米軍兵士による少女・女性性暴力事件についての外務省への申し入れ
2008年3月14日 東京・千代田区 外務省
平和フォーラムは3月13日に東京の星陵会館で、沖縄での米軍兵士による少女・女性暴行事件に抗議する集会を開催しました。翌14日には、集会に参加した沖縄からの代表団を先頭に外務省を訪れ、米軍犯罪の根絶と、日米地位協定の抜本改正などについて申し入れを行いました。申し入れの概要は、以下の通りです。
●紹介議員
川内博史さん 民主党・衆議院議員
山内徳信さん 社民党・参議院議員
●平和フォーラム側の参加者
山城博治さん 沖縄平和運動センター 事務局長
比嘉勝太さん 自治労沖縄県本部 委員長
伊佐信也さん 自治労沖縄県本部
渡久山朝一さん 社民党・浦添市議会議員
多和田栄子さん 社民党・那覇市議会議員
伊計政良さん フード連合沖縄地区協議会
仲宗根文雄さん 沖縄県教職員組合
清水澄子さん フォーラム平和・人権・環境 副代表
福山真劫さん フォーラム平和・人権・環境 事務局長
関 久 さん 東京平和運動センター 事務局長
服部良一さん 山内徳信議員秘書
八木隆次 フォーラム平和・人権・環境 事務局
●外務省側の対応者
伊澤 修さん 外務省北米局日米地位協定室長
●申し入れ
フォーラム 平和フォーラムは、沖縄での性暴力事件に抗議し、地位協定の改正を求める運動を、全国で進めています。昨日も300人を集めて抗議集会を開きました。本日の要請行動には、沖縄県・神奈川県・東京都など、米軍基地を抱える地域の代表が参加しています。
私たちは日米政府に対して、以下の事項を要請します。
@日米両国政府に対して、性暴力の被害を受けた少女・女性の心と身体の回復に十分配慮し、謝罪と補償をすみやかに行うよう求めること。
A米軍当局に対して、今回の事件を綱紀粛正や米兵の外出禁止で終わらせることなく米軍責任者の人事的な処分を求めること。
B米兵による少女・女性への性暴力に抗議する、国会決議を行うこと。
C日米地位協定の抜本的な改正を行うこと。
D沖縄をはじめとした在日米軍基地の即時の縮小・撤去を行うこと。
以上です。
いま米軍再編が進んでいますが、日本政府には、主体的に、日本国民の側に立った主張をしてもらいたいと思います。先日、米国大使館を訪れ、安全保障政策課長にも同様の抗議を行いました。その際に安全保障政策課長は「日本政府から、そのような要請はない」と回答しました。女性への人権侵害や、市民生活に対する米軍被害に対して、日本政府はどのように考えているのですか。
外務省 外務省としては、今回の事件は大変に遺憾です。様々なレベルで、米側に対して抗議しています。先日もライス米国務長官が訪日しましたが、ライス長官からも謝罪がありました。また、シーファー駐日米国大使は沖縄を訪れ、被害者に対する手紙を渡しました。米国としても、できるだけのことをしています。
要請@にある補償問題については、現在は米軍が第2次裁判権を行使していますので、米軍側の成り行きを見守っています。
Aの人事的な処分ですが、米軍は事件後、兵士・家族を含めての24時間外出禁止措置をとりました。兵士については、いまでも外出禁止措置が続いています。また今回の犯罪は、公務外に行われたものです。上司の責任は問いません。米軍全体に対する取り組みを追求します。
皆さんが、再発防止策では不十分であり、米軍の存在が問題であると考えていることは理解しています。しかし日本政府は、日本の安全のためには、在日米軍が必要であると考えています。米軍が沖縄に駐留しながら、こうした問題をどうするのかが課題です。
フォーラム 解説は充分です。意味のある回答を聞きたいのですよ。
フォーラム 沖縄から10人で来ました。それは、この種の問題が起きるたびに、沖縄の怒りを日本政府に伝えたいと思うからです。いま室長の話を聞いていると、沖縄の現実に全然向かい合っていないですね。14歳の少女が泣きながら助けを求めているのを、米軍兵士が性暴力をふるったのですよ。地位協定が米軍兵士を守っているのです。この問題に対して、地位協定を担当する部署として、どう対応するのですか。このような回答では、沖縄の怒りは、ますます爆発しますよ。沖縄県民は、「人間ではない」のですか。
あなたは責任者を処罰しないという。そんなことだから、事件が再発するのですよ。米軍が「すいません」「ごめんなさい」と言えば、日本政府はすぐに許してしまう。そこに問題があるのですよ。
今回の事件がきっかけで、10,000人の米軍兵士が基地の外に居住していることが分かりました。全ての米軍兵士を、基地の中に帰しなさい。それから米軍基地では、金網が基地の外側を向いて張られていますね。沖縄県民は、米軍基地の中に入ったりしません。米兵が基地から出て、民間地に入ってくるのですよ。今すぐにでも、金網の向きを変えなさい。
外務省 先週沖縄で、ワーキングチームの会議が行われました。市町村の代表や、商工会の代表も来ていました。そこでは、基地外居住に反対する声はありませんでした。沖縄県が、兵士の「基地内での居住」を求めていると認識していません。
フォーラム 米軍の占領当時から、沖縄には基地があるのです。基地の外に自由に住まわせていることが、間違いのもとですよ。具体的に検討して下さい。また外務大臣も、「居住は米兵の自由」「地位協定上問題ない」といっていますが、この答弁はおかしいでしょう。
フォーラム 沖縄の人にとっては、近所に住んでいる米兵が誰であるのかもわからない。そうした中で、性暴力事件が2件も起きた。沖縄の人々は、恐怖の中で暮らしているのですよ。外務省は、その声を聞かないのですか。日本政府が「米軍は基地内に帰れ」と言えない。とても信じられません。
外務省 沖縄が日本に返還された時点で、すでに多くの米軍人が、基地の外に住んでいたのです。
フォーラム 返還前は、米国に主権があったのだから。でも返還後は日本の主権が及んでいる。それでもずっと、基地外に住んでいるのですよ。
米軍人・軍属は、外国人登録もない。氏名は不詳。外出するときには、その米兵に治外法権が付いてくる。米兵が行く先々、日本全国が治外法権ですよ。動く治外法権である米兵の、人数すら把握していなかったのでしょう。地位協定第9条を改正して、米軍兵士・家族の外国人登録を行ってもらいたい。いまは、隣に誰が住んでいるのか分からないのですよ。
外務省 沖縄返還後も、米軍人・家族は、基地の外に住み続けているのです。
フォーラム 米軍人が基地の外に住むことは、沖縄県民が許したことではありません。日本政府が許したことでしょう。税金を払わず、電気・ガス・水道はじめインフラを使っている。基地外居住者にも「思いやり予算」が回されている。私たちの税金で日本に住んでいる米兵が、私たちに向かって罪を犯しているのです。
外務省 基地外居住者の人数把握は、今後も行います。しかしそのことと、基地外居住の是非は、分けて考えています。
フォーラム 基地の中に住むのか、外に住むのかは、米軍の裁量になっていますね。なぜ、日本政府は対応しないのですか。この問題を本気で考えているのですか。
フォーラム 米軍兵士の居住は、「原則基地内」。しかし、地位協定上は「基地外」も認められている。であれば、原則をしっかりと立てた上で、米側と交渉するべきではないですか。
外務省 さきほど、思いやり予算の話しが出ました。基地外に居住する米軍兵士は、行政サービスは受けていますが、思いやり予算は使っていません。そのように防衛省から報告を受けています。
フォーラム 北谷町に楚辺という地区があります。住んでいるのは、ほとんど米兵です。行政サービスも、ほとんどが米兵対象です。その部屋代は、日本が払っている。しかし住民登録もない。現実を踏まえた上で考えてください。
フォーラム 基地の外に住んでいる米兵は、公務外なのだから、外国人登録を行ってください。
フォーラム 以前、米軍兵士が当て逃げ事故をおこしました。県警に通報したが、県警は米兵に接触できない。県警は米軍に連絡し、MPと米軍の通訳が来た。その間2〜3時間かかりましたよ。当て逃げなのに、結局事件扱いにはなりませんでした。米側の通訳は「米兵は、沖縄では、事故を起したら基地に逃げろ」と教えられているといっていましたよ。
外務省 地位協定上は、日本の警察が米兵を逮捕できるのですが。
フォーラム 逮捕なんかできないでしょう。私たちは昨日の集会で、05年に海兵隊のヘリコプターが沖縄国際大学に墜落したときの映像を見ました。米軍兵士は、警察官すら押しのけて現場を立ち入り禁止にしていたのですよ。
議員から 資料を要請します。基地外に居住する軍人・軍属の、家賃・光熱費などの負担に関する、米軍側の内規を取り寄せてください。それをもとに、議論をしましよう。
フォーラム 沖縄の人は、米軍兵士の給料が安いことを知っています。ところが、高い家賃の家に住んでいる。どこかが手当てを出しているのです。沖縄の人たちは、「思いやり予算」からでていると思っています。米軍が出しているのなら、それでも結構です。資料を提出してください。
フォーラム 横須賀でも、米軍兵士が女性を殺害する事件が起きました。犯行の模様が防犯ビデオに撮られていたこともありますが、裁判は3回で結審しました。これは、日本政府が事件の幕引きを急いだからではないですか。3回の裁判では、事件の概要は明らかになりませんでした。横須賀は原子力空母の母港化問題があり、事件が大きくなる前に処分してしまった感じがします。
基地があるということは、戦場にいるのと同じです。女性の立場に立った政策をお願いします。
フォーラム 沖縄は戦後、米軍の植民地になりました。米国の弁務官が法律でした。私たちは「日本国憲法の下への復帰」をめざしました。しかし未だに沖縄は米軍の占領下です。なぜ沖縄だけが、日米安保の犠牲にならなければいけないのですか。外務省はこれまで、何をしてきたのですか。県民の中には、「日本からはなれて、米国の州になろう」。「米国の国内法を適用してもらったほうがいい」と言う人もいます。県民は「もう日本はいやだ」「自分たちは日本人として扱われていない」と考えているのです。
フォーラム 今回の事件でも、地位協定が米軍兵士を守っている。地位協定の抜本的な改定を求めます。
あなたの答弁の元になっている外務省の秘密文書「地位協定の考え方」を、開示してください。
フォーラム 日米安保と地位協定は、1960年に結ばれました。その当時は、性暴力についての十分な概念がありませんでした。いまは、国際社会が性暴力を問題にしています。しかし、日本政府は、なんの対応もしていません。日本政府は、日本人の人権を守らないことが、今回の事件で明らかになりました。真剣に取り組んでください。
以上
※上記は、メモを元に書き起こしています。文責は平和フォーラムにあります。
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