その2
SM−3の性能は?


 ミサイル防衛について、防衛省から資料をいただくことはできませんでした。そこで、インターネットを使って、公開されている資料を調べてみることにしました。

 最初にSM−3です。SM−3は海上自衛隊のイージス艦に搭載され、弾道ミサイルを比較的高い位置(大気圏外)で迎撃するミサイルです。久間防衛大臣は、「今のSM3で9割以上迎撃でき、外れた1割をPAC3が撃つ確率は9割」といいました。防衛省の広報担当者はSM−3について、「迎撃実験を11回行い10回成功」といっています。

 残念ながら11回の実験結果の全てを検索することができませんでしたが、国会の議事録の中に、おもしろい部分を見つけました。以下は05年7月21日に参議院外交防衛委員会行われた、民主党の榛葉賀津也議員と大野功統防衛庁長官の質疑から、一部を抜粋したものです。この時点でSM−3の実験は、「7回中6回成功」とされています。

○榛葉賀津也君 別の議事録には七回実験をして六回迎撃に成功しているというような言葉も言っているわけでございますが、是非このペーパーを見ていただきたいと思います。

 今日午前中、参考人質疑を行いました。西山参考人が野球を例にして大変分かりやすくこのBMDシステム、SM3を説明されたわけですが、第一回の二〇〇一年一月のこれ実験ですが、これイージス艦レーダーの探知性能及びキネティック弾頭の分離までの実験なんですね。つまりは一回目から別に当たったかどうかをテストしているんじゃないんです。正に野球でいえば、まずバッターボックスに入って素振りをやってみなさいと。バッターボックスに入れましたね、素振りができましたね、はい、この実験は成功ですと言っているのと等しいわけでございます。

 二回目の翌二〇〇二年一月の実験は、イージス艦のレーダーで目標を追尾及びキネティック弾頭の誘導制御することが目的なんですね。これも迎撃することが目的ではありません。野球でいったら、ピッチャーがボールを投げて、それに合わせてバットを振ってみようというのが練習でございます。これも成功した。ただ、たまたまこのときは、振ることが、ボールに合わせて振ることが目的であったけれども、実際にも当たったという幸いが重なっているわけでございますが、翌六月の試験も、標的を直撃により破壊することが目的ということなんですけれども、これは実際にボールを打ってみようという実験なんですね。ところが、本当の試合ではなくて、トスバッティングのように、バッティングピッチャーが打ちやすいボールを投げて、それを打つ実験をここでやっていると。そして、第四回目も同様でございます。

 私の後輩で中日でバッティングピッチャーをやっているのがいるんですが、バッティングピッチャーは打ちやすい球を投げて、スランプのバッターを打たせて自信を回復させるという重要な役目があるとおっしゃっていたんですが、正にそういう実験をやっているんですね。

 五回の二〇〇三年六月は、改良したDASC、これ軌道修正や姿勢制御装置ですか、性能確認が目的だと。これ、ちょっと実践的にピッチャーがカーブを投げたりいろんなことをして、それに目が付いていくかという実験をやっているんですね。このように第六回目から実際に迎撃をしてみようと言っているんですが、これ高度が約百三十七キロなんですね。実際のノドンの高度はたしか三百キロでございますから、これも本当の試合形式のバッティングかといったら、そうじゃないんですね。これも非常にまだ低い打ちやすい球をピッチャーが投げているということでございます。

 そして、今年の二月、量産した形で本当に迎撃できるかという、いよいよ本格的な実験が始まっているわけでございまして、長官のずっと衆議院での説明は、七回実験をやって六回成功したと。あたかも非常に、七回もやって六回も成功しているんですから信憑性高いですよということを一生懸命何回も何回も長官はおっしゃっているんですが、正確には非常に段階を現実に合わせてレベルアップしている。ですから、毎回成功してもらわなきゃ困るんですね。

 ですから、私はだからこれが駄目だと言っているんじゃないんです。こういった説明をするときは是非丁寧に現実に即した説明をしていただきたいと、正しく理解させる努力を長官にはしていただきたいと思うんですが、この点については長官、どのように御認識でしょうか。

○国務大臣(大野功統君) これ、初めてこういうような試験をやるわけでございます。正に榛葉議員おっしゃるように、詳しく御説明申し上げる、それが我々政府、説明責任を果たすことになる、このように思っております。

 確かに、七回試験して六回成功したと、これは結果として事実でございますけれども、一つ一つの内容に即して言えば、正に委員御指摘のような問題があるわけでございますから、今日はそういう意味で大変いい御質問をちょうだいして、そういうこの試験の、テストの内容がきちっと明らかになっていく。これはやはり私は国会審議のいいところだなと感謝申し上げます。

●国会会議録検索システム 第162国会 参議院外交防衛委員会 05年7月12日
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/162/0059/16207120059018c.html

 この議事録を読むと、防衛庁(省)が成功例としている10回の実験のうち、少なくとも5回目までは迎撃実験ではありません。そのことを指摘された長官は、「国会審議のいいところ」と、とぼけた発言をしています。

 さて平和フォーラム・原水禁のリンクに「核情報」というサイトがあり、ミサイル防衛に関して詳細なデータが紹介されています。そこに、11回の実験の詳細が掲載されています。こちらも参照してください。
●核情報 「ミサイル防衛、99%の確率?」
 http://kakujoho.net/blog/archives/000076.html#more


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