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2015年11月01日

積極的平和主義と難民

欧州連合(EU)は、今後2年間で12万人の難民受け入れを決定した。混迷を続ける中東情勢の中で、例えばシリア難民は国連の調査で400万人を越える。EUへは34万人のシリア難民が流入しているが、それは全体の10%にも満たない。米国やカナダで1万人、オーストラリアが5000人の受け入れを表明している。安部首相は、9月30日(日本時間)の国連総会の一般討論演説で、約8億1000万ドル(約972億円)の経済支援をシリア・イラク難民に拠出する方針を示した。今年1月17日にもカイロにおいて、中東地域全体で25億ドル(約2940億円)相当の支援を表明している。日本社会には、安倍政権の人道的とりくみとして、好ましく映ったのだろうか。他国の反応は別だ。

日本は、難民認定基準が他国と比べてきわめてきびしい。昨年度、日本に対する難民申請者は5000人を超えているが、認定数は11人、人道上認められた残留許可も110人にとどまってる。シリア難民も申請をした約60人のうち、認定したのはたった3人だ。多くの人々が日本では難民として認められないのが現状だ。命からがら逃げてくる難民にとって、自身の来し方や何者であるを証明することは困難だ。杓子定規の法解釈が、いかに難民の心を傷付けているか、想像に難くない。

ロイター通信の記者が、「難民の一部を日本に受け入れることは考えていないか?」と質問したところ、安倍首相は「人口問題として申し上げれば、我々は移民を受け入れる前に、女性の活躍であり、高齢者の活躍であり、出生率を上げていくにはまだまだ打つべき手がある」と答えた。安倍首相の回答は、難民の受け入れを人口問題と捉え、人道的視点に欠ける。

財政支援だけでは、難民キャンプの生活を長期間強いられる。永続的で静謐な生活環境、医療も、教育も、そして労働も権利としてあたりまえに行使できる支援が重要だ。そのための難民受け入れであって欲しい。緒方貞子元国連難民高等弁務官は、朝日新聞のインタビューにこう答えている。「難民受け入れは積極的平和主義の一部ですよ。本当に困っている人たちに対してね。それから開発援助も底辺に届くようなものをどれだけやるのか。それが積極的ですよ。難民受け入れに積極性を見いださなければ、積極的平和主義というものがあるとは思えないと言っていたと、書いて下さい」。

安倍首相の言う「積極的平和主義」は、難民を生み出すものにしか見えない。だからこその難民受け入れではないか。
(藤本泰成)

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