海兵隊グアム移転協定 10の問題点
作成日:2009年5月11日
作成者:平和フォーラム 八木隆次
はじめに 「海兵隊グアム移転協定」とは何か?
日米両国政府は、2006年5月1日にワシントンD.Cで日米安全保障協議委員会(2プラス2)を開催し、「再編実施のための日米のロードマップ」(以下、ロードマップ)を発表しました。同協議委員会は、日本側は外務大臣と防衛大臣が、米国側は国務長官と国防長官がメンバーとなり、在日米軍再編に関する協議を進めていました。「ロードマップ」は日米政府の合意をまとめたものです。
「ロードマップ」には、沖縄に駐留する海兵隊について、以下の4点が盛り込まれました。
@2014年までに名護市辺野古沖に新基地を新設し普天間基地を移転する
A2014年までに海兵隊員約8,000人と家族約9,000人をグアムに移転する
B沖縄から移転する海兵隊のためにグアムに建設する新基地の費用総額102.7億ドルのうち、日本が28億ドルの直接的な財政支援を含めた60.9億ドルを支出する
C普天間基地移設と海兵隊グアム移転の後に、嘉手納基地以南の相当規模の米軍基地を返還する
ヒラリー・クリントン米国務長官と中曽根弘文外務大臣は2月17日に東京で、「海兵隊グアム移転協定」に署名しました。「海兵隊グアム移転協定」は、「ロードマップ」の内容を日米政府間で再確認したものです。
日本政府は「グアム移転協定」を、国会承認が必要な「条約」としました。3月27日に衆議院外務委員会で外務大臣からの趣旨説明が、4月3日・8日・10日には審議が行われ、4月10日には委員会で承認、4月14日には本会議で承認されました。条約は衆議院の決定が参議院に優越するために、事実上の国会承認です。
しかし、外務委員会では野党の追及によって、協定の持つ様々な問題点が浮き上がりました。以下は問題点をまとめたものです。
問題点1.沖縄からグアムに移転する8,000人は、「実数」ではなく「定数」だった。
「ロードマップ」には、沖縄に駐留する海兵隊員のうち約8,000人と、その家族約9,000人を米国領のグアムへ移転すると書いています。政府の資料によれば、08年12月時点で沖縄に駐留している海兵隊員の「実数」は12,461人です。ここから約8,000人が移転すれば、沖縄に残留する海兵隊員の数は約4,500人になります。
ところが国会審議の中で、そうではないことが明らかになりました。日米両国政府の合意は、沖縄に駐留する海兵隊員の「定数」は18,000人であり、そこから約8,000人を削減して、「定数」を10,000人にする――というものだったのです。
前述の通り、沖縄に駐留する海兵隊の「実数」は12,461人です。「定数」を10,000人にするのであれば、削減される「実数」は最大でも約2,500人でしかありません。
社民党の辻元清美衆議院議員は麻生太郎総理に、「仮に12,000人の実数がいて、8,000人移転となったら、その時点で何人沖縄に残るかわからないというのが本協定の中身ですね」と質問しました。これに対して麻生総理は「実数はわかるはずがないと思っております」と回答しました。また「1人も減らない可能性があるじゃないかというような極端な議論をされましたが、大幅に、9,000人減ったらどうするんですか」とも話したのです。
中曽根弘文外務大臣は協定の趣旨説明で、「この協定の締結は、第3海兵機動展開部隊の要員約8,000人及びその家族約9,000人の沖縄からグアムへの移転の実施を確実なものとし、沖縄県の負担の軽減に資するものと考えられます」としました。また審議の中でも度々、「抑止力を維持しつつ、特に沖縄の負担を軽減する」ことを強調しました。しかし実数の不明な削減案が、沖縄の人々の負担の軽減につながるのでしょうか。
問題点2.なぜいま協定を結ぶのか。
「ロードマップ」の発表は06年5月1日、在日米軍再編最終合意の発表は07年5月1日でした。一方、「海兵隊グアム移転協定」の署名は09年2月17日です。
最終合意直後の07年5月10日、参議院外交防衛委員会で、民主党の浅尾慶一郎参議院議員は政府に、「国際約束として交換公文も含めた文書で合意するつもりはないのか」、「国際約束という形で結び、それを国会で批准する形をとった方が手続きとしてはいいのではないか」と質問しました。
「ロードマップ」の中で日本政府は、2014年までの複数年にわたって、グアムに建設する海兵隊施設の資金を、国の予算から支出することを約束しています。しかし、日本の国家予算は1年ごとに支出を決める単年度主義で、複数年にわたる支出を決めることができません。日本が米国に対して複数年にわたる支出を約束するのであれば、その根拠となる国際約束=条約が必要になるのです。
ところが浅尾議員の質問に、当時の麻生太郎外務大臣は、「全体の流れの中で、両国首脳で決めた話であり、2プラス2で細目を詰めつつあるので、これをきちんと表明をした上で、額が決まった段階で今度は予算をお願いする、予算の審議をお願いするという形になる」として、条約締結の必要性を認めませんでした。
その国会答弁から1年9か月後に突如として協定が結ばれ、条約としての国会審議が行われたのです。野党は政府に対して、
@協定署名と条約としての国会承認は、総選挙後の政権交代を見越した米国政府が、日本の次の政権からの予算支出を担保するためではないか、
Aオバマ大統領の海兵隊2万7,000人増員表明により、沖縄海兵隊の削減が難しくなった場合でも、グアム新基地建設に日本から予算支出させるためではないか
――と質問しました。しかし、日本政府はこれらの質問に、明確な回答を出すことができませんでした。
3.日本では国際条約、米国では行政協定。これは不平等協定ではないのか。
日本政府は「グアム移転協定」を「条約」として扱い、国会での承認事項にしました。しかし米国政府は「行政協定」として扱い、連邦議会での審議を行っていません。また「グアム移転協定」には、日本政府は28億ドルの予算を支出すると書いてあります。一方で米国政府は、「資金の拠出を含む移転のために必要な措置をとる」とするのみで、「ロードマップ」で約束した具体的な金額を書いていません。なぜ両国で対応と約束が異なるのでしょうか。
この点を追及されて、外務省の梅本和義北米局長は、「米議会については、できるだけ米国の負担を下げるよう、同盟国の負担を求めるという姿勢が非常に強いという一般的な傾向があり、そういう中で、米政府が今回の協定について、議会の承認の問題については、議会承認を求めない行政協定というふうにしている理解している」と回答しました。
日本では、予算案は政府が作成し、国会が可決します。米国では、大統領は予算教書を連邦議会に提出しますが、予算案自体は連邦議会が作成します。大統領が海兵隊のグアム移転に関連する予算を求めても、連邦議会がそれを予算に組み込まない可能性は十分にあります。つまり米国政府が、「ロードマップ」で約束した金額を支払えない場合があるのです。
日本側は「条約」として確実な支出を求め、米国側は「行政協定」で支出に縛られないというのは、明かに不平等協定です。
4.ドイツや韓国は米軍撤退に金を払わない。キルギスは米軍基地使用料を要求。
外務省が国会に提出した資料によれば、在ドイツ米軍は62,000人から24,000人へ、在韓米軍は37,500人から28,500人へ削減されるとのことです。しかし両国とも、米軍の撤退に関連する費用を支出することはしません。
民主党の池田元久衆議院議員は政府に、「先進国が自国に駐留する同盟国の軍隊の撤収や同盟国内の国内基地建設のために資金を出した例はあるか」と質問しました。政府は、「同盟国の間で、一方が他方の部隊の撤退を求める、そしてその撤退について経費を負担する、そういう例があるというふうには承知していない」と回答しています。
同じく民主党の篠原孝衆議院議員は、キルギスが米軍の駐留期限終了を決定したことについて質問しました。キルギスは旧ソ連の一部で現在は独立国です。米軍は01年の9・11以降、キルギスのマナス空軍基地に駐留しアフガニスタンへの中継地点として活用していました。キルギス政府は米国に、従来は1,740万ドルであった基地使用料を1億5,000万ドルに値上げすることを通告しました。しかし米国が受け入れなかったため、基地使用協定を破棄したのです。
篠原議員は政府に、「日本の税金を投入して、出て行ってくれるのにお金を払う。片や使わせているのに金を払え、10倍払えと言って、嫌だと言ったら出て行けと言っている。この大きな違いはいったいどこから出てくるのか」と質問しました。これに対して外務省の伊藤信太郎副大臣は、「日米同盟は我が国の外交の基軸であり、我が国の平和と安全を確保する上で、キルギスのように動くことはできない」と答えています。
5.沖縄から海兵隊が去った後に、他の部隊が来る可能性もある。
政府の資料によれば、沖縄に駐留する米軍兵士の総数は21,575人です。ここから海兵隊約2,500人がグアムに移転すれば、約12%の削減になります。では今回の海兵隊移転の後に、他の米軍部隊が沖縄にやってくることはないのでしょうか。辻元議員の質問に対して、外務省の梅本北米局長は、(日米安保や地位協定では)「駐留の数について何らかの形で上限を設ける仕組みにはなっていない」、「仮に定員が1万人となったとしても、それより1人でも来てはいけないとはならない」、「例えばグアムに根拠地を持つ海兵隊員の一部が沖縄に一時的に来る、そしてまた帰るということは、そこまで排除するということはない」と答えています。
「ロードマップ」にも「海兵隊グアム移転協定」にも、沖縄海兵隊の定数を10,000人にするとは書かれていません。また沖縄海兵隊に18,000人という定数があることも、これまで明らかにされたことはありませんでした。現在の定数18,000人も、削減後の定数10,000人も、日米政府が口先で言っているだけです。沖縄の海兵隊では、司令部・補給部隊・支援部隊は常駐ですが、戦闘部隊は米国からローテーションでやって来ます。ローテーションで沖縄にやって来た海兵隊が訓練を行う、北部訓練場やキャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブなどの基地は、日本に返還される予定はありません。北米局長の答弁を勘案すると、2,500人がグアムに移転した後に、他の部隊がローテーションで沖縄に来ること、沖縄海兵隊の定数が再度変更になることも考えられます。
6.日本の予算で作る兵士住宅を、沖縄以外から来た海兵隊員が使う場合もある。
「ロードマップ」で日本は、総額60億9,000万ドルの支出を約束しています。内訳は以下の通りです。
@司令部庁舎・教場・隊舎及び学校等生活関連施設 28億ドル 直接的な財政支出
A家族住宅 25億5,000万ドル 出資・融資
B電気・上下水道などのインフラ整備 7億4,000万ドル 融資
これらの財政支出や融資が適当であるのか検討するために、野党は政府に対して、隊舎や家族住宅の数などを公開するように要求してきましたが、政府は数を秘密にしてきました。それが米海軍の米議会に対する報告によって、独身将校用官舎400室・独身下士官用隊舎3,400室・家族住宅3,520戸であることが明らかになりました。
この部屋数・戸数は、沖縄からグアムに移転する海兵隊員が、約8,000人であることを前提にしています。しかし先に見たように、沖縄からグアムに移転する海兵隊員は、最大で約2,500人です。8,000人分の部屋や家を作ってしまえば、5,000人分以上が余ってしまいます。
この点を追及された政府は、「具体的にその隊舎の運営について一々、沖縄にいる人だけしかそこに入れない、要するに今沖縄にいる人でないとその隊舎に行かないというようなことではない」と答えました。
日本政府はこれまで、日本の財政支出や出資・融資で建設する隊舎や家族住宅は、沖縄からグアムに移転する海兵隊員と家族のためと説明してきました。しかし実際には、日本政府は米国政府に対して、隊舎や家族住宅の運営についての確認を行っていなかったのです。
7.日本の予算で作る施設を、海兵隊以外が使う場合もある。
2月16日の朝日新聞に、『米海空軍施設も負担、海兵隊グアム移転巡り202億円』という記事が掲載されました。記事には、「米軍再編で日米合意された沖縄の米海兵隊のグアム移転を巡り、09年度の政府予算案に計上された日本側の経費負担346億円のうち202億円が、グアム島の米海・空軍の施設の基盤整備にあてられることが分かった」、「このうち174億円がグアムの海軍基地内にあるアプラ港の基盤整備事業に、28億円は同島のアンダーセン空軍基地の土地造成や上下水道管の埋設などの基盤整備事業にあてられることが、防衛省への取材で判明した」と書かれています。
日本政府は支出の対象を、沖縄からグアムに移転する海兵隊に関連するものと説明していました。この記事について問われた政府は、海軍や空軍の施設も海兵隊が使用するという答弁を行いました。現在のグアム島にある主な米軍基地は、海軍の軍港と空軍の飛行場です。米軍は今後グアムを、陸・海・空・海兵の4軍が駐留する、アジア太平洋地域の一大軍事拠点にしようとしています。しかしグアム島のどの部分をどの軍隊が使用するのかなど、明確な計画は明らかにされていません。日本の税金が、沖縄海兵隊のグアム移転とは関係のない米軍基地のために使われてしまう可能性もあるのです。
8.物価が上がったらどうするの? 建設費の返済は50年ローン。
そもそも日本側の負担28億ドルは、どのように決まったのでしょうか。民主党の武正公一衆議院議員は、「積算根拠は何か、これでは国会審議は深まらない」と質問しました。これに対して麻生総理は「これ以上は払わないという上限を決めた。最初は33ぐらいからスタートして、最終的には28になったと記憶している。下から積み上げてきたというより、上限をこれ以上は払わないとした交渉内容だった」と答えました。つまり28億円は日本が負担するべき必要項目を精査したのではなく、「つかみ金」だったのです。
武正議員は、「2008会計年度ドルの規定した物価よりも高くなっていけば、28億ドルも増えていくのか」とも質問しています。これに対する政府の答弁は「そのような理解でよろしいと思う」とのことでした。28億ドルは、麻生総理の言うような上限ですらないのです。
また家族住宅や水道・電気などの社会資本の整備については出資・融資として行い、50年かけて使用料や家賃として回収するとしています。しかし50年後までグアムの海兵隊基地が現在と同じ状況で、家賃を回収できる保証はありません。
9.沖縄県民に内緒にしていたオスプレーの配備。
日本政府は、名護市辺野古沖に普天間基地の代替施設を建設するための、環境影響評価(アセスメント)の作業を進めています。アセスメントでは、普天間基地に配備されている航空機が辺野古の新基地に移転した場合に、どのような影響を与えるのかも調査項目です。
今回のアセスメントは、現時点で普天間基地に配備されている航空機のみが対象で、今後米軍が配備を予定しているオスプレーを想定したアセスメントは行われていませんでした。
オスプレーは、ヘリコプターとプロペラ機を合わせたような航空機で、離陸・着陸のときにはプロペラを上に向け、飛行のときにはプロペラを前に向けます。機体構造が複雑なため、試作段階から事故が絶えませんでした。そのため辺野古の人々や予定される飛行経路下にある地域の人々は、新設される基地にオスプレーが配備されることを警戒しています。
辺野古新基地へのオスプレーの配備とアセスメントの関係について、民主党の近藤昭一衆議院議員と、防衛省の長岡憲宗経理装備局長の間で、以下の様な質疑が行われました。
近藤「オスプレーが配備されたときに、それが環境評価を超えたら、問題があったらどうするのか」
長岡「事業内容に変更が生じる場合には、関係法令に従って適切に対処する」
近藤「適切にという意味はなにか」
長岡「将来の仮定の問題であるので、そのときの状況に応じてとなる」
しかし日本政府はこれまで、米軍が航空機などの配備を変更した際に、「関係法令に従って対処」した前例はありません。
また、日本政府はこれまで、米国側から沖縄にオスプレーが配備されるとは聞いていないとしてきました。しかし現在は「海兵隊が全世界に保有しているCH46あるいはCH53のヘリコプターは、オスプレーに代替更新されていく一般的な予定がある。将来オスプレーが沖縄に配備される可能性も否定できない」と答弁を変更しています。
この答弁の変化は、辻元議員が安全保障委員会で、2プラス2の議事録の中に、米国側がオスプレーの配備について地元住民の理解を求めるよう要求したのに対して、日本政府がオスプレー配備を表明してもらっては困ると米国側に依頼した――との記述があることを明らかにしたからです。
今回の質疑でも辻元議員は、「オスプレー配備の可能性があることを、地元の皆さんに報告しているのか。説明した事実があるなら、いつ、だれがしたのか」と質問しました。これに対して政府は、「国会の答弁というものは、公表されているもの、そういう意味で、関係者は招致されているだろう」と答えたのです。
10.タッチ・アンド・ゴーは飛行ではないの?
外務委員会に参考人として出席した宜野湾市の伊波洋一市長は、普天間基地での訓練は基本的にタッチ・アンド・ゴーであり、多いときには1日に300回を超える訓練が行われていると話しました。タッチ・アンド・ゴーとは、航空機が、基地からの離陸、上空で旋回、基地への着陸を何度も繰り返す訓練のことです。
政府は、現在普天間基地で行われている訓練のうち、他に移転されるKC130輸送機以外の訓練は、基本的に辺野古に建設する新基地でも実施するとしています。ところが政府が進めているアセスメントの中には、騒音の部分についてはタッチ・アンド・ゴーも含まれているが、飛行経路の部分については、タッチ・アンド・ゴーが含まれていないことが明らかになりました。
「どうして飛行経路に入れないのか」という辻元議員の質問に対して、政府は、「飛行経路はヘリコプター等において、他の地域における飛行を行う場合の経路を示しているもの」、「タッチ・アンド・ゴーは、基本的に、離陸・着陸のヘリコプターの訓練で、基本的には基地の中での対応となる」と答えています。また「離陸・着陸をしてホバリングするものが恐らく多いと考えているが、タッチ・アンド・ゴーの回数はそう多くないと聞いている」とも言っているのです。
ところで、政府の計画では、辺野古に建設する新基地は、離陸用と着陸用の2本の滑走路(V字型滑走路)を持っています。これは騒音や墜落事故を危惧する辺野古周辺の住民に配慮し、離陸と着陸を別の飛行経路とすることで住宅地の上空を航空機が飛ばないようにするための措置です。しかし、タッチ・アンド・ゴーは離陸と着陸を繰り返す訓練ですから、離陸用と着陸用の滑走路が別々では実施することができません。辺野古の新基地でタッチ・アンド・ゴーを実施するということは、1本の滑走路で離陸と着陸を行うのです。日本政府はこの点でも、沖縄の人々をだましていたのです。
おわりに
これまで見てきたとおり、「海兵隊グアム移転協定」の国会審議を通して、日本政府が沖縄の人々に隠してきた事実が、いくつも明らかになりました。一方で、反対運動の側にとって有利な政府答弁を引き出すこともできました。その一つが、普天間基地の辺野古移設が頓挫してもグアム移転協定違反にはならないというものです。
近藤議員は、協定第3条の「日本政府はアメリカ合衆国政府との緊密な協力により、ロードマップに記載された普天間飛行場の代替施設を完成する意図を有する」という条文に関して、「意図を有する」とは具体的に何を意味するのかと質問しました。
外務省の鶴岡公二国際法局長は、「本件協定は、在沖縄海兵隊のグアムへの移転についての相互の権利義務関係を定める法的な文書であり、普天間の移設について法的な権利義務関係を定めることを目的にしていない」、「普天間に言及する部分は、ロードマップで合意したものを政治的な意思として確認し言及したにすぎない」と述べました。梅本北米局長も、「万一、日本政府が誠意をもって取り組んだにもかかわらず、何らかの事情によってうまくいかないということがあった場合に、このグアム協定違反になるかといえば、違反にはならない」と答えています。
また民主党の鉢呂衆議院議員はこの問題についての政府見解を求めましたが、政府は公式に「同協定はロードマップ(行程表)で表明された政治的意思をあらためて表明する趣旨のもの。法的義務を課しているものではない」との見解を発表しました。
この件についてケビン・メア在沖米総領事は、「普天間代替施設を建設しない場合に同協定三条違反になる」と発言していましたが、日本政府も野党の追及の前には、義務ではないとこを認めなければならなかったのです。
「海兵隊グアム移転協定」を衆議院が承認したことによって、グアムに建設する新基地への日本の予算支出は決まってしまいました。しかし、辺野古新基地建設は義務ではないこと、海兵隊8,000人の削減がまやかしであることなどが明らかになりました。こうした政府の矛盾点を追及していくことで、辺野古新基地建設を阻止すること、新基地建設とは切り離して普天間基地を閉鎖すること、在沖縄米軍の撤退を求めることが可能になるはずです。辺野古現地で、あるいは沖縄の各地で闘う仲間と連帯して、在沖縄米軍基地撤去の運動を進めましょう。