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2016年11月01日

原発推進派よ、何を言う ─廃炉費用の市民負担

10月16日投開票の新潟県知事選挙で、東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働にきわめて慎重な姿勢をとり続けてきた泉田裕彦知事の姿勢を受け継ぐとして、市民団体や社民党・共産党などの応援を受けて立候補した米山隆一さんが当選した。新潟県民の意志がどこにあるかは明確だ。朝日新聞の県民世論調査でも、柏崎刈羽原発再稼働反対は64%、自民党・公明党推薦の対立候補の森民夫前長岡市長も、選挙戦の終盤には再稼働に対して「問題があればノーと言う」と言わざる得ないほど、明確な姿勢を県民が示したと言える。政府は、票差以上に「原発反対」の声が大きいことを認めなくてはならない。また、この結果を電力供給地=原発立地地域の声として、電力を大量に消費する都市圏の市民は真摯に受け止めなくてはならない。

現在、経済産業省は「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」において、2つの廃炉費用(老朽原発と事故を起こした福島第一原発)を、電力の「託送料」(送電網の使用料)に上乗せする案を提示している。これは結局、原発を否定し新電力を選択した消費者に対しても、廃炉費用を負担させようとする案に他ならない。

老朽原発の廃炉には、1基560~830億円かかると言われ、実際はもっと多くなるかもしれない。総費用約3兆円に対して、電力各社の現在の積立額は1.7兆円ほど。一方、事故を起こした福島第一原発は、賠償と除染に計15兆円、廃炉費用だけでも当初の2兆円から数兆円規模で膨らむと見込まれている(いずれも電気事業連合会試算)。

「原発の電気は安い」と言っていたのはどこの誰か。原発推進を社是とする読売新聞や産経新聞は「今まで原発の安い電気を使ってきたのだから、その受益を考えれば廃炉費用を広く誰もが負担するのは当然」と主張している。「バカも休み休み言え」などと品の悪い言葉も使いたくなる。事故の反省から「脱原発」を掲げ、もう原発は止めますから払いきれない廃炉費用を何とか支払って下さいと頭を下げるなら、勘弁のしようもある。原発再稼働に反対し「脱原発」を求めている市民に対して、「再稼働はやります、事故の費用は払って下さい」などと、よくも口が裂けずに言えたものだ。

この国は、結局責任を取らない。安倍晋三首相は2006年12月22日の国会答弁で「日本の原発で全電源喪失という事態が発生するとは考えられない」「原子炉の冷却ができない事態が生じないように安全の確保に万全を期している」と言っている。
(藤本泰成)

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