2011年、ニュースペーパー

2011年02月01日

ニュースペーパー2011年2月号



 平和フォーラムの藤本泰成事務局長(写真右端)は、1月5日から10日まで、斎藤つよし衆院議員(民主党、右から2人目)、玉城義和沖縄県議会副議長(左端)らとともに訪米し、ワシントンで米政府、議会の要人と沖縄の米軍基地問題などで意見交換を行いました。政府官僚からは、普天間基地の辺野古移設が必要との見解が示されましたが、厳しい国家財政の中で、米国が世界の警察の役割を担うことをやめてその財源を国内に向けるべきとの意見も強くなっています。その中心となっている元歳出委員長のバーニー・フランク下院議員(民主党、左から2人目)とも懇談しました。

【インタビュー・シリーズ その54】
生活の安心・安全へ公共サービスの再構築を
全印刷局労働組合 書記長 宇田川 浩一さんに聞く

【プロフィール】
埼玉県出身。1958年生まれ。77年4月大蔵省(当時)印刷局滝野川工場に入局。83年10月、全印刷局労働組合・滝野川支部執行委員を皮切りに、本部執行委員・支部の書記長・副委員長・委員長を歴任し、08年3月から全印刷中央本部書記長。
妻・子(2人)の4人暮らし。趣味はゴルフ、アウトドア。好きな言葉は「誠意」。

――印刷局の仕事について、どのようなものか教えてください。
 銀行券(紙幣)印刷が、業務の主力となっています。その他、パスポートや収入印紙・収入証紙、切手の印刷を行っています。また、国会の議事録や官報も扱っています。印刷局の工場は虎ノ門、滝野川、王子、小田原、静岡、彦根、岡山の七つあります。
 お金と言うと造幣局というイメージがあると思いますが、銀行券(紙幣)は、紙の製造から印刷まで、全て印刷局が行っています。それを日本銀行に納入しています。銀行券は日銀が発行元です。一方、硬貨(貨幣)は、造幣局が造っています。こちらは日本国(政府)が発行元です。

――経済の根幹に関わる大変なお仕事ですね。
 ですから、製造するときは品質保証の制度を高める必要があります。また、並行して研究開発も行っています。偽札が出回ると経済と社会が混乱する恐れがありますから、偽造防止技術は、最も重要なものです。今流通している銀行券は、2004年11月に約20年ぶりに改定したものですが、昔は目で見て、肌で触るというのが偽造防止の主体だったのに比べ、デジタル化された今では「見えない」形での偽造防止技術をかなり導入していることが特徴です。
 そのような努力があるからこそ、偽造券が出にくいのです。例えば日本で偽造券が出る確率を1とすると、イギリス・ポンド券は1,496にもなります。さらに偽造券が出ても、使われる際にほぼ発見されるのでほとんど出回らず、流通が止まるようになっています。日本が現金主義ということもありますが、1万円札などの高額紙幣が、国民に信用されて流通しているのは、日本の紙幣に対する信頼性の高さによるものではないでしょうか。

――最近、独立行政法人化されたようですが、影響はありましたか?


原水禁大会にも毎年積極的に参加
(昨年8月・広島平和公園)

 印刷局は、1871年に「大蔵省紙幣司」として出発しました。その後、組織改組を経て、「財務省印刷局」であったのを国の行政改革により、企画部門と現業部門を分離することになり、2003年4月に「独立行政法人・国立印刷局」になりました。現在104の独立行政法人がありますが、印刷局は職員が国家公務員の身分を持つ「特定独立行政法人」の一つです。
 もともと特別会計制度の下で運営されていましたので、独立行政法人になってもシステム自体はさほど変わっていませんが、組織や事業の見直しが毎年行われるなど、日本銀行券の安定的製造という印刷局の使命からみると問題があると言わざるを得ません。さらに今までの定員管理から変わって、人員削減の動きがいっそう顕著となっています。しかし人員削減したその分機械化すればいいかと言えば、製品の精度を保証するためには人間の目によるチェックが必要となりますから、働き方にも影響は出てきます。
 市場原理万能の民営化論も一部には存在します。第一次の事業仕分けの対象になったのですが、実際一部の委員からは「銀行券も入札方式でより安くできるようにしたらどうか」という声もありました。今回は大勢の意見を受けて、通貨は国が管理すべきだろうという報告になりました。私たちは公務員なので守秘義務が課せられますが、民間だとそれがなくなり、高度な偽造防止技術が流出してしまう恐れがあります。
「民でできるものは民で」という小泉政権以来の路線の中で、事業全体が縮小されました。しかし、私たちは単に他のセキュリティ製品を取り扱うのではなく、国債やパスポートなどの印刷で偽造防止技術を活用し、国民生活の安定に寄与していると考えています。

――そのような流れの中でどんな取り組みをされていますか?
 独立行政法人化以降は人員削減で、毎年の新規採用が減少していることもあって、40歳代より下の世代が少なくなっています。再任用、定年延長との兼ね合いもありますが、印刷技術の伝承という面でも課題になっています。仕事が増える一方で、そういう人員的な余裕がありません。また、若い人たちの中では悩みを抱えてもなかなか自分から相談ができず、精神的に落ち込んでしまう人が増えています。どこの職場でも共通する悩みだと思いますが、メンタル面のケアが課題になっています。
 そういう点において、労働組合が果たす役割が重要です。最近私たちが掲げている方針として、「ディーセントワーク」の実現があります。同じ仕事をするにしても、人間にあった働き方、職場環境を求めよう、と打ち出しています。働き甲斐やモチベーションがあってはじめて、実力以上の仕事ができるのではないかと思います。
 小泉政権以来の、お金のある人ばかりが得をするような政策の下で犠牲になったのが、公共サービス、公務労働です。「税金の無駄遣い」ということで公共サービスの縮小や見直しが行われて、国民生活全体に大きな影響を与えました。一律的な削減には反対していかなくてはなりません。全印刷としては、公共サービスの再構築を掲げています。私たちは直接国民の皆さんと接する窓口的な仕事ではありませんが、経済や社会の安定のためには、重要な役割を持つ公共サービスだと思いますので、積極的に取り組んでいきたいと思っています。

――平和運動についてはいかがですか?
 全印刷独自の取り組みはなかなかでききれてはいませんが、平和フォーラムが呼びかける運動などには積極的に参加するようにしています。とりわけ毎年7月から8月にかけては「反戦平和強化月間」と位置づけて、青年・女性部などを中心に映画の上映会や学習会、門前でのビラ撒き行動などを行っています。昨年は原爆の図「丸木美術館」で青年・女性セミナーを開催しました。ですから平和問題に対する意識は、組合員一人ひとりがしっかり持っていると思います。また、沖縄平和行進や原水禁大会にはできるだけ一回も行っていない人たちを派遣し、必ず感想を機関紙に掲載しています。自分でそういう行動に参加する機会は少ないですから、かなりいろいろなことを感じて帰ってくるようです。
 私自身、多忙で昨年20年ぶりくらいに原水禁大会に参加したのですが、今回改めて平和の重要さを感じました。意外と若い人をはじめ多様な人たちの参加が多く、平和運動もまだまだ大丈夫だなと感じました。原爆被害の語り部の方たちにもお話を伺ったのですが、「10年前までは思い出したくもなかったけれども、このままだと話す人もいなくなってしまうし、理解できる人もいなくなってしまう。同じ過ちを二度と繰り返さないためにも体験したことを伝えなくてはならない」とおっしゃっていました。平和運動を拡げていくことの必要性を感じています。
 平和の大切さは当たり前のことだから、かえってあまり意識の上に出てこないのですが、しっかり取り組まないと風化してしまいますから。

〈インタビューを終えて〉
 日本の紙幣技術の精度の高さが、1871年以来連綿と積み上げられてきた技術の集積によるものだと改めて知りました。印刷局の独立行政法人化以降の問題には、国や社会が実は取り返しのつかない方向に歩み始めているのではないかとの危惧さえ覚えました。先輩から後輩へ受け継がれる技術、それは機械に替えることの難しいもの。宇田川さんの話には、その誇りと技術を失うまいとする信念を感じました。青年部の平和の取り組みに感謝し、そして私たちが日々使う紙幣の裏にある努力にも感謝します。
(藤本 泰成)

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防衛計画の大綱と日米安保を検証する
対話と協調による「共通の安全保障」の実現を

 2010年12月17日、政府は「平成23年度以降にかかわる防衛計画の大綱について」(防衛大綱)、及び今後5年間にわたる総予算額23兆4,900億円の「中期防衛力整備計画」を閣議決定しました。また、日米両政府は在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を現行水準で5年間継続することにも合意しました。
 中国の軍事力拡大や尖閣問題、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の砲撃事件など北東アジアの緊張を理由に、新しい防衛大綱では専守防衛から「脅威に対する動的防衛力」を基本に据え、在日米軍基地の安定利用を保障し、軍事的な抑止力を強めようとしています。

基盤的防衛力構想を基本とした過去3回の防衛大綱
 防衛大綱は、これまで1976年(三木内閣)、95年(村山内閣)、04年(小泉内閣)に策定され、今回で4回目の策定となります。
 76年に策定された最初の防衛大綱では、冷戦時代を背景としつつも「米ソの全面戦争は起きない」と規定し、「日米安保を継続しながら膨張する防衛予算を抑制する」ことを目的に「基盤的防衛力構想」という考え方が打ち出されました。これは仮想敵国の侵略を想定し必要な防衛力を整備するそれまでの「所要防衛力構想」を否定し、専守防衛を明確にし、憲法と防衛政策をぎりぎりのところですり合せようとするものでした。また防衛費のGNP1%枠もこのとき決定されました。
 95年では、基盤的防衛力構想という基本方針は踏襲されましたが、冷戦後の不安定な国際情勢を理由に周辺地域の安全保障や自衛隊の大規模災害対処など国外活動に道を開き、専守防衛が次第に危うくなりました。
 04年は、01年の9.11同時多発テロに伴う国際環境の激変を受け、大量破壊兵器の拡散や国際テロへの対処など、基盤的防衛力構想の有効部分は維持しつつ、抑止から対処重視に転換されました。また06年には自衛隊の海外派遣を通常任務とする法改正も行われました。なお、5年程度で見直しを検討するとされました。

専守防衛を崩し、動的防衛力に転換した新防衛大綱


南西諸島の防衛強化が強調(写真は海上自衛隊)

 そして2010年、菅内閣による防衛大綱は、これまでの「基盤的防衛力構想」を否定し、脅威に対処する「動的防衛力」を基本に据え、専守防衛の枠組みが事実上空文化する大きな転換となりました。ここで言う脅威は言うまでもなく中国であり北朝鮮です。防衛大綱では、南西諸島の防衛強化と自衛隊配備、日米共同演習や自衛隊基地と米軍基地の相互使用や共同使用なども日常化されるとともに、アジア太平洋地域の安全保障に向けた防衛力を構築するとされています。専守防衛を基本理念とするとありますが、実態は限りなく集団的自衛権の行使に近づくものと言えます。また武器輸出三原則の見直し問題は、ねじれ国会などの政治的判断で先送りされましたが、これも「理念は尊重するが現実的には見直す」とする動きが強くあります。

米国防政策の見直しと日米同盟の変質
 日米安全保障条約 は、「日本の施政下にある領域を日米両国が共同防衛し、米軍は極東の平和と安全のために基地使用ができる」(第6条)というものです。米国の核抑止力と世界一の軍事力で日本の安全が守られ、日本は基地機能を提供するという関係になります。しかし、米国側にとって日米安保は、冷戦時代には対ソ戦略の防衛ラインであり、ベトナム戦争時には出撃・補給基地となり、9.11同時多発テロ後のアフガニスタン、イラクへの侵攻などアジア太平洋地域から中東も含む米国の軍事展開に不可欠な役割を果たしてきました。日本の防衛は一部であり、米政府の世界戦略、国防政策が基本にあることは言うまでもありません。
 07年、日米両政府が合意した「同盟の変革:日米の安全保障及び防衛協力の進展」では「極東の平和と安全」を超えて、アジア太平洋、インド、アフガニスタン、イラン、イラク、そして北大西洋条約機構(NATO)も含む安全保障に協力するとされ、日米安保=日米同盟は当初の枠組みから大きく変質しました。
 そして今回の防衛大綱に示された、「動的防衛力」という踏み込んだ考え方は、日米安保の拡大や変質と関連し、米国防政策とも密接に連携するものと言えます。
 米国は昨年2月、4年に一度の国防政策の見直し(QDR)を行いました。9.11同時多発テロ以降、米国はアフガニスタン、イラクに侵攻しましたが結局失敗し、泥沼化しました。ブッシュ前政権時代の単独行動主義は、「成果」が上がらないと同時に膨大な戦費負担を生み出し、米軍再編が加速される結果となりました。昨年のQDRは、こうした流れの中で、テロも含めた多様な危機に米国だけではなく同盟関係を生かし、多国間で対処する戦略が位置付けられています。
 日米安保も有力な同盟関係の一つであり、約5万人の米軍が日本に駐留し、大半の基地が沖縄に集中しています。世界に展開する米軍の規模は約20万人なので、在日米軍と突出した額の思いやり予算は米国防政策にとって重要な位置を占めています。06年には在日米軍基地の再編に向けた日米ロードマップで、長期間の日本駐留とグアムの戦略拠点化が確認されました

 世界規模で展開されているアメリカの国益を最優先する米国防政策の見直しと、極東からアジア太平洋、インド、中東まで広がる日米安保、北東アジアの脅威に対処する防衛大綱は、日米同盟の深化の名のもとにQDRを補完する役割を果たしています。

新たな冷戦を生み出す軍事演習


日本海での日米共同統合演習の様子
(10年12月3日~8日)

 昨年11月28日から12月1日まで、米韓両国は朝鮮半島西側の黄海で大規模な合同軍事演習を実施しました。北朝鮮による韓国・延坪島(ヨンビョンド)砲撃に対して軍事的抑止を強めるためのものです。黄海での米韓軍事演習は、北朝鮮に対する抑止力誇示だけでなく、軍備を増強し沿岸海域への影響力拡大の動きを見せている中国をけん制する米国の意図もあり、これに対して中国も反発しています。この軍事演習には原子力空母「ジョージ・ワシントン」やイージス艦、哨戒機P3Cなども参加する大掛かりなものです。韓国には米海軍艦隊がなく、これらの艦船はすべて日本から出港するわけで、日本もこれを支えていることになります。
 また12月3日から8日間、自衛隊と米軍による過去最大規模の日米共同統合演習(実動演習)が日本各地の基地と周辺の空海域で実施されました。ジョージ・ワシントンも加わり、韓国軍が初めてオブザーバー参加するなど、日米韓3ヵ国の同盟関係が形づくられました。ちなみに菅内閣の閣僚も、演習期間中は「不測の事態に備え都内に待機する」といった対応で、平和的な解決に向けた動きは読み取れません。
 そもそも黄海周辺は朝鮮戦争休戦後も、軍事境界線が定まらず、半世紀以上にわたって緊張関係が続いている海域です。北朝鮮との国交はもちろん、対話も無い中で緊張関係を放置してきた歴史的経緯を認識し、本来は平和的手段で緊張緩和に向けた努力をする以外に解決の道はありません。しかし日本政府はこれと逆行し、むしろ敵対関係を強めています。一方、米政府は6者協議を通じて北朝鮮との対話の道を探り、中国の胡錦濤主席が1月、訪米することになっています。全面戦争は回避しつつも核を含む軍事的抑止力を強める北東アジアの「新たな冷戦」の一部に日米安保や防衛大綱も組み込まれてきました。

「沖縄」から北東アジアの緊張緩和へ
 北東アジアの軍事的な抑止に頼る安全保障は、軍縮という世界の潮流に反して、核を含む軍拡競争の悪循環を生み出しています。一昨年誕生した新政権のマニフェストには、対等な日米同盟関係と日米地位協定、米軍基地の見直し、北東アジアの非核化とともに東アジア共同体の構築が提起されています。しかし、新政権下による防衛大綱の転換、日米同盟の深化、沖縄普天間基地問題における日米共同声明を見る限り、当初の方向とずれ始めていると言わざるを得ません。
 政府は、沖縄の負担軽減と言いながら普天間基地問題で日米合意の方針は変えないとしています。さらに、防衛大綱で沖縄を含めた南西諸島の防衛強化、日米同盟の深化を進めるとしています。しかし、沖縄県民の強い反対で辺野古に新基地をつくるめどは立っていません。沖縄の負担軽減は米軍基地機能の縮小、撤去以外にありません。そしてこのことは北東アジアの緊張緩和につながります。普天間基地の閉鎖・返還、辺野古新基地建設反対、沖縄から「共通の安全保障」をめざす取り組みを強めていかなければなりません。
 北東アジアの緊張の根源は、安全保障を軍事的抑止力に頼る考え方です。多国間の対話と協調で利益を共有し、共通の安全保障(コモン・セキュリティ)をつくりだしていかない限り平和は実現しません。

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ワシントンで平和のための要請行動
安全保障の議論を日米間で進めよう
平和フォーラム 事務局長 藤本 泰成

 1月5日から10日まで、斎藤つよし衆院議員、玉城義和沖縄県議会副議長、青葉博雄・平岡秀夫衆院議員秘書の4人でワシントンを訪問し、米政府・議会の要人と意見交換を行いました。

「相互の自由意思」でできた日米合意?
 「日米政府で合意したと聞いています。合意に基づいて日米両政府で解決することを希望しています」「しかし、その合意には沖縄県民の意見が反映されていません」「県民の意志が尊重されるか否かは日本国内の問題ではないでしょうか」。ハワイ州選出で日系人のメイジー・ヒロノ下院議員は、「沖縄からの移民がハワイには多くいます。大田昌秀知事の時代から沖縄の現状は聞いています」としながら、普天間問題での私たちの問いにそう答えました。こうした意見が米国議会内での一般的な認識ではないかと感じました。
 私たちから見れば、米国の大きな圧力によって押しつけられた「日米合意」と見えるものが、米国からは相互の自由意思によってつくられたものと受け取られています。その内容は、合意から15年かかってもなお実現できないものであり、沖縄の現状と県民の思いに対する、米国議会の理解の深化こそが重要だと思います。ロン・ポール議員の補佐官は、「辺野古は自然豊かな場所と聞いている。私たちは日本の皆さんの考え方に触れる機会が少ない。議会の行政への監視という視点からも重要である」と、合意が進まない理由を議会で追及してほしいという私たちの声に応えました。

米軍の前方展開は国際平和に寄与しているのか
 オバマ政権は厳しい財政状況にあります。多くの議員が雇用の回復が、再選に重要な要素であるとしています。バーニー・フランク民主党下院議員とロン・ポール共和党下院議員が中心となり、2010年10月13日、軍事費の大幅な削減を要求する書簡を財政責任・改革国民委員会(National Commission on Fiscal Responsibility and Reform)に送りました。この書簡には、57人の上下院議員が賛同しています。書簡では、1)国防総省の予算は、連邦政府予算の任意支出(義務的経費を除く)の約56%であること、2)2001年から予算支出増加分の約65%であることなどを指摘しながら、国家の安全の後退やテロ対策費の削減、現役・退役軍人の予算削減なしに軍事予算の削減は可能だと指摘し、そのためには、米軍の前方展開の規模を縮小すべきであると主張しています。
 私たちは、元下院歳出委員長のフランク議員と懇談し、在日米軍の必要性について議論しました。その中で、フランク議員は「在沖米海兵隊15,000人は何の抑止力にもならない」と明言、ポール議員の補佐官は、「私たちの国防予算削減要求が極めて衝撃的に受け取られており、米国の安全保障体制見直しの議論が必要」と強調しました。財政問題からの国防議論ではあるものの、国際平和に寄与しているのかどうか、在日米軍のあり方が米国内で検討されることは重要です。

変化する米国議会の後押しを
 マイク・モチヅキG・ワシントン大学教授やケント・カルダー・ライシャワー東アジア研究所所長など、日本に注目する研究者たちは、15年前の辺野古案に戻った合意の達成は極めて困難であり、早急にそれに変わる検討を行うべきと指摘し、米国内に受け入れる要素があるとしました。私はこれらの指摘が極めて重要だと強く思いました。国務省と国防総省の日本部長は合意に加えて、在日米軍のプレゼンスを北朝鮮・中国の脅威の中では変更できない、普天間基地の移転は沖縄の海兵隊の能力の維持が前提との強い認識を示しました。米国内では、日米韓のこれまで以上の強い協力が必要との立場が優勢で、前原誠司外相や北澤俊美防衛相は、米国の要請の中で行動しているように思えます。
 訪米中に、ゲーツ国防長官が国防費の削減を提起しました。削減幅は要求にほど遠いとしていますが、議会はおおむね好意的に受け取っているのではとの印象を持ちました。日本政府は、向こう5年間の思いやり予算の水準確保について米国と合意しましたが、その議論は国民には見えていません。頭を垂れ、金を出し、「日本の安全保障は日米安保が基本」としている間に、米中の協力体制が形成されていくように思います。米国議会の「米軍の前方展開は不必要」との議論を後押しするような取り組みが必要です。
 今回の要請行動の内容は、平和フォーラムのホームページに掲載しています。

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こんなにある「TPP」への疑問・問題点
農業だけではなく、広範な分野に影響が

 政府は昨年11月9日の閣議で「包括的経済連携に関する基本方針」を決定。日本は他国との自由貿易協定(FTA)の取り組みが遅れているとして、すべての品目で自由貿易を推進するとしています。特に焦点となった環太平洋連携協定(TPP)については「情報収集と国内の環境整備を進めるとともに、関係国との協議を開始する」としています。「参加」を前提としていないとされていますが、菅直人首相をはじめ政府首脳は、6月にも参加を表明すると伝えられています。
 経済界やマスコミなどはTPPへの参加を求めていますが、農業団体や自治体では逆に反対の声が高まっています。TPPをめぐる動きや問題点を考えます。

アメリカの狙いはアジア市場確保と中国


北海道岩見沢市内で開かれたTPP反対集会(11月9日)

 TPPはシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4ヵ国が06年に発足させたFTAです。この協定参加国の間では農産物を含む全ての物品を例外なく関税を撤廃することになっています。小国だけの協定が注目されるようになったのは、米国が09年に参加を表明してからです。さらに豪州などを含め、現在9ヵ国で交渉を進めています。
 経済界は「交渉に乗り遅れると世界の孤児になる」と言っていますが、日本はこの9ヵ国のうち、6ヵ国とはすでにFTAを結び、締結していないのは米国と豪州くらいです。また、東南アジア諸国連合(ASEAN)とその各国とも経済連携協定(EPA)を結び、今後、ASEANに中国や韓国を含めたアジア全体の経済連携をどうするかの論議を重ねてきました。
 こうした流れは米国から見れば、今後の経済成長が期待されるアジアから排除されることになります。また、経済や政治的に存在感を増している中国へのけん制も必要です。そのために米国はTPPを利用しようとしているのです。中国や韓国等はこうした米国主導のTPPと距離を置いています。マスコミが言う「TPPだけが世界の流れ」とは必ずしも言えません。
 菅首相などは「第3の開国」と言っています。しかし、日本の関税率は全品目平均3.3%と世界で最も低く、農産物でも平均は12%程度で、これも世界的にかなり低い水準です。どこに「鎖国」があるのでしょうか。むしろ、低い農林水産物の関税が、世界的にも最低水準の食料自給率(現在40%)を招いてきたのです。

多くの自治体は「反対」─性急に参加を決めるな
 もし、日本がTPPに参加した場合は、特に農業への打撃が大きくなります。農水省の試算でも生産額は現在の半分にまで減少し、食料自給率は14%まで低下すると予想されています。農林業の崩壊は環境や国土保全、生物多様性などの多面的機能を著しく損なうことにつながり、地域経済への影響も大きく、都市と地方の格差拡大、過疎・過密をさらに促進することになります。こうしたことから、自治体では「TPP参加反対」や「慎重な対応」を求める意見が高まり、すでに39の道府県議会が意見書や決議を採択しています。
 今後は世界的に食料需給のひっ迫が予想され、現在もロシアなどで穀物の輸出禁止措置が取られ、食料の国際価格は過去最高になっています。こうした情勢を背景に、政府は昨年3月に「食料自給率を10年後に50%に引き上げる」方針を決定しましたが、TPPはこれに逆行することになります。
 TPPは農業・食料以外に、金融、公共サービス、労働者の移動など多様な内容を持っていますが、ほとんど論議されていません。米国の狙いは農産物よりも金融や公共サービス分野にあるとも言われ、「医療に外資が入り混合診療が全面解禁されれば公的社会保障が後退する」と日本医師会も懸念を表明しています。
 このようにTPPは多くの疑問や問題点を抱えており、正確な情報や分析がなされない段階で性急に参加を進めるべきではありません。平和フォーラムは農民・消費者団体などと幅広く連携し、国内農業基盤の維持強化によって食料自給率向上と食料安全保障の確保を図るよう求めていきます。

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脱原発への政策転換をめざして
原子力政策決定の現場で論陣を張る
原子力資料情報室 共同代表 伴 英幸

原子力政策大綱の見直しを求める声
 「破綻したプルトニウム利用―政策転換への提言―」(緑風出版)を刊行したのは昨年6月でした。これは原水禁と原子力資料情報室でまとめて世に問うたものですが、この中で6項目の「核燃料サイクル政策の転換を提言」しました。その第1項目が「原子力政策大綱の改定」でした。原子力委員会は昨年7月から見直しの必要性について、有識者23人に対して意見聴取を行い、「ご意見を聴く会」を福井市、青森市、東京の3ヵ所で主催し、市民から意見募集を実施してきました。私は7月の第40回原子力委員会で意見陳述しましたが、その際、上記の本の提言を意見書に載せました。
 福井市では、原発反対福井県民会議の小木曽美和子さんが意見を述べました。また、一般からの意見募集では、1,205人から1,520件の意見が寄せられました。原水禁と原子力資料情報室も改定を求める意見の集中を呼びかけました。こうした声が功を奏して、昨年12月から改定作業が始まり、私は前回に続き、新大綱策定会議(新策定会議)の委員に選任されました。

原発推進は温暖化防止につながらないことを主張


2006年出版の「原子力政策大綱批判」

 新策定会議は、議事録の作成までは会議の映像をホームページ上で速やかに公開する、配布資料は会議当日のうちに公開し、市民からの意見を常時受け付けて議論に反映させるという点が新しい試みです。
 読者のみなさんも、原子力委員会のホームページから意見をお寄せください。脱原発の立場は少数派ですから市民の意見は重要です。第1回会合から第2回会合(1月14日)までの間に11件の意見が寄せられましたが、すべて原発推進に反対する意見でした。私にとって勇気づけられる力強い支援となります。
 新策定会議で想定される推進基調は、1)温暖化防止に原子力をいっそう活用する、2)原子力輸出に官民挙げて積極的に取り組む、3)核燃料サイクルでは使用済み燃料の中間貯蔵の推進、高速増殖炉開発の継続、4)高レベル放射性廃棄物の処分場へ国からの申し入れへの道筋などだと推察しています。これらに対して、上記の提言に沿った論を展開していきたいと思います。
 特に、原発と核燃料サイクルに焦点を当てて書きます。経済産業省は昨年6月、「エネルギー基本計画」をまとめ、温暖化防止を口実に2030年までに14基の原発新増設をめざし、設備利用率を90%に高めると踏み込んでいます。これに対し、再生可能エネルギーは最大限の導入をめざすという抽象的な表現に留まります。
 原子力を中心に据えていてはCO2排出削減につながらないことを新策定会議で、かなり丁寧に主張しました。そして、原水禁エネルギープロジェクトがまとめた提言「持続可能で平和な社会をめざして」を委員に配布して、省エネルギーを基本に再生可能エネルギーを基幹とするように政策転換を進めるべきとのメッセージを発信しました。3月ごろまではエネルギーと原子力に関する話が続くので、この主張をさらに補強していくつもりです。

核燃料サイクルからの撤退を訴えていく
 核燃料サイクルでは破たんの様相がいっそう明瞭になってきています。六ヶ所再処理工場は国産技術であるガラス固化処理でつまずいたまま数年が経過しています。日本原燃の対応は付け焼刃でしかなく、2012年10月の竣工は誰も真に受けていません。経年で施設の老朽化は進み、トラブルが増えると考えられます。
 高速増殖炉「もんじゅ」は改良工事入りしたとは言いながら、警報装置のトラブルが相次ぎ、かろうじて出力0%の炉心確認試験を済ませたものの、燃料交換に使う炉内中継装置の落下事故によって、次の段階の試験は半年以上延期されました。他方、もんじゅは一昨年、昨年と二度にわたって事業仕分けの対象となりました。
 核燃料サイクルの議論は3月ごろとなりますが、前述の書籍「破綻したプルトニウム利用」で行った提言に沿って、再処理、高速増殖炉、プルサーマルなどからの撤退を主張していきます。加えて、再処理の総合評価を現時点で再度行うことも求めていきたいと考えています。

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核問題、世界はどう動くのか
不透明な状況が続く米中関係

2011年、核軍縮は膠着した状況で幕開け
 2010年が核軍縮への期待でスタートしたのに対し、今年は核兵器をめぐってどう展開するのか、不透明な幕開けとなりました。
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核問題はこじれたまま越年しましたが、今年に入って、北朝鮮は無条件で南北対話の早期再開を提案しました。しかし延坪島(ヨンビョンド)砲撃に責任ある措置を求めている韓国は、1月5日に訪韓した米国のボスワース北朝鮮担当特別代表らとの会談で、6ヵ国協議再開には南北関係の進展が必要だとしながらも「良い条件とタイミングが必要」として、簡単に応じる気配はありません。
 しかし、このまま膠着した状況が続けば、北朝鮮の核兵器開発が進むことは確実で、ゲーツ米国防長官も北朝鮮の核ミサイルは「5年以内に米国の直接の脅威になる」と危機感を表明しています。結局、朝鮮半島核問題を切り開く鍵は米国にあって、その米国がどう動くのか。1月18日~21日の胡錦濤・中国国家主席の訪米で、新しい展望が開けることを私たちは期待するものです。

米中協調の一方で新たな軍拡の動き
 現在の米国は極端な財政危機の中にあり、経済は中国に頼らざるを得ません。当然軍事的にも中国との協調が求められます。こうして今年1月、ゲーツ長官は3年ぶりに中国を訪問しました。しかし中国人民解放軍はゲーツ訪中に合わせて、次世代のステルス戦闘機「殲20」の試験飛行を行い、軍事力のさらなる進展を誇示しました。
 これに対する米国は、ゲーツ長官が訪中前の1月6日に記者会見を行い、2012年会計年度(11年10月~12年9月)から5年間の国防予算を780億ドル削減の発表とともに、部隊の統廃合、装備調達の効率化などで1千億ドルを捻出し、この費用で核兵器搭載可能な無人偵察機の開発やミサイル防衛など、優先順位の高い部門に集中的に投資すると語りました。
 米国が新しく開発する核搭載可能な無人長距離爆撃機は、昨年1月に米国が発表した「4年毎の国防見直し」(QDR)で強調された、「アンチ・アクセス環境下―接近攻撃できない状況での戦闘」に対応する、今後の米空軍の中心となると位置づけられています。
 米中間では協調の一方で、熾烈な軍拡競争が始まりつつあると言えます。

核なき世界へ向けた取り組みは続く
 1月6日、一部マスコミで中国人民解放軍の戦略核ミサイルを扱う部隊「第2砲兵部隊」で、「核保有国との戦争で、国家存続の危機に置かれた場合、核兵器先制使用を検討する」との理論を部隊内で周知していると報じました。これは中国政府が、これまで「いかなる状況下でも、核の先制使用はしない」と発表してきた立場の変更ではないかと言われています。
 しかし中国の核先制使用論は、核ミサイル保有国から通常兵器で攻撃され、戦況が国家存続の危機に直面した場合と限定しています。これまで中国が言明してきた「いかなる状況下でも」核先制攻撃はしないという立場からは外れますが、米国を始め他の核保有国も、核保有国に対しては一度も核先制使用をしないと言ったことはありません。
 中国の洪磊(ホンレイ)外務省報道官は翌7日、「中国はいかなるとき、いかなる状況でも核先制使用はしないと厳粛に約束している」「報道は根拠がなく、他に魂胆があるものだ」と語っています。確かにマスコミ報道は昨年来の反中国路線に乗ったものと言えます。
 しかし、核ミサイルを保有する国は、核ミサイル配備のその日から、一部の戦術核を除いて、標的に照準を合わせて配備しているという現実があります。私たちは昨年5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、最終文書が作成される課程で、多くの原案が核保有国の抵抗で訂正・削除されたことを思い起こすべきです。
 それでも最終文書の冒頭では「すべての国は『核兵器なき世界』を達成するという目標と完全に一致する政策を追求することを約束する」と述べています。これは私たちの希望です。私たちはこの目標に向かって、運動を広げていかなければなりません。そして日本では「核の傘」からの早期な離脱が求められています。
 しかし2011年を迎えて、日本は軍縮とは逆の方向へ向かいつつあります。1月5日にはアジア太平洋からインド洋に及ぶ安全保障問題を討議する「日米印戦略対話」創設を決定。1月10日には日韓防衛相会談がソウルで行われ、日米物品役務相互提供協定(ACSA)、軍事情報保全に関する規則を網羅的に定める軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の締結に向けた協議入りに合意しました。昨年12月に政府が閣議決定した「新防衛大綱」「中期防衛力整備計画」などに対する、私たちの運動はまだまだ続きます。

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《各地からのメッセージ》
反戦・平和、憲法擁護、選挙闘争など幅広い運動を展開
宮崎県平和・人権・環境労働組合会議 事務局長 中別府 畩治

 昨年11月6~8日の日程で「第47回護憲大会」を宮崎市で開催させていただきました。県内外から2,500人を超える参加があり、所期の目的を達成できたのではないかと考えています。各県運動組織・中央団体、そして平和フォーラムの皆様に改めて感謝を申し上げます。
 宮崎県労組会議は、自治労など単産・単組の他、I女性会議などの民主団体で構成し、県内9地区労組会議やいくつかある共闘組織と連携し平和・人権・環境に関わる幅広い運動に取り組んでいます。
 米軍再編に伴う移転訓練が航空自衛隊新田原(ニュータバル)基地で2007年9月に初めて実施され、これまでに4回強行されています。労組会議と社民党とで結成している「日米共同訓練反対県民共闘会議」はその都度反対集会を基地前で開催し、抗議と県民へのアピールを行ってきました。
 また、昨年12月には宮崎・鹿児島両県にまたがる陸上自衛隊霧島演習場で米海兵隊と陸上自衛隊との共同訓練計画が明らかになり、鹿児島県護憲平和フォーラムなどとともに「両県連絡会議」を結成して「九州ブロック反対集会」をえびの市で開催、2,300人が結集しました(写真)。その他、全国各地での闘いにも積極的に参加しています。さらに、共闘組織である「平和と民主主義のための県民連合」とともに「平和を考える集い」を年4回開催し、平和や憲法問題について学習する場を設けています。
 人権に関わる取り組みとしては、23年余りに及んだ「JR採用差別」問題の解決をめざす国労の闘いの支援や、「自衛官にも人権はある」という立場から「護衛艦さわぎり人権侵害裁判」を九州ブロック各県とともに支えてきました。今、各地で同様の裁判が行われていますが、これが先駆をなしたと言えると思います。
県南の串間市では原発誘致の是非を問う住民投票が、4月の統一自治体選挙時に実施されようとしています。地元の市民団体と共闘して推進派の市長に「NO!」を突きつけること。また、その統一自治体選挙では、推薦候補の全員当選をめざして、全力をあげて取り組む決意です。

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【本の紹介】
「戦争依存症」
国家アメリカと日本
吉田 健正 著


2010年・高文研刊

 著者の吉田健正さんは「軍事植民地沖縄」、「沖縄の海兵隊はグアムへ行く」に続いて本書を出版しました。差別され続けてきた沖縄から日本政府を、真実を報道しない日本の「大マスコミ」を告発しています。
 本書の中で著者は、豊富な資料によりながら、米国の世界軍事戦略が大きく変わろうとしていること、その中で沖縄駐留の海兵隊が「グアム」へ移転しようとしていること、辺野古への基地建設を主張しているのは「日米安保で飯を食べている」利権屋集団を中心とする勢力であることを明らかにし、日本政府の「無責任性」と、世論をミスリードし続けるマスコミを告発しています。
 沖縄に連帯し、私たちの行動の指針とするためにも、ぜひ精読してほしい一冊です。
 歴代の日本政府は、日本の全面積のうち0.6%しかない沖縄県に在日米軍基地の74%を押し付け、日米安保体制を維持してきました。日米安保は沖縄の県民の犠牲の上に成り立ってきたといっても言い過ぎではありません。
 そうした事態に対して、沖縄県民は「基地の縮小撤去、平和な沖縄の確立」をめざしてたたかい続けてきました。「やまとんちゅう」は沖縄の怒りをどれだけ理解できているのだろうか、そしてどれだけ連帯できているのだろうか。それぞれの位置の中でもう一度見直してみたいものです。
 沖縄県知事選挙が終わり、いよいよ普天間の移設課題が焦点になろうとしています。菅直人首相も1月14日、第2次改造内閣を発足させました。沖縄の民意は明らかであり、「米軍基地の縮小・撤去、普天間は県外・国外へ」ということなのです。
 菅首相も十分わかっているはずです。まだ「国民や沖縄県民」が希望を「少し」は託している「民主党政権」が沖縄の民意を権力でねじ曲げないでほしい。それをやれば自公政権と同じことになり、何のための政権交代なのかますますわからなくなってしまいます。
(福山 真劫)

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投稿コーナー
障害者権利条約批准の前提である
基本法の抜本的改正を
障がい者制度改革推進会議・構成員 関口 明彦

障害者に合理的配慮がないことは差別


半数以上が当事者という画期的な構成員で
進められた「障がい者制度改革推進会議」

 障害者権利条約は、2006年12月13日に国連総会において全会一致で採択され、日本も07年9月28日に署名した全50条からなる国際条約です。条約の目的は障害者の人権の確保と尊厳の尊重です。特筆すべきは、障害者に合理的配慮がないことは差別だということです。
 日本が批准するためには、憲法により衆議院での過半数の議決が必要です。批准されれば、憲法と法律の中間に位置するものとなります。すでに批准した国と地域は97、選択議定書の批准は60です。さらに、署名は147、選択議定書の署名は90に上ります。日本は残念ながら選択議定書には署名していません。
 「障害者基本法」は、前身の法律である「心身障害者対策基本法(1970年)」が「国連障害者の十年(83~92年)」の展開を受けて「障害者基本法(93年)」に改正され、対策ではなくなったことや精神障害者を初めて法的に位置づけたことを経て、04年にさらに改正されました。
 一方、障がい者制度改革推進会議は09年12月8日の推進本部立ち上げを受けて、同年12月15日の本部長(内閣総理大臣)決定によりつくられ、10年1月から議論を始めました。その第1回会合で、福島瑞穂内閣府特命担当大臣(当時)は、「障がい者制度改革推進会議は、改革のエンジン部隊です。『私たち抜きに、私たちのことを決めないで』ということを強く実現していきたい」と述べ、障害者権利条約の締結に向けた障害者基本法の抜本改正、障がい者総合福祉法(仮称)の制定、障害者差別禁止法のあり方の3点が推進会議の課題とされました。
 現在、総合福祉部会、差別禁止部会も稼働しています。6月7日には本会による「障害者制度改革の推進のための基本的方向」という第一次意見が発表されました。その後、推進会議では、基本法の改正に向けて議論が行われました。それが第二次意見書として12月17日にまとまりました。
 第二次意見書は障害者基本法に落とし込む部分のまとめに当たります。その内容の詳細は、次のホームページでご覧いただけます。

「第二次意見書」(pdf)

障害者は施策の客体ではなく権利の主体
 この内容をめぐって最後まで議論がありました。今後、これをもとに内閣法制局が法案にまとめていくことになると思われます。問題は、意見の趣旨が充分に条文に反映されないかもしれないという点です。私たち、推進会議の構成員がまとめたギリギリの意見なので、一歩の後退も許せません。閣法として、議会に投げられれば、基本的には推進会議の手を離れてしまいます。そこで課題となるのは、条文案についての厳しいチェックです。
 基本法の理念は、前文をつくり、そこに書き込む予定です。では、全体の胆の部分は何かというと、「障害者が施策の客体ではなく権利の主体である」ということです。これは、「障害者が障害のない人と等しく、基本的人権の享有主体であることを確認し、そのことを前提として障害者基本法の目的を改正すること」「障害者を福祉施策の客体としてのみとらえているという印象を与える表現はもちいないこと」を求めています。
 また、精神障害者等にとって大きいのは、「地域で暮らす権利」です。総じて推進会議は権利性を強く主張しました。

「プログラム的立法」で本来の理念に近づく
 法案が通ってしまえばそれでおしまいかというと、そんなことはありません。私は「プログラム的立法」と呼んでいますが、これは推進していく体制の部分で、「新たに国におかれる審議会組織は、基本法の理念に基づき障害者基本計画、及び障害者に関する基本的な政策に関する調査審議を行うとともに、施策の実施状況を監視し、必要に応じて応答義務を伴う勧告を行うことができるようにすること」としているものです。
 これが骨抜きにされない限り基本法の内容を、本来の理念=条約の理念に、限りなく近づけていくことができる仕組みが組み込まれています。

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2.11 「建国記念の日」を考える集会

 戦後の日本では、東アジアとの関係、特に歴史認識についてはくり返し問題が引き起こされてきました。しかし、政権交代後の昨年8月には、植民地支配についての痛切な反省と心からのお詫びを表明する菅首相談話が出されるなど、一定の前進も生まれました。
 他方では、朝鮮半島や尖閣諸島をはじめ、東アジアの緊張状態は強まる一方です。そして、朝鮮学校は高校無償化の適用対象から排除されたままです。これらを踏まえ、日本人の歴史認識や人権意識についての問題を象徴する2月11日に、東アジアの平和について考える集会を開催します。どなたでも参加できます。

日時:2月11日(金)13:30~16:00
場所:自治労会館6Fホール(千代田区六番町1)
地下鉄「麹町駅」、JR・地下鉄「市ヶ谷駅」
参加資料代:500円
内容:講演「歴史認識と教科書問題」/上杉聰さん(大阪市立大学教員)、「朝鮮学校への高校無償化を求めて」/厳廣子さん(東京朝鮮学校オモニ会連絡会代表)

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