕事をしてきた。憂慮する科学者同盟(UCS)に2002年に入って以来、軍備管理及び宇宙の安全保障に関する米中の専門家の間の対話を推進、実施に焦点を合わせてきた。専門領域は、中国の外交・安全保障政策、中国の宇宙計画、国際軍備管理、異文化間交流

─憂慮する科学者同盟(UCS)とはどんな団体ですか。
 マサチューセッツ工科大学(MIT)などの科学者によって1969年に設立されました。米軍による科学の使われ方に反対、特に、ベトナム戦争でのナパーム弾の使用や、核兵器使用の脅しに反対してきました。この40年間ほどの間に、ごく少数の科学者の集まりから、百数十人のスタッフを抱える組織に発展しました。年間予算も3千2百万ドルほどになっています。このお金は、すべて個人からの寄付によって成り立っています。
 活動の範囲は環境問題も含めて広がっています。とくに気候変動、エネルギー問題、食品、森林保護、クリーンな自動車技術などです。さらに、政府で仕事をする科学者の独立性を保ち、ハラスメントや脅迫がないようにすること、研究報告書を介入などなく公表できるようにすることなどです。
 私自身は世界の安全保障プログラムで核兵器の問題に関連した仕事をしています。これにはミサイル防衛や宇宙の安全保障の問題も関連しています。私がこのグループ内でやっていることは、中国プロジェクトと呼ばれるもので、米中間の軍備管理に関する対話を奨励するものです。

─オバマ政権による「核態勢見直し」(NPR)の策定時に、秋葉剛男公使(当時・現外務省事務次官)らが核兵器の削減に反対し、沖縄への核貯蔵施設の建設にも肯定的な発言を米国議会諮問委員会で行っていたことを報道させるまでの経緯はどのようなものでしたか。
 2009年の3月、秋葉公使が証言をした日から1週間も経たないうちに、UCSのメンバーのジョン・スタインバーガー、メリーランド大学教授から話を聞きました。彼は国防省で仕事をしたことがあり、証言の内容について教えてくれました。ワシントンの軍備管理関係者の間でちょっとしたセンセーションを引き起こしました。こういう話は以前にもありましたが、今回は初めて、外務省から公式に、公共の場所で提示されたからです。その後8年間に渡って私達は調査を続け、ごく最近になってこの提出された文書類のコピーを議会委員会のメンバーから入手したのです。

─オバマ前大統領が「核なき世界」をプラハ演説で唱えましたが、日本政府はそれを裏で牽制したのでしょうか。
 日本の外務省はオバマの努力に対して反対しました。オバマ大統領は核兵器の先制不使用宣言を検討しました。最終的にはこれをしないことになりましたが、その理由の一つが日本の外務省からの反対でした。オバマ大統領は安全保障政策上、核兵器の役割低減を望みました。核の数を減らすということ、それに種類を減らすことです。しかし日本の外務省はその両方に反対し、アジアにおける安全保障戦略の中で、米国の核兵器の役割を増大させるのを望んでいることを明確に示しました。

─それは日本が、核抑止力を無くてはならないものだとして、そう米国に要求しているからでしょうか。
 このメモの冒頭にあるように、2月17日に中曽根弘文外務大臣がクリントン国務長官に、核兵器が日米安全保障態勢の中核になるように約束を求めています。さらに、その1週間後、麻生太郎首相がオバマ大統領に、同じ保障を求めました。さらに、このメモが示すのは、国務長官も大統領もその保障を与えたということです。(肩書きは全て当時)
 2月25日、秋葉公使はこのメモを議会委員会に提示し、外務省が何を望んでいるかを詳細に、明確にしたのです。重要なことは、米国の戦術核をアジアに再配備することを日本が望んだということです。アジアには現在、米国の核兵器は配備されていません。この事は、米国の核兵器の役割を非常に大きな形で増やすということになります。

─アジアの安全保障上、こうした日本の要求が必要なことだと思われますか。
 いいえ。核抑止という意味でも不必要です。もしも、オバマ大統領が核兵器の先制不使用を宣言していたら、米国に対する攻撃だけでなくその同盟国に対する攻撃も関連する話になりますが、先制不使用政策の下でも、日本は核の傘の下にいることは変わりません。さらに、核抑止は、ずっと少ない数の戦略核兵器(潜水艦で太平洋に配備)で維持することができます。アジアに持ち込む必要はありません。

─トランプ政権のNPRに日本の要求が反映されているのでしょうか?
 秋葉メモとNPRを見比べれば、トランプ政権が、外務省の要求に応じて、そのすべてを与えていることが分かります。オバマは核兵器を非常時のみ航空機に搭載すると約束をしただけでした。トランプ政権の方は、米国の戦術核兵器をアジアに再配備しようとしています。これは、日本の外務省が要請したことです。ですから、河野太郎外相は、高く評価されたわけですね。

─安全保障の観点では、日本の中では、中国、北朝鮮が脅威だと宣伝されています。米中間では脅威とされる状況にありますか。
 中国が日本に対する脅威かということに答えるには、米国と中国の関係だけではなく、日中間の関係も見ていかなければなりません。もしも、米中間で戦争が起きれば、日本にある米軍の基地が使われます。中国からは、日本にある基地に攻撃をかけなければなりません。そういう意味では、中国は脅威であると言えます。
 中国は核兵器を持っていますから、戦争時に何が起きるかということは誰にもわかりません。ですから、日本の人々が、核抑止が必要であると思うことは理解できます。しかし、先程も言いましたが、米国は先制不使用政策のもとでも核抑止を提供することができます。そして、ずっと少ない戦略核兵器で、アジアに配備する必要もなくそれができるのです。私達の団体では、外務省が要請していることは、核戦争の可能性を高めるものだと考えます。米中間の戦争が核戦争になってしまう可能性を高めるのです。その結果、日本が核兵器の攻撃を受けることになります。外務省がやっていることは、核戦争のリスクを高めることなのです。馬鹿げた政策と言えます。元国防長官のウィリアム・ペリーは、この問題についての論文で、同様のことを言っています。

─朝鮮半島の南北首脳会談、米朝首脳会談も行われました。
 外交というのはいつでも、行われること自体が良いものです。対話をするという事は常に良いことです。より多くの人が、より頻繁に話をすることが良いのです。私は基本的にこれらの対話をいいものと捉えています。この結果がどうなるかは、待ってみる事しかできません。

─朝鮮戦争の終結が課題になっています。
 一つ、忘れてはならないのは、休戦協定に署名したのは政府ではないということです。3つの軍隊、すなわち、中国の人民解放軍、朝鮮人民解放軍、国連軍司令部の間で署名されました。米軍は国連軍を支援する立場です。国連軍後方司令部の基地は今でも日本にあります。国際法上、非常に複雑な状況で、これを解いていく交渉は長くかかるものになります。

─日本では、地上配備型の新たな迎撃ミサイルシステム「イー ジス・アショア」を秋田と山口に置く計画です。
 ミサイル防衛は、冷戦時代の初めからあるものです。米ソともミサイル防衛にお金をつぎ込んできました。1960年代後半に両方で、これはいい考えではないという理解に達しました。結果的にミサイル防衛を制限する弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)に調印しました。その理由はこう言うことです。ミサイル防衛を6フィートの壁と考えてみます。敵は7フィートの梯子を作ります。8フィートの壁を作れば、敵は9フィートの梯子を、10フィートの壁には11フィートの梯子を、とエスカレートするのみです。防衛の側を高くするよりも、攻撃側を高くするほうが、はるかに容易・効果的なのです。
 ミサイル防衛の技術は現在まで、証明されたものではありません。特にパトリオットシステムは、効果を持つことを示すことができていません。実際に使われたどのシーンを見ても、効果があったと判定できません。ミッド・コースミサイル防衛は、ブッシュ政権がアラスカに配備しましたが、実験の半分ほどが失敗しています。実験自体、実戦をシミュレートしたものではありません。サードとイージスは、もしかするとより効果的かもしれません。しかし、「梯子問題」は残ります。ミサイル防衛を進めれば、敵側の攻撃力の増強を呼ぶことになり、問題の解決にはなりません。実際には状況を悪くするわけです。

─沖縄の基地自体、安全保障上それほど重要でないのではないでしょうか。それにもかかわらず、日本はアジア地域への米軍の核配備を求めているのでしょうか。
 秋葉メモの中で、手書きの書き込みのあるものがあります。議会委員会のスタッフが、秋葉公使とシュレシンジャー元国防長官の会話をメモしたものです。(核情報:http://kakujoho.net/npt/okinawa_nw.html参照)その会話のなかで、秋葉さんは沖縄の米軍基地に核兵器貯蔵庫を作ることに同意しているようです。これは日本の非核三原則に反するものと理解します。

─日本政府を変えていくために日本の団体としてどのような方法があると思われますか。
 私達の調査した情報を活用していただいて、みなさんの声に反映させていく。また私達の方でも米国で声を上げる必要があります。政治的な圧力、労働組合や学生、その他の社会的な団体の声の力を使って、もっと情報を広めなければなりません。そうすれば、市民の考え方を変えていくことになるでしょう。

インタビューを終えて
 カラキーさんの冷静な物言いは、真に説得力がある。日本政府が、米国オバマ政権の核軍縮に反対していたことは確実だ。「重要なことは、米国の戦術核をアジアに再配備することを日本が望んだということ」「外務省がやっていることは、核戦争のリスクを高めること」との指摘を、唯一の戦争被爆国日本は、しっかりと受け止めたい。そのことが、憂慮する科学者同盟の科学的見地だから。
(藤本泰成)

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辺野古新基地はつくれない!
大浦湾海底部にマヨネーズのような超軟弱地盤
沖縄平和市民連絡会 北上田 毅

 沖縄県名護市辺野古では、2014年以来、多くの県民らが米軍新基地建設に反対し、ゲート前や海上で懸命の抗議行動を続けている。しかし沖縄防衛局は連日、護岸造成のための捨石投下作業を強行し、いよいよこの8月にも辺野古側の外周護岸を仕切り、内側に土砂を投入しようとしている。土砂が投入されればもう原状回復は不可能となり、環境にも致命的な影響を与えることになる。辺野古新基地建設反対運動はいよいよ正念場を迎えようとしている。土砂投入までに、翁長雄志県知事が埋立承認の「撤回」に踏み切ることを多くの県民が待ち望んでいる。
 一方、最近になって重要な問題がいくつも浮上してきた。大浦湾に活断層が存在するのではないかという疑いだけではなく、とんでもない超軟弱地盤が拡がっていることも判明した。さらに周辺の多くの建物(沖縄高専、久辺小・中学校、辺野古弾薬庫等)が、米国防総省の飛行場設置基準の高さ制限を超えていることも明らかになった。今、新基地の立地条件そのものが根底から大きく揺らぎ始めている。

防衛局の「想定外」で設計やり直しが必要
 本稿では大浦湾の超軟弱地盤の問題について説明したい。
 活断層問題の追求の中で、本年3月、2014年度から始まった2つのボーリング調査の報告書が初めて公開され、驚愕の事実が判明した。ケーソン護岸の設置箇所の水深30mの海底に、厚さ40mにもわたってN値ゼロという超軟弱地盤が拡がっていたのである。
 N値とは、ボーリング調査の掘削孔に試験杭(サンプラー)を設置し、その上に重さ63㎏のハンマーを75cm落下させて、サンプラーを30cm打ち込むのに必要な落下回数である。N値が大きいほどその地盤は強固とされ、大型構造物の基礎としてはN値50以上が望ましいと言われている。今回のN値ゼロという調査結果は、サンプラーをセットしただけでズブズブとそのまま地中に沈んでしまったことを意味している。まるで「マヨネーズのような超軟弱地盤」なのだ。
 ケーソン護岸は中詰土を別にしても1個7000トンもある。基礎の捨石は、最大200kgの大きな石材だが、N値ゼロの地盤に置いたとたん、捨石はそのまま軟弱土の中を40m下まで沈んでしまうだろう。ケーソン護岸や基礎捨石を現状のまま造成・設置することは不可能である。
 この調査結果は、ボーリング調査の報告書でも「当初想定されていない地形・地質」とされているように、防衛局にとっても全く想定外だったようだ。当初のケーソン護岸の設計条件は、「厚さ15mの沖積層(砂層)、N値11」、「基礎地盤については、砂・砂礫層が主体であり、長期間にわたって圧密沈下する軟弱な粘性土層は確認されていない」というものであった(埋立承認願書の設計概要説明書、環境保全図書)。当初の設計条件が全く誤っていたこととなり、設計の全面的なやり直しが必要となっている。


海上保安庁の厳重な警備の中、進められる護岸工事
(2018年2月)

知事選の勝利で工事は完全に頓挫する
 このため報告書でも、「構造物の安定、地盤の圧密沈下、地盤の液状化の詳細検討が必須である」と結論している。このままでは巨大なケーソン護岸を設置することは不可能であり、基礎地盤の広範な改良、ケーソン護岸の大幅変更が必要である。
 地盤改良のためには、サンドコンパクションパイル(砂杭)工法等が考えられるが、水深も深いことからきわめて難工事である。鎌尾彰司・日大理工学部准教授によれば、数千本もの砂杭打設が必要となり、工期だけでも2~3年はかかるという。
 莫大な費用と時間をかければ工事は可能としても、大浦湾の豊かな環境に与える影響は深刻である。当初の環境影響評価の全面的なやり直しが必要となっている。
 地盤改良やケーソン護岸の変更など、埋立承認願書の「設計の概要」を変更するには公有水面埋立法に基づき、知事の承認を得なければならない。現在、沖縄防衛局は工事の容易な辺野古側での工事だけを進めているが、大浦湾側の工事は全く目処が立っていないのが現状だ。
 軟弱地盤の問題について防衛局は、「N値だけでは地盤の強度は判断できない。さらに室内試験などを行なっている」、「現時点において地盤改良の予定はない」などと弁明しているが、これは時間稼ぎの言い訳でしかない。防衛局は、秋の知事選まではこのような弁明を続け、なんとか知事を代えた後に、「実は軟弱地盤で地盤改良が必要でした」として設計概要変更申請を出すつもりであろう。
 秋の知事選で翁長知事が再選されれば、変更申請が認められるはずはなく、その時点で工事は完全に頓挫する。その意味で、知事選が辺野古新基地建設事業の帰趨を握っている。
(きたうえだつよし)

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オスプレイの横田基地配備を決して許さない!
砂川闘争勝利の歴史を胸に基地撤去の闘いを
三多摩平和運動センター 事務局長 石野 一

 1940年、大日本帝国陸軍航空部隊の立川陸軍飛行場の付属施設として建設された多摩陸軍飛行場が「横田基地」の前身で、敗戦後の45年9月に連合国軍の一国として、日本の占領にあたった米軍に接収され、現在は在日米軍司令部及び米国第5空軍司令部が置かれています。
 基地の総面積は7.136km2(東西約3km、南北約4.5km、周囲約14km)で東京ドームの約150倍、基地内には1本の滑走路(3350m×幅員60m)があり、東アジアにおける米空軍の主要基地として、極東地域全体の輸送中継ハブ空港の機能を有しています。また、朝鮮戦争休戦協定における国連軍の後方司令部も置かれ、2012年3月からは移転再編された航空自衛隊の航空総隊司令部が常駐するようになりました。
 この間、戦闘機による多くの事故をおこしています。その主なものは以下です。

1947年 基地を離陸したA26攻撃機がエンジン故障を起こし、多摩川鉄橋を通過中の八高線の列車に接触して1両が河原に転落し、4名が死亡。
1951年 基地を離陸したB29爆撃機が離陸直後に東京都北多摩郡砂川村(現立川市)に墜落、周辺の都営住宅や工場の社宅・民家を巻き込んで炎上し、住民5名が死亡。
1969年 基地所属のF4戦闘機が埼玉県入間市の狭山丘陵に墜落し、乗員2名が死亡。

墜落事故や緊急着陸を繰り返す欠陥機
 こうした横田基地に、米軍は、飛行における事故率が高い「オスプレイ」を今夏から順次配備し、段階的に計10機を配備するという計画を4月3日に突然発表しました。オスプレイは試作段階から墜落事故を起こし、2016年の12月には、普天間基地所属のMV22オスプレイが空中給油に失敗し、名護市安部の海岸に墜落・大破しました。そのわずか7ヶ月後の昨年8月には、オーストラリア北東部の海上に墜落し、死者が出ています。また、昨年6月に伊江島補助飛行場と奄美空港、8月に大分空港、今年4月にも奄美空港に緊急着陸をしています。
 このような墜落事故や緊急着陸を繰り返す「オスプレイ」が’欠陥機’であると指摘されるのは当然です。横田基地に配備されるCV22オスプレイは特殊作戦用につくられた輸送機で、いずれは夜間飛行や低空飛行といった危険な訓練を繰り返し、さらに危険度が増すことは間違いありません。こうした「オスプレイ」の横田基地配備を決して許すわけにはいきません。
 63年前の1955年、米軍立川基地の拡張(滑走路延長)をめぐって始まり、反対派住民らの壮絶な闘いの末、68年に米軍が拡張をあきらめ、翌年、国も収用認定を取消したことで、15年間にわたって続いた大きな住民運動である「砂川闘争」が終結。77年に米軍立川基地は日本に全面返還されました。もし、滑走路が拡張されていたら大型輸送機やジェット機が離着陸し、住民は騒音と事故の危険にさらされ続けたでしょうし、米軍が移っていくこともなかったでしょう。しかし、基地の機能や米軍人が横田基地、そして沖縄へ移ったことによる全面返還は’真の基地撤去’とは言えません。

沖縄・辺野古新基地建設反対の闘いとともに
 沖縄・名護市の辺野古新基地建設反対闘争のテント村で『土地に杭は打たれても心に杭は打たれない』と書かれた看板を見た時、砂川町基地拡張反対同盟の二世として、新基地建設反対、そして米軍基地撤去を願う住民と国との闘いは、今なお続いていると思いました。(右写真)
 私たちは、CV22オスプレイの横田基地配備反対!辺野古新基地建設反対!そして戦争への道を突き進もうとする安倍晋三首相を決して許しません。CV22オスプレイが横田基地に配備されれば、日米一体となった戦争態勢の構築が進むことは間違いなく、何としても阻止しなくてはなりません。「砂川闘争」という壮絶な闘いを歴史に刻んだ地である三多摩において、住民一人ひとりにその精神を呼び起こし、大きな’うねり’となるよう、さらなる取り組みを追求したいと思います。
 去る6月17日、東京平和運動センターと共催し、平和フォーラム・関東ブロック連絡会、そしてオスプレイと飛行訓練に反対する東日本連絡会、全国基地爆音訴訟原告団連絡会議、第9次横田基地公害訴訟原告団の協力の下、福生市・多摩川中央公園で「オスプレイの横田基地配備に反対する6.17東京集会」を開催し、「オスプレイ来るな!横田に来るな!どこにも飛ぶな!」と訴えました。こうしたアピールをマスメディアはなかなか報道しない中で、私たち自身がメディアになって伝える運動も取り組まなくてはなりません。
 全国の仲間のみなさん、今後ともご支援ご協力をよろしくお願いいたします。
(いしのはじめ)

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TPPだけじゃない!日欧EPAも問題だらけ
拡大する農産物輸入、地域経済にも深刻な影響

日本では内容明らかにされず、EUは公開
 アメリカを除く11か国による環太平洋経済連携協定(TPP11)は、日本では通常国会で、野党などの反対にも関わらず可決・承認されました。こうしたTPPの動きに隠れるかのように、もうひとつ日本にとって大きな通商交渉が進められてきました。それが、ヨーロッパ連合(EU)との経済連携協定(EPA)です。この日欧EPAは、昨年の7月に大枠合意、12月に最終的な合意がされたものの、日本では概要が示されるだけで、条文の内容は明らかにされていません(6月25日現在)。しかし、EUでは既に協定条文が公表され、欧州委員会は4月18日に採択、6月下旬のEU首脳会議での正式承認をめざしています。その上で、安倍晋三首相が訪欧し、日EU定期首脳会合に合わせて、7月11日にも合意署名をする見通しになっています。
 署名後、日本では秋の臨時国会での承認が想定され、早ければ来年早々にも発効しようとしています。日本ではほとんど議論されないまま進められてきた日欧EPAの問題点を考えてみます。
 まず、農産物の関税の大幅引き下げや撤廃、輸入割当の拡大などによる農業への影響が懸念されます。EUは乳製品の競争力があり、特にチーズは新たに低関税で輸出できるようになりました。また、パスタをはじめとする小麦製品の関税撤廃も行われます。これらはTPP以上に輸入拡大に直結するものです。
 これによる日本農業への影響について政府は、農林水産物の生産額の減少は600~1100億円としています(TPP11では900~1500億円の減少)。しかし、政府は「生産額は減少しても国内生産のコストも下がるので、国内の生産には影響はなく、自給率も下がらない」(農林水産省)としています。
 食の安全をめぐっては、逆にEU内での規制や表示にどう対応するかが焦点です。例えば、遺伝子組み換え食品の表示は、加工食品も含めてすべての食品はもとより、家畜の飼料にも「遺伝子組み換え」と表示しなければなりません。また、安全性が不確かなものは認めない「予防原則」というEUの厳しいルールがあり、安全を求める立場でEUの考え方を盛り込んだ新たなルールが日本にも求められます。


政府担当者を呼んでの日欧EPA院内集会
(2017年8月29日・衆議院議員会館)

国内外の企業を差別できず独自政策に制限
 さらに大きな問題は、国有企業と公共調達というルール分野で、TPPに比べて大きく譲歩していることです。
 国有(公有)企業に関する規定では、国内外の企業は差別されることなく競争を基本としています。しかし、地域の基礎的社会インフラである郵便・鉄道・病院などの公有企業や、社会的財産の教育機関、主要な研究機関などは、国家や自治体が経営支援をしても持続させるべきものです。日本以外のTPP参加国は、多くのこうした企業について、内外無差別原則の適用対象外としています。しかし、日欧EPAではこのような適用対象外とする規定がありません。そのため、外国企業や投資家から、公的関与がある団体への補助金や保護のための規制をなくすよう訴えられることも想定されます。
 公共調達については、地方の疲弊が進む中で、地域内の経済を循環させることが重要となっています。そのため、公共機関が物品などを購入調達する時に、地元企業を優先させることは重要なことです。しかし、公共調達に関する協定は、一定金額(基準額)以上の公共調達を無差別の公開入札で行うこととしています。既に日本では世界貿易機関(WTO)の有志国による政府調達協定で、公共調達は大きく制約され、地域独自の政策の余地が奪われつつあります。中でも、「飲料」の調達には上水道を含むのかが注目されます。ヨーロッパには巨大な水企業が存在するため、日本の水道事業民営化の形態次第では、外国企業の参入もありえることになります。
 このほか、投資した企業が利益を得られないときに相手国を訴える「投資家対国家の紛争解決」(ISDs)をめぐっては、日本はTPP同様のISDsを主張しているのに対し、EUはこれに反対し、新たな制度を提案しました。そのため、ISDsは合意事項から除外され、今後の協議とされました。TPP11の協定でも、日本以外の多くの国はISDsを実質的に発動しないことを決めています。あまりにも企業を優先することから、多くの国が反対するISDsに日本政府が固執するのは大きな問題です。
 平和フォーラムは、これまで幅広い団体とともに「TPPプラスを許さない!全国共同行動」でTPP11の反対運動を進めてきましたが、日欧EPAもTPPと同様の問題を抱えることから、引き続き取り組みを進めていくことにしています。
(市村忠文)

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被爆73周年原水爆禁止世界大会の課題
新たな状況に対応した核廃絶、脱原発、ヒバクシャ援護連帯を

米朝首脳会談と東北アジアの平和、非核化
 6月12日、シンガポールにおいて、史上初の米朝首脳会談が行われました。ドナルド・トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長との間で共同声明が署名され、朝鮮の安全保障の確約と、朝鮮半島の完全な非核化への責務を再確認し、「両国の平和と繁栄を希求する意志に基づく新たな米朝関係の構築」など4項目を確認しました。長年に渡って対立してきた両国が直接対話で新たなステージを切り開いたことは、東北アジアをめぐる平和と安全保障にとって、新たな変化として捉えなければなりません。
 一方で日本政府は、これまで日朝関係の改善ではなく、制裁強化による「力」の外交を進めてきました。東北アジアの平和と安定に向けた日本独自の外交も国際的な貢献もできないまま今日に至っています。安倍政権は、憲法改悪、沖縄・辺野古への新基地建設、原発再稼働など民意を無視し、国会での数の力で強引に政治を進めています。東北アジア政策でも、中国や北朝鮮などに対して対立を深め、韓国に対しても一定の距離を置いてきました。
 今年の原水禁世界大会を通じて、こうした新たな動きと安倍政権の危険な政策を捉え、平和と核廃絶、脱原発、ヒバクシャ援護連帯などの課題をどのように前進させていくかについて考えます。
 特に8月5日の国際シンポジウム(国際会議)のテーマは「東北アジアの平和と非核化」とし、米朝首脳会談、南北首脳会談などが切り開いた新たな状況に、日本をはじめ、米国や韓国がどのように対処していくのか、私たちが求めている東北アジア非核地帯化構想の必要性を改めて提起します。
 戦争被爆国である日本政府は、昨年7月に国連で採択された「核兵器禁止条約」に反対し続け、さらにアメリカの「核態勢の見直し(NPR)」などの核政策に積極的な支持を打ち出しています。安倍政権はさらに憲法改悪、戦争法制発動、共謀罪新設、沖縄・辺野古への新基地建設の推進など、「戦争できる国」への動きを強めており、その問題性も取り上げます。


昨年の原水禁世界大会・長崎大会閉会総会
(2017年8月9日・長崎県立体育館)

被災から7年―フクシマの現状と破綻する原子力政策
 福島原発事故の被災から7年以上が経過する中で、5万人近い被災者がいまも苦しい避難生活を余儀なくされ、避難指定解除と帰還の強制、補償の打ち切りなど、被災者をさらに苦しい状況に追い詰める「棄民化政策」とも言える動きが強まっています。震災と事故の記憶の風化、それに合わせた原発再稼働などの原発推進政策に対して、福島大会や、原発課題を強化した広島・長崎大会の分科会などを通じ、今日的課題を訴えていきます。
 福島大会では、「健康と甲状腺がんの問題」「避難解除による帰還と生活再建の問題」「放射性廃棄物の処理問題」の3つのテーマで分科会を開き、現地からの報告と助言者によるコメントなどを交え、県民が直面している切実な課題を考え、理解と共有をはかります。
 また、福島原発事故が提起した課題とともに、原子力政策の根本的な転換を訴えます。安倍政権の下で進められるエネルギー基本計画の矛盾と問題点を明らかにしながら、各地で進められる原発再稼働や老朽化原発の危険性、もんじゅ廃炉を受け破綻する核燃料サイクル政策と、膨れ上がる原発に関わる費用の実態を明らかにし、原発に頼らないエネルギー政策の転換の必要性を訴えます。さらに各地で取り組まれている脱原発の闘いを紹介し、連帯の強化をはかります。

残されたヒバクシャの課題解決をめざして
 ヒバクシャ課題としては、戦後73年を迎えてもなお、多くの被爆者の課題が残され、被爆者の高齢化とともに、課題解決が急がれていることを訴えます。根本的な原因は、政府による原爆被害の過小評価と、いまだ侵略戦争の責任を認めず、戦後補償の責任を果たそうとしないことにあり、政府は未だに被爆者の援護を国家補償として取り組んでいません。そのことが原爆症認定や在外被爆者、長崎の被爆体験者、被爆二世・三世などの様々な問題につながっています。それぞれの抱える問題について理解を深め、運動の展望を考えます。
 さらに、ヒバクシャとの国際連帯として、今年はチェルノブイリ原発事故の被災者を招き、福島原発事故と重ね合わせて考えます。
 大会では、上記の課題を通じて、原水禁の理念である「核絶対否定」、「核と人類は共存できない」ことを強く訴えます。(大会日程・会場などは12ページを参照)
(井上年弘)

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展望が見えないNPT準備委員会
核軍縮のために私たちがすべきことは
NPO法人ピースデポ研究員 山口 大輔

 今年4月23日から5月2日にかけて、ジュネーブにある国連欧州本部を訪問し、2020年核不拡散条約(NPT)再検討会議第2回準備委員会の一般討論、クラスター1(軍縮)、クラスター2(不拡散)の課題別討論、サイドイベントなどに参加した。その概要を報告する。

自国の立場に固執した各国代表の議論
 準備委員会の一般討論、クラスター1、クラスター2の議論を通して、これまでに有効であるとされてきた措置が、多くの代表から繰り返しあげられた。核兵器近代化の中止、安全保障ドクトリンにおける核の役割の低下、警戒態勢解除、信頼醸成、検証、透明性向上、リスク低減、消極的安全保障、イラン核合意(JCPOA)、非核兵器地帯(NWFZ)、核兵器禁止条約(TPNW)、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)、包括的核実験禁止条約(CTBT)、中距離核戦力全廃条約(INF)、戦略兵器削減条約(新START)、2000年と2010年のNPT最終文書の行動計画、国際原子力機関(IAEA)保障措置と追加議定書、輸出管理などである。昨年の準備委員会より多くの代表から聞かれたのが、核被害の性差による影響だった。
 新アジェンダ連合(NAC)を代表して、ニュージーランドは、NPTに向けて提出したワーキングペーパー13*1で、NPT第6条の核軍縮義務と1995・2000・2010年の最終文書といった過去の合意をもう一度例示し、これら合意を核兵器国が真剣で関心を持って進展させることに失敗していることで、NPTの力と信頼、再検討プロセスの有用性を損なっていると非難した。
 核兵器禁止条約締結をリードするオーストリアは、核兵器の破滅的な人道上の結末の観点から、核兵器禁止条約はNPT第6条の核軍縮の義務を強化すると述べた。
 核兵器国と非核兵器国の橋渡し役を自任する日本は、核兵器の使用による人道上の結末を避けることと、核抑止力を含む安全保障上の脅威への対処のバランスを取る必要があるとした。
 核兵器国の米国は、拡大核抑止を含む核抑止は、グローバルな安定と安全を保証する中心的役割を果たし続けていると述べた。
 全般的に各国の代表は自国の主張を述べるだけで、立場の異なる国と共通の基盤を見つけ出そうとする努力に乏しい。こうした主張の違いが最も先鋭的に表れたのが、各セッションの最後において行使された「応答の権利」である。シリアでの化学兵器使用、イギリスでの化学兵器による元ロシア人スパイ殺害、クリミア併合、核兵器の近代化はNPT第6条違反、シリアのIAEA保障措置違反、ヨーロッパにおける戦術核配備はNPT第1、2条違反などの事案を巡って、米国、英国、ロシア、シリア、イランなどの間で激しい応酬が繰り広げられた。
 ここにはどちらの言い分が正しいかを判断する第三者が存在せず、それぞれの立場に固執した言い分が延々と述べられただけである。筆者はその議論を把握できなかったが、ReachingCriticalWill(RCW)のニュースレター*2によれば、議長は一般討論から、各国代表に相互応答的な議論を奨励していた。またフランスは現状の相手に悪の烙印を押すやり方ではなく建設的で包括的な多国間対話を促したとある。とはいえ、相互応答的な議論のあり方には、改善が必要であろう。

中東問題も道筋見えず 2020年に向けて核軍縮の世論喚起を
 クラスター2の特定課題(1995年の中東決議の履行と中東を含む地域的な課題)では、特に効果的な提案もないまま、各国代表が1995年と2010年の最終文書による中東非大量破壊兵器地帯に関する会議の開催の履行を、3時間のあいだ呪文のように繰り返していた。2015年のNPT最終文書が中東問題で合意できなかったことを考えると、再来年のNPT最終文書の着地点は見えない。
 議長による事実要約が5月3日に発表された。いわゆる両論併記となっているものの、少数派の核兵器保有国の意見が、大多数を占める非核兵器保有国の意見に比べて大きく取り上げられていることに対して、バランスを欠いており不正確だとエジプトが批判したとRCWのニュースレターにあった*3。
 NPT発効から50年となる2020年のNPTサイクルの最終目標は、2000年や2010年のNPT再検討会議の到達点を踏まえ、再来年の最終文書でNPT第6条に基づく核軍縮を実質的に前進させる事項に合意することである。しかしこれまでの議論からは、中東非大量破壊兵器地帯に関する合意を筆頭として、どのような合意が生まれるのかの道筋はまったく見えなかった。
 我々日本の市民社会はそうした事項のアイディアを出し続け、そのアイディアが日本を含む核兵器依存国、核兵器保有国の世論となるよう引き続き努力を続ける必要がある。

(やまぐちだいすけ)

*1 undocs.org/NPT/CONF2020/PC.II/WP.13
*2 18年5月1日 reachingcriticalwill.org/disarmament-fora/npt/2018/nir
*3 18年5月6日 reachingcriticalwill.org/disarmament-fora/npt/2018/nir/12535-npt-news-in-review-vol-15-no-6

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プルトニウム削減の第一歩は
再処理工場運転放棄

 6月10日、日経新聞が「米、プルトニウム削減を日本に要求核不拡散で懸念政府、上限制で理解求める」と報じました。背景には、1988年日米原子力協力協定の最初の有効期間が7月16日に満期を迎えるという事情があります。期限を定めない自動延長が確定していますが、今後も一方の国が6カ月前までに文書で通告すれば終了や改訂交渉が可能なため協定は不安定な状態に入ります。
 米国は核兵器6000発分もの日本のプルトニウム保有について以前から懸念を表明していました。トランプ政権の要請は以前より具体的で、日本側は6月中に保有量の上限設定方針の策定、7月16日に日米共同文書を発表という線で同意したとの報道です。朝日新聞(6月17日)によると「米国が3月ごろから削減を強く求めてきた」、「来月発表のエネルギー基本計画にも削減方針を明記」とのことです。上限をどのように設定するかは不明です。
 日本政府は、1997年12月、「余剰プルトニウムを持たないとの原則」を国際原子力(IAEA)に送った文書で国際的に宣言し、原子力委員会(以後同委)が2003年8月5日に発表した「わが国のプルトニウム利用の基本的考え方」は「利用目的のないプルトニウム、すなわち余剰プルトニウムを持たないとの原則」を再確認するとともに、間近に控えた六ヶ所再処理工場の試運転開始を念頭に、電気事業者は、プルトニウムの詳細な利用計画(利用開始時期・期間を含む)を毎年度プルトニウムの分離前に公表すると定めています。プルトニウムをウランと混ぜた混合酸化物(MOX)燃料にして軽水炉(普通の原発)で利用すること(プルサーマル利用)を同委が確認するから余剰は生じないとの主張です。しかし、これまで電気事業連合会が発表した利用計画では各社、利用開始年を再処理工場に隣接して建設中のMOX工場の完成予定年以降としているだけです。しかも英仏に委託した再処理で発生した分は無視されています。このため保有量は1997年の宣言の際に示した96年の量と比べ、2倍以上の48トン(英国で今年末までに日本に割り当て予定の1トンを含む)になっています。

最近の再処理政策継続のための「説明」の試み
 昨年からの流れを整理しておきましょう。日本政府は昨年7月21日、同委の「原子力利用に関する基本的考え方」を閣議決定しています。同文書は、削減の必要性についての国際的関心のため、現在、唯一の現実的な手段である軽水炉でのMOX利用での対応が求められ、日本の方針を「適切に説明」することが重要と述べています。同委は10月3日には「日本のプルトニウム利用について【解説】」発表します。六ヶ所再処理工場操業開始までに電気事業者が、「最新の実績を踏まえた新たなプルトニウム利用計画を公表し、国(原子力委員会)がその妥当性を確認……以上のことから……長期的に、日本のプルトニウム保有量の削減という目標が達成されるであろうと認識している」との解説です。
 これでは国際的理解は得られないでしょう。米国NGO関係者によると、2016年3月17日の上院外交委員会公聴会で日本の再処理についての懸念を表明するなど、注目されたオバマ政権のトーマス・カントリーマン米国務次官補(国際安全保障・不拡散担当)が去った後も次官補代理がまともな約束をと迫り続け、今年1月9日に後任のクリス・フォード氏が就任、同様の要求を続けたようだとのことですが、要求が強化されたか否か不明です。
 今年1月16日に同委は、2003年の「考え方」の改訂を決定します。事務局の配布文書は「フランスには、余剰プルトニウムを発生させないために、一定期間の分離プルトニウムの利用見通しにしたがって、使用済燃料を再処理するという政府のガイドラインがある」と述べ、この方式に沿った改訂を提案しています。03年版が虚構と認めたことになります(朝日記事の「プルサーマル発電の見通しを立てた上で、その分に応じた量だけ、新たなプルトニウムの取り出しを認める」はこれに言及か)。「『長期的には、日本のプルトニウム保有量を削減するという目標を達成する』ことが必要」とあるのは、昨年10月の「達成されるであろうと認識」からの変更点です。しかし、お手本とするフランスの民生用プルトニウム保有量は、この方針にもかかわらず、毎年1~2トンほど増え続けていて、16年末現在で65.4トンに達しています。
 5月28日の同委定例会議で事務局が示したメモには、改訂版では「プルトニウム・バランス、海外保有分、六ヶ所再処理施設における再処理、研究開発用プルトニウムの利用方針、利用計画」について検討が必要とあります。6月12日に発表した「『エネルギー基本計画(素案)』について(見解)」では、同委は「核燃料サイクルの推進は我が国の基本的な方針」とし、「再処理工場やMOX燃料加工工場等の稼働に向けて着実に実施していく」、「プルサーマルの実施」について「電力事業者間で協力する体制が必要」と述べています。最後の点は、再稼働の進んでいない東京電力や中部電力の英仏保管プルトニウムを他の電力会社に譲渡して燃やそうというものです。電事連が1997年に発表した2010年までに16~18基でプルサーマル導入(年間7~11トン消費)という計画は、年間8トンのプルトニウム分離能力を持つ六ヶ所再処理工場の運転を正当化しようとするものでした。現在21年完成予定の同工場の運転を、再稼働しているMOX利用許可炉が4基だけという状況で「説明」できるとの判断か。海外保管38トンが底をつくまで運転しないとするのか。
 再処理は元々使った以上のプルトニウムを生み出す夢の高速増殖炉の初期装荷燃料を提供するために構想されたものです。原型炉もんじゅはまともな運転ができないまま2016年末に廃炉が決定されました。MOX燃料の製造には普通のウラン燃料の10倍ほどのコストがかかります。必要なのは核燃料サイクル推進のための説明ではなく、再処理政策の放棄です。
(「核情報」主宰田窪雅文)

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《投稿コーナー》
問われる男女共同参画基本法の理念
事務次官・大臣のセクハラ発言問題から考える
室蘭工業大学大学院工学研究科 准教授 清末 愛砂

セクハラとジェンダー不平等社会
 今年4月中旬に明るみとなった財務省の福田淳一事務次官(当時)による女性記者へのセクハラ発言。被害者を愚弄しながら同事務次官をかばう麻生太郎財務大臣の発言。それらは書き表すのも躊躇するほどおぞましいものであった。
 セクハラは形態がいかなるものであろうとも、個人の尊厳と人格を侵害する行為である。多くの場合、加害者と被害者の間にあるさまざまな従属支配関係、または加害者が被害者を意識的もしくは無意識のうちに蔑視することによりなされる。被害者の多くが女性であることに鑑みると、セクハラ多発社会とは、女性の人格が軽視されているジェンダー不平等な社会を意味する。


イラスト・千光一

理解されない男女の個人としての尊厳と人権の尊重
 一連のセクハラ発言を耳にし、即座にわたしの頭に浮かんだのは1999年制定の男女共同参画基本法3条である。少し長いが同条を示す。
 「男女共同参画社会の形成は、男女の個人としての尊厳が重んぜられること、男女が性別による差別的取扱いを受けないこと、男女が個人として能力を発揮する機会が確保されることその他の男女の人権が尊重されることを旨として、行われなければならない」。
 同条は、男女共同参画社会が男女の個人としての尊厳と人権の尊重などに基づいて成立することを明示している。国はそうした社会の形成の促進に向けて施策を策定すると同時にそれを実施する責務を負っている(同法8条)。
 男女共同参画基本法の制定・施行から19年が経過し、同法に基づく男女共同参画基本計画がすでに第4次計画まで策定されているにもかかわらず、関連施策を実施する立場にある公人がセクハラ発言を行っていたという事実は、「男女共同参画社会の実現を二十一世紀の我が国社会を決定する最重要課題と位置付け」(前文)る同法の理念が、この社会で根本的に理解されてこなかったことを表している。そうした人物が公的職務に就くこと自体、その資格が倫理的に問われるところであるが、加えてそれを容認してきた社会の責任も問われなければならない。
 なお、第4次男女共同参画基本計画には、セクハラが「男女がお互いの尊厳を重んじ対等な関係づくりを進める男女共同参画社会の形成を大きく阻害するもの」*1と明記されている。そうであるからこそ、それを根絶するための具体的取り組みが打ち出されているのであり、その中には「国家公務員についての対策」として、研修などを通じての防止が含まれている。財務省内でセクハラ防止研修を実施する責任を有する者が直接の加害者および性的二次被害の加害者であることを考えると、今回のセクハラ発言問題は幾重にも深刻な問題といわざるを得ない。

憲法と基本法の価値が活かされる社会を
 憲法の三大原理のうち、最も重視されるものは基本的人権の尊重である。個人の尊重を規定する13条は包括的基本権として位置づけられる。続く14条は平等原則を規定しており、同条1項では政治的、経済的または社会的関係における差別的取扱いを禁じる例示事由の一つとして、性別が列挙されている。
 13条と14条は意味なく隣同士に置かれているわけではない。相互に補完しあう一連の条文として並ぶことで、基本的人権の土台が、性的意思を含む個々人の意思が平等に尊重されることにより形成されるという理解にいきつく。加えて、基本的人権の尊重に欠かすことができない要素として、男女共同参画基本法3条が言及する<個人の尊厳>を挙げることができる。個人の尊厳は、家族に関する立法指針を示した憲法24条2項においても両性の本質的平等とともに明記されている。外から見えにくい家族内では、個人の尊厳が脅かされるような事態がたびたび生じるからである。
 セクハラ問題は公的領域・私的領域を問わず、わたしたちが暮らす社会の随所に存在している。公人の発言のみに焦点をあてている限り、ジェンダー平等に向けた歩みは遅々として進まない。今回のセクハラ発言問題が日本社会全体のジェンダー意識を問うものとする意識を持ち、憲法の人権規定および男女共同参画基本法の価値を再確認したうえで、それらが確実に活かされる社会づくりをめざすことが求められている。
(きよすえあいさ)

*1第4次男女共同参画基本計画「第7分野女性に対するあらゆる暴力の根絶」の中の「8セクシュアルハラスメント防止対策の推進」より。
http://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/4th/pdf/2-07.pdf(2018年6月11日最終閲覧)、81頁。

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加盟団体の活動から(第7回)
最低年収600万円、 完全週休二日制が当たり前の業界に
全日本建設運輸連帯労働組合書記長 小谷野 毅


春闘勝利・働き方改悪法反対を訴えて
250台のトラックパレード
(3月11日・大阪)

 全日本建設運輸連帯労働組合(全日建)は1984年、建設産業とセメント・生コン産業で活動する3つの労働組合が組織統合して発足しました。現在、新潟、関東、東海、関西の17都府県に7つの業種別または地域支部を置き、職場分会はおよそ350カ所、組合員は約3000人です。組合員の主な職種はセメントや生コンクリートを運搬する大型運転手、建設現場のクレーンのオペレーター、ダンプカー、一般貨物トラックの運転手など。ほぼすべての職場が中小企業です。
 建設産業、セメント・生コン産業、トラック運輸業に共通する特徴は、鹿島、大成、清水といったスーパーゼネコンや、太平洋、三菱、住友といった財閥系セメント資本、日通、ヤマトといった巨大物流資本など、ひと握りの大企業が、重層的な下請構造のもとで圧倒的多数の中小企業を支配していることです。
 1960~80年代、長時間労働で休みが少なくても、大型免許をもっていれば、そこそこの年収が得られました。しかし、バブル崩壊後の90年代半ば以降、これら産業はいずれも供給過多、かつ規制緩和による過当競争に直面。大企業や元請業者は運賃・料金のダンピングを中小企業に押しつけ、中小企業は採算と品質を度外視して目先の仕事確保に必死となり、そのツケで労働者の賃金・労働条件は著しく悪化し、雇用の非正規化がすすみました。この産業が労働基準法違反の常習犯で、トラック運輸は過労死ワーストワン業種という理由もこうした大企業中心の産業構造に原因があります。いまや年収水準は全産業平均を下回り、深刻な人手不足と高齢化に陥っているのが実態です。
 これに対し、私たちが重点課題とする活動は中小企業の協業化です。中小企業がバラバラでは採算のとれる価格・取引条件は実現できない。協同組合に結集して共同受注・共同販売事業をおこなう。これによって適正な販売価格を実現し、企業収益を安定させ、賃上げと雇用安定の原資をつくる。そのような産業民主化政策を推進してきたのです。
 当面の目標は、若者や女性にとって魅力ある産業別労働条件の確立で、最低年収600万円、完全週休二日制、生理休暇の有給化などを業界のスタンダードにすることです。
(こやのたけし)

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〔本の紹介〕
「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明
伊神 満/日経BP


被バクの犠牲は作業員に押しつける

 何の予備知識がなくても、スラスラ読めて、かつ面白い。書店で平積みになっていたのを偶然手にとって、当り!というのは久しぶりです。そもそも買うのが電子本ばかりになってしまって、紙の本自体久しぶりなのですが。本書にも書かれていますが、前後の章を行ったり来たりして読むことが多いので紙の本を買うことがおすすめです。その投資には十分な見返りがあります。私たちの買物行動ひとつでも、それなりの意味を持つことが分かります。経済学とはこうなんだと目を開かせられることも。
 タイトルにある「イノベーターのジレンマ」は1997年のベストセラー。技術の世代交代と共に企業の顔ぶれも変わっていく─時代を築いた「勝ち組」も新技術に出遅れがちだ―。そんな栄枯盛衰を経営学の観点から書かれた本。そこで扱われたテーマを題材にして、経済の仕組みを紐解いていく。数式よりも「置換効果」「抜け駆け」「能力格差」といったキーワードと具体例をあげた解説はわかりやすく、中学生でも理解できる。最近もニュースになった「Github社」のマイクロソフトによる買収なども「抜け駆け」ゲーム理論の先制攻撃のひとつだろう。この会社の提供するサービスは、共同作業でのバージョン管理に便利なもので、私もちょうど人に勧めていたところ。取り込まれて変質せずに残って欲しいものだ。
 理論をもとに、どう現実を計測するか?実証分析の方法を、順を追って見せてくれる。「イノベーターのジレンマ」で扱ったハードディスクが3.5インチになっていく過程がそのいい例証となっている。さらに投資と仮想シミュレーションを理解することで、「どうすべきか」という問題、つまり政策選択にも切り込んでいく。統計を見るときの相関関係と因果関係の違いなど重要な指摘も適宜解説される。
 ふた昔ほど前、幸運にも環境団体でエネルギー問題を、経済モデルを使ってシミュレートするプロジェクトの末端に参加できた。実はその時は十分には理解できていなかったのだろう。だがこの本がきっかけで当時の驚きと興奮を思い出した。そう、気候変動などの大きな問題にも、実証分析の手法で迫ることができるのだ。
 政府の出した「エネルギー基本計画案」なども本来ならこうした構造推計をもとになされるべきだ。本書を読んだ後に政府の計画案のデタラメぶりを見てみるのもおすすめ。
(金生英道)

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核のキーワード図鑑



核にたより 核にささえられる 核人間よ

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被爆73周年原水爆禁止世界大会

 今年も7月28~29日に福島大会、8月4~6日に広島大会、7~9日に長崎大会が開催されます。多くの参加を呼びかけています。

福島大会:
7月28日(土)会場=福島県教育会館他13:00~全体会、15:15~分科会
7月29日(日)フィールドワーク(被災地視察)

広島大会:
8月4日(土)
16:00~折鶴平和行進【平和公園~県立総合体育館】
17:15~開会総会【県立総合体育館】

8月5日(日)
9:30~分科会、ひろば、フィールドワーク、メッセージfromヒロシマ2018など
14:00~国際シンポジウム【アークホテル】

8月6日(月)
9:30~広島まとめ集会【県立総合体育館武道館】

長崎大会:
8月7日(火)
15:30~開会総会【長崎ブリックホール】

8月8日(水)
9:30~分科会、ひろば、フィールドワーク、ピース・ブリッジ2018inながさきなど

8月9日(木)
9:00~閉会総会【県立総合体育館】
10:15~非核平和行進【県立総合体育館~爆心地公園】

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