2014年、ニュースペーパー

2014年08月01日

ニュースペーパー2014年8月号



川内原発再稼働させるな!「さようなら原発首都大行進」
 6月28日、東京・明治公園で、「さようなら原発1000万人アクション」などが主催し、「川内原発を再稼働させるな!さようなら原発首都大行進」が行われ、5500人が参加しました。安倍政権は、「脱原発」の世論を無視し、鹿児島の川内原発を皮切りに全国の原発の再稼働を推進しようとしています。参加者は、避難計画も未整備のままに各地の原発再稼働が画策されていることに抗議し、デモ行進でアピールしました。
 あいさつに立った呼びかけ人の鎌田慧さんは「安倍首相は集団的自衛権行使と原発再稼働を目論んでいる。そうした中で、福井の大飯原発の差し止め判決は画期的だ。市民の力で川内原発をはじめ、全ての原発を止めよう」と訴えました。経済評論家の内橋克人さんは「原発をなぜ稼働させようとしているか。それは核武装につながるものであり、集団的自衛権行使とも連動する」と指摘しました。川内原発の現地報告を「川内原発増設反対鹿児島県共闘会議」の野呂正和事務局長が行い、「原発事故の時のずさんな避難計画にも関わらず、伊藤祐一郎知事はこれを認めようとしている。9月28日に鹿児島で大規模な反対集会を開く」と決意を表明、最後に「命よっか大事なものがあって、よかとですかー」と呼び掛けました。また、「原発いらない福島の女たち」の人見やよいさんは「国も東京電力も私たちを見殺しにしようとした。第2のフクシマを生んではならない。私たちは一人ではない。ともに闘おう」と力強く訴えました。(写真は集会後のデモ行進)

インタビュー・シリーズ: 92
原発や戦争を推進する人達は亡国の政治家・経済人
弁護士 河合弘之さんに聞く

弁護士 河合弘之さん

かわい・ひろゆきさんさんのプロフィール
1944年、満州生まれ。ビジネス弁護士として活躍する一方、中国残留孤児の国籍取得支援などの社会貢献活動にも奔走。現在は人類普遍の課題である脱原発社会実現のための運動を展開、さらに「戦争をさせない1000人委員会」の呼びかけ人としても活動している。中国残留孤児の国籍取得を支援する会会長、脱原発法制定全国ネットワーク代表世話人、脱原発弁護団全国連絡会共同代表。

─河合さんの生い立ちと戦争体験についてお聞かせください。
 私の父は、満州にあった東京電力みたいな会社に勤めていました。私は1944年に生まれ、敗戦の年にはちょうど1歳でした。いよいよ敗戦が間近になったある日、成年男子は公園に集められて「第一乙以上は前へ出ろ」と言われたそうです。父は嫌な予感がしたのでズルをして一歩前に出なかったのです。一歩前へ出た人はみんなそのまま関東軍に編入され、その後シベリアに連れていかれました。父の賢い嘘のおかげで一家6人は引き揚げることができました。でも途中は非常に苦労して、母は私を抱っこし、年子の弟を背中に括り付けて逃げたのですが、気が付いたときには弟は栄養失調のため息絶えていたということです。母はその時、抱えている私まで死なせたら、自分は生きている甲斐がないと思ったと言っていました。
 とにかくようやく引き揚げてきたのですが、父も母もその時が本当に苦しかったものだから、ほとんど私に当時の話をしませんでした。ところが私が後に中国残留孤児の国籍取得の仕事をするようになってから、ポツリポツリと話すようになりましたね。もし父が一歩前に出てれば、関東軍の兵士としてシベリアに連れていかれ、母一人では引き揚げることができなかったと思うのです。私も死んでいたか、もしくは中国の人に預けられていただろうと。私にとっての戦争とはそういうことですね。

─中国残留孤児の国籍取得運動に携われておられますね。
 いまから30年くらい前、徐明さんという中国残留孤児の女性が、ようやく日本にいる親を見つけ、お父さんと札幌で住むようになった。でも一緒に暮らしてみると話が合わないということで親子鑑定をしたら別人だということがわかって、すると政府は中国に帰れというのです。そんな理不尽なことはないということで「徐明さんを支援する会」ができました。その新聞記事を私がたまたま読んで、「そんな馬鹿な話あるか」と押しかけ弁護士をやることになりました。一年ほどの裁判で「父不詳、母不詳」という戸籍を勝ち取り徐明さんが日本で暮らせるようになると、評判を聞きつけて「私の戸籍もとってくれ」と沢山の人がやってきたのです。結局20年で1250人の戸籍をとりました。
 ただ中国残留孤児の人達は国が帰してくれるのがあまりに遅かったため、言葉が全くできず、社会に入り込めないんですね。そこでいまは、中国残留孤児がお互い肩を寄せ合って団結して仲良く暮らしていくための「中国残留孤児の家」の側面援助をさせてもらっています。
 日本は敗戦が確定したときに、満州にいる日本人を理屈をつけて置き去りにし、挙句の果てに、その次は中国に残った日本人を残留情報機関として留め置こうとしました。国体というようなものは大事にするのに、国民そのものを大事にしない、いざとなったら捨ててしまうという、そういう体質がある国だと思います。それを私は中国残留孤児の問題を通じてすごく感じました。

─今の憲法の危機、集団的自衛権行使容認の動きについてはどう考えられますか。
 本当に危機的状況だと思います。私は国が滅びるとしたら、原発事故か戦争しかないと思っています。ほかの自然災害とちがって、原発は国を亡ぼす危険がある。それから戦争です。いまは本当に「戦争やりたいムード」が横溢していて、その法的な現れが集団的自衛権の行使容認です。憲法の解釈には幅があるんですが、それは一定の幅の中で納まってないと立法と行政がごちゃごちゃになってしまいます。集団的自衛権の行使容認というのは、三権分立という民主国家の基本構造を壊すものだと思います。
 それにこんな「戦争やりたいムード」が横溢し、法的な解釈もでっち上げられたという状態の中で、偶発的な事件でもおきたら一挙に戦争になる恐れがあると思います。そうした可能性が1%でもあったら、いまのうちに摘まなきゃいけないのです。

─脱原発運動をはじめられたきっかけは。
 私は腕のいい企業問題の弁護士で、連戦連勝していました。だけど、なにか社会のために役立つことをしなきゃいけないという意識があって、それで始めたのが中国残留孤児の支援運動だったのです。でもこれは日本の戦争責任と戦後責任の問題で、人類の普遍的な問題とは言えません。もっと本質的な問題って何だろうと考えたとき思いついたのが環境問題で、その中で一番重要だと思ったのが原発でした。原発事故が起きたら最悪最大の環境破壊になります。しかし観念的にそう考えるだけでした。そんなときに高木仁三郎さんに会ったのです。高木さんという人は、話している相手の心を綺麗にしてくれるような人です。ある時「私を弟子にしてくれ」と運動の仲間に入れてもらったんです。「でも大変だよ」とか言われましたけどね(笑)。そしていまから20年くらい前、福島原発三号機のプルサーマルの仮処分の裁判に引っ張り込まれたんです。そこから浜岡、大間と裁判闘争に入っていきました。
 ただ裁判は全部負けました。「やってもやってもダメなのかな」と思っていたとき、3・11が起きたんです。こんなに被害が大きいのかと衝撃を感じました。しかし、これで裁判官の考えも変わるなと感じたので、みんなに原発訴訟の闘いを「もう一回やり直そう」と呼びかけたんです。すると300人くらい集まってきました。泊(北海道)から川内(鹿児島)まで日本全国で裁判を起こしました。みんなで情報共有し、勉強会をやり、励まし合い切磋琢磨し、戦略も立てて。その第一の成果があの大飯原発の差し止め判決なんです。これは本当に画期的な判決ですよ。

─脱原発法制定ネットワークや脱原発弁護団全国連絡会の今後の取り組みは。
 安倍政権は総力を挙げて原発再稼働に突き進んでますから、私たちも総力を挙げてそれを阻止しなければいけない。その有力な方法として差し止めの訴訟があります。差し止めの判決というのは世間の情勢とか権力とか関係なく、少数者でも勝てる有力な武器なんです。ただそれだけでも駄目なので、集会を開き、デモもやり、パブコメにも応募し、国会議員を動かし、地元首長を動かしと、やれることは全部やらなきゃいけない。そういう総力戦だと思います。最終的には脱原発法を制定しないといけませんが、いまはとてもじゃないが法案が通る状況ではない。だから、とりあえず差し止め判決で止める。実際、原発ゼロの状態がもう3年半続いているわけですよね。5年もたてば、「原発なくてもどうってことないぞ」ってことになると思うのです。だから目の前の原発を止めておくことはすごく重要だと思いますね。
 また脱原発の戦略としては、大飯原発の判決をいま日本中でやっている裁判に広めていき、それで勝つということを考えていますね。またもうひとつ具体的な方法としては、事故が起きたときの避難の問題です。この避難計画が全然できてない。計画を立てたという自治体でも詳しく見るとインチキで、文字通り机上の空論に終わっている。そこを突くことによって原発の再稼働を閉じ込めていく。また地元及び周辺の市町村の首長、それから県知事を説得して反対させる。こういう形によって、われわれは再稼働を止め、それを長引かせることで脱原発へと進もうと考えています。そういう流れのなかで重要なのが、やはり良心的な保守の人たちの脱原発の声です。私たちが言うだけではなかなか社会の多数を占めないので、良心的保守の人達とも一緒に闘う脱原発運動というものを繰り広げることによって展望が開けていくのではないかと思っています。

─これからの市民運動、脱原発運動、そして平和運動に求めることはありますか。
 脱原発の裁判という面では、明らかに新しい勢力が出てきましたね。脱原発弁護団全国連絡会では情報の共有が非常に容易になったんです。だから極端に言うとカット&ペーストで訴状や準備書面が準備できるところまで来ていて、若い弁護士がどんどんと入ってきています。現に福井地裁の判決も若い弁護士が主力ですから。そういう意味で脱原発弁護団の若返りは進んでいる。
 他方、平和運動は全体でみると、若い人たちが入ってきているかと言うと、必ずしもそうはみえない。ただ若い人たちには、原発事故が起きたり戦争が起きればすべてのものが覆されるんだということを知ってほしいんです。芸術家も経済人も教育者も、誰もが原発や戦争の問題に関心持たないといけない。なぜなら原発事故や戦争が起きたらそれどころじゃない、全て覆されるんですから。そのように考えてほしいと思いますね。
 私は原発や戦争を推進しようとしている人達は、亡国の政治家であり亡国の経済人であると思いますね。そんな人たちが実権を握っているということについて非常に危機感を覚えます。だけどそれは闘わないとしょうがない。闘えば、いつかは勝ちます。「Weshallovercomesomeday」だな。

インタビューを終えて
 脱原発法制定全国ネットワークの代表世話人、そして脱原発弁護団全国連絡会共同代表もつとめられている河合弘之弁護士は、文字どおり脱原発運動の中心的な担い手のお一人。事故の以前から全国を駆け巡って原発差し止め訴訟を導いてこられましたが、東電福島第一原発事故以後は、東奔西走にがぜん拍車をかけられたご様子。河合弁護士の闘志の源(みなもと)に幼き日の体験が流れていることを知ることができました。本紙に登場していただいたのは少し遅かったように思います。8月に河合さんのインタビューが掲載できたことに感謝いたします。
(道田哲朗)

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暴挙の中の暴挙。憲政にぬぐえぬ汚点を記した閣議決定
海外武力行使の土台の上に、集団的自衛権の封印を破る
フォーラム平和・人権・環境 副事務局長 道田哲朗

 7月1日、政府は臨時閣議を強行して、国の在り方に関わる根本命題を変えた。閣議決定は実行行為として集団的自衛権容認に踏み切った。権力とは、道理にあわない飛躍を行うものだ。閣議決定でこのような国の根本命題の変更が出来るのかという問いに対して、安倍政権は、ただ実行することによって答えた。実行しない権力は権力ではないと言わんばかりに。
 閣議決定は、集団的自衛権の行使容認がその核心であるけれども、集団的自衛権行使の命題をもつつみ込んで、自衛隊の海外での武力行使容認に踏み込んだ点が、もう一つの核心点だ。つまり、自衛隊の海外での武力行使容認という憲法違反の土台の上に、集団的自衛権行使という憲法違反が乗っかっているのである。今回の閣議決定は、注目を一身にあびた集団的自衛権行使が政治的な最大の焦点であるけれども、集団的自衛権という他国との共同武力行動(戦争)も、これまで禁じられてきた自衛隊の海外の武力行動容認の一部として封印を解かれたのだ。
 憲法9条は集団的自衛権も禁じてきたが、そもそも海外の武力行動を禁じている。したがって、7月1日の閣議決定は、集団的自衛権、個別的自衛権、そして集団安全保障についても、自衛隊の海外武力行動を容認したと考えられる。このような形で憲法の則(のり)は踏み越えられた。


集団的自衛権に反対し国会前に集まった市民(7月14日)

憲法解釈と区別するという詭弁のベール
 しかしそれでも、公明党との与党調整の事情から、閣議決定内容はスリガラスを通して見るように特殊なベールが2枚被せられた。1枚は、集団的自衛権行使容認を煙に巻くベールである。閣議決定文の「3、憲法第9条の下で許容される自衛の措置」の「(4)」はこのように書いてある。「我が国による『武力の行使』が国際法を遵守して行われることは当然であるが、国際法上の根拠と憲法解釈は区別して理解する必要がある。憲法上許容される上記の『武力の行使』は、国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある」と。倒錯した弁解がましい表現だが、今日時点の与党の政治的な事情を投影している。「国際法上の根拠と憲法解釈は区別」するということで、憲法解釈は変えるのではないが、上記の『武力の行使』が国際法上、集団的自衛権ととらえられる、と言っている。憲法解釈とは「区別」すると言いながら、しかし、憲法と法解釈では出来ないとも言っていない。このトリックを解く鍵は、「上記の『武力の行使』」の文章にある。
 「上記」は、前述の閣議決定文「3」の「(3)」でこう書いている。「(前略)我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使すること」。

密接な他国への攻撃に応じる武力行使が、集団的自衛権
 この「上記」が、武力行使の新3要件と言われている重要な箇所だ。主語と述語のあいだの修辞を取り除くと、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し…実力を行使すること」である。これこそが言葉の真の意味でもあり、実態上も集団的自衛権ではないか。閣議決定文の「3」の「(3)」で書けなかった集団的自衛権という言葉を、「(4)」の倒錯した文言の中に書き入れ、二重の箱に詰めて(4)の箱の底に「集団的自衛権」と言うシールを貼った、商品表示違反の汚れたベールだ。
 もう一つのベールは、集団安全保障をめぐるベールである。集団安全保障は集団的自衛権と本質的に異なる概念だが、閣議決定は、自衛隊の海外での武力行使容認一般の中に議論を移してしまって、集団安全保障についても作為的なベールが被せられている。7月14日の衆議院予算委員会の集中審査において、安倍首相は、集団安全保障参加とその武力行使を肯定する答弁を行った。この点は今後の重要な論点である。
 いずれにしも、閣議決定によって自衛隊は海外で武力行使する戦力に変わった。憲法9条の「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という金言の則を、軽々しくも閣僚たちは踏みにじった。その責任を彼らは歴史に背負わねばならない。命をやり取りする覚悟のない自衛隊員も命を落とすかもしれない。だがたとえ覚悟のない隊員でも、他の命を落としめる能力をもって海外に派遣される。命令によって派遣されるのである。もはやそれは防衛の出動ではない。「国際法上は」攻撃としての出動としてである。

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来年は日韓基本条約締結から50周年
真の友好のために、「日韓協定体制」を乗り越えよう

被害者の声を黙殺し、両国の関係悪化招く
 2015年は敗戦から70周年であると同時に、日韓基本条約の締結から50周年という節目の年にあたります。1945年8月15日、日本の敗戦によって朝鮮半島は36年にわたる植民地支配から解放されました。しかしそれから20年もたってからようやく締結された日韓基本条約は植民地支配の不法性を棚上げし、さらに付随の日韓請求権協定は無償2億ドル、有償3億ドルの「独立祝賀金」をもって「両締約国およびその国民の間の請求権に関する問題が、(中略)完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認」するものでした。
 日韓基本条約とは、日韓の国交樹立をもって東アジアにおける西側陣営を強化することを第一の目的とし、植民地支配の清算に関してはその場しのぎの解決にとどめ、被害者に対する謝罪・賠償をおざなりにするものでした。このようにして作り上げられた両国間の関係を、韓国の研究者たちは「1965年日韓協定体制」と規定しています。
 この体制は、その後も被害者の切実な訴えを黙殺してきました。とくに1987年に韓国で民主化が成し遂げられてからは、それまで軍事独裁政権によって押さえつけられてきた元強制徴用工や元「従軍慰安婦」など植民地支配の被害者たちが謝罪と賠償を求め、名乗りをあげました。このような声に押され、韓国の歴代政権も日本政府に対して解決を求めてきました。
 しかし、植民地支配責任を認めたくない日本政府は、被害者の切実な訴えに対して「日韓基本条約で全て解決済み」と冷たくあしらってきました。さらに安倍晋三首相は、「侵略の定義は定まっていない」と発言したり、「河野談話」や「村山談話」の見直しを仄めかすなど、歴史修正主義者としての立場を鮮明にし、日韓関係をいたずらに緊張させています。このように植民地支配責任を不問に付した「日韓協定体制」は、被害者の声を無視するだけでなく、両国間の関係が悪化する最大の原因となっているのです。
 植民地支配に対する真の意味での謝罪と賠償を果たすことは、韓国との緊張状態を解決するだけでなく、東アジアの平和体制を構築するためにも必要なことです。このような大きな課題を果たすためにも、まずは「日韓協定体制」をどう乗り越えるかが大事です。

日韓市民の運動で「2015年体制」を!
 韓国で被害者の方々が名乗りを上げ、日本政府も「河野談話」や「村山談話」によって不完全ながらも植民地支配責任を認めた1990年代から「日韓協定体制」は揺らぎ始めました。また、ここ数年、韓国では「日韓協定体制」を克服するための新たな動きが出ています。韓国では2005年8月に日韓基本条約に関する外交文書が公開されてから研究が進み、日韓請求権協定において個人の損害賠償請求権はそもそも議論されてなかった事が明らかになりました。
 2012年に韓国の大法院は、日韓協定とは「日本の植民地支配賠償を請求するための交渉でなく、サン・フランシスコ条約第4条を根拠に日韓両国間の財政的・民事的債権・債務関係を政治的合意に基づいて解決するためのもの」であり、「日本の国家権力が関与した反人道的不法行為や植民地支配と直結した不法行為による損害賠償請求権が請求権協定の適用対象に含まれたと見ることは難しい」、よって「請求権協定で個人請求権が消滅したとは言えない」としました。これによって一度は敗訴した二つの強制徴用の損害賠償請求が破棄差し戻しとなり、2013年に原告勝利となったのです(日本企業は上告)。
 このような判決に対して日本の財界は「日韓関係をさらに悪化させる」と非難していますが、日韓協定によって植民地支配責任が棚上げにされてしまったために、日本人の歴史認識に大きな歪みが生まれ、それが現在の緊張状態にまでつながっているとの見方が正確であると言えます。前述の二つの強制徴用判決は、真の日韓友好を築くために、過去の植民地支配について真摯に向き合うこと、つまり「日韓協定体制」を克服することをわたしたちに求めているのです。
 6月21~22日、東京・水道橋でシンポジウム「日韓市民がいっしょに開く歴史NGO大会in東京1965年日韓協定体制の克服と東アジアの平和」が開かれ、両国から多くの研究者や弁護士、市民が参加しました(上写真)。そこで、来年8月15日までに「日韓協定体制」克服のための運動を活発に展開し、「日韓協定体制」にとって代わる新たな友好関係=「2015年体制」を築いていこうとの合意がなされました。
 歴史認識を巡る摩擦が東アジアの危機を深めている今こそ、「日韓協定体制」の克服が急務です。来年の日韓基本条約50周年までにどこまで運動を広げることができるかが、いまわたしたちに問われていることです。

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食品表示法の具体化に向けた課題
消費者の権利より事業者の都合を優先
食品表示を考える市民ネットワーク代表 神山 美智子

 昨年6月の国会で新しい食品表示法が成立・公布され、来年6月までに施行されることになっています。食品表示法は、これまでの「食品衛生法」と「農林物資の規格化及び品質表示適正化法(JAS法)」、それに「健康増進法」の栄養成分表示を一本化したものですが、もともと膨大な量の表示基準がある上に、相互に矛盾している部分もあるので、この調整に大変時間がかかりました。
 しかし基本的に現在の表示基準の一元化以上のことをするのではないため、これまであった表示のおかしさは改善されません。たとえば、添加物は原則として全部名称を表示することになっているのに、内閣府令でたくさんの例外が認められていること、遺伝子組み換え食品の表示や加工食品の原材料の原産地表示が非常に不十分であることなど、これまで多くの消費者団体が指摘してきた問題点は、施行後に先送りされてしまいました。

不適切な表示に消費者が差し止め請求も可能に
 私たちは長い間、消費者の安全の権利、選択の権利を保障するものとしての食品表示を求めてきました。その結果、新食品表示法の第3条の基本理念に、以下のようなものが盛り込まれました。
 「消費者の安全及び自主的かつ合理的な選択の機会が確保され、並びに消費者に対し必要な情報が提供されることが消費者の権利であることを尊重するとともに、消費者が自らの利益の擁護及び増進のため自主的かつ合理的に行動することができるよう消費者の自立を支援することを基本として講ぜられなければならない」。ただし、これは抽象的基本理念にとどまっています。新たな食品表示法は、上記の3つの法律の表示基準を一本化したものですが、表示基準自体は法律に書くのではなく、内閣府令(消費者庁長官が定める規則)で定められます。ただし、食品表示法では、「名称、アレルゲン(食物アレルギーの原因となる物質)、保存の方法、消費期限、原材料、添加物、栄養成分の量及び熱量、原産地」などが表示事項として具体的に明記されました。
 また不適正な表示に対して、内閣総理大臣(実際は消費者庁長官)や農林水産大臣が、立ち入り検査、指示、措置命令を出すことができ、安全性に関わる不適正表示食品の回収命令もできます。
 消費者も消費者庁長官へ申出をすることもでき、適格消費者団体(消費者全体の利益擁護のために差止請求権を適切に行使することができる適格性を備えた消費者団体として内閣総理大臣の認定を受けた団体、現在全国に11団体)が、不適正表示の差し止め請求訴訟を起こすことも可能になりました。韓国では不適正表示を国に直接通報できる110番のような制度もあるので、日本でもぜひ取り入れてほしいところです。


製造所固有記号問題のシンポ(7月4日・連合会館)

栄養成分表示や製造所固有記号制度など問題点も
 しかし、現在検討されている表示基準案には多くの問題が残されています。例えば、現行の栄養成分表示は、国際的にみて非常に遅れたものです。心臓疾患や発ガンのリスクにつながるトランス脂肪酸についての表示は、アメリカ、カナダ、韓国、ブラジル、香港、台湾、中国などでは義務化されていますが、日本では国民の平均的摂取量が低いという理由で、検討すらされませんでした。新基準は来年の施行からさらに5年の猶予があるにもかかわらず、消費者庁は、現行の表示義務対象のエネルギー・炭水化物・たんぱく質・脂質・ナトリウムだけしか認めようとしていません。
 消費者には、安全の権利や選択の権利があり、これが尊重されなくてはなりません。それにもかかわらず、事業者が実行できるかどうかをまず考えようという姿勢から、売上高が1,000万円以下の消費税の非課税事業者は表示が免除されます。
 また、食品には、販売者名とともに、製造所の所在地と名称を表示することになっています。しかし実際は消費者庁に届け出た固有記号が使われていることが多くなっています。昨年12月の冷凍食品に農薬が混入された事件の際に、製造所が記号で書いてあったため、問題の工場で作られたものと消費者が分からず、商品の回収が進まない要因になりました。消費者団体は製造所固有記号制度を廃止するように求めており、消費者庁も廃止したい意向にも関わらず、事業者が大反対しています。観光地の名品と思ったら別の産地のものだったり、ホテルの名前が書いてあってもホテルが作ったとは限りません。私たち食品表示を考える市民ネットワークは、7月4日に製造所固有記号制度を考えるシンポジウムを開きました(写真)。
 消費者庁は表示基準案に対するパブリック・コメントの意見も踏まえ、年内にも布令を公布する予定になっています。私たちの声を反映させましょう。
(かみやまみちこ)

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「高校生平和大使を支援する全国連絡会」結成!


第17代高校生平和大使結団式
(6月15日・広島市アステールプラザ)

 1998年に始まった高校生平和大使の国連訪問も今年で17回目を迎えます。昨年の16代平和大使は、日本の外務省から『ユース非核特使』を委嘱されるなど、平和大使としての活躍の幅が広がると同時に、活躍への期待も大きくなってきています。特に本年の17代平和大使は、北海道から九州まで200人以上の応募があった中から、過去最大規模の21人が選出されました。これまで全国枠の中から選ばれていた東京も、新たに東京選出枠を作り、全国枠からは、奈良県の高校2年生が関西圏から初めて選出され、高校生平和大使の全国化が本格化してきました。また、東日本大震災被災地からの選出も引き続き継続するほか、福島県からは、南相馬市といわき市から選出されました。
 6月15日に結団式を行った高校生平和大使は、広島、長崎での研修を経て、国連訪問に備えます。また、その間に各地で署名活動などを行っていきます。その後も、外務省訪問や各都道府県派遣委員会の会議など、国連へ署名を届けた後も、様々な活動を続けてまいります。
 高校生平和大使が、活動においても、人数においても規模が大きくなるということは、組織としてしっかりとした基盤をもって取り組んでいかなければなりません。これまで、ジュネーブへの高校生派遣の事業は、ほとんどが高校生の自費とボランティアによって運営されてきました。そこで、昨年より今後の高校生平和大使の活動を支えるための全国組織を結成することが検討されていました。これまで国連や各国に派遣された高校生平和大使は100人以上となっています。国際的にも認知され、大きな影響を与えるまでに成長した「高校生平和大使」の活動を支えるため、藤井耕一郎さん、豊永恵三郎さん、山川剛さんを共同代表として、「高校生平和大使を支援する全国連絡会」が2014年6月15日、広島市のアステールプラザにて結成式を行いました。「ビリョクだけどムリョクじゃない!」というキャッチフレーズを掲げ、「継続は力」であることを証明すべく、しっかりと高校生平和大使の活動を支えてまいります。ご協力よろしくお願いします。

『高校生平和大使を支援する全国連絡会』《会則》
 

  1. 設立および名称
    「高校生平和大使を支援する全国連絡会」として、2014年2月14日をもって設立します。
  2. 目的
    被爆国日本に生きる者として、核兵器の廃絶と平和な世界の実現を願い全国の高校生が参加する「高校生平和大使」「高校生1万人署名活動」や「高校生1万本鉛筆運動」「高校生アジア子ども基金」などの運動を支える活動をおこないます。
  3. 活動内容
    ・高校生平和大使の国連派遣事業を支援します。
    ・高校生平和大使の国連派遣事業の関連業務を支援します。
    ・高校生平和大使をはじめとする高校生の平和活動についての支援をおこないます。
    ・高校生平和大使の活動などを全国に知らせるとりくみをおこないます。

高校生平和大使を支援する全国連絡会
連絡先:平和フォーラム、原水爆禁止日本国民会議(原水禁)内に設置
〒101-0062東京都千代田区神田駿河台3-2-11連合会館1階
電話03(5289)8222FAX03(5289)8223

賛同カンパ
金額個人…1口/1,000円団体…1口/10,000円
郵便振替口座番号00100-2-486011
加入者名高校生平和大使を支援する全国連絡会

活動
高校生平和大使団結式
広島・長崎研修(広島:8月4日~6日、長崎:8月7日~9日)
国連訪問
2014年8月17日出発、19日スイス・ジュネーブの国連欧州本部軍縮局訪問、高校生1万人署名等を提出し、核廃絶を求めるスピーチ。22日帰国、23日帰国報告会

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欧米の専門家等、再処理延期を要請
プルトニウム最小化の約束の実現を迫る

 6月30日、プリンストン大学のフランク・フォンヒッペル名誉教授ら5人の欧米の専門家等が、3月にハーグで開かれた核セキュリティー・サミットでプルトニウムの最小化を約束した日本政府に対し、少なくとも日本の保有する約45トン(核兵器5000発分以上)が大幅に削減されるまで六ヶ所再処理工場の運転を開始しないようにと要請する書簡を提出しました。日本原燃は、10月に原子力規制委員会の審査などすべての手続きを終えて同工場の運転を始めることを目指しています。以下、書簡を抜粋して引用紹介します。

「最小化」と矛盾する「余剰プルトニウム」の定義
 私たちは「核物質の最小化と適正管理」を核セキュリティー「サミットの議題の中核」と位置づけた首相の表現、そして「更なるHEU[高濃縮ウラン]とプルトニウムの最小化のために何ができるかを各国に検討するよう奨励」した米国大統領との共同声明を高く評価します。
 しかし、私たちは、日本がその核セキュリティー・サミットに対する国別報告書において「余剰プルトニウムは持たない」との日本の約束を「利用目的のないプルトニウムを持たない」とする日本原子力委員会による2000年の再定義を繰り返したことを憂慮しております。これは、元の1991年の原子力委員会の「核燃料リサイクル計画の推進に当たって必要な量以上のプルトニウムを持たない」との原則よりずっと弱いものです。2000年の文言は、単に将来の利用の計画を発表すれば、それにより、その計画がたとえ信憑性を欠くものであっても、いかなる量の分離プルトニウムをも蓄積するのを正当化することができるようにしています。

現実と解離した「利用計画」
 国別報告書によれば、毎年「電気事業者等がプルトニウム利用計画を公表して」から再処理が許可されており、その利用計画の「妥当性を我が国の原子力委員会が確認してきている」とのことです。しかし、2003年に原子力委員会によって導入されたこの利用計画発表に関する規定は、六ヶ所再処理工場で分離されるプルトニウムについてのみ適用されるもので、ヨーロッパに溜まっている日本の分離プルトニウム――現在約34トン――を無視しています。そして、原子力委員会の方針は、プルトニウムの利用開始時期の詳細を公表するよう定めていますが、これまで原子力委員会は、日本のウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料工場の運転開始後にプルトニウム利用が始まるとのみ述べている利用計画を容認してきています。この工場の完成予定は延期され続けており、最新の予定は、2017年10月となっています。2010年までにMOX燃料を使用する発電用原子炉を16~18基にするとの電力会社の長年の計画(1997年以来)は、実現しませんでした。プルトニウムを燃料とする「もんじゅ」を運転するとの日本原子力研究開発機構の計画も実現していません。
 現在日本は次のような状況にあります。運転中の発電用原子炉が1基もない。1999年以来、わずか2トンのプルトニウムをMOXのかたちで照射することに成功しただけであり、日本国内とヨーロッパに溜まっている日本のプルトニウムは、約45トン(核兵器5000発分以上)に達している。MOX燃料製造工場を持っていない。

不必要なプルトニウムの蓄積はサミットの議題の中核
 安倍首相が述べたとおり、このような核兵器利用可能物質の不必要な生産と蓄積は、核セキュリティー・サミットの「議題の中核」です。(中略)六ヶ所再処理工場で分離されたプルトニウムは、六ヶ所MOX燃料製造工場が運転開始となるまで蓄積され続けることになります。(中略)
 このため、私たちは、[昨年12月の]ステートメントで、次のように呼びかけています。「すくなくとも、日本は、分離済みプルトニウムの保有量が最小限の実施可能な作業在庫(約1年分の消費量)に減るとともに、六ケ所再処理工場で分離されるプルトニウムを直ちに消費する態勢が整うまで同工場を運転すべきではない。」

使用済み燃料は乾式貯蔵へ
 日本の極めて高くつく使用済み燃料再処理政策は、日本の原発の一部の使用済み燃料プールが約4年で満杯になってしまうとの予測(2011年3月11日以前)によって正当化されてきました。しかし、再処理工場へ使用済み燃料を送るというのは、この問題に対処する唯一の方法ではありません。実のところ、他のほとんどの国は、プールで少なくとも数年間冷却された使用済み燃料を乾式貯蔵に移すというかたちでこの問題に対処しています。日本は、事故以前に、福島第一原子力発電所と東海第二原子力発電所でこれを実施していました。経済産業省が安全性の理由から、乾式貯蔵をする原子力発電所がもっと増えるよう奨励する計画だとの最近の報道を興味深く読みました。(中略)
 私たちは、また、経済産業省の総合資源エネルギー調査会地層処分技術ワーキング・グループの委員長が、廃棄物処分の観点からいうと再処理は好ましくないと最近発言していることを歓迎します。原子力発電をしている24の非核兵器国のうち未だに再処理をしているのは日本だけです。核兵器国の中では、英国が再処理放棄の決定において米国の仲間入りをしました。

(全文は http://kakujoho.net/ 参照)(田窪 雅文:核情報主宰)

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《被爆69周年原水禁世界大会に向けて 2》
プルトニウムの問題をさまざまな角度から考える

原子力基本法の改正で核兵器保有が可能に
 原子力基本法は、1955年に日本が原子力開発を始めるにあたって作られた法律です。この基本法の作成前に、日本学術会議の数年の議論があり、それは原子力3原則としてまとめられます。この3原則が原子力基本法第2条の「基本方針」に次のように反映されたのです。
 「原子力の研究、開発および利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれをおこなうとものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資することを目的とする」。いわゆる民主・自主・公開の原則です。しかし原発政策が推進されていくなかで、この原則は科学者自身によって無視され、福島原発事故の遠因ともなったことは、いまさらいうまでもありません。特に、2012年に、福島原発事故受けて「原子力規制委員会設置法」が制定される過程で基本法の「改正」が行われ、前述の「目的」の中に「(原子力の利用は)わが国の安全保障に資することを目的とする」という文言が入れられたのです。当時は民主党の野田政権でしたが、民主、自民、公明の3党の合同提案となり、成立してしまいました。
 この原子力基本法の「改正」によって、日本の核武装を法的に規制するものはなくなったといえます。もちろん日本が核武装するには、核不拡散条約(NPT)からの脱退や、包括的核実験禁止条約からの脱退など、いくつかの大きなハードルがあり、すぐ核武装に動けるものではありません。また核兵器自体も、実際に使える兵器ではなく威嚇的な意味が大きく、そのため核実験によって核兵器の保有を知らせることが必要です。しかし、日本には核実験を行う場所はないといえます。


「核拡散と原子力政策」をテーマにした昨年の
原水禁世界大会の分科会(2013年8月5日・広島市内)

プルトニウムの保有自体が脅威につながる
 核保有国も「核の先制使用を行わない」という消極的安全保障を非核国に保証するだけでなく、核兵器の保有を減らす時代に入りつつあるといえます。それでも今回の法的な「改正」措置は、これまでの潜在的な核保有国としての日本の立場を強めることになります。これは、私たちが求める核廃絶の要求と対立するものであり、これに反対する運動側の力量が問われています。とくに、プルトニウム問題と結びつく青森の六カ所再処理工場の運転停止と廃炉を求める運動を強めなければなりません。
 現在日本は海外に存在する分を含めて、約45トン近くのプルトニウムを保有しており、その存在自体が脅威といえます。また福島第1原発事故によっても大量のプルトニウムが放出されており、この被害も深刻です。プルトニウムは粒子が大きく重いため、遠くに飛散しないといわれていましたが、熱で気化し遠くまで飛散した心配があります。これは劣化ウランと同じで、超微小な粒子となって生物体内に入り込み、さまざまな影響を与えます。しかも半減期が2万4千年という超寿命の物質です。しかし、東京電力はこうしたプルトニウムの放出情報をほとんど出していません。
 このように、今年の原水禁世界大会では、さまざまな角度からのプルトニウムをめぐる問題点について議論が求められます。

戦争をさせない運動ともつなげて
 一方、現在、イラクと中東全体に広がる混乱は、米国のブッシュ前政権が作り出したものですが、米国は、せいぜい軍事顧問団(実体は超強力な軍事力をもった専門家集団)を送るぐらいで、それ以上の介入は不可能です。志願兵制度をとる米国は、イラクに対して、志願兵を2度、3度と派兵しましたが、帰還兵の多くがホームレスになったり、自殺をする人も多く出ています。日々、殺戮と破壊、残虐行為が行われているイラクの現実を経験して、米国の日常に対応できない人々による悲惨な結末でもあるのです。
 日本も自衛隊をイラクに「派兵」し、死者こそ出ていませんが、何回も基地が砲撃されています。そして帰国後に28人が自殺し、精神的不安定になった人も多いと伝えられています。もちろんイラク派兵との因果関係を防衛省は否定していますが、異常に多い数字と言えます。
 安倍政権による集団的自衛権を認める閣議決定は、予測もしない非日常へ日本を引き込む第一歩であるといえます。まとまった野党が存在しないなかで、「戦争をさせない1000人委員会」などの活動が今こそ求められているといえます。こうした取り組みと原水禁の運動をつなげていくことが大切です。
(原水禁専門委員和田長久)

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被爆69周年原水爆禁止世界大会の課題
安倍政権の政策と対決しよう

 7月1日、安倍内閣は「集団的自衛権行使容認」の閣議決定おこない、「戦争できる国」へと踏み出しました。憲法の平和主義を、根底から覆す暴挙を決して許してはなりません。安倍政権は、特定秘密保護法やエネルギー基本計画など、世論の多くが反対を示しているにも関わらず強引に決定してきました。特にエネルギー基本計画では、原発の再稼働、核燃料サイクルの推進、原発輸出などを謳い、原発推進路線に回帰しています。今年の原水禁大会は次の課題を中心に開催します。

核拡散と日本の原子力政策
 被爆70周年を迎える2015年は、核拡散防止条約(NPT)再検討会議が国連で開かれる年です。核廃絶に向けた国内外の機運を高め、核兵器国に核廃絶を迫るチャンスです。それへ向けて日本の果たす課題を明らかにします。特に、日本の原子力政策と核拡散の問題に焦点を当て、核兵器廃絶と脱原発運動が深く関わりあうことを訴えます。そのキーワードは「プルトニウム」です。
 日本の原子力政策の中のプルトニウム利用政策が、核拡散の面で国際的に大きな問題になっています。今年3月の核セキュリティサミットにおいて「分離プルトニウムの保有量を最小化する」との共同声明が採択されました。NPT加盟国の非核兵器国の中で原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出しているのは日本だけです。その量は約45トンにも上っています。「(原発での)利用目的のないプルトニウムは持たない」ことを国際公約としていますが、福島原発事故以降、原発そのものの再稼働もあやうく、原発の新増設や高速増殖炉開発もとん挫している現状では、この国際公約すら履行できない状況にあります。にもかかわらず安倍政権は、核燃料サイクルの推進を謳い、安全保障上、核兵器へ転用できる技術のポテンシェルを常に持ち続けることを公言し、そのことが周辺諸国に対して大きな脅威ともなっています。さらに日本の再処理政策が韓国の原子力政策を刺激し、韓国自身も再処理を行いたいとする動きにつながっています。東北アジア非核地帯化求める立場からは、再処理問題が大きなネックになることは確かです。
 また、安倍政権の経済政策の目玉の一つである原発輸出は、核の「機微技術」の輸出であり「知識」の輸出でもあります。原子力に関わる技術者や研究者が増えれば、核兵器に転用するハードルも低くなってきます。現にインドやパキスタンなどの国々は、原子力の「平和利用」から出発しています。原子力開発が核兵器開発に結びつくことが今問われており、日本の反核運動と脱原発運動を結びつけていくことが求められています。

川内原発の再稼働反対と福島原発事故
 この夏以降、福島原発事故への対応と川内原発の再稼働が大きな焦点となります。福島原発事故は3年以上経過した今なお収束しておらず、未だに13万人の福島県民が県内外で苦しい避難生活を余儀なくされています。汚染水問題、除染問題、健康問題、賠償・補償問題、被曝労働問題など様々な問題が噴出し、解決が迫られています。福島原発事故のもたらした被害の実相を明らかにすると同時に、どのように連帯していけるのかを考えます。地元の福島県町村議会議長会や町村会は6月総会で福島第二原発の全基廃炉を特別決議し、「一刻も早い事故収束と事故前の平穏な日常を取り戻すのが最大の願い」だと訴えています。このような願いをどのように受け止めていくべきかを考えます。
 再稼働については、7月16日、原子力規制委員会が九州電力・川内原発1、2号機(鹿児島)の審査報告書を発表し、秋季以降にも運転再開と見られていますが、再稼働阻止にむけた運動の構築を図ります。川内原発の問題の本質は、無責任体制にあります。規制委員会の田中俊一委員長は、基準の適合性を審査しただけで「安全とは申し上げない」、「避難計画は規制の範囲外で審査では評価していない」と責任を回避しました。安倍首相は、「規制委員会が安全だという結論が出されれば再稼働を進めていきたい」と責任を規制委員会に押し付けています。自治体も「国が安全と言えば再稼働を認める」と、それぞれが責任を押し付けあっています。無責任な状態のまま再稼働が強行されようとしていることに大きな問題があり、そのことは、原子力政策全般が持っている根本的な欠陥であることを訴えます。

ヒバクシャの援護・連帯の強化を
 ヒロシマ・ナガサキの被爆者は、戦後69年を迎え、高齢の域に入っています。残された課題の解決が急がれています。日本政府が未だ侵略戦争の責任を認めず、戦後補償の責任を果たそうとしない中、被爆者の援護をいまだ国家補償として取り組んでいないところに問題があります。社会保障的援護が十分でないところに、原爆症認定や在外被爆者、被爆体験者、被爆二世・三世などの様々な問題がつながっています。それぞれの抱える問題について理解を深め、運動の展望を考えます。
 さらに今年は、核被害者の海外ゲストからアメリカのウラン採掘による被害の実態の報告を受けます。核の「軍事利用」、「商業利用」の出発点にあたるウランの採掘の時点から核被害が生みだされていることを捉え、あらゆる核被害者との援護・連帯を図ることを訴え、「核と人類は共存できない」ことを大会で確認します。

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核も戦争もない平和な21世紀に!
原水爆禁止世界大会広島・長崎大会の日程

8月4日(月)
16:00~折鶴平和行進(平和公園~県立総合体育館)17:15~19:15広島大会開会総会(同館大アリーナ)

8月5日(火)9:30~12:30分科会
(1)脱原子力1─福島原発事故と脱原発社会の選択
(2)脱原子力2─再稼働問題と日本のエネルギー政策
(3)平和と核軍縮1─核拡散とプルトニウム利用政策~NPT再検討会議に向けて
(4)平和と核軍縮2─アメリカの核戦略と東北アジアの非核化
(5)ヒバクシャを生まない世界に1─世界のヒバクシャの現状と連帯のために
(6)ヒバクシャを生まない世界に2─ヒロシマからフクシマへヒバクシャの課題
(7)見て、聞いて、学ぼうヒロシマ
13:30~17:00国際会議
2015年NPT再検討会議と日本の役割―日本のプルトニウム政策と核拡散(アークホテル広島)
子どものひろば
フィールドワーク慰霊碑めぐり、電車に乗って被爆体験を聞く、メッセージfromヒロシマ2014(県立総合体育館武道場)。ひろばやフィールドワークも行われます。

8月6日(水)
9:30~11:00広島大会まとめ集会(中国新聞ホール)

8月7日(木)
15:30~17:30長崎大会開会総会(長崎ブリックホール)

8月8日(金)
9:30~12:30分科会
(1)脱原子力1─再稼働問題と日本のエネルギー政策
(2)脱原子力2─福島原発事故と脱原発社会の選択
(3)平和と核軍縮1―核拡散とプルトニウム利用政策~NPT再検討会議に向けて
(4)平和と核軍縮2─東北アジアの非核地帯化と日本の安全保障政策
(5)ヒバクシャ1─ヒバクシャ問題の包括的解決をめざし
(6)ヒバクシャ2─強制連行と被爆を考える
(7)ヒバクシャ3─被爆二世・三世問題を考える
(8)見て・聞いて・学ぼう”ナガサキ”─証言と映像による被爆の実相と平和運動交流若者・子ども関連行事子ども平和のひろば、ピース・ブリッジ2014inながさき(長崎県勤労福祉会館)。この他、ひろばやフィールドワークも行われます。

8月9日(土)
9:00~10:00長崎大会閉会総会(長崎県立総合体育館)
10:15~11:00非核平和行進(総合体育館~爆心地公園)
11:02黙とう(爆心地公園)

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〔ビデオの紹介〕
検証!オリンピック―華やかな舞台の裏で
アジア太平洋資料センター(PARC) 2014年(25分)

 「4年に一度の祭典」といえば、先日終わったサッカーのワールドカップと、オリンピック。昨年、2020年夏の東京オリンピック開催が決まった。ともすれば、巨大すぎるメインスタジアムのことばかりが批判の声としてあげられるが、問題点は他にも数多い。例えば、江戸川区の葛西臨海公園は都市に隣接する野鳥の楽園として有名だが、ここにカヌー競技場を作るため、多くの樹木が切り倒されようとしている。オリンピック憲章で言う「環境問題に関心を持ち、(中略)オリンピック競技大会開催について持続可能な開発を促進すること」に反しているのではないかという声が、地元を中心に高まっている。「平和の祭典」の名の下に、オリンピックの商業主義化が言われて久しい。巨大施設の建設と街の再開発計画、巨額の放映権料、スポンサー契約をめぐる動きもすでに始まっている。中でもアメリカのテレビ局の発言権は強く、アメリカの視聴者の都合に合わせて大会のスケジュールが変わることもしばしば。1964年の東京オリンピックは10月開催だったが、いまや7~8月の夏休み期間に開催される。これもアメリカのテレビ局の都合だと言われる。
 特に、日本開催で問題なのは、福島第一原発事故のこと。「原発は完全にコントロールされている」と、安倍晋三首相は詭弁を弄してオリンピックを誘致した。その国際的責任をどうとると言うのだろう。オリンピックの政治利用と言えば、有名なのは1936年のベルリン・オリンピックでのヒットラーだ。「グローバル化の中で日本人のプライドを喚起する装置としてオリンピックは機能する」と、関西大学の阿部潔教授は指摘をする。オリンピックを強引に誘致し、集団的自衛権の行使容認へ踏み切った安倍首相の姿が、ますますかつてのヒットラーとダブって見えてくる。ビデオでは、スポーツジャーナリストの谷口源太郎さんなどが、こうしたオリンピックの商業性と政治性を検証し、スポーツの持つ本来の意味を考える時だと呼びかけている。

問い合わせはアジア太平洋資料センター
(PARC:e-mail: office@parc-jp.org
Tel:03-5209-3455)へ。

(市村忠文)

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核のキーワード図鑑


未来のロボット兵士

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《パンフレットご案内》
2014核も戦争もない21世紀へ核問題入門

 今年の被爆69周年原水爆禁止世界大会の課題である、「原発問題」、「核兵器廃絶」、「ヒバクシャの状況」について、わかりやすくまとめたパンフレットを発行しました。今後の脱原発の運動などの学習資料として役立つ内容です。ぜひ、お求め下さい。
【主な内容】
・原水禁は核兵器と原発に反対してきた
・核兵器廃絶にむけて
核兵器とはどのようなものか/核実験の被害と禁止の取り組み/世界の核兵器の現状と核政策/核兵器のない世界への取り組み/核兵器と原発、放射能被害の関係
・脱原発へ向けて
エネルギー基本計画のお粗末/福島原発事故が教えるもの/「被曝」とは?/破綻する核燃料サイクル/やっぱり脱原発
・ヒバクシャの現状と課題
ヒバクシャをつくらないために/被爆体験者という差別/在外被爆者問題/被爆・二世の現状と課題/生存を脅かす被ばく被害A5判84ページ500円(送料別)発行:原水爆禁止日本国民会議

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