沖縄・北谷で「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」が開催
2008年3月23日 沖縄県・北谷町 北谷公園
●県民大会の会場になった北谷公園野球場前広場。どしゃ降りの中、6000の人びとが日米両国政府への抗議をあげました。
3月23日(日)午後2時から、沖縄県北谷町の北谷公園野球場前広場で、「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」が、同実行委員会の主催で開催されました。沖縄では暖かい日が続いていましたが、この日は傘やカッパが役に立たないほどの大雨。しかし、そうした中でも6000人を超える人びとが参加しました。平和フォーラムからは、全国基地ネット加盟地域組織・フォーラム平和関西ブロック・同九州ブロックが代表団を派遣。また自治労・日教組・全水道などの中央団体が参加しました。
沖縄では米軍兵士による性暴力事件が続いています。2月10日には女子中学生が海兵隊員から、2月18日にはフィリピン人女性が陸軍兵士から性暴力を受ける事件が受けました。県民大会は、途切れることの無い米軍兵士による事件・事故と、何らの策もとらない日米両国政府に対する抗議として開かれたのです。
今回の県民大会は、子ども会育成連絡協議会や県婦人連合会など社会教育団体の呼びかけに、沖縄平和運動センター・連合沖縄などの労働組合や市民団体が協力して開かれました。大会では、PTAや婦人団体の代表者、弁護士や戦争体験者などが、次々と登壇して発言しました。また02年に横須賀市で、米海軍兵士から性暴力を受けたジェーンさんは、「日本は戦闘地帯。女性や子どもの人権が侵されている」「被害者に罪は無い。しかし性犯罪では被害者がパッシングを受ける」と、自らの思いを語りました。
県議会各党や県出身国会議員、市町村長も多数出席しました。しかし、仲井真引多知事や自民党は欠席。発言に立った人々は、「この場に私たちの代弁者が来ていない」と、県知事の不参加を強く批判しました。
この日は先島でも集会が開かれ、宮古島で280人・八重山で350人が参加しました。
以下は、県民大会の様子を写した写真と、何人かの発言の要旨です。
●玉寄哲永さん(大会実行委員長・沖縄県子ども会育成連絡協議会会長)から主催者のあいさつ
「県知事は地位協定の抜本的な改定を求め米国に行くのに、県民の声を反映させることもなく手ぶらで行くのか」と、県民大会に参加しなかった知事を批判しました。
●沖縄市長 東門美津子さん
沖縄県民の人権や女性の尊厳が守れない日米安保条約とは、いったい何なのでしょうか。私たちにとって、本当に必要なものでしょうか。繰り返される基地被害から市民を守るためには、どうしたらいいのでしょうか。沖縄市の市長として、自問しながら本日の集会に参加しました。
きょう、この雨の中を、皆さん一人一人が、大人として人間として、複雑な思いを胸にいだき、やむにやまれぬ思いで、集会に参加されているのではないかと思います。戦後60年が経つ中で「またか、またか」というほどに、米軍の事件が繰り返されました。その度に沖縄県民は、悲しみと苦しみの中から、強い怒りをもって米軍と日米両政府に抗議し、事件・事故の再発防止策を求めてきました。
しかし、私たちの声は踏みにじられ、凶悪事件は後を絶たず、県民の生命と人権が脅かされる状況が、ますます深刻化しています。私は一人の女性として、子を持つ親として、基地を抱える自治体の長として、米軍犯罪が起きても為す術を持たない日本政府に、激しい怒りを感じています。この国のあり方に、疑問をいだかざるを得ません。日本国土の0.6パーセントしかない沖縄県に、在日米軍基地の75パーセントを押し付け、基地被害には何ら実効性のある具体的な対応を見せないことが、国民主権・基本的人権の尊重・平和主義の憲法を持つ国の姿なのでしょうか。
米兵の凶悪犯罪は、県民に深い傷と、筆舌に尽くしがたい苦しみを負わせ、多くの場合、弱い立場にある女性や子どもが被害者になっています。決して許されることではなく、日本政府は国家の責任で、国民を守らなければならないと考えます。
とりわけ、米軍絶対有利の不平等極まりない日米地位協定を、政府や米軍のいう「運用改善」の段階ではなく、「抜本的見直し」なくして、県民の生命と財産を守ることはできないのです。また何よりも、沖縄への過重な基地負担を軽減することが、最も有効な事件・事故の防止になります。私たちはそのことを、粘り強く訴え続けていかなければなりません。基地被害に苦しみ、人間としての尊厳を踏みにじられることに、私たち沖縄県民は、いまこそ終止符を打とうではありませんか。私たちの子どもや孫が、同じような苦労を背負わないように、人権が守られ安心して生活できる沖縄・日本にするために、本日の県民大会が歴史的な日になることを願ってやみません。
みなさん、一緒にがんばりましょう。
●雨のために、多くの人びとが隣接する球場や、ショッピングセンターに避難。そこから集会発言に聞き入りました。
●連合沖縄副会長・沖教組委員長 大浜敏夫さん
復帰直後に、当時中学2年生だった少女が、「米軍のトラック」という詩を書いています。読んでみます。
「12月ごろ、米軍のトラックが何台も走っていくのを見た。大きなトレーラーを引っ張って、轟音を立て、黒い煙を吐いてホワイトビーチの方に行った。しゃくだから、何台か数えた。全部で14台。いままでも見たことはあった。でも不思議に思う。どうして、どうして米軍が我が物顔で沖縄に住んでいるの。チューインガムをくちゃくちゃさせながら、私の村にやってくるの。戦争はとっくの昔に終わったし、憲法では戦力を持たないはずなのに、自衛隊だってある。安保で国を守るという国の偉い人。しかし米軍は事件を起こし、私たちに危害を加えている。私たちは本当に守られているの。大人たちはもっと欲をなくすことができないの。大人の世界は割り切れないことが多い。トラックのバックミラーに大人の世界が写る」
この詩が書かれてから、30年余りが過ぎました。基地は核抜き本土並みを約束され、基本的人権を尊重する平和憲法の下に、沖縄は帰ったはずでした。しかし日本の指導者は安保を理由に、米軍基地の75パーセントを沖縄に押し付けています。その基地は、日米安保条約第6条と、治外法権そのものといっても過言ではない日米地位協定によって、沖縄に押し付けられているのです。
復帰直後の少女の目に映った沖縄の姿と大人への疑問は、どれほど変わったでしょうか。私たち大人は、少女の疑問にどれだけこたえることができたのでしょうか。戦後63年、復帰36年。この間沖縄に駐留する米国軍隊と、基地があるゆえの米兵による事件・事故によって、どれだけ多くの女性や子どもの生命と人権と尊厳が踏みにじられてきたでしょうか。あらためて軍隊の本質と、訓練について見ないわけにはいきません。
もと米海兵隊員のネルソン氏は、自らの体験から、「米本国での訓練は射撃を中心とする技術的なものだが、沖縄では殺人の訓練が主。人型の標的に実弾を命中させるものから、手りゅう弾の投げ方、肉弾戦、白兵戦の訓練など、敵を確実に殺す暴力性を、日常的に教え込まれている。昼間の訓練を終えて、夜の街に繰り出す兵士の目的は3つ。酒・けんか・女だ」と語りました。
兵士たちが街に繰り出すときに、身と心にしみ込んだ「暴力性」を、基地に置いていくことができるでしょうか。酒とセットになった暴力が、基地の街・沖縄に横行するのは当然の成り行きです。
沖縄県民は、日本政府の言う「日本の安全」のために、殺戮と破壊を生業とする軍隊・基地と、60年以上にわたって共存させられたのです。
こうした事件が起きるたびに、主に本土のマスコミから流れる、被害者への2次的被害となる心無い報道は、決してゆるすことはできません。被害者の落ち度を指摘し、被害者と家族をバッシングすることは、大きな人権蹂躙です。沖縄のだれでもが、どこでも、人権が保障された生活を営める社会でなければなりません。
連合沖縄は那覇市の県民広場で、24時間の座り込みを行いました。そこで、日米地位協定の抜本的改定と基地の整理・縮小、県民大会への参加を、訴えました。沖縄の子どもたちの未来が、平和で豊かであることを願い、だれもが人間としての尊厳と権利を保障される安全な沖縄を作るために、今日の県民大会を、沖縄の現状を切り開く端緒とし、一人一人の決意と行動で、大きなうねりを県内外に、世界に起こしていきましょう。
●「米兵の少女暴行糾弾!軍事基地を撤去するぞ!」と日教組のみなさん。
●北谷町砂辺区長 松田正二さん
きょうのこの雨は、沖縄県民の涙だと思います。私は先日、広島に行きました。原爆資料館を見て、戦争とはこんなにも人間を変えるものなのかと、大変なショックをうけました。
砂辺自治会では、1月に、生活を守るために住民大会を開きました。やむにやまれずです。その目的は、爆音の問題と、今回の少女の事件で問題となった基地外基地についてです。北谷町の53パーセントは米軍基地です。しかしそれだけではありません。拡大しつつあるのです。それが砂辺の現状です。砂辺に来てください。400戸とも500戸ともいわれる、外人向け住宅があります。その賃貸料は、皆さん一人一人の血税です。皆さんの血税で、砂辺に大変な荒廃をもたらしています。それを認識してもらいたい。血税が砂辺区民の生活環境を脅かしているのです。基地外基地が増えて、砂辺の浜が「ビーチ」に、公園が「パーク」になります。横文字になるのです。そして基地があるゆえに、私たちの子どもや孫が、100パーセント、事件に巻き込まれるのです。
いまこの場所に、私たちの代弁者がいないことが、非常に残念です。みなさん、自分の子どものために、孫のために、自分のことと思って、声を大にして怒ってください。沖縄県民は、非常に優しい。怒りの声が聞こえてきません。そして県にも、アメリカにも訴えたい。もっと、もっと怒って、怒りの拳を上げて訴えましょう。今回の事件の被害者が、私の子ども・孫だったら、私はどうしていたでしょう。犯罪を犯していたかもしれません。そのくらいの痛みなのです。砂辺区民が巻き込まれるのが、いやなのです。このままでは必ず巻き込まれます。沖縄県にある基地は、人を殺す練習場なのです。その基地を無くするために、皆さんと一緒に、怒りの声を上げて生きます。
●雨の中、横だんまくを掲げる沖縄の人びと。
■発言者■
主催者あいさつ 玉寄哲永さん (大会実行委員長・沖縄県子ども会育成連絡協議会会長)
開催地あいさつ 野国昌春さん (北谷町長)
首長のあいさつ 東門美津子さ (沖縄市長)
翁長雄志さん (那覇市長)
カンパ呼びかけ 小渡ハル子さん (大会副実行委員長)
私たちは訴える 小渡ハル子さん (沖縄県婦人連合会会長)
三宅俊司さん
(弁護士)
中山きく さん
(青春を語る会代表)
大浜敏夫さん (連合沖縄副会長)
金城喜美代さん (那覇市立松島中学校PTA会長)
松田正二さん (北谷町砂辺区長)
被害者の声 ジェーンさん
決議採択 大城節子さん (沖縄県婦人連合会副会長)
閉会あいさつ 山田君子さん (沖縄県老人クラブ連合会副会長)
がんばろう三唱 玉寄哲永さん
●米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する決議
「私たちに平和な沖縄を返してください」―1995年、繰り返される米軍の事件・事故に抗議し、日米両政府に訴えた県民大会から13年、その時約束された「再発防止」や「綱紀粛正」はむなしく、米軍犯罪はやむことを知らない。
戦闘機・ヘリコプターなどの墜落事故、殺人的な爆音、環境破壊など、県民は被害を受け続けている。しかも、女性に対する性暴力という凶悪犯罪がいまだ後を絶たない。
米軍は今回の事件後、夜間外出禁止などの「反省期間」を置いた。しかし事件後も飲酒運転、民間住居不法侵入などを立て続けに起こした。日米両政府の言う、地位協定の「運用改善」ではすまされない実態が明らかになっている。
基地被害により県民の人権が侵害され続けている現状をみれば、日米地位協定の抜本改正を行うことが、私たちの人権を守ることにつながる。
13年前に約束した基地の整理縮小は一向に進まず、依然として広大な米軍基地の重圧に苦しめられている。私たちはあらためて、海兵隊を含む米軍兵力の削減など具体的な基地の整理縮小を強く求めていかなければならない。
何ら変わらぬ現状に県民の我慢の限界はすでに超えている。
日米両政府は、沖縄県民の訴えを、怒りを真摯(しんし)に受け止め、以下の事項を確実に進めるよう、強く要求する。
記
一、米軍優先である日米地位協定を抜本改正すること
一、米軍による県民の人権侵害を根絶するため政府はその責任を明確にし、実効ある行動をおこすこと
一、米軍人の綱紀粛正策を厳しく打ち出し、実効性ある具体的な再発防止策を示すこと
一、米軍基地の一層の整理縮小を図るとともに、海兵隊を含む米軍兵力の削減を図ること
米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会
2008年3月23日
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