海上自衛隊のソマリア沖派遣に反対する要請
■日時  3月12日(木)11:00〜11:30
■場所  防衛省本省庁舎


平和フォーラムは3月12日に防衛省を訪れ、海上自衛隊のソマリア沖派遣に反対する要請を行いました。以下はその報告です。


■参加者 
 近藤昭一さん(衆議院議員・民主党)
 福山真劫(平和フォーラム事務局長)
 藤本泰成(平和フォーラム事務局次長)
 井加田まりさん(自治労中央執行委員)、
 西田衣里さん(日教組中央執行委員)
 関  久さん(東京平和運動センター事務局長)

■防衛省対応者 
 松浦紀光さん(防衛省運用企画局事態対処課 部員)


●近藤議員 自衛隊法82条・海上警備行動による、海上自衛隊の派遣に反対します。14日に出発するとのことなので、懸念を表明しに来ました。私たちは基本的には、今回の派遣は中止するべきだと考えています。ソマリア沖の海賊問題をめぐって情勢は複雑であり、「日本も何かしなければいけない」と考えていることは理解します。しかしそれは、海上自衛隊の派遣ではなく、他の手段で行われるべきです。

●福山 これまで自衛隊は、政府なりに憲法9条を踏まえて運用されてきたと考えています。しかし今回のソマリア派遣は、明らかにおかしいのではないでしょうか。第1に、自衛隊法82条の適用に問題があります。第2に、海賊対策であるならば、海上保安庁がこれまで積み重ねてきた努力と成果を活かした対応を行うべきです。第3に、海賊のような国際的不法行為は、各国が対応するにしても、それぞれの国の、憲法の範囲内で行われるべきです。今回の海上自衛隊の派遣には無理があります。派遣を再考していただきたいとおもいます。

●松浦部員 海上警備行動による海上自衛隊の派遣は、新法が成立するまでの応急措置であることを理解していただきたいと思います。本来は自衛隊の海外出動には、国会での議論が必要です。しかし一方で、海賊問題に緊急に対応しなければなりません。日本船籍、また日本人が乗船した船舶が、日々危険にさらされているという現実があります。

 なぜソマリアで海賊が多発しているのかを考えれば、ソマリアの青年に仕事が無い、生活の基盤が無いという問題があります。ソマリア国内の統治の問題です。海賊に対する根本的な対策としては、ソマリアの内政に関する日本政府の支援、また多国間枠組みでの支援が必要だと考えています。

 護衛艦の任務は海賊の逮捕ではなく、船舶の護衛です。武器使用に関しては、海賊を船舶に近づけさせない、追い払うという趣旨で、抑制的に対応します。


●質問 防衛省・自衛隊のみなさんの努力は理解します。その上で、海賊対策のための派遣が常態化しないことを求めます。また、ソマリア沖を通行する船舶は、民間企業の商業活動の一環です。スエズ運河からソマリア沖を通ることが危険だと判断すれば、アフリカ南端の喜望峰を通るルートを選択することもできます。しかし、喜望峰ではなく、スエズ運河を通るのであれば、企業の側がリスクを負うべきではないでしょうか。

●質問 今年に入ってから、海賊の発生件数が減少していると聞いています。また海賊の技術が向上しているとの話も聞きました。防衛省は、海賊の実態についてどのくらい把握していますか。

●質問 先ほど武器使用について、抑制的に対応すると仰いましたが、現地ではそうならない場合もあるでしょう。その場合は、どうするのでしょうか。

●松浦部員 商船自身の自衛策については、IMOなども勧告を出しているようです。しかし船舶のサイズ・速度などの問題もあり、船によっては自衛策にも限界があるでしょう。

 また海賊が減少しているともご指摘ですが、EUなどが活動を開始した成果が上がっているようです。しかし海賊の発生件数自体は、まだまだ多いのです。一方で、海賊の作戦が高度化しているとの報告もあります。また、海賊間のネットワーク化、情報交換なども進んでいるようです。

 憲法との兼ね合いについては、これまでの政府解釈を変えるものではありません。自衛隊法82条による海上警備行動の発令は過去に2例あり、両方とも日本近海でした。海上警備行動は、そうしたものだと考えています。今回は、応急的な措置であることを理解してください。


●近藤議員 ソマリア沖が危険であり、各国が軍艦を出さなければいけない状況であるならば、本来は通行自体を避けるべきでしょう。しかし通行を避けるほどではないと、各国、各船が判断しているから、通行しているのでしょう。そうであれば、軍隊ではなく、警察的な行動で対応するべきです。海上自衛隊の派遣の中止を、再度求めたいと思います。


2009年3月12日

防衛大臣 浜田靖一 様

フォーラム平和・人権・環境
(平和フォーラム)
事務局長 福山真劫


海上自衛隊のソマリア沖海賊対策への派遣決定に対する申し入れ

 1月27日、麻生太郎首相は、浜田靖一防衛大臣に対して、海上警備行動発令を前提に海上自衛隊派遣準備を急ぐよう指示しました。私たちは、この派遣に対して反対の立場を明確にしてきましたが、防衛省は決定に従い、来る3月14日にも海上自衛隊呉基地所属の護衛艦「さざなみ」「さみだれ」の2隻に、SH60K哨戒ヘリコプター2機、小型高速艇2艇を積載して、ソマリア沖に向けて出航する予定と報道されています。

 統一政府のない分裂・混乱したソマリア国家は、アフリカの最貧国に位置付けられ、若者は武装組織の民兵として働くしかない状況にあります。多くの理由からソマリア国民は、海賊としての収奪行為を余儀なくされていると考えられます。このような状況下では、海上自衛隊のソマリア沖派遣も効果が疑問視されます。平和フォーラムは、日本政府が、ソマリアの国民生活への経済支援および統一政府の樹立とソマリア国民の自治の回復のための努力を、直ちに実行することを求めます。ソマリアの海賊を武力で押さえるのではなく、その背景となっているソマリアの悲劇を解決することが、憲法の要請する国際貢献であり、実効ある海賊対策であると考えます。

自衛隊法82条に規定する海上警備行動は、警察活動として日本国沿岸の警備行動を想定するもので、ソマリア沖での海上警備行動は、平和主義を規定した日本国憲法及びその下に規定された専守防衛を基本とする自衛隊法の理念を、大きく越えるものです。武器使用についても、あらゆる状況が想定される中で、正当防衛・緊急避難との制限を超えることが懸念され、戦後初めての「任務遂行のための武器使用」となりかねません。ソマリアの首都モガディシオでは、ソマリア暫定政府を支援するアフリカ連合ソマリア基地に対する自爆テロも発生し、反政府活動が活発化しています。そのような情勢の中では、海賊と反政府組織の区別もつきづらく、憲法の禁ずる「武力行使」をもまねきかねません。海賊との戦闘行為に発展した場合は、人質を殺傷する懸念もあります。これまでのソマリアの海賊は、捕縛した船員に危害を加えたことはありませんが、戦闘行為に発展するなどした場合は、捕縛された船員に危害が及ぶことも想定されます。

 平和フォーラムは、各国の諸行動に負けじと同じ地平に立って行動するのではなく、日本国憲法およびソマリア国民が要請するところの、武力によらない平和な国際貢献を模索されることを強く要請し、防衛省に対し以下を申し入れます。

 一、海上自衛隊のソマリア沖派遣を再考し、中止すること。
 一、海上自衛隊の派遣が必至な場合においても、武器使用については慎重を期し、海賊との戦闘行  為はあくまでも回避すること。
 一、海上自衛隊の派遣については、長期化及び常態化させないこと。


■TOPへ