解説2 周辺事態
日本は自国の置かれている国際環境を、@平時、A周辺事態、B武力攻撃事態――の3つに分けています。@平時とは、戦争のない平和な状態です。A周辺事態とは、日本は戦争に巻き込まれていないが、放置すれば巻き込まれてしまうかもしれない戦争が、外国で発生している状態です。B武力攻撃事態とは、日本が攻撃されている状態です。それぞれの場合に、日本(自衛隊)と米国(米軍)がどのような協力を行うのかは、日米安全保障条約・日米地位協定・日米物品役務相互提供協定(ACSA)・周辺事態法・武力攻撃事態法によって定められています。
1996年に橋本総理とクリントン大統領との間で「日米安全保障共同宣言」が行われ、1997年には「新しい日米防衛協力のための指針」(新ガイドライン)が締結されました。新ガイドラインを実行するために1999年に成立した法律が、周辺事態法です。旧ガイドライン(78年ガイドライン)は、主にソ連にとの戦争を想定した日米の協力計画でした。しかしソ連の崩壊によって、日米の仮想敵国は北朝鮮にかわりました。1994年には北朝鮮の核兵器開発疑惑が発生。1995年には米国政府から日本政府に対して、米軍の北朝鮮侵攻時に日本が行う支援要綱が提出されました。この支援要綱を具体化したものが新ガイドラインであり、立法化したものが周辺事態法なのです。
周辺事態法の発動は、基本計画の策定→基本計画の閣議決定→事前の国会承認(緊急の場合には事後承認)という手順で進みます。周辺事態法が発動されると、日本は以下の活動を行うことになります。
@後方地域支援
戦闘を行う米軍に対して日本が補給活動を行うことです。日本政府は、この活動は戦闘地域ではない後方で行われるために、戦闘とは一体化しないと答弁しています。しかし国際法上、戦闘を行っている軍隊への補給活動は、戦闘行為と同じに見なされます。
A後方地域捜索救助活動
撃墜されたパイロットや撃沈された艦船の乗組員などを救助する活動です。日本政府はこの活動も、後方地域に限定して行うとしています。しかし海上の戦闘などでは、どこまでが戦闘地域でどこからが後方かを、厳密に区分けすることはできません。戦っている相手が、後方と認識するかも分かりません。米軍では遭難した兵士を捜索救助する活動には、特殊部隊が従事しています。それほど危険な活動なのです。
B船舶検査活動
国連決議などによって相手国の経済封鎖が実施された場合に、相手国に向かう船舶を検査する活動です。他の2つの活動が後方での米軍支援なのに対して、船舶検査活動は、海上自衛隊の護衛艦が第一線に立つことになります。相手が民間船舶を装って武装していた場合には、戦闘に発展する可能性もあります。
これら3つの活動を行う際に、自衛隊には自衛のための武器使用が認められています。日本が米軍を後方支援する→相手国軍隊から戦闘行為と見なされ攻撃を受ける→自衛隊が反撃する→相手国軍隊と自衛隊が戦闘状態になる――ことも考えられます。自衛隊が攻撃された場合は、日本国土が攻撃された場合と同様に武力攻撃事態法が発動し、日本が全面戦争に参加することにもなりかねません。
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