沖縄での米軍兵士による少女・女性性暴力事件についての米国大使館への申し入れ

2008年3月6日 東京・赤坂 米国大使館


平和フォーラムは3月6日に東京・赤坂の米国大使館を訪れ、沖縄で起きた米軍兵士による性暴力事件に対する要請行動を行いました。要請行動の概要は以下の通りです。

●平和フォーラム側の参加者
 清水澄子 平和フォーラム副代表
 若林克俊 東京平和運動センター議長
 関 久  東京平和運動センター事務局長
 筒井道広 日教組中央執行委員
 小泉喜子 I女性会議
 八木隆次 平和フォーラム・事務局

●米国大使館側の対応者
  レイモンドF.グリーンさん 政治部・安全保障政策課 課長
  木村綾子さん             同      担当補佐官


(話し合いの概要)
フォーラム  昨年10月に広島県で岩国基地所属の米軍兵士による性暴力事件が起きた際にも、大使館を訪れてグリーン課長と話し合いをしました。その時にも犯罪の再発防止、犯罪根絶のための対応、地位協定の見直しなどをお願いしました。あれから3か月以上経ちましたが、沖縄では米軍兵士による事件や犯罪が相次いでいます。

 特に2月14日に起きた、女子中学生への性暴力事件に対しては、とてもやりきれない思いです。沖縄では女性たちが、「このようは隣人はいらない」「基地のあるかぎり犯罪はなくならない」と、怒りの声を上げています。

 今回の事件では、被害者の少女が告訴を取り下げました。日本社会には、被害者に冷たいところがあります。本人や家族も、大変だったのでしょう。このように、性暴力は人権侵害にもつながります。大きな問題です。こまま黙っているわけには、いきません。そこで、グリーンさんに、以下の3点についてうかがいます。

一つ目に、日本政府は容疑者を釈放しましたが、米国政府はどのように対応するのでしょうか。
二つ目に、性暴力に対して、米国政府は今後どのように対応するのでしょうか。
三つ目に、米軍基地が日本にあること、また基地が強化されることが問題です。基地と人権の問題を、どのようにお考えですか。


グリーン  本日は米国大使館においでいただき、大変ありがとうございます。いただいた要請書は、シーファー大使ならびにワシントンの政府に報告します。今回の事件では、告訴が取り下げられましたが、米国政府は問題を真剣に受け止め、遺憾に思います。

 現在は、米軍による捜査が行われています。捜査には日本の当局の協力も得ています。事件発生直後から、日本の警察と米軍が緊密に協力しました。また今回は、地位協定が効果的に作用した事例であると考えています。容疑者の米軍兵士を、日本側の警察が逮捕し、捜査し、不起訴になりました。一連の動きは日本の制度の中で行われたのです。

 広島で事件を起した岩国基地の兵士は、日本では不起訴になりましたが、米国では軍事法廷にかけることになりました。米軍が裁判を行うということは、米軍の規律が高いこと、また事件を真剣に受け止めていることの象徴です。

在日米軍のライト司令官は、「事件を裁くことは重要だが、予防措置も重要である」と述べ、性暴力事件の予防措置を最優先の課題にするように命令しました。そこで米軍では、タスクフォースを立ち上げることになりました。タスクフォースは、各地の在日米軍基地を巡回し、各基地の司令官と協議し、兵士に対する教育プログラムを再考します。またタスクフォースは、基地のある地域ごとの特性や、日本文化・地域文化などもプログラムに反映させることにしています。米軍が世界同一規格で実施するのではない、日本独自のプログラムを検討します。またプログラムの再検討にあたっては、地域の意見も聞くことにしています。

 さらに在沖米四軍調整官は、性暴力だけではなく、アルコール関連事件についても予防措置を強化するとしています。

 明日(3月7日)に沖縄で、ワーキンググループの会議が開かれます。これは、在日米軍・在日米領事館と県や市町村が出席して、米軍犯罪を防止するための会議です。このワーキングチームを通して、犯罪の起きない状況を作ることが目的です。

 在日米軍は、日本の防衛と、アジア太平洋地域の平和と安定のために日本に駐留しています。日米両国政府は、米軍の安定的な駐留のために、努力を払っています。また米軍が撤退すれば、アジア太平洋地域に不安定をもたらすことになるでしょう。

 在日米軍の軍人は、本国から遠く離れて勤務しています。多くの軍人は、真面目に働いているのです。しかし一つの事件が、他の軍人のイメージを悪くしてしまいます。そのために各基地の司令官は、事件を真剣に受け止めているのです。

 地元との信頼関係を再構築するためにプログラムを見直すこと、また地域防災への協力などを通して関係をつくること、みなさんの意見を聞くことを、大変重要なことだと考えています。


フォーラム  今回の事件では、基地外居住者の問題が明らかになりました。基地の外に住む兵士は、日本のルールに従うべきではないでしょうか。

グリーン  基地外居住者が日本で問題になっていることは、十分承知しています。しかし、事件と基地外居住に、因果関係があるのかどうかは不明です。米軍の関係者も、日本で採用された者、本国で採用された者、ローテーションで来ている者などさまざまおり、住民登録などについては難しいです。こうした米軍の事情と政策を、日本政府や自治体に報告し、理解してもらうようにします。また基地外居住者の全てが、犯罪者予備軍なわけではありません。


フォーラム  中学生の少女が性暴力を受けたことに、教職員として大きな衝撃を受けています。告訴は取り下げられましたが、少女が性暴力されたという事実は残っています。日米を問わず、大人たちが反省しなければなりません。「米軍が変わったこと」が、少女に分かるようにしなければなりません。

グリーン  シーファー大使も沖縄を訪れて、知事に会いました。米国政府の関係者一同、心を痛めています。少女とご家族に、お見舞いを申し上げます。シーファー大使は、少女とご家族に、手紙も書いています。日本側では不起訴になり、米軍は捜査を続けますが、いちばん重要なことは少女のケアであると考えています。


フォーラム  この際、地位協定の見直しも、ぜひ検討していただきたい。具体的には、起訴前の引き渡しです。米軍兵士には特権意識があり、住民蔑視があるのではないでしょうか。地位協定の改定が、米軍兵士の意識の改革につながると思います。
フォーラム  容疑者を軍事法廷にかけること、性暴力問題対策を最優先にしていることなど、米軍の努力については理解します。
 さきほど、タスクフォースの話しがでましたが、行政だけではなく、人権団体やNGOの声を聞いてみてはどうでしょうか。女性グループ・人権グループと話し合う場を作ってみてはどうでしょうか。そうでないと、議論が形式的になってしまいます。ぜひ、米国側から呼びかけてください。
 また見直されたプログラムについては、ぜひ日本側にも見せてもらいたい。そうすれば、私たちの側から、足りない部分を補強することもできます。

グリーン  日本側からの意見も反映して、ベストな方法を模索します。明日の沖縄でのワーキンググループでは、県から意見を聞きますが、県は市町村や地域からも意見を集めています。また本日のこの会合の内容も、タスクフォースに伝えます。

 タスクフォースによって見直された新しいプログラムは、広く伝えていきます。それは米軍が性暴力に対して、真剣に取り組んでいることを示す機会であると考えています。いま米軍のテレビでは、性暴力問題のCMを頻繁に放送するなどもしています。

 少女のケアについては、日本政府と協力して、日米で行います。

 地位協定の改正については、今回の事件は地位協定が機能していたことを示しています。また日米の地位協定は、米国がNATO諸国と結んでいる地位協定よりも内容的に進んでいます。その例として、1995年の少女暴行事件を受けて、日米合同委員会で地位協定の運用を見直し、凶悪犯罪については起訴前の身柄引き渡しに合意したことがあります。例えば米国とドイツの地位協定では、容疑者の米軍兵士に有罪判決がでるまでは、身柄は米国側にあります。日本が他国と結んでいる協定でも、自衛隊員が罪を犯した場合に、起訴前の引き渡しはありません。

 私から日本の皆さんへのお願いがあります。私たちは、事件が起きた場合に、司法制度にのっとったプロセスを希望しています。米軍兵士が事件を起したことが、問題の根幹です。しかし被疑者にも人権はあり、有罪が確定するまでは無罪というのが、いまの法制度です。

 本日はお忙しい中、ご意見を聞かせていただき、大変ありがとうございました。



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