●民主党
2004年6月18日
イラク多国籍軍への自衛隊参加の決定を受けて
民主党 政策調査会長 仙谷 由人
本日、イラクでの多国籍軍に自衛隊が参加することが閣議了解された。
政府は、「任務・目的に武力行使を伴う多国籍軍に対する参加は許されない」との見解であった。その多国籍軍への参加が、国会での審議も全く行われないままに決定されたことに強い憤りを禁じえない。さらに、多国籍軍への参加を国民に説明することなく、真っ先にブッシュ大統領に表明してしまうなど、国民を愚弄するに余りあって、小泉総理がただただブッシュ大統領の顔を見て、国政を左右しているのではないかとの、強い疑念を消し去ることは出来ない。
わが党はもともと、現状のイラクのように武器を伴った反占領活動やテロが頻発している地域において、「戦闘地域」「非戦闘地域」に分けることは出来ないと主張し、イラク特措法に反対した。自衛隊が活動するサマワの治安は悪化の一途を辿り、また、昨年11月の日本人外交官殺害事件にはじまり、人質事件やジャーナリストの殺害事件など、米国への協力者と見られることにより、日本人も攻撃の対象となりつつある。イラク全土に「非戦闘地域」なる場所はない。さらにイラク特措法は、CPA(暫定統治機構)の占領統治を前提としていることなどをみても、イラク特措法の前提条件は、もはや崩れている。これを援用する形での自衛隊の多国籍軍への参加は、法治国家として容認できない。
国連安保理決議第1546号により、イラクへの主権移譲や国際社会の支援が確認されたことは、歓迎するものであるが、各国は主体的判断でそれぞれの憲法や国益に照らし、ふさわしい協力を行うものである。政府は、多国籍軍のもとでの活動は、人道復興支援を中心に行うとしているが、イラク特措法においても安全確保支援活動は、まさに武力の威嚇・行使を伴う治安維持活動を支援するものであり、指揮権の問題とあわせて憲法上の疑義は払拭されていない。また、先般発足したイラク暫定政府は、イラク国民により選出された内閣ではなく、まず、イラク国民の求める公正な選挙が実施されることに支援を傾注すべきである。さらに、安保理決議第1546号の採択を受けても、武力組織の派遣を行わない姿勢を示している仏、独、ロシアや中国などの諸国とも積極的に協調して、イラクや中東の安定に真に資する国際協調体制の再構築に全力をあげることを政府に強く求めていく。
以上
(原文はここ http://www.dpj.or.jp/seisaku/kan0312/gaimu/BOX_GAI0010.html)
2004年06月15日
「イラクの真の安定・復興に関する考え」を発表
民主党は15日、イラクに関する新たな国連決議1546が採択されたことを受けて新たなイラク復興策をまとめ、仙谷由人政調会長と前原誠司『次の内閣』ネクスト外相が国会内で発表の会見を行った。
民主党がまとめた「イラクの真の安定・復興に関する考え」は(1)サマワに展開する自衛隊は6月30日の主権移譲前に、撤退すべきである(2)多国籍軍の一員として自衛隊をイラクに派遣すべきではない(3)真に機能し、イラクや中東の安定に資する国際協調体制の再構築に、日本は努力すべきである――の3項目からなっている。
前原外相は「憲法上の疑義があり、自衛隊の多国籍軍への参加は認められない。イラク支援特措法は主権が移譲されるまでを想定しており、その援用は法治国家として大問題」と述べ、この問題について国会の閉会中審査を求めることを明らかにした。
(原文はここ http://www.dpj.or.jp/news/200406/20040615_05iraq.html)
2004年6月15日
イラクの真の安定・復興に向けた民主党の考え
わが党は、このたびの小泉総理による多国籍軍への事実上の参加表明を認めることはできない。 とりわけ、その表明がサミット等の場において小泉総理の独断でなされたことは、まさしく国会軽視であり、また、イラク特措法の政令改正という不透明な手法は、手続的にも問題があり、国民への説明責任を何ら果たしていないことに強い憤りを覚える。
わが党は、下記の理由により、まず、自衛隊の即時撤退を求め、あわせて、イラクをはじめとする中東における真の安定と復興を実現するために、確固とした国際協調体制の構築に向けた不断の努力を重ねていく。
(1) サマワに展開する自衛隊は6月30日の主権移譲前に、撤退すべきである。
[1]我が党はもともと、現状のイラクのように武器を伴った反占領活動やテロが頻発している地域において、「戦闘地域」「非戦闘地域」に分けることは出来ないと主張してきた。怖れていたとおり、今や迫撃砲による攻撃や仕掛け爆弾などの行為が常態化し、治安を担当するオランダ軍には死者が出るに至っている。また、日本人が人質として拘束され、ジャーナリストが殺害されるなど、アメリカへの協力者と見られることにより、日本人もイラク人による攻撃の対象となりつつある。我々はもともと、イラク特措法には憲法上の疑義もあり反対であったが、イラク特措法が成立する前提条件も、もはや崩れている。
[2]イラク特措法が、イラクに主権が移譲されるまでの人道復興支援活動と安全確保支援活動を規定していることは、第1条の目的や第2条の基本原則などにより明らかである。しかし政府は、6月30日以降も同法を根拠に自衛隊の駐留を続けようとしている。多国籍軍への事実上の参加は、自衛隊発足以来なかったにもかかわらず、新たな国連決議を前提とした新法も作らず、CPA(暫定統治機構)の占領統治を前提としたイラク特措法を援用することは、法治国家として決して認められることではない。
(2) 多国籍軍の一員として自衛隊をイラクに派遣すべきではない。
[1]今まで政府は、目的・任務に武力行使を伴う多国籍軍への参加は憲法上許されないとしてきた。国連決議1546に基づく多国籍軍の主な任務は治安維持活動であり、当然、目的・任務に武力行使を伴う。政府は人道復興支援活動を中心に行うとしているが、安全確保支援活動は、まさに武力の威嚇・行使を伴う治安維持活動を支援するものであり、指揮権の問題と合わせて憲法上の疑義は払拭されない。
[2]先般発足したイラク暫定政府は、その主要人事に見られるようにアメリカの影響力が色濃くうかがえる。その暫定政府とアメリカの意向を強く反映した国連決議1546は、幅広い国際協調体制を再構築してイラクの治安を安定化させ、復興支援を力強く行う根拠には実際、なりえていない。そのような状況の下で拙速に自衛隊を出すべきではない。
[3]上記のような理由で、多国籍軍の一員として自衛隊をイラクに派遣することに我が党は反対である。しかも、多国籍軍への事実上の参加は自衛隊発足以来なかったことであり、またイラクに暫定政権が出来るという全く違った状況になるにもかかわらず、政令改正だけを行ってイラク特措法を援用し、日米首脳会談において、国会や国民に先んじて、事実上の多国籍軍への参加表明をするような国会無視の小泉総理の姿勢は、断じて認められない。
(3)真に機能し、イラクや中東の安定に資する国際協調体制の再構築に、日本は努力すべきである。
○イラク暫定政府とアメリカの意向を強く反映した国連決議1546は、幅広い国際協調体制を再構築するためには多くの課題を残している。仏・露・中といった国連安保理理事国のみならず、独・印やアラブ諸国など、多くの国が積極的に関与できる環境整備に、日本は努力すべきである。
以 上
(原文はここ http://www.dpj.or.jp/seisaku/kan0312/gaimu/BOX_GAI0009.html)
●日本共産党
イラクに関する国連安保理新決議と、多国籍軍への自衛隊の参加について
二〇〇四年六月九日 日本共産党幹部会委員長 志位和夫
日本共産党の志位和夫委員長は九日、「イラクにかんする国連安保理新決議と、多国籍軍への自衛隊の参加について」と題する談話を発表しました。
一、国連安全保障理事会は、九日午前(日本時間)、新しい決議一五四六を採択した。決議では、イラクへの「完全な主権の返還」、イラクの新政権樹立へのプロセスで国連が「主導的役割」をはたすことなどが明記された。また、米英を中心とする占領軍の駐留期限についても言及された。
これらの規定には、国連主導の枠組みでのイラク復興支援、そのもとでのイラク国民の意思にもとづく新政府の樹立という、国際社会の願いが反映されている。
一、しかし、決議で明記されたこれらの原則の今後の実施過程を展望すると、そこには非常に多くの問題が存在している。
――何よりも、イラクでは米英軍を中心とする占領軍と、それに抵抗する勢力との戦争が継続中である。この間の、占領軍による軍事弾圧や拷問・虐待にたいして、イラク国民はきわめて強い怒りと抵抗を広げている。
――戦争の一方の当事者である米英軍が、多国籍軍と名称を変更して駐留をつづけ、この軍隊にたいして、決議は、「イラクにおける安全と安定を維持するのに役立つあらゆる必要な措置をとる権限をもつ」としている。さらに、米英軍の軍事作戦にたいして、イラク側の拒否権が保障されていない。
――この間発足したイラク暫定政権の構成は、アメリカの意向を色濃く反映したものとなっており、イラク国民の多数がこれをみずからを代表する政権とみなしていないという状況がある。
こうしてイラク情勢の今後の展開は、予断をもってのべることができない複雑さと困難さをもっている。安保理決議で明記された原則が名実ともに実施されるためには、イラクに戦火と混乱をつくりだした元凶であるアメリカが、その軍事行動を強く自制しつつ、すみやかに撤退にむかう措置をとることが、必要である。わが党は、新しい国連安保理決議の採択にあたって、このことを強調するものである。
一、小泉首相は、日米首脳会談において、イラクにおける多国籍軍に自衛隊を参加させる方針を事実上表明した。これは、イラク情勢の前向きの打開にとっても、日本国憲法にてらしても、有害で危険なものである。
政府はこれまで、「国連軍(多国籍軍)の任務・目的が武力行使を伴う場合には、自衛隊の参加は憲法上許されない」との見解をのべてきた。「反連合軍・反イラク勢力との戦争を遂行すること」(連合軍機関紙)を自らの任務とする米英中心の多国籍軍への参加は、従来の政府見解にてらしても憲法違反以外の何ものでもない。
わが党は、自衛隊のイラクからのすみやかな撤退を、強くもとめるものである。
しんぶん赤旗:「多国籍軍の中で活動」 自衛隊参加へ 政府が「基本的考え方」
イラク多国籍軍への自衛隊参加問題について政府は十六日、「基本的考え方」を国会に提示しました。「考え方」は、自衛隊は「我が国の主体的な判断の下で活動する」「(多国籍軍の)統合された司令部の指揮に従うものではない」としつつ、「多国籍軍の中で活動する」と明記。イラクでの武装勢力の掃討作戦や住民弾圧を中心任務にする多国籍軍への参加を表明しています。
参加の理由として、多国籍軍の一員とならないでイラク暫定政府から自衛隊の受け入れや法的地位について同意を得ることは「事実上不可能」と指摘。「新たな多国籍軍の中で同意を取り付け、(自衛隊の)法的地位を確保することが必要」としています。
今後も、自衛隊は「(『非戦闘地域』といった)イラク特措法の要件に則りこれまで同様の活動を行う」としています。
「考え方」は、これらの方針に反する要請が多国籍軍からあった場合、「断る」ともしています。しかし、自衛隊が多国籍軍の司令部の指揮に従わないことの根拠については、「多国籍軍の主要な構成国である米英両政府」との間で「了解に達し」ているというだけにとどまってます。政府は、十八日の閣議で多国籍軍参加を決め、あわせて政府統一見解を発表する方針です。
●社民党
2004年6月18日
自衛隊の多国籍軍参加決定は容認できない(談話)
社会民主党
幹事長 又市征治
1.本日、政府は政令改正をもって、自衛隊の多国籍軍参加を閣議決定した。政府がどんなにいいつくろうとも、多国籍軍は武力行使を念頭に置いた軍隊であり、ここに参加することは憲法が禁止した集団的自衛権の行使にほかならず、断じて認めることはできない。なし崩しの参加決定は、まさに憲法をもなし崩し的に空洞化させるものである。
2.これまで政府は、海外での武力行使を禁じた憲法に抵触する可能性があるとして、多国籍軍への自衛隊参加を見送ってきた。しかし、小泉首相がブッシュ米大統領に対して多国籍軍参加を約束して以来、従来の政府見解は小泉首相の約束を追認するために強引に捻じ曲げられてきた。安保政策の大転換であるにもかかわらず、国会軽視・国民不在のまま閣議だけで参加を決めたことも、シビリアンコントロールの崩壊を招くものとして厳しく批判する。
3.多国籍軍参加を決めるにあたっての政府の統一見解は、多国籍軍は「統一した指揮下」にあるとした国連新決議1546の内容を「統合された司令部」に置き換え、自衛隊は「わが国の指揮に従う」「他国の武力行使と一体化しない」などとした。しかし米国防次官補が下院軍事委員会に提出した文書では「統一された指揮権とは、現状においては米軍の指揮権を意味する」と明言しており、独自の指揮権を主張する政府の説明は成り立たない。道理を欠き、無理に無理、詭弁に詭弁を重ねた説明は、逆に自衛隊の多国籍軍参加が従来の政府見解に違反し、憲法をおかしていることを浮き彫りにするものである。
4.小泉首相は日米首脳会談で、米国が譲歩に譲歩を強いられた国連新決議に対し、「米国の大義の勝利」だと持ち上げたが、イラク戦争に大義がなく占領統治が誤りであったことは明らかである。米国にひたすら追随する小泉首相の認識自体が間違っていることは、新決議が採択されても、依然としてフランス、ロシア、中国、ドイツなどの諸国が多国籍軍参加を見送っていることに示されている。イラク特措法に照らしてさえ自衛隊のイラク派兵は根拠を失なっている。社民党は、自衛隊のイラクからの即時撤退を改めて主張すると共に、「自衛隊ありき」ではなく、日本が国連を通じた非軍事の人道支援に徹するべきことを強く求める。
(原文はここ http://www5.sdp.or.jp/central/timebeing04/danwa0618.html) |