解説 日米共同統合演習
作成日:2011年1月6日
作成者:八木隆次
(はじめに)
米軍と自衛隊は、昨年12月3日から10日までの間に日本各地で、「日米共同統合演習(実動)」を実施しました。またこの期間中に、陸上自衛隊と海兵隊は「日米共同訓練」を陸上自衛隊・霧島演習場で、陸上自衛隊は単独での「方面隊実動演習」を陸上自衛隊・日出生台演習場で行っています。
日米共同統合演習(実動)は定期的に行われている演習です。しかし今回は、演習規模が過去最大であったこと、北朝鮮と韓国の間で起きた砲撃戦の直後であったこと、演習内容が中国や北朝鮮による日本の島嶼侵攻を想定したものであったこと――などから新聞やテレビのニュースで比較的大きく取り扱われました。また平和フォーラムの加盟組織も、九州・沖縄を中心に抗議行動を行いました。
以下は、演習についてまとめ、解説したものです。
1.日米共同統合演習(実動演習)
(1)日米共同統合演習とは
日米共同統合演習(実動演習)という名称のうち、「共同」は日米2か国が行う演習の意味です。また「統合」は陸・海・空3自衛隊のうち、2つ以上が参加して行う演習を指しています。「実動演習」は、実際に部隊(人員・車両・艦船・航空機など)を動かす演習です。「実動演習」と対になるものに「指揮所演習」がありますが、「指揮所演習」では部隊を動かさずに司令部要員が作戦立案・指揮命令・情報通信などの訓練を行います。
日米共同統合演習(実動演習)と日米共同統合演習(指揮所演習)は、ほぼ1年交代で行われます。実動演習が初めて行われたのは1986年で、今年で10回目です。指揮所演習が初めて行われたのは1985年で昨年度までに18回実施されています。
80年代から90年代にかけては、実動演習の主な演習地は北海道や東北でした。しかし2000年代に入ってからは、主な演習地は中国や九州に移行しました。また1999年に周辺事態法が成立した後は、墜落した米軍機のパイロットを救出する「捜索救助訓練」や、海外で戦争がおこった場合に日本人を救出するための「邦人輸送訓練」が行われるようになりました。
(2)今回の演習の特徴
今回の演習には、米軍側からは人員約1万人・航空機約150機・艦船約20隻が、自衛隊側からは人員約3万4000人・航空機約250機・艦船約40隻が参加しました。報道によれば過去最大規模とのことです。
自衛隊は今回の演習の主な訓練項目を以下のとおり発表しています。
(1)主要演練項目 弾道ミサイル対処を含む航空諸作戦
(2)細部演練項目 ア 弾道ミサイル対処、 イ 島嶼防衛を含む海上・航空作戦、 ウ 統合輸送、 エ 基地警備等、 オ 捜索救助活動
これまでの演習は陸上が中心でしたが、今回は海域・空域が中心でした。沖縄周辺海域で行われた海上作戦には、確認できただけで米海軍から11隻、海上自衛隊から24隻の艦船が参加しています。
今回の演習では、7か所で訓練の一部が報道公開されました。しかし演習の全体像は不明です。また演習項目の中に、「島嶼防衛を含む海上・航空作戦」がありましたが、どのような形で島嶼防衛が行われたのかは公開されていません。
米国と韓国は11月28日から12月4日まで朝鮮半島西岸の黄海で、韓米合同軍事演習を実施しました。この演習には横須賀を母港とする原子力空母「ジョージ・ワシントン」やイージス艦も参加しています。米軍にとっては、連続して韓米・日米の2つの軍事演習行ったことになります。また韓国と北朝鮮の砲撃戦を受けて日韓米の連携強化が必要となったことから、韓国軍のオブザーバーが初めて参加しました。
2.具体的な訓練内容
演習の全体像や具体的な内容については明らかになっていません。しかし自衛隊は、訓練の一部を報道公開しています。また米軍のホームページにも、演習内容の一部が記事として記載されています。これらから知ることができた訓練の内容は以下の通りです。
(1)弾道ミサイル対処
1)海上でのミサイル防衛
敵国からは発射された弾道ミサイルを、イージス艦に搭載したSM−3で迎撃するための訓練が、日本海で実施されました。SM−3の実弾発射はありませんでしたが、迎撃のための日米イージス艦の連携訓練が行われたようです。
@訓練に参加した艦船は以下の4隻です。
●米海軍 :巡洋艦「シャイロー」(イージス艦・SM3搭載)(韓国軍オブザーバーが乗船) 駆逐艦「フィッツジェラルド」(イージス艦・SM3搭載)
●海上自衛隊:護衛艦「みょうこう」(イージス艦・SM3搭載) 護衛艦「くらま」
A上記4隻のうち、「みようこう」・「くらま」・「シャイロー」の3隻は、12月6日に海上自衛隊の舞鶴基地に入港し、報道陣に公開されました。
B米海軍・第51軽対潜ヘリ飛行隊第4分遣隊のSH−60Bヘリコプターが、潜水艦の攻撃から艦船を守る訓練を行いました。
2)陸上でのミサイル防衛
敵国から発射された弾道ミサイルを、地上配備のPAC−3で迎撃するための訓練が、在沖縄米陸軍と航空自衛隊によって実施されました。PAC−3の実弾射撃はありませんでしたが、以下のような部隊の展開訓練が行われました。
@米陸軍・第1防空高射連隊第1大隊(沖縄県)が、PAC−3の展開訓練を行いました。部隊は嘉手納基地に配備されているPAC−3車両を、一般道を使用して、普天間基地、キャンプ・コートニー、キャンプ・シュワブなどへ移動し展開しました。
A航空自衛隊は、全国16の高射隊にPAC-3を配備していますが、これらの部隊が今回の演習でどのような動きをしたかは報じられていません。
注釈 SM−3・・・艦船搭載型の対空ミサイル。前型のSM−2が航空機迎撃用だったのに対して、SM−3は弾道ミサイル迎撃専用。海上自衛隊はSM−3を搭載した護衛艦を4隻、また在日米海軍はSM−3を搭載した巡洋艦や駆逐艦を5隻保有している。 PAC−3・・・地上配備型の対空ミサイル。前型のPAC−2が航空機迎撃用だったのに対して、PAC−3は弾道ミサイル迎撃専用。航空自衛隊は全国に16セット、在日米陸軍は1個大隊分を保有している。 |
(2)島嶼防衛を含む海上・航空作戦
1)海上作戦
海上作戦は、主に沖縄周辺の海域で行われました。米軍のホームページには、訓練に参加した米海軍と海上自衛隊の艦船の集合写真が掲載されています。基地監視団体の「RIMPEACE」はこの写真をもとに訓練参加艦船の名前を推定しました。さらに米軍ホームページの記述から類推すると、演習に参加した艦船は以下の通りです。なお、これらの艦船は参加が確認できたものであり、これら以外の艦船も参加しています。
●米海軍
:原子力空母「ジョージ・ワシントン」
強襲揚陸艦「エセックス」・ドック型揚陸艦「デンバー」
巡洋艦「カウペンス」 駆逐艦「ステザム」・「ラッセン」・「ジョン・S・マケイン」
原子力潜水艦「ヒューストン」(*以上は集合写真に参加)
掃海艦「ガーディアン」 (*「RIMPEACE」の監視で確認)
ドック型揚陸艦「トーチュガ」・補給艦「ティピカヌー」(*米軍ホームページで確認)
●海上自衛隊
:ヘリコプター護衛艦「ひゅうが」・イージス護衛艦「こんごう」
輸送艦「くにさき」・掃海母艦「うらが」
ヘリ搭載護衛艦「ひえい」・同「しらね」・ミサイル護衛艦「しまかぜ」・「はたかぜ」
護衛艦「すずなみ」・「さわぎり」・「いかづち」・「いなづま」・「さみだれ」・「さざなみ」
「むらさめ」型×2・「あさぎり」型×2 (*以上は集合写真に参加)
ミサイル艇「おおたか」・「しらたか」・掃海艦「やえやま」・「はちじょう」
掃海艇「あおしま」・「くろしま」 (*「RIMPEACE」の監視で確認)
米軍のホームページには、訓練の様子が掲載されています。以下の通りです。
@エアクッション艇(LCAC)の相互運用訓練(12月6日)
米海軍のエアクッション艇が、米海軍の強襲揚陸艦「エセックス」を発進し、海上自衛隊の輸送艦「くにさき」に収容されました。同時に海上自衛隊のエアクッション艇が「くにさき」を発進し、「エセックス」に収容されました。
Aヘリコプターの相互運用訓練(12月7日)
海上自衛隊のSH−60Kヘリコプターが、海上自衛隊のヘリ搭載護衛艦「しらね」と護衛艦「いなずま」から発進し、強襲揚陸艦「エセックス」に着艦しました。また同時に海兵隊のCH−46Eヘリコプターが「エセックス」から発進し、「しらね」と輸送艦「くにさき」に着艦しました。
B実弾射撃訓練(12月8日・9日)
日米の艦船に、原子力空母「ジョージ・ワシントン」と揚陸艦「エセックス」の艦載機を加えての実弾射撃訓練が行われました。
C自衛隊艦による米軍艦の護衛
海上作戦中、米海軍の揚陸艦「エセックス」・「トーチュガ」・「デンバー」の3隻を、海上自衛隊・第2護衛艦隊に所属する4隻の護衛艦が護衛しました。
D米軍艦から自衛隊艦への燃料補給
米海軍の補給艦から、海上自衛隊の護衛艦が燃料補給を受ける訓練を行われました。
また上記以外にも、日米合同の掃海訓練が行われたことが報じられています。
2)航空作戦
航空作戦は各地で行われたようですが、報道公開されたのは航空自衛隊・小松基地(石川県)と、米空軍・横田基地(東京都)の2か所です。
@航空自衛隊・小松基地での訓練
この訓練は、在日米軍再編合意による戦闘機の訓練移転を、日米共同統合演習の一環として行ったものです。訓練に参加した部隊は以下の通りです。
●米空軍:第35戦闘航空団(青森県・三沢基地) F−16戦闘機×12機
また以下の基地から、航空管制や通信部隊などが参加しました。
横田基地(東京)、アンダーセン基地(グアム)、オサン基地(韓国)、ラングレー基地(米)
●航空自衛隊:第6航空団 F−15戦闘機×12機
A輸送機の護衛訓練
米空軍・横田基地所属のC−130輸送機を、米空軍のF−16・8機と航空自衛隊のF−15・4機が護衛し、敵役の自衛隊機・8機の攻撃をかわす訓練が行われました。
Bその他
新聞記事などによれば、航空自衛隊・千歳基地(北海道)、築城基地(福岡県)、那覇基地(沖縄県)などの戦闘機部隊も訓練に参加していたようですが、詳細は分かりません。
またアンダーセン基地に所属するB−52爆撃機が訓練に参加するという報道がありましたが、この件も詳細は不明です。
(3)統合輸送
統合輸送訓練については、報道がありませんでした。防衛省が事前に発表した資料では、日本周辺の空・海域で、陸・海・航の3自衛隊が実施したようです(自衛隊のみで米軍は不参加)。陸上自衛隊の地上部隊が、海上自衛隊の艦船や航空自衛隊の航空機を使用して移動したと思われます。しかし今回の演習の項目には、陸上自衛隊の移動を伴うものがありませんので、詳細は不明です。
(4)基地警備等
基地警備の訓練は、米海軍・佐世保基地(長崎県)、米空軍・三沢基地(青森県)、航空自衛隊・春日基地(福岡県)、航空自衛隊・福江島分屯基地(長崎県)の4か所で行われました。この訓練では、海上からの侵入者やゲート突破などを想定して、基地施設内の車両検査や巡回、侵入者への対応、情報共有などが行われたようです。佐世保基地と三沢基地では、米軍と自衛隊が協力して基地警備を行いました。一方、春日基地と福江島分屯基地では、自衛隊が単独で基地警備を行いました。
これらの訓練のうち、佐世保基地での開会式が報道公開されました。佐世保基地の訓練には、米海軍の佐世保基地警備隊、陸上自衛隊・第16普通科連隊(長崎県)、海上自衛隊佐世保警備隊が参加しました。米軍側は400人の兵士が参加したことを発表していますが、自衛隊側の参加人数は非公開です。
(5)捜索救助活動
捜索救助活動の訓練は、沖縄県与勝沖の浮原島と周辺の海域で行われました。琉球朝日放送のニュースによると、アメリカ軍の大型航空機が浮原島沖に不時着し20人ほどのケガ人が出ているとの想定で実施、自衛隊とアメリカ軍が海上や島に点在している遭難者を捜索して救助する訓練を行ったとのことです。
米軍からは、米空軍・第31救難隊と第33救難隊、海兵隊・KC−130空中給油機などが参加しました。
自衛隊側は「朝雲新聞」によれば、航空自衛隊のUH−60J救難ヘリ、U−125A救難捜索機、CH−47輸送ヘリ、CH−130輸送機、海上自衛隊のUS−2救難飛行艇が参加したようです。
琉球朝日放送のニュースでは、浮原島に漂着した米軍兵士を航空自衛隊の救難部隊がヘリコプターを使って輸送する様子が報じられました。また米軍のニュースでは、米空軍の救難隊ヘリが海兵隊の空中給油機から燃料補給を受けながら遭難海域に到着し、救難隊員がヘリから海に飛び込んで遭難兵士を救助する様子が映されています。
3.同時に実施された訓練
日米共同統合演習(実動演習)と同時に、陸上自衛隊・方面隊実動演習(西部方面隊)と、日米共同訓練(陸上自衛隊と米海兵隊との実動訓練)の2つが行われました。2つの演習は形式的には独立して行われていますが、実質的には日米共同統合演習に連携していたようです。
(1)陸上自衛隊・方面隊実動演習(西部方面隊)
陸上自衛隊は12月3日から10日の8日間、陸上自衛隊・日出生台演習場(大分県)で、方面隊実動演習を行いました。この演習の規模は、人員約900人・車両約150両・航空機約10機です。訓練には、第1空挺団・第1ヘリコプター団・西部方面連隊・第8師団などの部隊が参加しました。
第1空挺団(千葉県習志野市)と第1ヘリコプター団(千葉県木更津市)は、中央即応集団の所属で、パラシュート降下などによる敵地への投入を主な役割としています。また西部方面普通科連隊(長崎県佐世保市)は、2002年に設立された西部方面隊の直轄部隊で、島嶼防衛を主任務にしています。そのため小型艇を使用した上陸訓練や、密林地帯でのゲリラ戦の訓練、米国で海兵隊との島嶼奪還訓練なども行っています。
OBS大分放送のニュースによると、訓練は、陸上部隊が陣地内で敵の襲撃を受け、パラシュート部隊に応援を要請するという想定で行われたとのことです。また産経新聞は10月3日付けの記事で、この訓練は日出生台演習場を尖閣列島に見立てて、不法占拠した中国軍から奪還する想定と報じています。この記事では、訓練は日米共同統合演習の一環として実施されるとしていましたが、実際には陸上自衛隊単独の演習として行われました。
(2)日米共同訓練(陸上自衛隊と米海兵隊との実動訓練)
陸上自衛隊と海兵隊は12月6日から15日の間、陸上自衛隊・霧島演習場(宮崎県・鹿児島県)で日米共同訓練を行いました。参加したのは、陸上自衛隊・第43普通科連隊の約550人と、第3海兵遠征軍・第31海兵遠征隊の約230人です。
訓練は、日米共同統合演習とは別に実施されました。一方で第31海兵遠征隊の輸送を任務とする揚陸艦や同隊所属のヘリコプターと戦闘機は、日米共同統合演習に参加しています。また在日海兵隊のホームページは、「海上自衛隊と第3海兵遠征軍第31海兵遠征部隊が日米共同統合演習「Keen Sword」を開始し、隊員たちは上陸作戦を含む、様々な訓練展開を実施した」と記載しています。霧島演習上での訓練が、日米共同統合演習に連携していたと考えられます。
4.演習の目的
(1)演習のシナリオ
前述の通り、演習の詳細は明らかになっていません。しかし自衛隊発表の資料や報道記事などから類推すると、演習は以下のように進行したと思われます。
@敵国から在日米軍基地や自衛隊基地に向けて発射された弾道ミサイルを、米海軍と海上自衛隊のイージス艦や、米陸軍と航空自衛隊のPAC−3部隊が迎撃する。
A敵のゲリラ部隊による在日米軍基地への攻撃を、日米の地上部隊が協力して撃退する。
B敵の航空機による日本への侵攻を、米空軍と航空自衛隊が撃退する。
C敵の艦船による日本への侵攻を、米海軍と海上自衛隊が撃退する。
D敵に占領された離島を、自衛隊が奪還する。
E米海軍と海上自衛隊の掃海部隊が、敵国沿岸に敷設された機雷を除去する。
F米海軍の空母とイージス艦が敵国近海に侵入し、敵国への攻撃を行う。
G海兵隊が敵国に対して上陸作戦を行う。
(2)どのような戦争を想定しているのか
今回の演習で想定された日本領土への攻撃は、@弾道ミサイル攻撃、A離島の占領、B在日米軍基地への攻撃――の3つでした。自衛隊が発表した演習項目にも、本土での地上部隊による戦闘は含まれていません。演習は、敵国による日本への本格的な侵攻を想定したものでないようです。これは日米両国政府が、日本に対する本格的な侵攻が起きる可能性が低いと考えているためだと思われます。
またそうした政府の考え方は、菅内閣が12月17日に閣議決定した「新しい防衛計画の大綱」の以下の記述からも明らかです。
V わが国を取り巻く安全保障環境 4 以上を踏まえると、大規模着上陸侵攻等の我が国の存立を脅かすような本格的な侵略事態が生起する可能性は低いものの、我が国を取り巻く安全保障課題や不安定要因は、多様で複雑かつ重層的なものとなっており、我が国としては、これらに起因する様々な事態(以下「各種事態」という。)に的確に対応する必要がある。 X 防衛力の在り方 3 自衛隊の体制 (1)基本的な考え方 なお、本格的な侵略事態への備えについては、不確実な将来情勢の変化に対応するための最小限の専門的知見や技能の維持に必要な範囲に限り保持することとする。 |
本格的な侵攻ではない、日本への攻撃とはどのような事態でしょうか。それは米国とどこかの国が開戦し、それが日本(または在日米軍基地)に飛び火する事態だと考えられます。
それでは日米両国は、具体的にはどの国からの侵攻を想定しているのでしょうか。「新しい防衛計画の大綱」は、アジア太平洋地域における不安要因として、以下の3か国をあげています。
北朝鮮は、大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発、配備、拡散等を継続するとともに、大規模な特殊部隊を保持しているほか、朝鮮半島において軍事的な挑発行動を繰り返している。北朝鮮のこのような軍事的な動きは、我が国を含む地域の安全保障における喫緊かつ重大な不安定要因であるとともに、国際的な拡散防止の努力に対する深刻な課題となっている。 大国として成長を続ける中国は、世界と地域のために重要な役割を果たしつつある。他方で、中国は国防費を継続的に増加し、核・ミサイル戦力や海・空軍を中心とした軍事力の広範かつ急速な近代化を進め、戦力を遠方に投射する能力の強化に取り組んでいるほか、周辺海域において活動を拡大・活発化させており、このような動向は、中国の軍事や安全保障に関する透明性の不足とあいまって、地域・国際社会の懸念事項となっている。 ロシアについては、極東地域における軍事力の規模を冷戦終結以降大幅に縮減しているものの、軍事活動は引き続き活発化の傾向にある。 |
(まとめ)
今回の日米共同統合演習は、過去最大規模であったのと同時に、中国や北朝鮮の脅威を強く意識したものでした。尖閣諸島での中国漁船と海上保安庁船舶の衝突事故や、朝鮮半島西岸での北朝鮮と韓国の砲撃戦を奇貨として、日本政府は安全保障政策を大胆に転換するとともに、米軍と自衛隊の一体的な運用をさらに進めようとしています。
しかし軍事力に軍事力で対抗しようとすれば、際限の無い軍拡競争に巻き込まれてしまいます。また軍事演習に軍事演習で対抗すれば、地域の緊張関係や突発的な軍事衝突の危険性を高めていきます。
私たちは日米両国政府の進める軍拡政策を監視し反対するとともに、軍事力によらないアジア太平洋地域の平和のありかたを考えなければなりません。