2016年、ニュースペーパー

2016年01月01日

ニュースペーパー2016年1月



2015 もんじゅを廃炉に!全国集会

 1995年12月に起こった高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏出事故から20年。「2015もんじゅを廃炉に!全国集会」が12月5日、福井市内の文化会館大ホールで開かれ、全国から700人が参加しました。度重なる事故と1万件にも及ぶ点検漏れなど、不祥事に事を欠かず、点検ルールを再構築したにもかかわらず、9月には、そのルールですら半数近くで誤りが発覚する始末。とうとう原子力規制委員会は10月に「もんじゅを原子力機構に委ねていることが妥当か」と、「失格勧告」を機構に対して投げかけました。集会で鈴木達治郎さん(長崎大学核兵器廃絶研究センター長)は「これをチャンスととらえて、高速増殖炉や核燃料サイクルをどうすべきか、議論すべきだ」と話し、伴英幸さん(原子力資料情報室共同代表)は、原子力の研究を含め、日本の科学技術について「護送船団方式でプロジェクトで進行」していることを批判しました。
 集会終了後、参加者は隣接する公園で開かれた「高浜原発3・4号機の再稼働を本気で止める!全国集会」に合流し、1200人が福井駅までデモ行進をして、もんじゅ廃炉と再稼働反対を訴えました。(写真は高浜原発再稼働反対の集会)

【インタビュー・シリーズ その108】
安倍自公政権の暴走と対決し、平和・民主主義・脱原発の確立を
座談会: 総がかり行動、辺野古新基地建設反対、さようなら原発の活動者に聞く

 安倍自公政権の暴走は多方面にわたっており、それぞれの分野での反撃の取り組みがあります。私たちはそれぞれの闘いと全体を見ながら、安倍自公政権と対決し、連帯して闘うための2016 年の方向を見定める座談会を行いました。(2015 年11 月28 日収録/福山真劫・高田健・木村辰彦・井上年弘が参加)

司会:福山真劫・平和フォーラム共同代表
 高田健さんは、「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」の、また「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の中心メンバーとして、昨年は1960 年の安保闘争並みと言われる戦争法案廃案の運動を引っ張ってこられました。運動の経過とそれに関わる特徴点がありましたらお話しください。

高田健
 9月19日に戦争法案が強行採決されましたが、皆さんの中に敗北感や挫折感のようなものが無い。理由は2つあります。1つは、2014 年から15 年にかけての安保法制反対の闘いが勝ち取ったものに対しての皆さんの確信がある。もう一つは、挫折したなどと言っていられない、実際に戦争法案が半年後には施行されるし、安倍内閣はこれで戦争に向かって事を進めているわけで、引き続き闘い続けなければいけない。確信というのは、象徴的には8月30 日の国会前の12 万人、全国1500 カ所ぐらいの行動に現れていると思います。
 こういう大きな行動を作りあげた。とくに総がかり行動実行委員会がこれまでの潮流を乗り越えて連携して運動を作って来たことに対する皆さんの信頼が大きくて、共同行動が全国色々な形でやり易かった。学者やシールズや新しい運動で出来て来た人達含めてそうだったと思います。例えば日本弁護士連合会のようなところも団体の性格で普段は独自の闘いしかやれないところが、今回はこちらが分れていないために積極的に市民運動と連携することが出来た。
それから60 年安保、70 年安保とはちがって、個人参加の人達と、今までの労働組合とか民主団体の人達などが大きく共同してやれた。60 年は「声なき声の会」があって、70 年には「ベ平連」があったのですが、今回はより大規模な形で参加して来たと思います。ツイッターやフェイスブックなどのSNS のことも大きかったのだけれど、新聞の広告などでインターネットをやってない年齢の高い層にも告知が届いて、私も連絡先の一つだったんですが、国会に行くにはどこの駅で降りてどうやって行けば良いのかとか、デモに参加するには何か資格がいるのかとか、極めて初歩的な質問をしてくる電話がすごく多いんですね。今まで参加した事もない人が来ているんです。そういう事で、60 年安保以来と言われるような行動になったと思っています。

福山
 9月の14、15 日から19 日にかけて、最後の山場みたいな事になりましたが、野党との関係はどうでしたか?

高田
 もう9月初め頃には「野党がんばれ」っていうシュプレヒコールがどんどん出てくる状況でした。私は市民運動の悪い癖があって、政党とはちょっと距離を置くという感じでしたが、今回は野党の皆さんも私たちのところ必ず出て来て連帯のあいさつをやってくれる。国会の中と外との結びつきが本当に大きかった。5月3日の横浜での大きな憲法集会以来、そういう傾向がどんどん出て来たと思うんです。

福山
 戦争法案のもう一方で沖縄での米軍新基地建設が民主主義を破壊しながら進められている。沖縄では翁長雄志知事を先頭に県民ぐるみのオール沖縄の闘いが大きく高揚しています。木村辰彦さんは一坪反戦地主会、辺野古実行委員会、国会包囲実行委員会の中心メンバーとしてそうした沖縄の闘いと連帯する闘いを東京で、本土で作り上げようと、この間取り組んでこられました。

安倍政権の暴走を止める最先頭が辺野古
木村辰彦
 2014 年に沖縄では4回の選挙がありまして、名護市長選挙と市議会議員選挙、県知事選挙、衆院総選挙、全てで県民が辺野古新基地建設に反対する。これ以上、今の日本の民主主義政治の中ではあり得ないくらい明確な意思表示をしました。
 2014 年の8月から、日本政府は県民の民意を踏みにじって埋め立て建設に向けたボーリング調査を強行しました。それに対して、現地ではキャンプシュワブのゲート前で、資材搬入の車両を阻止する非暴力の闘争が行なわれ、海上ではカヌーに乗った人々が海上保安庁の無法な暴力にも屈する事無く、美しい海を埋め立てるなという抗議闘争が闘われ、多くの人々が結集しました。山城博治沖縄平和運動センター議長も病気で一時入院しましたが、9月には現場に復帰して今また最先頭で闘っています。こういった闘いに呼応する形で本土からも多くの皆さんがゲート前闘争に参加し、県民と一緒に機動隊の暴力に屈しないという闘いを受け止めて、本土の職場、地域でもがんばっていこうと運動は拡がりました。国会包囲行動を呼びかけ、1月25 日には7000 名、5月24日は1万5千名、9月12 日は2万2千名が結集しました。


辺野古新基地建設反対国会包囲行動(9月12 日・国会前)

 翁長知事は10 月13 日に辺野古の埋め立て承認取り消しを決定しました。これに対して、沖縄防衛局、防衛省は行政不服審査法を悪用し、埋め立て問題を所管する国土交通省に救済を求めました。国の行政機関である防衛省が、一私人の立場に成り済ます、法治主義、民主主義の全面否定です。国土交通省は、翁長知事の承認取り消しの効力を執行停止しました。10 月27 日です。さらに同じ日に閣議を開いて防衛省が国の行政機関の立場で今度は国土交通省に対して翁長知事の取り消し処分を裁判で撤回、防衛省が代わりに執行すると、一方では私人、今度は行政機関という使い分けで知事の決定を取り消すという法治主義にあるまじき事を行っています。
 中央行政法の研究者90 名以上が、国の行政不服審査法の悪用について批判する共同声明を発表しました。11 月17 日には日本政府が知事を提訴しました。知事の権限は、今は地方自治法が変わりまして国と対等なんですが、国防や外交については国の専権事項だから一知事ごときがその事を審査したり判断する権限が無い事は明らかであると言っているのです。
 私たち県民からすると、例えば前の鳩山政権の時に国の政策で普天間の県外移設としてあがった、静岡県とか佐賀とかの候補地の首長は地方自治の立場から国に異議申し立てをし、国はすぐに撤回をしました。沖縄県以外の知事には反対する権限を認める明らかな法の下での不平等を含めて、裁判で翁長知事が、日本政府が沖縄に基地を押し付ける不当性と、沖縄への差別について訴えました。本土から知事を支える闘いを大きく作って行く必要があると思います。
 戦争する国づくりの法律が戦争法案であれば、そのための具体的な最前線が自衛隊も常駐する辺野古新基地建設だと、辺野古と総がかりが結びついたのが昨年後半の大きな成果です。この力を軸にして2016 年を闘って、安倍政権の暴走を止める最先頭の闘いとして辺野古を撤回させれば、日本に民主主義を取り返す闘いの大きな前進になると思っています。

福山
 安倍自公政権が政策決定するにあたってアメリカの影というか軍事戦略の影響力がたいへん強い。戦争法案についてもアーミテージ/ナイ・レポートの中で繰り返し日本に求められて来た事です。さらに「日米同盟、未来のための変革と再編」という文章の中で沖縄の辺野古への新基地建設が合意されている事を見ても、安倍自公政権がそれを実現して行くという要素が強いと思います。11 月3日に発表された叙勲でアーミテージとラムズフェルドの2人が旭日大勲章を受賞するという、そこまでやるのかとびっくりしたんですが、アメリカの影の大きさを改めて確認しました。戦後70 年経つのですからもう少し自立した平和安全保障政策というものも必要です。アメリカの市民運動、平和運動の中でも、基地建設強行について多くの知識人、文化人、市民団体が反対の声を挙げているという事もありますし、日米の平和運動の連携も引き続いて必要です。
 もう一方で原発に関わって深刻な事態が進行しています。今でもまだ十数万人の人達が避難したまま、原発事故の処理のめども立たない、原因も分からないという状況があり、放射能も出し続けている。そうした中で、福島の被災者に対して帰還政策のようなものをとっている。原発再稼働も始める。核燃料サイクルも放棄をしていないという状況があります。

国民の多くは原発からの撤退を求めている
井上年弘
 民主主義の危機というのは原発も同じだと思います。県民の多くが反対をしていても、国民の6割、7割が反対や不安の声を挙げていても、再稼働を強行する。まさに戦争法や沖縄と同じようなことを原発でも行っています。
 福島原発事故は、ちょうど民主党政権の時だった訳ですが、基本的には自公政権が長年にわたって安全神話の上に国策として押し進めて来たという事があります。沖縄でも国策という形で基地を押し付けて来た。原発も地方に、過疎や産業の弱い地域に押し付けて来た。それを消費するのが都市の生活者、ないしは産業界。我々を含めてですけれども、差別の上に成り立っていたことは沖縄の問題とも通底するところです。沖縄は銃剣とブルドーザーで、原発の場合は札束で地域を切り崩して来ました。地域社会が壊された上に原発が立ち、福島などは大きな被害を被ったということだと思います。
 2011 年以降世論は大きく変わった。国民の多くは「原発からの撤退」を求めているというのが明らかなのに、安倍政権になって逆に「エネルギー基本政策」を打ち出した。民主党政権では2030 年代に原発をゼロにしようというところまで行ったにもかかわらず、政権が変わると手のひらを返すように2030 年には原発が20%~22%と、ベースロード電源として電力に占める割合を打ち出してきました。もとの原発推進政策に戻ったというのがこの間の動きです。
 大きな問題としては再稼働がありました。8月と10 月に川内原発(鹿児島)が再稼働。福島原発事故を踏まえれば、避難計画を含めて県民の安全をどうするのかという事が問われているにもかかわらず、一切、原子力規制委員会を含めて何ら明確な判断も出さず、単に基準に合っているという事だけで再稼働をさせてしまった。今後は伊方原発(愛媛)、高浜原発(福井)がありますが、伊方は春以降の再稼働をめざして動いている。高浜原発は裁判で差し止められていますが、異議審がどのようになるかで、再稼働の時期がみえてくるかと思います。


さようなら原発 さようなら戦争全国集会
(9月23日・代々木公園)

 関西電力は福井県に原発が集中していますが、琵琶湖をかかえる滋賀県、関西圏にとっての水瓶という大きな問題がありますし、隣の京都も高浜原発から近いところでは5キロを切るような地域がある。そんなところに、原発の交付金のお金も降りてこなかったし、避難計画だけは作れと負の部分だけが押し付けられる。京都市長はじめ多くの自治体が強固に反対しているという状況があります。伊方についても佐多岬の先端の5千人ほどの人たちは事故が起きれば取り残される可能性がある。再稼働を強行しても問題だらけです。
 もう一つ大きな問題は、もんじゅという高速増殖炉がたびたび故障をして、運営をする旧動燃、今の日本原子力研究開発機構が、実施主体の事業者としてダメだというのが原子力規制委員会からも出ました。4月ぐらいまでには結論を出すようにということで、別の実施主体を探せという勧告がきています。もんじゅ含めて核燃料サイクルが行き詰まりつつある。六ヶ所再処理工場も23 回目の延期をしました。核燃料サイクルを止める動きを作り出していく事が大きな課題です。
 さらに来年にかけて、福島原発事故の問題、子どもたちの甲状腺障害の問題、補償政策がどんどん後退されようとしていて、「棄民化政策」にも対応する事が急務となっています。

福山
 原発そのものの危機と同時に、原発を管理運営する体制そのものが大きく揺らいで、能力の無い事が明らかになって来ている話しがありましたが、それでもなおかつ、原発を推進すると言うあたりは、よく原子力ムラと言われていますが、利権構造について少し説明を。

井上
 なぜ原発を推進するのかというのは我々も不思議でしょうがないのですが、一つはこれだけ大きくなった官僚と原子力産業界と学者の利権構造があるのでしょうけれども、産業界については資本投資をしたという事もあって急には止まらないし、方向転換もできないという事もあるのかもしれません。一方で、原発輸出という形で生き残りをはかろうとするようになっていると思います。日印原子力協定が2015 年12 月に安倍がインドに行って結ぼうという動きまで出ています。

沖縄の差別されてきた歴史を問う
福山
それぞれの立場から運動の経過とその特徴を伺いました。木村さんから構造的差別というものがあるのではないかという話しがありました。沖縄が長年にわたり差別されて来た、犠牲にされて来た経過や、思いがありましたら少し話していただけますか。

木村
 さかのぼれば琉球処分がありますが、まずは沖縄戦で日本が天皇制を維持するために少しでも米国との交渉を有利に導くために、沖縄で住民を巻き込み多大な県民犠牲を強いた。さらに沖縄県民をスパイ容疑で集団自決を強要するとか、色々ありました。天皇メッセージも含めて戦後の日本の独立と引き換えに沖縄をアメリカに売り飛ばすとか、戦後27 年間の米軍支配のなかで、県民の復帰運動に対しても日本政府は全く耳を傾けず、結局、軍事戦略の転換、日米の思惑の中で沖縄を日本に取り込み、自衛隊基地をつくるとかもあります。
 一坪反戦地主会は、銃剣とブルドーザーで取りあげられた土地の返還を求めて闘っている人を支援しているのですが、その人達に対しても、95 年、米軍用地収用特別措置法に基づいて、県の収用委員会が審議を尽くして、それが間に合わなかったら、普通なら米軍が不法占拠している形になるのですが、その時国会で収用委員会の採決が出なくても引き続き暫定使用をするという特別立法を強行採決しました。当時、自民党の野中広務さん(元内閣官房長官)ですら、沖縄の県民をここまで差別して日本が大政翼賛の国会になってはいけないと言っていました。当時の太田昌秀沖縄県知事の、拒否をしている人の土地については返してくれ、ちゃんとした手続きをしてくれ、という収用法に基づく最低限の要求すら強権を発動して踏みにじった事もあります。 
 最近酷いと思うのはオスプレイの配備問題です。41 市町村長、議会議長を含めて10 万人の県民大会(2012 年9月9日)を開いて反対をしているにもかかわらず配備を強行した。ハワイでは、カメハメハ大王の遺跡の上を飛ぶルートに対して住民が反対の声を挙げたら、オスプレイの配備を中止した。沖縄県民の命は遺跡よりも価値が低いのか。アメリカのダブルスタンダードを承認する日本政府の沖縄差別があります。
 1879 年の琉球国を武力で併合した植民地政策で、構造的に日本政府は沖縄差別政策をやっている。今沖縄では自己決定権という、沖縄の未来、将来は自分たちの選択で決定する権利があると、国連の人権規約でも謳われているし、翁長知事も国連で訴えました。本土でも人権を蹂躙する政府に対して、とにかく県民の尊厳と民主主義を守れということで、オール沖縄に呼応して、オールジャパンを作って沖縄と連帯して、日本の民主主義が問われているという事でがんばっていただきたいと思います。 


普天間基地前の平和行進(5月16日)

安倍政権と対決する野党に期待する
福山
 木村さんから沖縄の差別されて来た歴史を語られました。本土の側からすると差別する側だったゆえに差別された側の痛み、人間の尊厳が踏みにじられて来た歴史的な経過は見えてないんですよね。平和や民主主義を語り、運動を追及して来た側も、目の前の本土の課題に忙殺される中で最も深刻な差別の中にあった沖縄の思いを見て来れなかったと言う事があると思うので、今後そうした木村さんの提起を胸に刻んでいく必要があると思います。
 政党ですが、野党、とりわけ民主党が戦争法案の課題でも、沖縄の課題や原発でもどういう方針を出すのかという事が平和運動、民主主義運動との関係で極めて重要な役割を果たすかと思います。社民党は現在の戦争法案についても原発、沖縄についてもそれなりにきっちりした方針を出しています。戦争法案については民主党が運動と関わる中で法案廃案へと方針を確立して行った。沖縄に関わる課題では鳩山由起夫元首相の提起もあり、結果として辺野古基地建設を容認するということになる訳ですけれども、今の県民の意志を見て、民主党自身がやっぱり方向転換して行く必要性があると思います。最低でも県民の合意の無い基地建設は反対だということぐらいは打ち出さないと意味が無い。ぜひ野党の方には沖縄課題もがんばっていただきたいし、脱原発課題も2030 年代ゼロという民主党が決めた方針に沿って、今の安倍政権が決めた原発政策の矛盾点など色々ある訳ですから、対決をしていくという姿勢が必要だと思います。

井上
 民主党が2030 年代に原発をゼロにするというところまで持って行ったというのは大きいと思うんですね。即ゼロにしなければダメだというのは議論としては分かるし、できたらそうしたいと思いますが、政治という場においてはなかなか合意をそこまで持って行く事ができないのであれば、とにかく期限をきめることが必要です。ドイツも何年動かすという期限を決めた訳ですね。それをどれだけ前に持ってくるかというのが運動の力です。そのほか福島原発事故の収束、後始末の問題と言った残された課題をきっちりと解決して行かなければいけないと思います。具体的に政治を動かして行く事が重要で、すでにロードマップとして2030 年代にゼロということを民主党は打ち出しており、それを実現できるよう迫る事も大切だと思います。 

福山
福島の除染作業をやってもの凄くたくさんの放射性廃棄物が積み上げられていますが、ああいうものだとか、事故を起こした原発の処理をして行く過程で出てくる放射性廃棄物に対する方針がありません。

井上
 今のところ何も無くて、東電の責任でやりなさいということになっています。あれだけ国費を投入された東電が40 年、50 年の負の遺産をどれだけ背負っていけるのかということは大きな問題だと思います。
 2016 年3月12日に福島県郡山市の陸上競技場で「原発のない福島を!県民大集会」が開かれる予定です。それに呼応して3月26 日に代々木公園では2012 年と同じようにサッカー場も借りて「さようなら原発10 万人集会」をしたいと思って準備をしています。3月を「フクシマ連帯月間」として全国的に福島の問題で色々取り組んで下さいという呼びかけをしています。福島からのキャラバン行動も計画しています。


3万人が集まった5.3 憲法集会
(5月3日・横浜臨港パーク)

木村
 沖縄では12 月2 日に国が知事を訴える代執行の第1回の裁判が行われ、2ヶ月ないし3ヶ月で早期に結審が出るだろうという事で、おそらく司法は政府に屈服する形で知事の埋め立て承認取り消しは違法だという判決が出て国が代執行するという局面になる。防衛省はすでに250 個近くの15 トンブロックを船に載っけて、いつでも辺野古の海にぶち込むという準備をしています。
 国土交通省が知事の取り消し決定効力の執行停止をしましたので、今度は沖縄県から国土交通省に対して、効力執行停止を無効にする裁判闘争をしています。裁判の中で知事が法廷に出て、沖縄に基地を押し付ける国の不当性と沖縄差別、民意を踏みにじる安倍政権の理不尽さを訴えています。辺野古の報道も増えていますから、なんとか知事を支える声を本土からもっと挙げていきたい。
 
 米軍基地を作る事が、本当に美しい海を埋め立てる事を上回る公益性があるのかという県に対して、国は様々な法律の改正とか行政不服審査法を使って自治体の権限を踏みにじるような決定を行ってきます。地方自治の問題は単に沖縄だけの問題でなく、どこの地方でも民意を尊重しろと、大きな仕掛けをやっていただけないかと思っています。
 政府が不当な事を仕掛けるたびに抗議行動をやってきました。その上で来年の2月をめどに一大運動を構想しています。1月24 日には宜野湾市長選挙があります。今の市長は辺野古移転推進の立場なので、対抗してオール沖縄で候補者を立てて翁長与党ということでがんばろうとしています。宜野湾市長が代われば無条件撤去含めて交渉する力が出てきます。
 
 民主党に対しては、これだけ沖縄県民が反対しているんだったら県民の合意の無い強行はやめると、最低限の公約としてあげて欲しいと思いますし、本当に沖縄に公称1万2千人の海兵隊がいなければ抑止力が成り立たないのかということを民主党がきちっととりあげ、現実的な政策も出しながら、東アジア共同体を含めてもっと軍事によらないあり方、ビジョンを出してもらいたいと思っています。

高田
 7割、8割の人達が、審議不十分と言っている中で戦争法案の強行採決をやったわけですけれど、憲法学者、法曹界のほとんどの人達が憲法違反と言っている戦争法が通って、憲法9条をはじめとする平和憲法がそのままあって、という非常に矛盾した状況が作られた訳です。この矛盾は憲法を変えるか戦争法を廃止するかによってしか解決しない。戦後が70 年で終わってしまうという危機感を持っています。当面、戦争法の具体的な発動を阻止する事と、この戦争法を国会で廃止させるという課題に向かって闘わなければいけない。参議院選挙で野党共闘を何としても進めてもらいたい。1人区が32 あるわけで、これを打ち破る選挙が出来れば、安倍政権を退陣に追い込むきっかけになる。
 戦争法廃止の2千万署名運動というのを提起しています。どうして2千万か、色々な意味がありますけれども、前回の参院選で与党得票が2千5百万くらいで、これに匹敵する署名数という意味は非常に大きいと思います。 過去に2千万以上集めた署名は本当にいくつかしかなくて、50 年代の原水爆禁止とか、80 年代の国鉄分割民営化に反対する運動とか、それに匹敵するようなものを統一してやりたい。文字通り総がかりで2千万を集める、この力を持って野党共闘を応援し、選挙に勝利していきたい。
 ともかく安倍内閣の作った戦争法は許さない、白紙に戻せ、立憲主義に反するやり方なんだからこれはあり得ないという事を署名運動の中心に据えて、野党の皆さんもこの線で結束をして、戦争法を参議院選挙の重要な争点として闘っていく必要があると思っています。

福山
 ありがとうございました。それぞれから、提起がありましたが、2016 年こそ安倍自公政権の憲法を破壊しながら進む暴走を止めるのだという決意が伝わってきます。そのために求められているのは、連帯の輪を大きく拡大することです。世論の多数派は戦争法廃止、沖縄辺野古への基地建設反対、脱原発だから、闘えば勝てるという確信を持つことです。がんばりあいをしましょう。

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激動する基地問題と日米地位協定
国内法令の適用や立入調査権を定めよ
神奈川平和運動センター代表・弁護士 福田 護

進むオスプレイ等の配備と頻発する事故
 沖縄・辺野古の新基地建設問題は、2015 年10 月13日、2年前に仲井真弘多・前知事が行った埋め立て承認を、翁長雄志知事が取り消したことで、沖縄県と国との全面対決局面となった。現在、この取消処分に対する審査請求手続と代執行訴訟手続が並行して進められている。
 2013 年12 月、当時の仲井真知事が辺野古の海の埋め立てを承認してしまったとき、沖縄振興予算と一緒に与えられたアメが、地元自治体の米軍基地への立入調査などの日米地位協定の補足協定の策定であった。その環境補足協定は、2015 年9月29 日に、後述のような実効性の疑わしい内容で締結された。
 この間、2012 年10 月以降、普天間飛行場にMV-22 オスプレイが24 機配備され、2015 年5月には、東京の横田基地にCV- 22 オスプレイ10 機の2017 年度以降の配備が発表された。また、陸上自衛隊も2018年度以降V- 22 オスプレイを17 機導入することを決定し、オスプレイの整備基地として陸上自衛隊・木更津駐屯地が選定されるに至っている。そして、いまや普天間のオスプレイは、横田基地、厚木基地、東富士演習場などに頻繁に飛来し、本土での演習、災害訓練等を繰り返すようになった。
 さらに、2015 年10 月には米軍横須賀基地に、これまでの原子力空母ジョージ・ワシントンの後継艦としてロナルド・レーガンが更新配備され、その随伴イージス艦3隻の増備が進められている。 他方でこの間、米軍関係の事故も相次いだ。2013 年8月にキャンプ・ハンセンの山中に米軍ヘリが墜落、12 月には三浦半島に米軍ヘリが不時着した。オスプレイの事故も続発し、大きなものだけでも、2013 年に海外の各地で着陸失敗等の事故が相次ぎ、2014 年5月にはノースカロライナ州で訓練中の落下死亡事故、10 月にペルシャ湾で着水死亡事故、2015 年5月にもハワイで着陸失敗死亡事故が発生している。
 2015 年8月12 日に沖縄県うるま市沖合で、米陸軍所属の訓練中のヘリが米輸送艦への着艦に失敗して墜落、同24 日には相模総合補給廠で倉庫の爆発炎上事故が発生した。
 安保関連法案=戦争法案が強行採決されたのは、以上のように基地問題が激動する渦中の、2015 年9月19日であった。


普天間基地に配備された
MV- 22 オスプレイ(宜野湾市)

安保条約と基地の新設・提供の問題点
 日米安保条約6条を受けて、日米地位協定2条1項では、合衆国は「日本国内の施設及び区域の使用を許される」と定めている。また、3条1項は「合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要な全ての措置を執ることができる」と定めている。
 2条1項に基づく基地の提供は、日本の領土のどこへでも日本政府の了解のもとに基地を設置することができるという意味で、「全土基地方式」とも呼ばれる。3条1項の米国の基地管理権は、日本の権限が及ばないという意味で、「排他的管理権」とも呼ばれる。 しかし、この間の基地をめぐるできごとは、「それが当然」でよいのかということを改めて問題提起をしている。 
 まず、基地の提供についてでは、辺野古の新基地建設においては、国がここだと決めたら、地元の自治体や住民がどんなに反対しても、最終的に国家の意思と軍事上の論理が貫かれ、人々が共生してきた豊穣の海と、絶滅危惧種を含む多様な生物の生育環境が永久に失われてよいのか。地元の自治体・住民の地方自治が顧慮される仕組みのない現在の地位協定は、そのままでよいのかが、鋭く問われている。
 辺野古の場合、海の埋め立てについては「公有水面埋立法」によって知事の許可・承認の権限が定められているため、その承認や取消が問題となった。そこにかろうじて、地方自治体の意思を表す手がかりがあった。しかし、その権限も、もともと国の権限であるものを自治体に委託する「法定受託事務」と性格づけられており、現在、そのような法定受託事務における国と自治体との基本的関係が問われている。
 しかし、もっと根本的な問題は、地元自治体や地元住民の意思が反映される仕組みを持たない地位協定の構造と条項にある。

基地内の事故と米軍管理権の壁
 相模総合補給廠の爆発事故は、2015 年8月24 日午前零時40 分過ぎ頃に、同基地内南西部の倉庫で発生し、複数の爆発音が深夜の住宅街に轟いた。相模原市と在日米陸軍基地管理本部は、以前から消防相互援助協約と緊急車両基地内通行協定を締結しており、零時45 分に市消防局は米軍から出動要請を受け、零時51 分には正門ゲート前に到着し、消防車両14 台が順次、火災現場に到着した。しかし、米軍側も現場の倉庫の保管物の内容を把握しておらず、不測の化学反応などの事態を避けるため、消防活動を行えずに待機し、午前5時頃下火になってから安全を確認して放水を始め、午前7時過ぎに鎮火した。酸素ボンベが爆発したとされ、現場から200 m付近までボンベの部品が飛び散ったという。
 米軍自身が、基地内の倉庫のどこにどのような物質や資材を保管しているか、確認できないというのは、余りにもずさんという他はないが、このような事態は、基地内に消防法、高圧ガス保安法等の日本の法令の適用がないとされ、保管施設・保管物の許可・届出手続や定期検査等がなされていないというところに、基本的な問題の所在がある。 
 さらにもう一つの大きな問題として、自治体など日本側当局は基地内への立入りや調査ができないという、上記の「排他的管理権」の問題がある。相模原市など自治体は、消防協定その他の緊急時の連絡協力体制をとっていることはあっても、みずから必要と判断したときに立入検査を行うことができないばかりか、事故原因の解明のための立入りや調査すらできないのである。
 キャンプ・ハンセンのヘリ墜落事故もそうだが、事故のたびごとに、住民の危険をよそに、地位協定の米軍管理権の壁が立ちふさがり、繰り返されている。地位協定のあるべき解釈として、基地内にも日本の法令が適用されるべきだし、北大西洋条約機構(NATO)のドイツ補足協定のように、国内法令の適用や立入調査権を明文で定めるべきなのであるが、日本の実情はほど遠い。

基地外での米軍の訓練等の活動の問題
 さらに、基地内ばかりか、基地の外部地域でも、米軍に訓練飛行等の活動を野放図に行わせているという問題がある。厚木基地やその他の航空基地周辺の航空機騒音は、半世紀以上にわたって裁判所からも違法だと指弾されながら放置されてきている。山間部や内陸部における低空飛行訓練は、基地の周辺ですらなく、米軍に「施設及び区域」として提供されていない日本全国に、米軍の必要によって訓練ルートが設けられ、危険な飛行が行われている。
 普天間基地へのオスプレイの配備に際しての米軍による環境レビューでその訓練ルートの一部が明示されたが、2015 年2月に作成された横田基地へのCV- 22配備に関する環境レビューに訓練ルートの記載はない。しかし、国内の4つの訓練区域(東富士演習場、ホテル地区、三沢対地射爆撃場、沖縄の訓練場)等で行われる空軍特殊作戦コマンドの訓練は、東日本にも大きく広がることが危惧される。
 本来、独立国は領域主権を有し、その領域内にある全ての人と物に対して排他的な権限を有する。この主権に対する制約は、その国が認めた限度でしか許されず、その制約の拡大解釈は許されない。そして、「施設・区域」として提供された以外のところで米軍が訓練等をすることができるような根拠規定は、地位協定のどこにも存在しない。
 施設・区域以外の場所での米軍の自由な活動を認めてしまったら、日本全土が米軍の訓練場になりかねず、それは日本の主権の放棄に等しい。そして少なくとも、施設・区域外での米軍の行動には、日本の法令が全面的に適用され、違法な行為は許されないのである。

実効性が危惧される環境補足協定
 1960 年に締結された日米地位協定は、半世紀以上の間、改正が全くされず、「不磨の大典」のようになっている。このたび日米両政府は、この地位協定を補足する環境補足協定を締結し、関連する日米合同委員会で合意を行った。
 その補足協定の主な内容は、(1)基地内の米軍の活動に関する環境適合基準として「日本環境管理基準」(JEGS)を発出、維持する、(2)基地内で環境に影響を及ぼす事故(漏出)が発生した場合と、基地を日本に返還する場合に、日本側が立入りできるような合同委員会合意を定める、というものである。 この(2)の立入りに関する合同委員会合意では、(a) 上記環境事故発生の場合、国・自治体当局は「現地視察」と「サンプル採取」の申請ができ、米軍は視察の申請に対して「全ての妥当な考慮」を払う、(b) 基地の返還の場合、国・自治体は返還日の150 労働日前(約7か月前)以内での立入調査を申請できる、というものである。
 しかし、JEGSは米軍が一方的に定める従来からあった制度の確認にすぎないし、騒音・悪臭等の基準は定められていない。また、立入りや調査は上記2つの場合に限定された上、米軍の「妥当な考慮」に委ねられ、しかも立入り・調査は米軍の措置・運用を妨げない方法に限るとされる。日本側の主体的判断ではなく、米軍側の裁量によって許される範囲でのものにすぎない。合意の文言からして、実効性が危惧される。
 立ち入りについては、これまでも「沖縄に関する日米特別行動委員会」(SACO)合意の一つとして、米軍の「すべての妥当な考慮」による立入手続きが存在したが、ほとんど死文化していた。今回の協定と合意もそうならないよう、できる限り運用を拡大させ、実効的に活用する努力が求められる。
(ふくだ まもる)

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フィンランド・オンカロ
世界初の高レベル放射性廃棄物最終処分場を見て
原子力資料情報室 澤井 正子

12000 トンもの使用済み燃料を埋設
 2015 年9月、フィンランドにある使用済み燃料の最終処分のための地下(岩盤)特性調査施設=オンカロ(ONKALO)を視察した。フィンランドでは2001 年に使用済み燃料の最終処分場の建設地を、フィンランド南西部のオルキルオト島にすることが決定された。オルキルオトは、首都ヘルシンキの北西250 キロメートルのところにあり、エウラヨキという人口約6000 人の自治体の中にある。
 オルキルオトには、すでにテオスリーデン・ヴォイマ社(TVO)が運転する原発2基(2基とも沸騰水型原子炉・BWR、88 万キロワット)があり、建設中のものも1基(160 万キロワット、ヨーロッパ加圧水型炉)ある。原発の敷地内には他に、TVO の本社、中低レベル廃棄物の最終処分場(VLJ という施設)、使用済み燃料貯蔵建屋(5658 体を貯蔵中)がある。
 オンカロは、原発の敷地から1~2キロメートルほどエウラヨキの市街地側に戻ったところにある。建設・運転するのは、原発を運転する2 つの会社が共同出資したポシヴァ社(Posiva 社)である。オンカロという名前は「洞穴(ほらあな)」を意味するフィンランド語に由来している。
 フィンランドでは使用済み燃料の再処理は行われていないので、処分されるのは使用済み燃料だ(直接処分)。予定では、地上に使用済み燃料の取り扱い施設があり、地下420 メートルのオンカロを建設の起点にし、将来的には9000~12000 トン分の使用済み燃料を埋設する最終処分場をつくる計画だ。フィンランドにあるオルキルオト原発とロヴィーサ原発で発生する使用済み燃料が運び込まれる予定だ。


80人が参加した放射線照射食品反対集会
(7月17日・主婦会館)

断裂帯のある場所を避けるのは簡単ではない
 ビジターセンターでひととおりの説明をうけたあと、ヘルメット(ゴーグル・耳当て付き)と反射板付きのベストを着用、懐中電灯と酸素吸入器(地下での火災等対策用)を持って、ポシヴァ社の地質学者が運転する車に乗ってオンカロへと向かった。地下420 メートルの地点までは12~13 分ほどで到着し、実証トンネルとそこに掘られた立て坑の様子をみることができた。 
 実証トンネルは全体としてかなり乾いた状態である印象をうけたが、ところどころで、岩盤の割れ目から水がしみ出している箇所もある。使用済み燃料容器を入れるための穴を模擬した直径1.5 メートル、深さ7~8メートルの立て坑の中をのぞいてみると、完全に乾いた状態のものもあれば、岩の割れ目から水がしみ出しており穴の底にたまっているものが10 メートル横にあったりして、一様ではない。
 同行したポシヴァの地質学者によると、そのように水がしみ出すような立て坑は処分には使わないことになっていると言う。トンネルの壁面も、結晶がそろった場所もあれば、破砕帯(断裂帯)が見えている場所もあった。
 フィンランド地質調査所(GTK)の地質図によると、オルキルオト周辺はおもに19 億年前の片麻岩と花崗岩からなっており、おおむね安定しているというのだが、断裂帯もたくさん書き込まれている。もちろん日本の瑞浪(岐阜県)や幌延(北海道)の地層研究所のように、そこら中に水が出ているような状態ではない。このような状況から見ると、たいへん条件のいい場所だというのはわかるのだが、それでも断裂帯のある場所を避けるのはそれほど簡単なことではないと感じた。 また、掘削することによって、亀裂が広がるとか、水がしみ出しやすくなるなどの影響は十分考えられる。地震についても、発生の少ないフィンランドではあるが、まったく心配がないわけではない。

建設にフィンラド政府が許可を出す
 11月になって、オンカロをその一部とする最終処分場建設にフィンラド政府が許可を出したとの報道があった。しかし同時に、(1)処分場が環境に及ぼす影響、(2)使用済み燃料の回収可能性、(3)輸送リスク、(4)事業に影響を及ぼす可能性のある要因について、今後提出される操業許可申請書に記載することが求められている。ポシヴァ社は、2020年代はじめに処分を開始すると公表している。
 19億年前の地層というのは人類が接近可能な地層としては、一番古いという。日本はわずか約1 億年でしかない。そして地震が多発する変動帯にある。言うまでもないが、これは比べるような対象ではない。
(さわい まさこ)

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「再処理は永遠に不滅です」
──再処理実施主体としての認可法人設立案

 総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)原子力小委員会のワーキングループが、再処理事業の実施主体として、国の監督権の及ぶ「認可法人」を電力会社に設立させようという中間報告案をまとめ、12 月4日から来年1月5日までパブリックコメントを募集しています。来年4月からの電力市場における小売の参入全面自由化に備え、競争激化の中でも再処理が進められるよう再処理会社を国有化する案も一時出ていましたが、電力会社が中心になって設立している日本原燃に新認可法人が再処理を委託するという折衷案となりました。
 発生した使用済み燃料の再処理費用をこの認可法人に払いこませて、電力会社の再処理からの撤退を防ごうということです。しかも、これまでの外部積み立て制度では六ヶ所再処理工場での再処理分だけが対象でしたが、今回の案は第2再処理工場に送られることになっている使用済み燃料の分まで拠出させようという話です。

なぜ認可法人か?
 2005 年に始まった現在の制度は、電力会社が再処理費用を「原子力環境整備促進・資金管理センター」に積み立てるものです。積み立てられたカネはあくまでも電力会社に属しており、電力会社は取り戻したカネを日本原燃に払う仕組みです。このカネを再処理に使わなければならないとの規定はないし、自由化で電力会社が潰れた場合、他の借金取りに持って行かれてしまうかもしれないから別の仕組みを考えるべきだというのが経産省の説明です。認可法人なら国が監督できるし、勝手に解散できない。資金の強制徴収権限も付与できる。役員や外部有識者の人事等については、国が承認・認可等を行なえる。国が重要事項に関して一定の命令権限等を持つことにより、新法人の適切な運営の担保を図れる。「認可法人」を立ち上げて再処理実施主体とし、ここに使用済み燃料発生の段階で再処理費用を「拠出」させればそのカネは認可法人のものとなる。認可法人は、日本原燃に実際の再処理を委託するとの案です。また、「関連事業(MOX 加工事業、廃棄物処分等)の実施に要する費用についても、制度の趣旨に鑑みて拠出金制度の対象とする」といいます。(ただし、再処理で生じる高レベル廃棄物の最終処分については、電力会社が実施主体の「原子力発電環境整備機構(原環機構= NUMO)」に拠出し、NUMO がこの資金を原環センターに積み立て、必要に応じて払い戻しを受ける仕組みを継続)。

第2再処理工場分も
 現在の外部積立金制度の対象は、六ヶ所工場再処理分と英仏からの返還廃棄物及びTRU 廃棄物の管理費用など合わせて12.6 兆円。2014 年度末現在、約5.1 兆円が積み立てられており、内、2.7 兆円が取り戻されて日本原燃に払われ、残額は2.4 兆円となっています。中間報告案は、この六ヶ所工場分の他、第2再処理工場の分まで新設の認可法人に拠出させて、全量再処理政策の虚構を維持しようというものです。むつ市の中間貯蔵施設に送られるはずの使用済み燃料などが対象です。
 2005 年の段階では、第2再処理工場については方針未定のため規定がありませんでしたが、2007 年3 月(2006 年度分)から、六ヶ所再処理工場と同じ費用と仮定して、約12 兆円を2043 年までに電力会社内部で積み立てることになりました。2048 年度アクティブ試験開始との想定です。軽水炉の普通の使用済み燃料に加え、使用済みMOX 燃料、高速増殖炉使用済み燃料も再処理するという第2 再処理工場については2010 年頃に検討が始まることになっていましたが、高速炉計画の将来とともに検討は宙に浮いたままです。新認可法人にこの資金を拠出させてどうしようというのでしょう。

再処理の経済性と核拡散
 廣江譲電気事業連合会副会長(関西電力執行役員)はワーキングループ第2 回会合(2015 年8 月7 日)で、使用済み燃料をそのまま地下深くに埋設する直接処分の方が再処理より安く上がるが、電気料金全体だと「20円強、頂戴しているわけでございますので、その中での50 銭程度の差というのは、それほど火力燃料費等々と比べましても大きな差ではない」と述べています。しかし、原子力委員会が2011 年11 月に発表した見解は、六ヶ所再処理工場運転期間40 年間で計算すると約10兆円の差となることを示しています。これからの運転で発生する費用で計算しても、再処理後に最終処分と中間貯蔵後に最終処分とでは7 兆円ほどの差が出ます。
 副会長はまた、使用済み燃料の「直接処分というのはまだ日本では一度もやっておりませんし、海外でも実際にやったことはありません」と直接処分の実現性のあやふやさを強調しています。しかし、再処理後の高レベル廃棄物の最終処分も「海外でも実際にやった国」はありません。やった国がないから信用できないという論法なら、原子力発電の開始・継続が間違いという結論になります。ほとんどの国は中間貯蔵・直接処分の道を考えているし、また、最終処分実施に一番近いところにあるのは、いまのところ、直接処分方式を採用しているスウェーデンとフィンランドです。
 経産省は、「核不拡散上も重要な再処理等が適切な体制の下で確実に実施される仕組みとすべき」といいます。国が影響力を持ちうる認可法人が実施主体となるので核不拡散に考慮しつつ再処理を進めると国際的に説明しようということなのでしょうか。しかし、認可法人がプルトニウム抽出量と消費量を調整する仕組みはまったく見えてきません。核兵器6000 発分にも相当する約50 トンのプルトニウムを抱えてしまっている日本が不拡散のためになすべき決定は、少なくともこの量が大幅に減るまで再処理開始は延期するということです。国の政策として再処理延期を明らかにすることが先決でしょう。 
(田窪 雅文:「核情報」 主宰)

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各地の1000 人委員会の活動から
幅広い呼びかけ人が集い市民中心の運動へ
戦争をさせない1000 人委員会・信州事務局 喜多英之

結審後に明らかになったずさんな安全管理


松本駅前での反対集会に1200 人参加(8月2日)

 日本を「戦争のできる国」に変える安保法制改悪法=戦争法が9月に成立しました。長野県では「戦争をさせない1000 人委員会・信州」を2014 年7月に全県的な組織として立ち上げ、その後、地域段階に1000 人委員会を結成し、市民とともに運動をすすめてきました。
 長野県では反戦平和、憲法擁護をテーマとする運動は、今まで「長野県憲法擁護連合」が中心となって担ってきました。労働組合や民主団体、社民党などで構成する「団体共闘」です。組織的な運動を展開し、継続性、動員力という点で優位性を持つ組織ですが、県民やマスコミからは政党に系列化された組織というレッテルを貼られがちでした。今回、1000 人委員会・信州をつくるにあたり、今まで関係を持ててこなかった県内の著名人にも大胆に呼びかけ、さらに中道・保守リベラル層にもウィングを広げた呼びかけ人をめざしました。その結果、弁護士や大学関係者、医師、宗教者、文化芸術関係者、音楽関係者など、今までになく幅広い164 名が呼びかけ人に就いてくれました。
 呼びかけ人の3分の2は、いままでの運動で付き合いのなかった人です。戦争法案に対する危機感が突き動かした結果とも言えるでしょう。呼びかけ人で元の八十二銀行頭取の茅野實さん(82 歳)には、街頭集会での演説や議会請願での口頭陳述など、運動の中心的な役割を担っていただいています。茅野さんは「戦争体験者の最後の闘い」が口癖。元財界人の参加は運動にインパクトを与えています。
 また、生活圏で草の根平和世論を高めるために、13地域で1000 人委員会が結成され、全県エリアをカバーできました。地域ごとに独自の呼びかけ人を募って発足させ、市民参加で地域運動が進められています。 戦争法案に反対する運動は労働組合にとって試金石でした。今までになく多くの市民が自発的に反対運動に参加してきた一方で、労働組合はどうだったのか、本気で全力をだして反対運動に取り組んできたか、市民意識から離れた内向きの論理に浸っていないか。運動を真摯に総括し、これからの戦争法廃止運動のなかで、労働組合の社会的責任を果たしていかなければなりません。戦争法廃止に向けてともにがんばりましょう。
(きた ひでゆき)

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〔本の紹介〕
「戦争はさせない―デモと言論の力」
鎌田慧著 2015 年 岩波書店

 「さようなら原発1000 万人アクション」「戦争をさせない1000 人委員会」の呼びかけ人でもあるルポライターの鎌田慧さんの最新の評論集です。2011 年3 月11 日以降の政治状況を見据え、透徹した目で時代状況を腑分けしています。特に第二次安倍政権が戦争法制定や原発再稼働をはじめとする原発推進政策への回帰、沖縄・辺野古への新基地建設、農民を犠牲にするTPPなど、多くの民意をないがしろにし、暴走する状況を「ならずもの内閣」と厳しく糾弾しています。「安倍首相は、アメリカにも率先して行き、国会にも諮らず、『夏までには安保法制は決める』と勝手に約束してきた。これほどの侮辱はない」と、大江健三郎さんが2012 年のさようなら原発全国集会で初めて発言した言葉「私たちは『侮辱』の中にいる」を、戦争法案を強引に進める安倍政権へまた、怒りの言葉で指弾しています。
 安倍政権が進める戦争、原発、沖縄の問題を未曾有の三大苦として「戦前のファシズム」に近づいていると警鐘を発しています。一方で、この間の国会前でのデモや集会、そして全国各地で巻き起こっている様々な市民の動きや若者(特にSEALDs)の動きに対して、「新しい時代の胎動を感じさせる」と希望を託しています。「ならずもの内閣」に抗する市民の動きと言論の力の可能性が語られています。
 また、「闘うひとびとと出会う」として、安倍政権の暴走に対して声を上げた菅原文太さんとの対談では、原発と沖縄を語りあい、両者の問題に通底する中央―地方の構図はまさに同じとし、常に無理解・切り捨ての対象でしかなかったことを語っています。俳優・菅原文太さんの新たな一面を知ることもできます。
 さらに、様々な「抵抗」の運動で出会った人物評も興味深く、沖縄の問題で出会った阿波根昌鴻さん、知花昌一さん、金城実さん、太田昌秀さんらの出会いと「抵抗」について語られています。また、瀬戸内寂聴さんの生き様を「反逆とエロス」がその根底にあること、90 歳を過ぎてもいまだ「飼いならされるな」「暴動を起こさない日本はダメ!」と叫ぶ彼女の「反逆」の生きざまを、3・11 以降の脱原発の運動とからめて紹介しています。 巻末には「さようなら原発」「さようなら戦争」の年表も付けられ、この間の運動の盛りあがりを見ることができます。
(井上年弘)

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核のキーワード図鑑


9条があっても戦争する国へ

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戦争をさせない1000 人委員会が新リーフレット発行

「戦争をさせないために、私たちにできること」
 横暴を極める政府・与党は議会内多数をいいことに、9 月19 日に「戦争法」の強行採決に至りました。さらに安倍政権は、沖縄県民の民意を踏みにじりながら辺野古への新基地建設を強行しようとしています。そして、2016 年の参議院選挙で憲法改「正」に必要な参議院での3分の2以上の議席確保、ひいては国民投票による憲法改「正」をめざしています。
 この状況に対応して、「戦争をさせない1000 人委員会」は2種類のリーフレットを新たにつくりました。「戦争をさせないために、私たちにできること」、そして沖縄・辺野古新基地建設に焦点を絞った「許すな!辺野古新基地建設」です。 
 各地域・職場での学習、街頭宣伝に、ぜひご活用ください。ご入用の方には、ご希望部数をお分けいたします。送料のみご負担ください。ご注文はお送り先・お名前・必要枚数をお書き添えの上、メールまたはファックス(03-3526-2921)でお願いします。
 また、このリーフレットはご自由に印刷、ご活用いただいて結構です。同委員会の次のホームページからご利用ください。
http://www.anti-war.info/information/1511201/

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