2019年、WE INSIST!
2019年01月01日
入管法改正に際して─ 共生の社会を作り出せるのか
もうかなり前になるが、横須賀市内の外国人労働者が大挙してユニオンヨコスカに訴えてきた事があった。過酷な労働条件が原因だが、全員がビザ切れのオーバーステイだった。外国人を受け入れたくはないが労働力不足の中では受け入れざるを得ない、その方策が違法なオーバーステイの黙認だった。国や企業は違法を承知しながら外国人労働者を働かせてきた。日系人の受け入れ、女性を歌手やダンサーとして呼び入れてホステスなどとして働かせ、時には売春も強要して国際的批判を浴びてきた興行ビザ、そして1993年から導入された悪名高い「技能実習生制度」と、外国人労働者の受け入れは「ゆがんだ」形ですすめられてきた。これらの制度に一貫して流れるのは、政府の外国人労働者に対する差別的・排他的姿勢、人間として見ることなく単なる労働力としか見ない姿勢ではないか。
米国務省の人身売買報告書は日本の「技能実習生制度」に強い懸念を示してきた。移住者の人権に関する国連特別報告者のホルヘ・ブスタマンテさんは、日本には「人種主義、差別や搾取が存在し、司法機関や警察に移住者の権利を無視する傾向がある」とした上で、「研修・技能実習制度は、往々にして研修生・技能実習生の心身の健康、身体的尊厳、表現・移動の自由などの権利侵害となるような条件の下、搾取的で安価な労働力を供給し、奴隷的状態にまで発展している場合さえある。このような制度を廃止し、雇用制度に変更すべきである」(国連広報センター・プレリリース、No.1548、2010年3月31日)と報告している。
日本政府は、この間、国際機関の指摘に対して何をしてきたのだろうか。答えは「Nothing」だ。最低賃金を下回る時給、自殺者を出すほどの時間外労働、パワハラ・セクハラはあたりまえ、片腕をなくす事故でも労災隠しが行われる。有田芳生衆院議員(立憲民主党)の「2015年からの3年間で外国人実習生が69人亡くなっている」との指摘に、法務省の和田昌樹入国管理局長は、死亡の経緯を「把握していない」と述べている。国際社会の指摘にも、入管法改正の議論においても政府の真摯な対応はなかった。
人間を受け入れる、その人の人生を受け入れる、子どもたちを受け入れる、子どもの将来を受け入れる、日本政府にその覚悟があるのか。国会議論からは何も見えてこない。使い捨ての、人権無視の、牛馬のような労働を繰り返させてはならない。その覚悟が、日本社会にあるだろうか。多文化・多民族共生の社会へ「人権貧国」日本を今こそ変えなくてはならない。
(藤本泰成)