解説7 中川昭一・自民党政調会長が「核保有大いに議論を」
中川昭一・自民党政調会長は、10月15日に放送されたテレビ番組で、「(日本の)憲法でも核保有は禁止されていない。核があることによって(他国に)攻められる可能性が低くなる。あるいは、やれば、やりかえす、という論理は当然あり得る。議論は当然あっていい」と述べたそうです。(読売新聞HP 10月15)
この発言に対して同番組の中で、自民党と連立を組む公明党の斉藤政調会長が、「我々は絶対に核を持たない。議論することも世界が疑念を抱くから駄目だ」と反論しました。また野党も民主党の松本剛明政調会長は「わが国が(核を)持つという選択をする必要はない。将来も持たないというスタンスを堅持すべきだ」、共産党の小池晃政策委員長は「日本は唯一の被爆国であり、核を持たない」、社民党の阿部知子政審会長も「外(国)からどう見られるかもあり、日本が核を持つ抑止論は成り立たない」と反対しました。
民主党の鳩山由紀夫幹事長は大阪府茨木市内での演説で「目には目をみたいな話。北朝鮮が核を持ったら日本も持つという発想は、世界全体に核が拡散してしまう論理になる。日本は唯一の被爆国として核を持たずに、世界の核廃絶に向けリーダーシップを発揮しなければならない」と批判しました。
批判の声は自民党の中からもあがっています。加藤紘一元幹事長は、毎日新聞の取材に「中川氏がどういうつもりで発言したのか分からないが、(このような発言に)ブレーキをかけないと世界中で誤解されてしまう」と述べています。
日本の核武装については、自民党の中川秀直幹事長が10月11日に日本記者クラブで講演し、安倍晋三首相が国会で核武装化を一切検討しない考えを強調したことについて「発言を強く支持したい」と言明したばかりです。自民党内のタカ派と首相への「イエスマン・イエスウーマン」を揃えた安倍政権では、日本の国是であり歴代自民党内閣ですら明言してきた「非核3原則」についての基本的な意思統一もないようです。
実は当の安倍晋三首相も、小泉内閣の官房副長官時代に、日本の核武装に付言しています。2002年5月に早稲田大学で講演した安倍官房副長官(当時)は、「大陸間弾道弾(ICBM)を持つのは憲法上、問題ではない」、「核兵器使用は違憲ではない」、「核兵器を持ちたいなら堂々とそう言うべきだ」等々と明言していたのです。総理在任中は核武装には触れないにしても、「本当は核を持てるのだ」というのが、安倍総理の本音なのでしょうか。
さて中川政調会長の「核があることによって(他国に)攻められる可能性が低くなる。あるいは、やれば、やりかえす」という発言は、北朝鮮の核武装正当化の論法とまったく同じです。核兵器があれば米国に攻められる可能性が低くなる。米国に核攻撃されたら、北朝鮮も核攻撃をやり返すというのが、彼らの論理です。この論理では東北アジアで、際限のない核軍拡が始まってしまいます。
北朝鮮が7月5日にミサイル発射実験を行った際、射程の短いスカッドミサイルやノドンミサイルの発射には成功しましたが、射程の長いテポドン2号の発射には失敗しました。また今回の核実験も、失敗であったとの評価が一般的です。一方の日本は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)に転用可能なH−2ロケットの打ち上げに成功しています。核弾頭の原料となるプルトニウムも、大量に備蓄しています。潜在的な能力では、北朝鮮の核ミサイル開発の可能性よりも、日本の核ミサイル開発の可能性のほうが、大きいのではないでしょうか。
また日本が核兵器を開発するには、核不拡散条約(NPT)から脱退しなければなりません。IAEAの核査察を拒否することになります。東京裁判を否定し、米国占領下で作られた民主主義を否定し、大東亜戦争を賛美する政治指導者が核開発に踏み切った場合、米国は日本を許すでしょうか。日本が「悪の枢軸」「先制核攻撃の対象」になる可能性もあるのではないでしょうか。
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