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2016年06月01日
原爆投下の実相をそれぞれの歴史から-オバマ大統領広島訪問
オバマ米大統領が、G7伊勢志摩サミット終了後の5月27日、現職の米大統領として初めて、被爆地広島を訪問することになった。核兵器廃絶への一歩として歓迎するとともに、演説はしないとしているが、平和記念公園の原爆死没者慰霊碑に献花した後に何を語るのかに注目をしたい。
オバマ大統領は、就任から2か月と少しの2009年4月5日、チェコの首都プラハのフラチャニ広場において、「核兵器を使ったことのある唯一の核保有国として、行動する道義的責任がある」「核兵器のない世界の平和と安全保障を追求するという米国の約束を明確に宣言する」とする歴史的演説を行った。ノーベル平和賞を受賞するとともに、2011年には、米大統領として、ロシアとの間で戦略核の配備弾頭数を1550に制限する新戦略兵器削減条約(新START)を発効させた。
しかし、ウクライナ問題で米ロの対立が激化する中で、核兵器廃絶への道のりは厳しい。核が「非人道的兵器」とする声は着実に広がっているが、核保有国を中心に核が戦争抑止力になるとする考えは根強い。唯一の戦争被爆国である日本も、米国の核の傘に依存する安全保障政策を掲げてきた。通常兵器による紛争が絶えない中で、核の抑止力は幻想に過ぎないとの声が強い。オバマ大統領の理念である「核なき世界」を進めるためには、日本の役割は大きいだろう。まず、米国の核の傘の下からの脱却が始まりだ。
第2次世界大戦の最後に行われた原爆投下の評価は難しい。自由と民主主義のためにファシズムと闘った米国の犠牲もまた大きかったがゆえに、原爆投下を正当化する声は大きい。謝罪を求める声もあるが、核廃絶への米国世論の後退を許すことにもつながりかねない。オバマ大統領には、核兵器の被害の実相をしっかり捉え、世界に発信してもらいたい。投下の判断の是非ではなく、その結果がいかに悲惨かを。安倍首相には、侵略戦争の結末としての原爆投下であり、開戦の判断がいかなる結果をもたらしたかを胸に刻んで欲しい。その上での憲法9条なのだ。
(藤本泰成)