その6
いったんマトメ
ここで、これまでに分かったことをまとめてみましょう。
(1)迎撃ミサイルの性能
@海上配備型迎撃ミサイルSM−3
防衛省は米国が行った実験で、「11回のうち10回成功」といいました。しかし少なくとも5回目までは「迎撃実験」ではありませんでした。また6回目以降も実戦を想定したものではなく、飛行方向などがわかった上での実験でした。「いつ」「何発」「どの方向に」発射されるか分からない、実戦と同じ想定の迎撃実験は、まだ実施されていません。
A地上配備型迎撃ミサイルPAC−3
イラク戦争で、イラクが発射した4発の弾道ミサイルに対して、PAC−3の迎撃が成功しました。しかしイラクが発射したミサイルは射程距離が150〜200kmのアバビル・ミサイルでした。一方、北朝鮮のノドン・ミサイルは射程距離1300kmです。米国は、このクラスのミサイルに対する迎撃実験を行っていません。
(2)配備されるミサイルの数
@海上配備型迎撃ミサイルSM−3
日本政府は、SM−3・PAC−3ともに、配備数を公表していません。しかし衆議院の議事録では、自民党の寺田稔議員が、SM−3の配備数は1隻8発・4隻分と発言しています。また訓練用1発+実戦用8発という記事もあります。当面の配備数は32〜36発と考えられます。
A地上配備型迎撃ミサイルPAC−3
航空自衛隊は18個高射隊分のPAC−3を配備します。1個高射隊にはPAC−3用の発射機を2基配備します。発射機1基には16発のPAC−3ミサイルが搭載されています。そうすると、18個高射隊×2基×16発=576発のPAC−3ミサイルが配備されることになります。もちろんこの他にも、予備のミサイルが購入されるでしょう。PAC−3ミサイルの数は500発を超えていますが、発射部隊は18個しかありません。これでは日本全土を防衛することはできないでしょう。
(3)北朝鮮の保有する弾道ミサイル
北朝鮮は射程距離1300kmのノドン・ミサイルを、200発保有しています。射程に含まれるのは、日本のほかは、韓国・中国・モンゴル・ロシアです。北朝鮮が中国・モンゴル・ロシアに弾道ミサイルを発射する政治情勢は、当面考えられません。また韓国に対しては、射程の短いスカッドを600発保有しています。ノドン200発の発射先は、日本以外にはありません。
(4)ここまでの結論
久間大臣は「今のSM3で9割以上迎撃でき、外れた1割をPAC3が撃つ確率は9割」と説明しました。しかし公開された資料で、それを確認することはできませんでした。仮に9割以上の迎撃の性能があったとしても、北朝鮮が保有するノドン・ミサイル200発全てを日本に向けて発射すれば、日本の配備するSM−3とPAC−3では、残念ながら対応することはできないようです。