ソマリア沖の海賊問題に関する平岡秀夫さん(衆議院議員・民主党)の質問主意書と政府答弁書
衆議院議員・民主党所属の平岡秀夫さんが政府に対して、ソマリアの海賊問題に関する「質問主意書」を提出しました。
また日本政府はこれに対して、「答弁書」を作成しました。
ソマリアの海賊について詳細を問われた政府は、以下のように回答しています。
「ソマリア沖の海賊について、実態の詳細は把握していないが、例えば、母船と小型ボートを使用し、自動小銃やロケットランチャーを保有しているものがあることは、報道等により承知している。」
「ソマリア沖で行われている海賊行為の具体的な内容を逐一把握しているわけではないが、例えば、船舶の無線を傍受してその動きをGPS等で把握し、標的となる船舶を決定し、武装した海賊数名が小型ボートで当該船舶に接近して乗り込み、身代金目当てで乗組員を人質とすることがあることは、報道等により承知している。」
日本政府はいまにも自衛隊を派遣しようとしていますが、実際には現地の状況すら報道以上には把握していないことが浮き彫りになりました。
海賊対策に関する質問主意書
平成二十一年一月二十八日提出
質問第六六号
提出者 平岡秀夫
防衛大臣は、今月二八日、海上自衛隊に対して、ソマリア沖の海賊対策として海上警備行動をとる準備をするよう指示を出した。そこで、海賊対策としての自衛隊の艦船(以下、「自衛艦」と言う)による海上警備行動に関し、政府に対して以下の事項について質問する。
1 東南アジア等における海賊対策
(1) 海賊行為の実態
@ 世界各海域での海賊行為の海域別発生状況(過去一〇年間)を明らかにされたい。
A 海賊行為の発生している世界各海域における日本船籍の船舶の年間通過数(過去一〇年間)を明らかにされたい。
B 世界各海域における日本船籍の船舶の海賊被害の状況(過去一〇年間)を明らかにされたい。
(2) 対策の枠組み
@ 世界各海域における海賊行為に対してどのような対策がとられているか。そのうち、国際的協力が行われているものには、どのようなものがあるか。
A 〇六年九月に発効したアジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)における各国による国際的協力の内容及びその実績如何。
B アジア海賊対策地域協力協定への参加国はどこか。インドネシア、マレーシアが参加していないと聞くが、不参加の理由は何か。
(3) 我が国の対応
@ アジア海賊対策地域協力協定に基づいて、我が国はどのような協力(活動)を行っているのか。
A アジア海賊対策地域協力協定の下で海上保安庁が東南アジア海域に巡視船を派遣していると聞くが、どのような活動をするために派遣されているのか。
B 派遣される巡視船は、東南アジア海域でどのような活動を行うことが可能なのか。また、その活動の法的根拠は何か。
C 我が国からインドネシア海上警察に巡視船を提供したことがあると聞くが、その事実関係を問う。また、武器が装備されている巡視船や巡視艇を外国に提供することは、武器輸出禁止三原則とどのような関係となるのか。
D 海上保安庁がアジア各国の海上保安機関に対して「海上犯罪取締り研修」を実施していると聞くが、その実施についての法的根拠と実績を問う。
2 実態認識等
(1) ソマリア沖の船舶
@ ソマリア沖を通過する各国別の船籍の船舶数(過去一〇年間)を明らかにされたい。
A ソマリア沖を通過する船舶のうち、日本人が乗船している外国船舶及び日本の貨物を積んだ外国船舶の数(過去一〇年間)を明らかにされたい。
B ソマリア沖で海賊行為にあった船舶の各国別被害状況(過去一〇年間)を明らかにされたい。
(2) ソマリア沖の海賊
@ ソマリア沖の海賊の実態(どのような人達がどのような目的で組織しているのか、組織数、組織別の人数、海賊用船舶の性能と大きさ、海賊用の武器の内容と数等)を明らかにされたい。
A 海賊行為の具体的内容を明らかにされたい。
B ソマリア沖で海賊対策に従事する近隣国(イエメン等)の活動状況を明らかにされたい。
(3) ソマリアの現状と見通し
@ ソマリア沖で海賊行為が多発している理由は何か。
A ソマリア暫定連邦「政府」(TFG)を承認している国はどこか。我が国が承認していない理由は何か。
B ソマリアの統一政府の確立に向けて、我が国はどのように対応するつもりか。
(4) 我が国政府に対する要請
@ ソマリア沖の海賊対策に関し、米国その他の外国政府より、我が国に対し何らかの行動要請はあったか。あったとすれば、その詳細(時期、内容、要請の理由など)を問う。
A ソマリア沖の海賊対策として近隣国からどのような協力要請(資金協力、技術協力等を含む)が我が国になされているのか。
B 元防衛庁事務次官が会長を務める「海洋政策研究財団」が、昨年一一月一八日に、政府に対して、自衛艦の派遣要請を出しているが、それ以前に、我が国政府に対して同様の要請が出されたことはあるのか。あるとすれば、いつ、どこから、どのような要請だったのか。
3 法制上の問題
(1) 海賊対策
@ 海賊対策としての活動には、どのようなものが想定されるか(護衛活動、立入り検査、取締り活動、阻止活動、哨戒活動等)。
A 想定される海賊対策としての活動は、法的(国際法、国内法)にはどのようなものと評価されるのか。海上警察権の行使と理解してよいか。
B 海賊対策としての活動のうち、法的(国際法、国内法)に「武力の行使」又は「武力による威嚇」と評価されるものは、あり得るのか。
(2) 国連安保理決議との関係
@ ソマリア沖の海賊対策として、近隣国以外で軍(軍艦、軍用機等)を派遣している国とその派遣内容(派遣時期、派遣規模、派遣先での活動内容等)を問う。
A 安保理決議(一八一六、一八三八、一八四六、一八五一)は、国連憲章の中ではどのような位置づけになるのか。例えば、決議一八四六や一八五一は、武力行使を認める第四二条(第七章)の規定に基づく決議なのか。
B 上記の安保理決議は、ソマリア沖の海賊はどのような実態(組織、団体、人の集まり等)であるとの認識に立って、なされているのか。例えば、ソマリア沖の海賊が「国に準じる組織」である可能性もある、との認識に立っているのか。
(3) 海上警備行動
@ 自衛隊法に基づく海上警備行動は、立法趣旨として、その行動の範囲は日本の沿岸に限られているのではないか。
A ソマリア沖の海賊対策に海上保安庁の巡視船では対処できない理由は何か。
B 自衛隊法第九三条で準用する海上保安庁法第一七条第一項、第一八条及び第二〇条第二項(同項において準用する警察官職務執行法第七条を含む)は、我が国の領域内で適用される規定であるにも拘らず、国連決議があれば我が国の領域外でも適用されるとする法的根拠を示されたい。
(4) 武力行使
@ ソマリア沖の海賊対策として、派遣された自衛艦が武力行使又は戦闘行為に至る事態は想定されないのか。仮に想定されるとすると、その場合の自衛隊の活動は、法的にどのように規制されるのか。
A ソマリア沖での日本船籍の船舶(含む、自衛艦)に対する海賊行為に対して、我が国として、いわゆる「個別的自衛権」が発動できる場合もあり得ると考えているのか。
4 「海上警備行動」のあり方
(1) 過去の実績
自衛隊法に基づく海上警備行動が実施された実績を問う(どの海域で、どのような状況の下で、どの程度の規模で、どの程度の活動をしたか等)。
(2) 派遣組織
@ ソマリア沖に派遣する自衛艦は、どのような性能を持った艦船で、何隻くらいか。また、どの程度の期間派遣されるのか。
A 派遣された自衛艦が海上警備行動の対象として警護等できる船舶は、どの程度か(何隻について、どの程度の期間等)。
B 派遣された自衛艦が海上警備行動の対象とする船舶は、誰が、どのようにして決定するのか。
(3) 具体的活動
@ 海上警備行動の対象に「日本人、日本の貨物を積んだ外国船舶」を含める場合、そのような外国船舶であることは、どのように確認するのか。
A 自衛艦による海上警備行動として、具体的にどのような活動を想定しているのか。
B 武器使用の基準をどのように考えているのか。
C 海賊と外国の軍の艦船が抗争している場合、自衛艦はどのような行動をとりうるのか。
D ソマリア沖で海上警備行動を行う自衛艦は、現地でどのようにして燃料調達をすることになるのか。
E 所要の自衛艦をソマリア沖に一年間派遣する場合、我が国からソマリア沖への往復の費用も含め全体でどの位の費用が掛かるのか。また、その大まかな内訳を共に示されたい。
(4) 各国との関係
@ 各国が派遣した軍艦等が護衛等の対象としている船舶には、何らかの限定があるのか。
A 各国が派遣した軍艦等は、国際法上及び国内法上、どの範囲の活動が認められているのか。
B 各国が派遣した軍艦等の活動の調整は、誰がどのようにして行っているのか。自衛艦と他の国の軍艦等の活動の調整は、誰がどのようにして行うのか。
C ソマリア沖はCTF150(米国中央海軍支配下の合同海上部隊が統括する第一五〇合同任務部隊)の作戦海域となっているが、CTF150は、どのような海賊対策をこれまでとってきたのか。
D 現在、海賊対策の一環としてEU司令部がロンドンに置かれているが、同司令部が指揮する作戦の具体的内容は何か。同司令部の指揮下に入っている軍艦等の国籍はどこか(インド、中国などEUに加盟していない国の軍艦も指揮下に入っているのか)。
E バーレーンに海賊対策を目的とするCTF151が設置された。CTF151、CTF150、EU司令部の間に指揮権、活動海域の重複が発生していると考えられるが、この点、どのような調整が行われているのか。
F CTF151及びEU司令部の指揮下で海賊対策で活動する艦船に対し、海上自衛隊補給艦は、補給新法に基づいて給油を行うことは法的に可能なのか。
(5) 司法手続き
@ 各国が派遣した軍艦等は、どのような法的根拠に基づいて海賊(被疑者)を逮捕、拘束するのか。また、その後の手続はどのように行われているのか。
A ソマリア沖において海賊対策に従事している軍艦等が、拘束した海賊を沿岸国に引き渡した例はあるか。あるとすれば、その詳細を問う。また、沿岸国への引き渡しは、どのような法的根拠に基づいて行われたのか。
B 公海上又は外国の領海内で海賊行為を実施した海賊(被疑者)に対する自衛艦(同乗する海上保安官を含む)による逮捕、取調べ、勾留、犯人引渡し等、及びその後の起訴や裁判等の司法手続きは、どのような法的根拠に基づき、どこで、どのように行っていくのか。
C 公海上又は外国の領海内で自衛艦が拘束した海賊を沿岸国に引き渡すためには、当該沿岸国と何らかの取決めを結ぶ必要があるのではないか。また、新たな取決めを必要とする場合、その内容はどのようなものになるのか。
D 自衛艦に同乗すると言われている海上保安官は、どのような業務を、何人程度で行うことを想定しているのか。
5 今後の対応
(1) 海賊行為の犯罪化
@ 「海賊行為」(国連海洋法条約第一〇一条)は、我が国の現行法上、どのような犯罪となるのか。
A 我が国の領海内で行われる「海賊行為」、我が国船籍の船舶に対する「海賊行為」、邦人が乗船する(又は邦人が所有する財産を積載する)船舶に対する「海賊行為」以外の海賊行為(以下、「特定海賊行為」と言う)を犯罪化する場合、守るべき法益は何か。
B 特定海賊行為を処罰するための手続は、どのようになるのか。
(2) 自衛艦の派遣恒久法
@ 政府が、海上自衛隊の艦船を海外派遣する必要性が認められると考えるケースとして、どのようなケースがあるのか。
A 政府は、海上自衛隊の艦船を海外派遣する場合において法的整備が必要であると考える事項として、どのようなものがあるのか。
右質問する。
※原文は衆議院サイト内の以下のアドレスです。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a171066.htm
衆議院議員平岡秀夫君提出海賊対策に関する質問に対する答弁書
1の(1)の@について
世界の各海域における海賊等の事案の過去十年間の発生状況は、国際商業会議所国際海事局の年次報告によると、次のとおりである。
千九百九十九年については、東南アジア百六十一件、インド周辺四十九件、北米及び南米二十八件、アフリカ五十五件、その他海域八件である。二千年については、東南アジア二百四十一件、インド周辺九十四件、北米及び南米三十九件、アフリカ六十九件、その他海域二十六件である。二千一年については、東南アジア百五十三件、インド周辺五十四件、北米及び南米二十一件、アフリカ八十六件、その他海域二十一件である。二千二年については、東南アジア百五十三件、インド周辺五十二件、北米及び南米六十五件、アフリカ七十八件、その他海域二十二件である。二千三年については、東南アジア百七十件、インド周辺八十七件、北米及び南米七十二件、アフリカ九十三件、その他海域二十三件である。二千四年については、東南アジア百五十八件、インド周辺三十二件、北米及び南米四十六件、アフリカ七十三件、その他海域二十件である。二千五年については、東南アジア百二件、インド周辺三十六件、北米及び南米二十五件、アフリカ八十件、その他海域三十三件である。二千六年については、東南アジア八十三件、インド周辺五十三件、北米及び南米二十九件、アフリカ六十一件、その他海域十三件である。二千七年については、東南アジア七十件、インド周辺三十件、北米及び南米二十一件、アフリカ百二十件、その他海域二十二件である。二千八年については、東南アジア五十四件、インド周辺二十三件、北米及び南米十四件、アフリカ百八十九件、その他海域十三件である。
1の(1)のAについて
お尋ねについては、調査・把握しておらず、お答えすることは困難である。
1の(1)のBについて
世界の各海域における過去十年間の日本船籍の船舶の海賊等に対する事案について、発生年月、場所及び被害対象等の状況は、平成二十年末現在、次のとおりである。
一 千九百九十九年一月 インドネシア 物品
二 千九百九十九年四月 インドネシア 海賊が侵入したが、乗組員の発見により逃走したものであり、実質的な被害なし
三 千九百九十九年九月 スリランカ 物品
四 二千年三月 インドネシア 物品
五 二千四年四月 マレーシア 現金、負傷者一名
六 二千五年三月 マレーシア 物品及び現金、拉致被害者三名
七 二千五年四月 インドネシア 物品
八 二千七年四月 インドネシア 海賊が侵入したが、乗組員の発見により逃走したものであり、実質的な被害なし
九 二千八年三月 インドネシア 物品
十 二千八年四月 アデン湾 船舶に被弾
1の(2)の@について
海洋法に関する国際連合条約(平成八年条約第六号)第百条において、すべての国は、最大限に可能な範囲で、海賊行為(同条約第百一条に規定する海賊行為をいう。以下同じ。)の抑止に協力することとされているが、お尋ねの「世界各海域における海賊行為に対してどのような対策がとられているか」について、政府としてその内容を網羅的に把握しておらず、お答えすることは困難である。
1の(2)のAについて
アジア地域で海賊等の事案が発生した場合、アジアにおける海賊行為及び船舶に対する武装強盗との戦いに関する地域協力協定(以下「協定」という。)に基づいてシンガポールに設立された情報共有センター(以下「センター」という。)を通じ、関連情報が直ちに協定の締約国間で共有されるようになっており、このことは、協定の締約国が迅速かつ適切な海賊等への対策をとる上で極めて重要な役割を果たしていると考えている。また、センターの主催により、協定の締約国の法執行機関等の間で、取締能力の向上を図るため、種々のワークショップ等が開催されるなどしている。
1の(2)のBについて
現在、日本、シンガポール、ラオス、タイ、フィリピン、ミャンマー、大韓民国、カンボジア、ベトナム、インド、スリランカ、中華人民共和国、ブルネイ及びバングラデシュの十四か国が、協定を締結している。インドネシア及びマレーシアが協定を締結していない理由については、日本政府としてお答えする立場にない。
1の(3)の@について
我が国は、センターに対し、事務局長を含む職員二名の派遣や、財政的な支援を行っている。
1の(3)のA及びBについて
海上保安庁は、海上保安庁法(昭和二十三年法律第二十八号)第二条第一項の規定に基づき、海上における犯罪の予防及び鎮圧並びに犯人の捜査及び逮捕、海難救助その他海上の安全の確保に関する事務等を行うことにより、海上の安全及び治安の確保を図ることを任務としており、協定に基づくものではないが、海賊対策のため巡視船を東南アジアに派遣し、派遣先各国との間で連携訓練、乗船研修、情報交換等を実施するとともに、海賊事案発生時においては、被害船の捜索・犯罪捜査等所要の措置をとることとしている。
1の(3)のCについて
平成十八年、政府は、インドネシア政府に対し、政府開発援助として、同国国家警察本部海上警察局等による巡視船艇三隻の整備のための無償資金協力を実施した。当該巡視船艇は、乗務員を保護するための防弾措置を施した結果、輸出貿易管理令(昭和二十四年政令第三百七十八号)に規定される軍用船舶に該当し、武器輸出三原則等にいう武器等に当たるものであったが、前記の無償資金協力の実施に際して行われるその輸出については、我が国政府とインドネシア政府との間の国際約束で、当該巡視船艇が我が国の政府開発援助の対象であるテロ・海賊行為等の取締り・防止に限定して使用されること及び当該巡視船艇を我が国政府の事前同意なく第三者に移転しないことが担保されることを条件として、武器輸出三原則等によらないこととした。政府としては、武器の輸出管理について、国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出三原則等の基本理念にかんがみ、慎重に対処するとの方針を堅持しており、テロ・海賊対策支援等に資する個別の案件については、当該基本理念に照らし、個別の案件ごとに検討の上、結論を得ることとしている。
1の(3)のDについて
「海上犯罪取締り研修」は、東アジア諸国の海上法執行能力向上を目的として、平成十三年度から独立行政法人国際協力機構が実施しているものであるが、海上保安庁は、海上保安庁法第二条第一項の規定に基づき、研修計画の策定、講師の派遣等を通じて本研修に協力している。これまで、本研修に延べ十五か国から百十五人の研修生が参加している。
2の(1)について
お尋ねについては、調査・把握しておらず、お答えすることは困難である。
2の(2)の@について
ソマリア沖の海賊について、実態の詳細は把握していないが、例えば、母船と小型ボートを使用し、自動小銃やロケットランチャーを保有しているものがあることは、報道等により承知している。
2の(2)のAについて
ソマリア沖で行われている海賊行為の具体的な内容を逐一把握しているわけではないが、例えば、船舶の無線を傍受してその動きをGPS等で把握し、標的となる船舶を決定し、武装した海賊数名が小型ボートで当該船舶に接近して乗り込み、身代金目当てで乗組員を人質とすることがあることは、報道等により承知している。
2の(2)のBについて
御指摘の近隣国の範囲が定かではないが、例えば、イエメン及びジブチは、それぞれ沿岸警備隊と海軍により、周辺海域の哨戒等を実施していると承知している。
2の(3)の@について
お尋ねの理由を特定することは困難であるが、ソマリア情勢の不安定化に伴い、ソマリア沖においては海賊行為による被害が増加していると認識している。
2の(3)のAについて
政府承認制度の態様は一様でないこともあり、お尋ねについてお答えすることは困難である。我が国は、ソマリア暫定連邦「政府」(以下「TFG」という。)がソマリア全土に対する実効支配を確立していない状況を踏まえ、TFGに対する承認を見合わせている。
2の(3)のBについて
我が国としては、ソマリアにおける和平の取組を支援する等、ソマリア情勢の安定のために協力していく考えである。
2の(4)の@について
御指摘の「何らかの行動要請」の意味が必ずしも明らかでなく、お尋ねについてお答えすることは困難である。
2の(4)のAについて
御指摘の近隣国の範囲が定かではないが、イエメン及びケニアから、各々の海上保安能力の向上等を目的とした支援要請がなされている。
2の(4)のBについて
御指摘の日本財団及び海洋政策研究財団の要請以外に、平成二十年十一月十八日以前に、政府に対して、ソマリア沖の海賊対策として具体的に自衛隊の艦船の派遣要請が出された例については、承知していない。
3の(1)の@並びに4の(2)及び(3)について
政府としては、海賊対策のための新たな法制を整備するまでの応急措置として、自衛隊が自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八十二条の規定による海上における警備行動によってソマリア沖の海賊に対処するための準備を開始したところであり、実際に当該警備行動を発令することとなった場合には、派遣する艦艇としては、護衛艦二隻を考えているが、その他のお尋ねの点については、現時点でお答えすることは困難である。
3の(1)のA及びB並びに(4)の@について
海賊行為への対処のため自衛隊法第八十二条の規定により海上における警備行動を命ぜられた自衛隊の自衛官が、公海上において、海賊行為であって我が国の刑罰法令が適用される犯罪に当たる行為を行った者に対し、同法第九十三条第一項において準用する警察官職務執行法(昭和二十三年法律第百三十六号)第七条の範囲内で武器を使用することは、国際法上問題となることはない。また、このような武器の使用は、憲法第九条が禁ずる「武力の行使」又は「武力による威嚇」に当たらない。
3の(2)の@について
お尋ねについて網羅的に把握しているわけではないが、例えば、アメリカ合衆国、英国、フランス、ドイツ、デンマーク、スペイン、ロシア、インド、中華人民共和国、マレーシア等が、ソマリア沖の海賊対策として軍艦又は軍用機を派遣していると承知している。
3の(2)のA及びBについて
国際連合安全保障理事会(以下「安保理」という。)決議第千八百十六号、第千八百三十八号、第千八百四十六号及び第千八百五十一号において、安保理は、ソマリアの領海内及びソマリア沖の公海上の海賊行為及び武装強盗行為が、地域における国際の平和及び安全に対する脅威となっているソマリア情勢を更に悪化させていると認定している。その上で、安保理は、国際連合憲章第七章の下で行動しつつ、TFGと協力し、かつTFGが同意する国等が、関連する国際法の下で海賊に関し公海上で許容される行為に合致する方法であること等の一定の条件の下で、ソマリアの領海内等において、武装強盗行為等を抑止するためにあらゆる必要な措置を用いることを認めている。
3の(3)の@及びBについて
自衛隊法第八十二条の規定による海上における警備行動の範囲及び同法第九十三条に規定する海上における警備行動時の権限については、公海上にも及ぶものと考えている。
3の(3)のAについて
ソマリア沖の海賊対策として、海上保安庁の巡視船を派遣することは、日本からの距離、海賊が所持する武器、有志連合軍の軍艦等が対応していること等を総合的に勘案すると、現状においては、困難である。
3の(4)のAについて
海賊行為とは、私有の船舶の乗務員等が私的目的のために行う不法な暴力行為、抑留又は略奪行為であり、その取締りは、国際連合憲章第二条第四項で禁止されている「武力の行使」に当たらない。
4の(1)について
自衛隊法第八十二条の規定により海上における警備行動を実施した事例は、次のとおりである。
一 能登半島沖不審船事案 平成十一年三月二十三日に能登半島沖で、二隻の不審船舶に対して、海上自衛隊の護衛艦及び対潜哨戒機が追跡、停船命令、警告射撃等を行った。
二 中国原子力潜水艦による我が国の領海内潜没航行事案 平成十六年十一月十日に先島群島周辺海域の我が国の領海内を潜没航行している国籍不明の潜水艦に対して、海上自衛隊の護衛艦、対潜哨戒機及び対潜ヘリコプターが追尾を行った。
4の(4)の@について
御指摘の軍艦等がいかなる船舶を護衛等の対象としているか等について網羅的に把握しているわけではなく、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、自国籍の船舶を優先的に護衛している例もあると承知している。
4の(4)のAについて
御指摘の軍艦等の活動については、海洋法に関する国際連合条約を含む国際法及び各国の国内法に従い行われているものと理解しており、国際法上、軍艦等には公海等において海賊行為を理由とするだ捕を行うことなどが認められているが、各国の国内法に基づきいかなる活動が認められるか等については、日本政府として具体的に申し上げる立場にはない。
4の(4)のBについて
各国が派遣した軍隊等の活動の調整について、具体的には承知していない。また、ソマリア沖の海賊に対処するため自衛隊法第八十二条の規定による海上における警備行動による自衛隊の派遣の準備を開始したところであり、お尋ねの「自衛艦と他の国の軍艦等の活動の調整」について現時点でお答えすることは困難である。
4の(4)のCについて
CTF一五〇に所属する艦船について、その活動内容を網羅的に把握しているわけではないが、海賊船舶を発見した場合などに、海賊行為を阻止し及び抑止するための行動をとることもあると承知している。
4の(4)のDについて
現在、欧州連合(以下「EU」という。)が行っているアタランタ作戦の下では、英国、ドイツ等の軍艦等が、国際連合世界食糧計画が契約した船舶への併走及びソマリア沖における監視等を実施しており、その司令部は、英国のノースウッドに置かれていると承知している。なお、現時点でEU非加盟国の軍艦がEU海軍作戦の指揮下に入っているとは承知していない。
4の(4)のEについて
お尋ねについては、把握していない。
4の(4)のFについて
御指摘のような艦船について、その任務の詳細を承知していないため、お答えすることは困難であるが、一般論として申し上げれば、テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法(平成二十年法律第一号)では、ある外国の艦船が補給支援活動の対象となるためには、当該艦船がテロ対策海上阻止活動に係る任務に従事するものであり、その艦船に対して補給支援活動を実施することがテロ対策海上阻止活動の円滑かつ効果的な実施に資するものと認められることが必要である。
4の(5)の@について
各国が国内法上いかなる根拠に基づいて海賊を取り締まっているか等について、日本政府として具体的に申し上げる立場にはない。
4の(5)のA及びCについて
御指摘の「拘束した海賊を沿岸国に引き渡」す等の意味するところが明らかでなく、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。
4の(5)のB及びDについて
お尋ねについては、海賊行為であって我が国の刑罰法令が適用される犯罪に当たる行為があった場合には、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)等に基づき、捜査等所要の手続を実施することとなる。なお、その具体的実施方法等については、現在、政府において所要の検討を進めているところである。
5の(1)の@について
海賊行為が、現行法上、我が国のいかなる刑罰法規に該当するかは、個別の事案ごとに判断されるべきであり、一概にお答えすることはできないが、例えば、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百三十六条第一項に規定する強盗罪等に当たる場合があるものと考えている。
5の(1)のA及びBについて
政府においては、海賊行為への適確な対処を図るための所要の法整備について検討しているところであり、お尋ねについて現時点でお答えすることは困難である。
5の(2)の@について
御指摘の「派遣恒久法」及び「海外派遣」の意味するところが明らかではないが、自衛隊が海賊行為に対処する場合としては、公海上のある海域で頻発する海賊事案に我が国として対処する必要がある場合であって、当該海域における海賊対策として海上保安庁の巡視船を派遣することが困難であるときなどが考えられる。
5の(2)のAについて
御指摘の「派遣恒久法」及び「海外派遣」の意味するところが明らかではないが、現在、政府においては、海賊行為への適確な対処を図るための所要の法整備について検討しているところであり、その検討には、自衛隊が海賊行為に適切に対処するために必要な事項などが含まれている。
※原文は衆議院サイト内の以下のアドレスです。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b171066.htm