2013年、ニュースペーパー
2013年05月01日
ニュースペーパー2013年5月号
- インタビューシリーズ 神奈川朝鮮中高級学校高級部3年生に聞く
- 憲法は戦後もっとも危険な状況にある
- 狭山事件の発生から50年
- 企業にやさしく、消費者に冷たい日本の化学物質政策
- 進まぬ放射能汚染物の処理と問題点
- オスロで「核兵器の人道的影響の国際会議」
- 原子力委員長代理の発言の背景
- 国際人権基準に違反する「高校無償化」からの朝鮮学校排除
- 各地の活動紹介 新潟県平和運動センター
- 映画評「福島 六ヶ所 未来への伝言」
- 報告書「オスプレイ配備と低空飛行訓練を止めさせるために」
「すべての子どもたちに学ぶ権利を!」─朝鮮学校への「高校無償化」の適用を求めて、3月31日に東京・日比谷野外音楽堂で全国集会が開かれ、全国の朝鮮学校の生徒や保護者、学校関係者のほか、平和フォーラムや市民団体などから7500人が参加しました。集会では、全国各地の朝鮮高校の代表が登壇して「署名や街頭活動のときに中傷やいやがらせも受けたが、あきらめてはいない。これは私たちが生きる日本社会を良くする闘いだ」と力強く語りました。集会後は、「朝鮮学校だけを無償化から除外するのは差別だ」「自治体による朝鮮学校への補助金復活を!」などをアピールしながら、横断幕やプラカードを掲げてパレードを行いました(写真:今井明)。
【インタビュー・シリーズ その77】
ごく普通の高校生活を送っていることを知ってほしい
神奈川朝鮮中高級学校高級部3年生に聞く
|
【プロフィール】
3月31日、東京・日比谷野外音楽堂で「朝鮮学校はずしにNO!すべての子どもたちに学ぶ権利を!」集会が開催され、全国の朝鮮学校の生徒や保護者をはじめとする7500人が参加しました。集会から数日後、神奈川朝鮮中高級学校を訪ねて、高級部3年生の朴智美(パク・チミ)さん、金優和(キム・ウファ)さん、金聖周(キム・ソンジュ)さん(写真左から)にお話をうかがいました。
――3月31日の集会へ参加した感想を教えてください。
キム・ソンジュさん 集会には日本の方々がたくさん来ていて、僕たちのことを応援してくださる日本人の方もいっぱいいるんだということを実感できました。右翼の街宣車から投げかけられた罵りの言葉にはショックを受けましたが、それ以上に、あの人たちは僕たちのことをあまり理解しないで反対しているんだと思いました。朝鮮学校というところがどんなものなのか伝えたかったし、知ってほしいと思います。
パク・チミさん パレード中には心痛む思いもしましたが、横にいたパレード参加者の日本の方にいろいろ声をかけていただいて、痛み以上に勇気やがんばろうという気持ちをもらえました。
キム・ウファさん 朝鮮学校の問題について考え、協力してくれる人がこんなにもいるのかとすごく驚き、とてもうれしかったです。パレードのときは、確かにに妨害もすごかったんですけど、街を歩く人たちが手を振ってくれたり、声をかけてくれたりしてくれました。応援してくれる人がこんなにいるのだから、自分たちがこれからもがんばっていかなくてはならないと再確認できました。
――朝鮮学校を取り巻く動きについて、どう思いますか。
キム・ソンジュさん これまで高校「無償化」制度適用実現のために、いろんな活動をしてきたにもかかわらず、いまだに政府や日本の方から理解を得られず、朝鮮民主主義人民共和国にかかわる問題と朝鮮学校を結びつけて、そのことを理由にして、「無償化」制度から除外されるのがとても悔しいです。
このことは明らかな差別だし、日本政府の方もそのことはわかっているはずですが、自分自身の主張はせずに責任から逃げていることに、納得がいきません。
キム・ウファさん 朝鮮学校に通うひとりの生徒としてもそうですし、日本社会に生活するひとりの市民としても、納得ができません。私たちも日本に生活する学生として、平等に学ぶ権利を持っていると思います。朝鮮学校の生徒だけが差別的な扱いをされていることは、すごく残念ですが、これからもこういった問題については正々堂々と向き合っていかなくてはならないと思っています。
「朝鮮学校はスパイを養成している」とか言われる方もいますが、全然そんなことはありません。私たちは他の高校生と変わらない、ごく普通の高校生活を送っているだけなので、もっとたくさんの方々に知ってほしいと思います。
パク・チミさん 今回は高校「無償化」制度についての問題ですが、これまでも(朝鮮学校にだけ割引率が適用されない)JRの定期券問題や高校体育連盟への加盟の問題など、朝鮮学校だけが除外されることがありました。そういう中でも、私たちの両親の世代ががんばって、権利を勝ち取ってきたと考えています。この高校「無償化」問題についても、結構長い時間が経ちましたが、権利を獲得できるように、これからもあきらめずにがんばりたいと思います。
日本政府や神奈川県知事は、あきらかな差別を「国民や県民の理解が得ることができない」ことのせいにしてあきらめるのではなく、まず「国民や県民の理解」を得るための努力をしてほしいと思います。
朝鮮学校は反日的だと決めつけている日本の方もいるかと思いますが、私たちは日本人のことを何も悪く思っていないし、むしろお互いが理解して仲良くしたいと思っていることを知ってほしいです。
――皆さんにとって、朝鮮学校はどんなところですか。
キム・ウファさん 日本の高校生にとっての学校と変わらないと思っています。違うのは朝鮮の歴史や文化、言葉を教えてくれて、朝鮮人としての自分を育ててくれるということです。
パク・チミさん とても一言では言えないのですが、自分が、本当の自分でいられる場所だと思っています。普通に外にいると、日本人と在日との間に心の壁がある気がします。朝鮮学校には、朝鮮籍だけではなく、韓国籍、日本国籍の生徒もいますが、日本で育った朝鮮人という同じ立場として、気持ちを分かち合えるように思います。
キム・ソンジュさん 朝鮮学校に通っていなければ、僕たちは日本人と変わらないと思います。僕は日本で生まれ、日本で育って、いつも日本語を使っています。そんな中で、自分のアイデンティティーや自分の存在を知るためには、朝鮮学校に通いながら、同じ立場にある在日朝鮮人の子どもたちとふれあい、交流することが重要だと思うので、朝鮮学校はそういう自分の存在について気付かせてくれる場所だと思っています。
高校「無償化」問題がはじまったとき、僕は中級部の3年生でした。最初はあまり自分の問題だとは思っていなかったのですが、高校生が一所懸命にビラ配りや署名活動をしているのに感動しましたし、先輩たちが「無償化」適用を実現できないまま卒業するのを悔しがっていた姿を見て、なんとか「無償化」適用を実現したいと思ってきました。
――平和フォーラムをはじめとする日本の市民への要望はありますか。
キム・ウファさん 朝鮮学校の「無償化」適用除外に賛成する人は、私たちのことを知らないから、そういう考えになっているんだと思うので、いろんな方々に知ってもらいたいです。そのために、私たちも活動していきたいと思っています。こういった政治的な情勢の中で、「無償化」適用実現はなかなか大変だとは思います。でも、あきらめたらそこで終わりだし、あきらめず続けていくことが大切だと考えています。
キム・ソンジュさん 僕たちに対する思い込みで悪いイメージに凝り固まっている人たちも多くいて、そのことを変えることは大変だと思いますが、僕たちががんばる中で理解が進んで、少しでも協力してもらえるようになればと思います。
テレビなどのニュース報道を見るだけでは、僕たちに対して悪いイメージを持つ方が多いかと思いますが、僕たちや朝鮮学校について、もっとよく知ってもらうことが大事だと思います。「朝・日交流祭」などのイベントでは、多くの日本の皆さんと交流し、いろいろ話し合うことができました。もっとそういう機会を増やして仲良くできたらいいなと思います。
パク・チミさん たとえば朝鮮学校の「無償化」からの除外について、私たちは差別だとか、そういう角度から見ますが、一方で反対することが正しいと思って主張している人たちもいると思います。
お互いに主張があるのだから、何が正しいのか、お互いが意見を聴き合い、お互いに理解し合うことが必要です。そういうなかで、平和な社会が築ければいいなと思います。私たちは日本に住んでいて、周りのほとんどは日本人の方たちなので、その方々と交流を深めることから始めたいと思います。
私の日本人の友達は、私と知り合ったときに、朝鮮学校という存在自体知らなくて、そのことにびっくりしました。でも私が説明すると、署名にも協力してくれました。私たちがいろんな人たちと実際に交流する中で、朝鮮学校や私たちのことを、少しずつでも知ってもらえることが重要なんだと思います。多くの皆さんに在日朝鮮人や朝鮮学校について理解していただき、「朝鮮高級学校の生徒たちへの『高校無償化』即時適用を求める署名」をはじめ、朝鮮学校を支援する取り組みにご協力いただけたらと思います。
〈インタビューを終えて〉
太平洋戦争開始後、米政府は国内に住む日系人を強制移転、強制収容しました。ある国の政策を批判して、その国の民族を差別的に取り扱った典型です。日本政府が決断した朝鮮高校無償化排除の措置は、強制収容と同じ論理です。3月31日の集会後のデモで、高校生たちは「日本に住めるだけでありがたいと思え」と言う罵声を浴びました。インタビューした高校生は、デモ行進中、拍手を送ってくれる日本の方々の姿がうれしかったと答えてくれました。この拍手が暗中に光明を灯しています。
(道田 哲朗)
憲法問題連続学習集会《第1回》
山内敏弘一橋大学名誉教授講演から
憲法は戦後もっとも危険な状況にある
2012年12月の衆議院議員総選挙は、改憲を掲げる安倍晋三総裁の自民党が294議席、石原慎太郎代表の日本維新の会が54議席をとり、合計で衆議院の3分の2の議席を大きく超える結果となりました。すでに、改憲発議要件を国会議員の3分の2から過半数に引き下げる憲法96条改定に、安倍首相は積極姿勢を見せ、「維新」やみんなの党と連携した動きもすすめられています。
平和フォーラムは、自民党などの改憲論や衆参憲法審査会の動向に対する取り組みとして、4月から毎月1回ペースで著名な方や憲法に詳しい方が憲法への思いや考えを語るとともに、改憲論の問題点を指摘する連続学習集会を開始しました。
その第1回の学習集会が4月3日、東京・連合会館で130人の参加者のもと、「さようなら原発1000万人署名」「九条の会」の呼びかけ人で作家の澤地久枝さんの「私と憲法」、一橋大学と獨協大学の名誉教授の山内敏弘さんの「憲法をめぐる状況と課題」の2つの講演を行いました。このうち山内さんの講演から報告します。
自民党案は国民を縛り、義務を課すもの
講演する山内敏弘さん(4月3日・連合会館) |
山内さんは、憲法は戦後もっとも危険な状況にあるとともに、すでに「改憲」を先取りし地ならしする動きとして、生活保護バッシングや、産業競争力会議で「解雇の自由」が論議され、武器輸出3原則の見直し、領土問題でナショナリズムのあおりなどの点を指摘しました。
また、自民党憲法草案の問題点は、表現の自由や結社の自由を制限する、集団的自衛権、国防軍、家族制度の強調など条文ごとにたくさんあるが、一番の問題は現憲法が「国家権力を縛るための憲法」であったのに対し、自民党案は「国民を縛り、義務を課すための憲法であり、天皇は憲法に縛られない」ことが大前提になっている点だと述べました。
言葉では「国民主権」と記述されていても、憲法の上に天皇という権力が存在するのが特徴で、様々な国連の人権条約などにも違反する内容であると強調。前文にある「全世界の人の平和生存権」は自国民だけではなく国際平和を追求する世界に誇れる内容も、すっぽり取り去っていることも特徴としました。
厳しすぎることはない憲法の改正要件
国会の改憲発議要件を「3分の2の賛成」から「2分の1」へと緩める憲法96条改憲論について、「9条、人権条項、国民主権の改憲を行うために外堀ないし内堀を埋めるためのもの」と述べ、単なる改憲に関する技術的な問題ではないと強調しました。自民党が96条改憲の根拠として、現憲法は「世界的に見て改正しにくい」としていることについて山内さんは「米国憲法の修正には上下両院の3分の2の賛成または全州の3分の2の州議会の要請という発議要件に加え、全州議会の4分の3の承認が必要とされている」ことを紹介し、「アメリカのことをいろいろモデルにするのならば、米連邦、州の例を踏まえた場合、日本国憲法96条の改正要件は厳しすぎるとは言えない」と指摘。
併せて、国民投票における改憲成立には投票者の過半数の賛成に加え有権者の過半数の投票という要件がある韓国の事例(日本の国民投票法には最低投票率要件がない)、憲法の根幹部分に関する改正には国民投票に至る前に、国会議員の3分の2以上の多数決と解散、新たに選出された議員の3分の2以上の賛成が必要とされているスペインの事例も紹介しました。
また、同じく自民党が国会での手続きを厳格にすると国民の意思表明の機会を狭めるとの理由を挙げていることに関して、自民党の新改憲草案が前文に「日本国は、天皇を戴く国家」との規定を盛り込むとともに、天皇の元首化や天皇の憲法尊重擁護義務の解除などを定めていることに触れ、「こんな国民主権をないがしろにするような改憲草案を書いている人たちに、国民主権は大事だから国民投票をもっとできるようにしようと言う資格はない」と批判しました。
平和フォーラムは、5月3日に東京・日本教育会館で「施行66周年憲法記念日集会」を、連続学習集会の第2回を5月22日、第3回を6月25日に行います。
●施行66周年憲法記念日集会(東京)
日時:5月3日(金・休)13:30~16:00 開場13:00
場所:日本教育会館3Fホール
(地下鉄「神保町駅」3分・「竹橋駅」5分・「九段下駅」7分、JR「水道橋駅」15分)
テーマ:「自民党などの改憲案を斬る」
講演「憲法の基本原理と昨今の改憲案」
講師 清水雅彦さん(日本体育大学准教授)
講演「国際人権基準から見た日本の外国人の人権問題」
講師 師岡康子さん(外国人人権法連絡会・外国人学校ネットワーク)
参加費:500円(資料代を含む)
半世紀無実を叫ぶ石川一雄さん
狭山事件の発生から50年
狭山事件再審弁護団 主任弁護人 中山 武敏
1963年5月1日、埼玉県狭山市で女子高校生が行方不明になり殺害された、いわゆる「狭山事件」が起きてまもなく50年になろうとしています。この事件の犯人とされて、有罪判決を受けた石川一雄さんは半世紀も無実を訴え続け、現在、私たち弁護団とともに、東京高裁に3回目の再審請求を申し立てています。
そもそも「狭山事件」では、常識的に見て多くの疑問が指摘されています。たとえば、犯人の残した脅迫状には多くの漢字が使われ誤字がありませんが、部落差別の結果、小学校にも満足に行けなかった石川さんは当時、ほとんど読み書きができず脅迫状を書けなかったこと、脅迫状など証拠物のどれにも石川さんの指紋がないこと、活発な高校生の被害者が下校途中に見知らぬ石川さんにいきなり自転車を止められ、黙って雑木林の中までついて行って殺されるなど考えにくいことなどです。
証拠開示や科学的分析で次々と崩される「有罪証拠」
再審開始を訴える石川一雄さん、早智子さん夫妻(東京高裁前) |
2006年5月に申し立てられた現在の第3次再審請求で、私たち弁護団は、(1)犯人の残した脅迫状は石川さんの書いたものではないとする専門家の筆跡鑑定、(2)事件当日、殺害現場とされる雑木林の隣の畑で農作業をしていたOさんが被害者の悲鳴を聞いていないという証言、(3)自白のような殺害方法ではないとする法医学者の鑑定書、などの新証拠を裁判所に提出し再審開始を求めています。
2012年9月には、自白通り発見されたとして有罪証拠の一つとされた腕時計が、被害者のものではないことを示す新証拠が出されました。証拠の時計は被害者が使うはずのないバンド穴が使われており、被害者のものではない疑いがあるという事実を専門家の時計修理士が明らかにしたのです。証拠の開示や専門家の科学的な分析によって有罪証拠とされたものが次々と崩れています。
再審開始を求めて5月23日に集会を開催
今年5月に13回目の三者協議がおこなわれ、弁護団、検察官の双方から証拠や意見書が出され、今後、東京高裁が事実調べをおこない再審を開始するか判断することになります。第3次再審請求は大きな山場になります。弁護団は検察官手持ち証拠の徹底した開示と鑑定人尋問を強く求めています。
狭山事件発生から50年を迎える今年、さまざまな取り組みが予定されています。庭山英雄弁護士が代表、事務局長をルポライターの鎌田慧さんが務める「狭山事件の再審を求める市民の会」では5月13日に、東京・アルカディア市ヶ谷で講演会を開催するほか、地元の部落解放同盟埼玉県連とともに、5月1日には現地調査が行われます。
そして、石川さんが50年前に逮捕され、えん罪に陥れられた5月23日には日比谷野外音楽堂で市民集会が開かれます。石川さんはいまも「見えない手錠」がかかっていると一日も早い再審を訴えて、支援者とともに裁判所の前で毎週、宣伝活動を行っています。多くの皆さんの支援をお願いします。
狭山事件の再審を求める市民集会
日時:5月23日(木)13:00~
会場:東京・日比谷野外音楽堂
(地下鉄「霞ヶ関」「日比谷」下車)
問い合わせ:部落解放同盟中央本部(03-6280-3360)
企業にやさしく、消費者に冷たい日本の化学物質政策
合成洗剤の有害性を表す絵表示(GHS)制度の導入急げ
合成洗剤追放全国連絡会 事務局次長 岩野 淳
家庭から排出される有害物質の半分以上が合成洗剤
GHSによる水性環境有害性の表示 |
毎年末に厚生労働省から公表される「家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」の2011年度の内容が、2012年12月27日に明らかにされました。それによると皮膚障害、小児の誤飲事故、吸入事故とも、原因物質として合成洗剤等の洗剤・洗浄剤が大きな要因であることが明らかになっています。
また、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質について、事業所からの環境(大気、水、土壌)への排出量や移動量を、事業者が把握し国に届け出るというPRTR制度があり、毎年度末(3月)に政府から公表されます。今年3月に公表された2011年のデータによれば、環境中に排出された化学物質のワースト10の中に、合成洗剤の主成分のAE(ポリオキシエチレン=アルキルエーテル)とLAS(アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩)が入り、さらに、家庭から環境中に排出された有害物質の50%以上が11年連続で合成洗剤成分でした。合成洗剤による健康被害、環境汚染は古くて新しい課題として残ったままです。
世界共通の絵表示制度 日本も実施を約束
このような身近な有害化学物質対策として、国連で2003年に確認され、日本政府も実施を約束しているのが世界共通の絵・マークで消費者にも有害性を表示するGHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)です。国際的な論議が始まったころ、環境省は一般消費者向け商品に含まれる化学物質の有害性絵表示等について、GHSのパンフレットを作成、早い時期の制度化に期待を持たせました。また、09年に新設された消費者庁の政策課題にもGHSは明記されました。しかし、その後の対応は進んでいません。
化学物質を扱う法律はたくさんあり、複雑です。日本におけるGHS導入にあたっては、関係省庁(消費者庁・消防庁・外務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省等)による連絡会議が設置されましたが、結局、「絵表示」が法的義務となったのは労働安全衛生法(安衛法)による一部(107物質)だけです。
一般消費者製品は絵表示の対象外に
本来、GHSの対象は労働者や消費者、化学品を扱う全ての人たちのはずです。しかし日本ではGHSは強制力の無い「努力義務」となり、一般消費者向け製品では提供する必要がないとされています。法的義務は無いとはいえ、国際公約をしたGHS制度ですので、企業に対してはJIS(日本工業規格)に従って、GHSにも対応したラベル表示ができるよう制度を整備しました。そして経済産業省が中心となり「化学物質管理セミナーキャラバン2012」を昨年12月から本年2月まで全国8ヵ所で開催、企業をサポートしています。
一方、残念ながら一般消費者向けGHS対応は全く進んでいません。当面の対応がJIS化で決着したことがそれを端的に示しています。そのため消費者向けGHSは経済産業省主導による業界任せの独自の「自主的GHS」対応となっています。
いちばんひどい例が、花王など大手合成洗剤企業で構成する「日本石鹸洗剤工業会」によるGHS表示です。GHSには環境に対する有害性など3つの大きな区分と9種類の絵表示があります。日本石鹸洗剤工業会が発行した消費者向け資料には全てに対応しているように書かれていましたが、実際は、合成洗剤で最も問題となる「水性環境有害性」の表示(左上絵)はされないなど、ごく一部だけの実施でした。
GHS情報は製品の有害性を絵表示等で使用者に提供する仕組みです。GHSを実施していて絵表示が無いことは、逆に相対的に安全であることを示していると大きな誤解を与えることにもなります。消費者庁、環境省などに働きかけを強め、本来の消費者向けGHS制度の早期導入を要求しましょう。
進まぬ放射能汚染物の処理と問題点
宮城県護憲平和センター 事務局次長 菅原 晃悦
汚染された稲わらや牧草などの扱いに苦慮
生活環境への放射能の漏えいにより、被曝による「健康への悪影響」が心配され、漏れだした放射能を一刻も早く「生活環境から隔離」することが求められているが、事故から2年を経ても今だ、課題として残されたままである。
全国的には、震災廃棄物(ガレキ)の広域処理が問題として論議されていたが、宮城県の中では、放射能で汚染された大量の「農林業系副産物(稲わら、牧草、ほだ木など)」の扱いに苦慮している。仮置き場の選定をめぐっては、行政と住民の対立、地域内での意見の違いなどがあり、なかなか決まらず、避けられるはずの「外部被曝」を受け続けている。
今年に入り、県当局から「放射性物質汚染廃棄物等の保管状況及び処理の方向性」が示された。農林水産業系廃棄物に限って紹介すると、「稲わらについては、平均で8千ベクレル/Kgを超えており、指定廃棄物として国の責任で処分をしていただく」「牧草やほだ木については、8千ベクレル/Kg以下であり、『自治体の既存焼却炉』で、『一般廃棄物に混合して焼却』する」が主な内容である。農家などが保管に苦慮する放射能汚染物を、早期に生活環境から隔離するための苦肉の策と思われるが、少なくても、①「対策への不信」の増加、②放射能の「生活環境への拡散」、③放射能汚染物の「隔離に時間がかかる」などの問題がある。
行政への不信感がさらなる風評被害を招く
(1)の「対策への不信」については、「一般廃棄物と混焼し、焼却灰を8千ベクレル/Kg以下にする」という手法は、食べ物に例えれば、「規制値を超えた食材を、他の食材に少しずつ混合しクリアする」ということである。こうした処分方法を選択する宮城県への不信感は増し、さらなる風評被害を招く危険性もある。
(2)の「生活環境への拡散」については、いくら苦慮しようと、「拡散した放射能を濃縮して管理する」という基本は変わらない。混焼した焼却灰が8千ベクレル/Kg以下であっても、一般廃棄物と同様に「埋め立て処分」とするのは、生活環境から回収した放射能を、改めて「生活環境に拡散」するということである。原発内の焼却炉と同じような対策を施して、既存の「焼却炉」で焼却するとしても、一般廃棄物とは区分けして焼却し、放射能で汚染された焼却灰は「指定廃棄物」として国に責任を持って管理、処分させることが必要である。一般家庭で保管している焼却灰の管理の問題にも影響するのであり、指定廃棄物の管理、処分を国に急がせることが求められる。
(3)の「隔離に時間がかかる」については、牧草(4万1千トン)、ほだ木(2万9千トン)などの保管には、外部被曝の悪影響が看過できず一刻も早い処理が必要だ。しかし、「一般廃棄物との混焼」では、時間がかかりすぎる。国は、指定廃棄物については、「焼却できない場合、仮設焼却炉等を設置」としているが、放射能で汚染された「大量」の農林業系副産物にあっては8千ベクレル/Kg以下も含めて「指定廃棄物」とし、「焼却せずに管理、処理」をさせる。もしくは、健康管理を徹底した専門の事業者によって速やかに焼却処理をさせ、「焼却灰」を「指定廃棄物」として、国の責任で管理、処理させることが必要である。
国は汚染データや処理方法を隠すな
こうした対策を求めていく上で障害となっているのが、「最終処分場問題」である。被曝を低減させる上で欠かせない最終処分場建設が、国の隠ぺい体質などが大きく影響し進んでいないからである。
住民理解を得るために必要なのは、低線量でも「健康への悪影響はある」との啓蒙であり、「各種汚染物の詳細なデータ、処理を必要とする根拠や処理方法などの全体像を隠さずに公表」すること。そして、「全原発廃炉へ向けた工程を示す」ことだと考える。
オスロで「核兵器の人道的影響の国際会議」
高まる核廃絶への期待
NPO法人ピースデポ スタッフ 金 マリア
各国政府、国際機関、NGOが一堂に参加
3月4日から5日にかけて、オスロでノルウェー政府主催による「核兵器の人道的影響に関する国際会議」が開催され、127ヵ国の政府代表と国連、赤十字国際委員会(ICRC)等の国際機関、各国のNGOが参加しました。開催の背景には、2010年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の「最終文書」以降、昨年の2015年再検討会議・第1回準備委員会や、国連総会第1委員会における議論を通して、国際的に核軍縮の人道的側面に対する関心が高まってきたという経過があります。
筆者は市民社会代表団の一人として本会議に参加しました。第1セッションは、「核爆発による人間への直接的影響」、第2セッションは「より広範囲な、経済、発展及び環境への影響」、そして、第3セッションは「国家、国際機関、市民社会の準備体制」がテーマでした。開幕セッションで市民社会のメンバーが発表したビデオ声明は、約5分間場内を粛然とさせ、全員が会議に真剣に臨むことを促す役割を果たしました。
第1セッションの発表が終わると、田中煕巳日本被団協事務局長が証言を行いました。時間はごく限られたものでしたが、田中さんの生の声が与える響きは長く感じました。第2セッションでは、旧ソ連のセミパラチンスクでの核実験による被曝二世のカリプベク・クユコフさんが発表し、歴史の経験にも関わらず核実験を続ける国々に向かって警鐘を鳴らしました。第3セッションでは、発表者が一様に「核爆発が起こった場合、どの国も十分な対応は不可能」という結論を示し、核廃絶の正当性を明確にしました。
閉幕セッションでメキシコが「フォローアップ会議を主催する」と表明したとき、場内が驚きと喜びに沸きました。その後、主催国への感謝とメキシコによる次回会議の主催を歓迎するメッセージが続きました。
福島原発事故も教訓に討議
閉会直後、成功を祝うノルウェーのアイデ外相(左から2人目)と 若い活動家たち(オスロ・3月5日) |
3月2日と3日にはNGO参加者による「ICAN市民社会フォーラム」が開かれ、約70ヵ国から500人余りの活動家が集まりました。第1セッションは「ビックバン!」というタイトルで、核兵器の科学的な原理や特徴、核兵器全面禁止の必要性と可能性について講演を聞きました。最後に、ノルウェーのグライ・ラーセン外務副大臣が登壇し、4日からの国際会議の議長として、同会議の意義や可能性などについて説明しました。また、市民社会フォーラムの両日、12時から2時半まではロビーで「マーケット・プレイス」が開かれ、参加者がランチのサンドイッチを食べながら、様々な活動を楽しみました。
第2セッション「破滅的な影響」では、実際に核兵器が使用されたときの被害について学びました。グリーンピースの放射線専門家リアナ・トゥールさんが「社会的な影響」ついて講演。福島原発事故の写真を見せながら、「コミュニティが放射能に汚染されたことによって、若者も自らの健康はもちろん、就職や結婚について心配している。また、政府や東京電力、あるいは国際団体からの情報が錯綜し、何を信じれば良いか分からず不安も多い」と、深刻な状況を伝えました。
第3セッション「条約の作成」では、核兵器禁止条約を作り出す方法を考えるために、クラスター爆弾禁止条約や対人地雷禁止条約、気候変動枠組み条約、そして武器貿易条約の交渉に関わった方々から学ぶ時間が持たれました。「実践!」というタイトルの第4セッションでは、新技術をキャンペーンに活用する方法などの新鮮なアイデアが提起されました。
その後、世界各地から来た10名の活動家が地元の活動を紹介しました。最後の夜には、オスロのシティーホールで「果たしてこの瞬間を忘れることができるか?」と題したコンサートが行われ、体中に染みわたる核兵器の恐怖と死の影が深い余韻を残しました。
今回のオスロ会議への期待は、当初は必ずしも高いものではありませんでした。しかし、127ヵ国の参加や、メキシコによる次回会議の主催表明など、予想を超える成果が得られました。市民社会と政府の緊密な協働、専門家の貢献、そして活動家の情熱が「人道」という正しい目的に基づいて一つになったとき、良い実が結ばれることが実感できた会議でした。
英国にプルトニウム処分委託?
原子力委員長代理の発言の背景
3月26日の原子力委員会定例会議で、鈴木達治郎委員長代理は、プルトニウムの「供給ありきという考え方からの転換」を促し、在庫量削減のために英国への所有権移動も含む「柔軟な利用計画」をと訴えました。英国は現在、海外の再処理顧客の28トンを含め、約112トンの民生用分離済みプルトニウムを保管しています。既契約分の処理を終える2018年までには、英国分だけで約100トンに達します。この処分のために、ウランと混ぜて「混合酸化物(MOX)」燃料を作る工場を新設し、同じく、新設予定の軽水炉でこの燃料を燃やすというのが英国の計画です(2015年までに経済的実現性が示されなければ、プルトニウムを廃棄物などと混ぜて地下に埋設処分する道も検討されます)。英国は、2011年12月、日本のプルトニウム約17トンも、同様の処分をしても良いと発表しました。お金を払って処分してもらってはというのが委員長代理の提案です。
英国政府は、2011年2月7日、プルトニウム処分計画の基本方針を発表し、5月10日までに得られた意見を集約して12月1日にほぼ同様の方針を発表しました。英国政府の発想を理解するため、2月の文書の一部を抜粋してみましょう。
高速増殖炉は予見できる将来には実現しない
「1950年代には、プルトニウムの分離は、軍事目的で行われた。1960年代には、化石燃料が枯渇すると考えられており、このプルトニウムを高速炉用に提供できると考えられた。なぜなら、高速炉は、いずれ、エネルギー問題への解決策となり得ると考えられていたからである。このため、高速炉に十分なプルトニウムができるようにするため、分離済みプルトニウムの蓄積量が、使用済み燃料の再処理によって増やされた。
しかし、最終的には、英国は1994年に高速増殖炉の研究のほとんどすべてを放棄した。予見できる将来に高速炉が商業的に実用可能となることはないことを理解したためである。我が国が蓄積したプルトニウムは、今も残っており、現在、高い安全・セキュリティー基準を充たすよう設計された施設で保管されている。しかし、今のところ、これを長期的にどう管理すべきかについての最終的計画は存在しない」
プルトニウムはセキュリティー・リスク
「2010年5月に開かれた『2010年核不拡散条約(NPT)再検討会議』は、いくつもの勧告について合意した。国際社会がこのようなステートメントについて合意したのは10年ぶりのことだった。合意には、核分裂性物質の管理に関するものも含まれていた。
これらの具体的な勧告は、プルトニウムなどの核分裂性物質のセキュリティーと核不拡散上の機微性[軍事転用可能性]の重要性を認識・再確認しており、この物質に関する英国の長期的戦略を策定するためのアップデートされた有力な基盤を提供している」
MOX利用は商業的オペレーションではない
「MOX燃料としてのプルトニウムの再利用は[埋設処分と比べ]ずっと成熟したオプションである。このため、米ロが『プルトニウム管理・処分協定』において、余剰兵器級プルトニウム管理用手段として採用しているのである。
~中略~MOX燃料は価値を持っている。プルトニウムをMOX燃料に転換するコストを相殺するのに、これを利用することができる。しかし、英国政府の現時点での予測は、現在のウラン価格においては、生み出される燃料の価値は、その製造にかかるコストより相当小さいだろうというものである。言い換えるなら、予見できる将来においては、MOXの製造は、主として、プルトニウムの在庫量を消費する道であって、それ自体が商業的なオペレーションではない」
論拠に挙げられた米国は計画を放棄
英国はこう考えてMOX利用方針を採用しましたが、米国のオバマ政権は、今年10月からの2014年度予算でMOX工場建設予算を大幅削減、2015年度にはゼロとする方針を示しています。英国でのMOX工場建設計画に影響を与える可能性があります。新しく建設される原子炉が何基になるのか、MOX利用を引き受けるのか否かも不明です。他のプルトニウム処分方法の検討が必要です。(田窪 雅文:ウェブサイト核情報主宰)
国際人権基準に違反する「高校無償化」からの朝鮮学校排除
大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター
客員研究員 師岡 康子
2012年12月28日、下村博文文部科学大臣は、拉致問題等を理由として、高校無償化法から朝鮮学校を排除する方針を発表し、2013年2月20日、文科省は高校無償化法の施行規則の改訂と全国10校の朝鮮高級学校の不指定処分を行った。
このような排除は、そもそも高校無償化法自体に違反する。同法の目的は「高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与すること」(第1条)であり、国籍等に関わりなく、すべての子どもが高校レベルの教育を受ける権利を保障しており、拉致問題などを理由に特定の学校に通う子どもたちを差別することはこれに反するからである。
人種などを理由とする差別を禁止
朝鮮学校への「高校無償化」の適用を求める集会 (3月31日・日比谷野外音楽堂) |
朝鮮学校排除は、第二次世界大戦における他民族虐殺への反省の上に形成され、差別禁止を最も重要な原則とする国際人権基準に違反している。まず、高校無償化法自体、社会権規約第13条2項bの定める、「種々の形態の中等教育」(中・高校段階)への「無償教育の漸進的な導入」により「すべての者に対して機会が与えられる」との条項を具体化したものだ。文科省はウェブ上で制度の必要性について、多くの国で後期中等教育を無償としており、社会権規約に中等教育における「無償教育の漸進的な導入」が規定されていることを挙げている。日本は1979年に批准した際は、この条項について留保していたが、今回の制度導入を踏まえて、2012年9月に留保撤回を行っている。
また社会権規約は、規約に規定する権利について人種、言語、政治的意見、国民的出身その他の地位によるいかなる差別を禁止する平等条項を有している(第2条2項)。社会権規約委員会が、規約の解釈に関する「一般的意見13」(1999年)で、「教育の分野において、いずれかの禁止事由に基づいて個人又は集団を差別する立法を導入すること」は第13条違反であると明言しているが、改訂省令はまさにこの条項にあてはまり、第2条2項及び第13条2項bに反すると言えよう。
次に朝鮮学校排除は、自由権規約第27条・子どもの権利条約第30条の保障するマイノリティの教育権の侵害にあたる。これらの条項は、民族的マイノリティに属する人々が、そのコミュニティの構成員とともに、自己の文化を享有し、自己の言語を使用する権利を保障しており、マイノリティ・コミュニティが自己の言語・文化を継承するための私立学校を作る権利を保障している。国連マイノリティの権利宣言第4条によれば、国はマイノリティの権利行使を妨害しない義務のみならず、支援する義務も負っているが、これらの義務に違反している。
また、自由権規約第2条1項、第26条及び子どもの権利条約第2条1項も、人種などを理由とする差別的取り扱いを禁止しており、朝鮮学校のみを排除することは、これらにも違反する。
さらに朝鮮学校排除は、人種差別撤廃条約に違反する。この点は、すでに高校無償化法成立前の2010年3月の勧告において、国連人種差別撤廃委員会から、高校無償化制度から「朝鮮学校を排除するべきことを提案している何人かの政治家の態度」が条約第2条及び第5条に反し、「子どもの教育に差別的な効果をもたらす行為に懸念を表明する」(第22パラグラフe項)と指摘されており、明白である。
オリンピック招致の資格が問われる
本年4月30日には社会権規約委員会による本審査、10月には自由権規約委員会による事前審査(本審査のための準備手続き)、来年2月には人種差別撤廃委員会による本審査、7月には自由権規約委員会による本審査が連続して行われるが、これらすべての審査において、日本政府による朝鮮学校排除が条約違反として批判され、国際的なひんしゅくを買うだろう。
東京都と日本政府は、2020年の夏季オリンピックの招致運動を行っているが、排除はオリンピック憲章の根本原則である「人種、宗教、政治、性別、その他の理由に基づく国や個人に対する差別はいかなる形であれオリンピック・ムーブメントに属する事とは相容れない」ことにも違反する。今年9月7日に開催地は国際オリンピック委員会(IOC)総会で決定するが、政策を改めない限り、その適格性を問われるだろう。
《各地からのメッセージ》
うちに向けては種まきを、外に向けてはつながりを
新潟県平和運動センター 事務局長 高野 秀男
|
新潟県平和運動センターは1999年12月に「新潟県労組会議」から名称を変えてスタートした。現在、16単産・単組、4万1千人で構成し、県内13の地域組織と連携している。心がけているのは「地域住民と連帯した新潟県評運動を次世代にきっちり引き継ぐこと」だ。
新潟は、ロシア、中国、朝鮮半島など日本海をめぐる国々と古くから交流があり、世界最大の柏崎刈羽原発を抱え、第二の水俣病を経験している。課題でいえば、反核・護憲平和の運動を柱に、原発の再稼働阻止、新潟水俣病全被害者の救済、朝鮮学校支援などに取り組んでいる。
センターとしていま最も力を入れているのが、次代を担う反原発/脱原発の活動家の育成だ。柏崎をはじめ県内でがんばっている活動家のほとんどが還暦を過ぎている。「原発」はこの先、世代・世紀を超えて対処しなければならない。3.11福島原発事故は、「専門家」に任せることなく市民それぞれが考えをめぐらせ自ら判断することの重要性を突きつけた。青・壮年層を対象にした『ワイズ・エネルギー・ライフ連続講座』(8回シリーズ)は今年で3期目。第1期から原子力資料情報室の山口幸夫共同代表に全面的な協力をいただいている。今期は福島でのフィールドワークも行う。
もう一つ、これから取り組もうとしているのが憲法改悪阻止に向けた超党派の県民共闘の設置。7月の参議院議員選挙の後、安倍政権は総力戦で改憲策を講じてくる。われわれがめざすのは憲法の理念を実現することで、憲法を現実にあわせることではない。96条「改正」が当面の争点になりそうだが、『憲法を活かす』の一点で県民の総結集をはかりたい。(写真は4月8日、平和フォーラム北信越ブロック沖縄連帯キャラバンで発言する新潟県平和運動センターの渡辺英明議長)。
【映画評】
福島 六ヶ所 未来への伝言
2013年/日本/島田恵監督 |
映画の予告編というのは、人々にその作品を観たいと思わせるための宣伝ツールであることは言うまでもない。しかし、短い予告編を観ただけで、その映像の力に圧倒されて、胸に熱いものがこみ上げるようなドキュメンタリー映画を、私の勉強不足もあるだろうが、多くは知らない。しかし、本作の予告編が短文投稿サイト「ツイッター」で紹介されているのを見つけ、真夜中にそれを再生したとき、私は眠い目をこすりながら、あふれるものを抑えることが出来なかった。
本作は、東京から六ヶ所村に移住し、12年間を過ごしたフォトジャーナリスト、島田恵さんの初監督作品。ある制作スタッフの方は、核燃料サイクル問題にゆれる六ヶ所村をファインダー越しに見つめ続けてきた島田監督こそ、「絶対に六ヶ所村の映画を撮るべき」と常々思っていたとのこと。それをいつか伝えるつもりだったというその方。監督の方から「手伝ってほしい」と切り出されたとき、言わなくても気持ちが通じていたと、うれしくなったそうだ。
制作中に東日本大震災・東京電力福島第一原発事故が発生。監督が六ヶ所村における核燃の問題を通じて訴え続けてきたことの一部が現実のものとなったとき、監督は完成に近づいていた本作の内容の変更を決断。予定より遅れて、今年2月に公開が始まった。
本作は、六ヶ所村の人々は「交付金欲しさに危険な施設を受け入れた」という見方に、事はそう単純ではなく、反対運動が潰され、親や兄弟が対立するような状況の中、人々はヒリヒリするような葛藤に苛まれてきて現在があることを教えてくれる。六ヶ所村で漁業を営む家族が、基準値を上回るセシウムが検出された魚を海へ捨てる場面では、上関原発の新規建設にゆれる山口県祝島のことも心をよぎった。
オープニングとエンディングで流れる加藤登紀子さんの歌声が、映像と相まって観る者の心に、「忘れないでほしい、知っていてほしい」と念押しするかのように響いてくる。放射能という負債を未来へ残さざるを得ない私たちの責任とは。全国で上映会が開催されることで、多くの人に観ていただきたい作品である。
(阿部 浩一)
報告書
「オスプレイ配備と低空飛行訓練を止めさせるために」
|
沖縄だけではないオスプレイ飛行訓練の全国展開と日本全土の米軍基地化に反対するため、平和フォーラムは、NPO法人ピースデポと協力して、オスプレイの訓練が予想される全国の自治体を対象に「低空飛行訓練に関するアンケート調査」を行いました。その報告を冊子にまとめました。今後の運動にご活用下さい。
体裁:A4判64ページ
内容:オスプレイ配備に伴う米軍機による低空飛行訓練に関する自治体アンケート(従来からの米軍機低空飛行訓練の把握や国への意見表明、オスプレイによる低空飛行訓練に対する自治体の状況認識や対応方針など
まとめと提言
頒価:300円(送料込み)
発行・問合せ:平和フォーラム(tel.03-5289-8222)