【解説07】自衛隊の派兵期間延長問題

 

判断停止の小泉首相
11月10日、国会で党首討論が行われました。民主党の岡田克也代表からイラク情勢を問われた小泉総理は、「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域」と答えました。また11月25日に行われた衆議院イラク特別委員会では。おなじく民主党の岡田克也代表から「どういう根拠で、戦闘行為が行われないと考えているのか」と質問され、「今が平和だから将来、永遠に平和だと誰が断言できるのか」と答えました。
イラク特措法では自衛隊の活動する地域を「非戦闘地域」に限定しています。しかし、「自衛隊の活動している地域が非戦闘地域」ではありません。また「平和だ」と断言できないのであれば、直ちに派兵を中止するべきです。イラク情勢と自衛隊派兵に関連して、小泉首相は完全に「判断停止」になっています。

サマワの自衛隊も標的に
 イラク各地で、米軍と占領抵抗勢力の戦闘が発生しています。米軍によるバグダッド南西地域への掃討作戦の開始により、戦闘が全土化する可能性も出てきました。自衛隊の活動するサマワでも、10月末から様々な事件が発生しています。イスラム教シーア派のサドル師派は、「自衛隊を占領軍」と規定しました。以下は過去1ヶ月間に発生した、サマワでの事件です。

10月22日 自衛隊の宿営地にロケット弾攻撃。
11月12日 自衛隊の撤退を求めるデモ。
14日 警察パトロール隊拠点施設に手りゅう弾攻撃。
17日 シーア派サドル派が「自衛隊は占領軍」と規定。
「われわれは占領者と戦っており、日本もその戦いの一部になった」
19日 市内パトロール中のオランダ軍の車両が襲撃。
21日 サマワ郊外で、検問中の警察官が銃撃。
23日 市内で爆弾事件が発生しました。

日本は第6位の派兵国に
 自衛隊をイラクに派兵する際、小泉首相は「国際貢献」を強調しました。しかしイラク戦争そのものに反対したドイツやフランス、また中国やロシアは、イラクに軍隊を派遣しませんでした。
 イラク占領が開始される中で、37カ国が軍隊を派遣しました。しかし既に7カ国が撤退し、5カ国が撤退を決めています。派兵を継続している国のうち、17カ国が200人未満の数です。
 派兵を継続している国の中で日本の派兵人員(800人)は、米国(13万8000人)、英国(8500人)、イタリア(3085人)、韓国(2900人)、オーストラリア(920人)に次いで、第6位の人数です。この数字を見れば、日本の派兵が国際社会の中でも、上位にあることが分かります。

いつまで派兵を続けるのか
 昨年8月1日、イラク特措法が成立しました。この特措法の下で「基本計画」計画が作成され、自衛隊がイラクに派兵されています。現在イラクでは約550人の陸上自衛隊と、約200人の航空自衛隊が活動しています。
昨年12月9日に閣議決定された「基本計画」では、自衛隊の派兵期限は本年12月14日までとされていました。しかし小泉首相は「基本計画」を変更し、1年間の派遣期間延長を行おうとしています。イラク特措法では基本計画の作成・変更は閣議決定事項とされ、国会には事後報告されるのみです。自衛隊が米軍とともに戦闘に参加する可能性がでてきたにもかかわらず、派兵延長が国会で審議されないのは、内閣の独走と言わざるを得ません。

イラク特措法
正式名称は「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」。2003年8月1日に成立しました。
 第1条(目的)には、イラクの再建と復興に協力するため、日本は「人道復興支援活動」と「安全確保支援活動」を行うと書かれています。
「人道復興支援活動」とは@医療、 A被災民への支援、B被災民の生活やイラクの復興を支援する上で必要な施設や設備の復旧・整備――などです。また「安全確保支援活動」とは、米軍をはじめとした占領軍へ戦闘行為以外での協力のことです。
第2条(基本原則)では、自衛隊が活動できる地域として、「我が国領域及び現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域」としています。
イラク特措法に基づいてイラクに派兵されているのは、陸上自衛隊約550人と、航空自衛隊約250人です。また、自衛隊の装備・物資をイラクに輸送する際には海上自衛隊の輸送艦が使われました。イラク特措法に関連して派兵された自衛隊員は陸海空合わせて約1000人になります。



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