その3
PAC−3の性能は?


次にPAC−3について調べてみます。PAC−3の命中精度について防衛省の広報担当者は、「03年のイラク戦争でイラク側から発射されたミサイルの完全迎撃に成功した」と教えてくれました。この件に関しても、前号で紹介した「核情報」に、詳細なデータが掲載されています。以下は「核情報」からの引用です。

 〜米国「ミサイル防衛庁(MDA)」のロン・ケイディッシュ長官は、(03年)4月9日の上院予算委員会防衛小委員会で、今回のイラク戦争で発射されたパトリオットは24基、そのうち最新型のPAC3は、4基だと発表しました。〜
 〜撃墜されたイラクのミサイルは9基と報じられています。3基は、危険がないとして相手にせず、もう1基は、発射後まもなく爆発。1基は、3月29日、クウェート市の港に着弾〜

整理すると以下のようになります。

イラクが発射したミサイルの総数  14発
 迎撃成功   9発
 危険ななしと判断   3発
 自爆   1発
 クウェート市に着弾   1発
米軍が発射したパトリオットミサイルの総数  24発
 うちPAC−2  20発
   PAC−3   4発

また同じく「核情報」は、「ミサイル6基のうち4基の迎撃に成功したのはPAC3だ」というニューヨークタイムズ紙の記事(03年3月23日)を紹介しています。そうすると4発撃って4基撃墜ですから、PAC−3の迎撃率は防衛省の言うとおり「完全」です。

 ―――となれば良いのですが、実はまだ、解明しなければいけない問題があります。様々なサイトを検索してみると、イラク戦争でPAC−2・3が撃墜したのは、射程距離150〜200kmのアバビル・ミサイルだったようです。一方、日本が危険視している朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のノドン・ミサイルは、射程距離1300kmと考えられています。射程距離が長いほど、落下速度が速く、落下角度も急になります。射程距離の短いアバビル・ミサイルの迎撃に成功したからといって、射程距離の長いノドン・ミサイルの迎撃に成功するとは限りません。そもそも米国は、PAC−3によるノドン・レベルのミサイルに対する迎撃実験を行っていないようなのです。

 PAC−3、SM−3ともに、防衛省がいうほどは迎撃率が高くない、あるいは検証されていないことが明らかになってきました。
●核情報 http://kakujoho.net/


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