2022年、運動方針

2022年04月25日

2022年度運動方針

はじめに
新型コロナウイルス感染症は、日本社会での感染確認から2年を経過しましたが、その猛威は留まることを知りません。その変異株である「オミクロン株」は、感染力が従来のコロナウイルスよりも強く、これまで5波を数える感染のピークを大きく越えて、全国で急激な感染拡大が続いています。
政府の水際対策の間隙をついて、沖縄や岩国などの米軍基地が感染源の一つとなったことが指摘されています。入国する部隊の検疫を米軍に委ねている日米地位協定の問題は明らかであり、見直しの必要性を訴えていく必要があります。
政府は、2022年1月7日に沖縄、山口、広島の3県に、岸田内閣では初のまん延防止等重点措置を適用することを決定、1月21日からは東京など首都圏の1都3県、愛知、岐阜、三重の東海3県など多くの都道府県で同措置が適用されることとなりました。3月21日には全国で解除され、コロナの新規感染者は減少傾向にあるものの、人流が元に戻るにはまだ時間がかかるものと思われます。長期にわたるパンデミックは、社会的弱者を直撃し生活破綻の広がりが懸念されていますが、小さな政府をめざして新自由主義的政策を実行してきた政府・自公政権は有効な手立てを見いだせずにいます。繰り返される「まん防」などは、結局のところ市民任せの一時的措置であり、ワクチンの早期接種、病床の確保、発症時の行政対応、新薬の開発など、コロナ感染症発生から2年を経過してもなお不完全な対応に終始しています。変化しつつある社会構造に対応できる政治が求められます。私たちは、コロナ後の社会のあり方をしっかりと議論すべき時にあると考えます。
平和フォーラムのとりくみも、当面、対面でのとりくみは制約をされることとなります。各種媒体による情報発信やネットの活用など、創意工夫を持ったとりくみを継続していかねばなりません。と同時に、コロナ後のとりくみを後退させるわけにはいきません。この間、違憲と言える法律が矢継ぎ早に成立してきました。「森・加計・桜」などと称される政治問題が、政権から説明されないまま、多数による横暴が良識を持って議論されなくてはならない国会の場で繰り広げられている今の政治に対して、平和フォーラムの運動の真価が問われています。
昨年の総選挙では、平和フォーラムが事務局を担う「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」が、2021年9月8日、国会において立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組の4党を招き、衆議院総選挙に向けた政策合意の橋渡しを行いました。国民民主党を加えることはできませんでしたが、総選挙では「野党と市民の共闘」が成立し、一定の効果を生みました。しかし、一部で主張された「政権交代」へのリアリティー不足、自民党などによるあからさまな共産党批判などによって、各選挙区で善戦はしたものの決定的な勝利を呼び込むことはできませんでした。総選挙の結果は、立憲民主党の後退と日本維新の会の伸張を許し、改憲勢力は3分の2を大きく超えることとなりました。この間、市民連合は、国政の場や地方において、政党間での協議の橋渡し、共闘づくりへの政策要求など、与党の圧倒的多数といういびつな国会状況を変えるべく役割を果たしてきました。引き続き市民連合へ結集し、野党共闘への役割を果たさなくてはなりません。
2022年1月17日には、第208回通常国会が召集され、与野党による本格論戦が始まっています。会期は延長がなければ6月15日までの150日間であり、その後、参議院選挙が行われる予定になっています。このため、岸田政権は、「出入国管理法改正案」や「感染症法改正案」などの対決法案となる可能性のある法案提案を見送り、あくまでも「安全運転」を行うだろうというのが大方の見方です。
しかし、岸田首相は年頭の所感で憲法改正について「本年の大きなテーマ」と述べており、「敵基地攻撃能力」保有や、「緊急事態条項」導入などの危険な議論も進めています。今夏の参議院議員選挙が終われば、その後3年間は国政選挙が行われない可能性もあり、参議院選挙で改憲勢力が3分の2以上を占める事態となれば、憲法改正も含めた大幅な政策転換につながりかねません。この意味で、今回の参議院議員選挙は極めて重要です。
一方、立憲民主党は泉健太新代表を選出してから、初めての通常国会の論戦に臨んでいます。「安全運転」をすすめる岸田政権に対して、存在感を示すことができるかどうか、まさに正念場です。また、国民民主党と都民ファーストの合流にむけた協議が報道されるなど、参議院選挙をにらんで、さまざまな動きが出てきています。さらには、日本維新の会も一定の勢力を確保するなかで、自民党と同様に対応していかなくてはなりません。
2022年2月24日、ロシアはウクライナへの軍事侵攻を開始しました。欧米諸国は、一斉に反発し経済制裁措置に入りましたが、ロシア軍は、プーチン大統領が独立を承認した、ドネツク・ルガンスク両人民共和国に留まらず、主要都市への空爆のみならず首都キエフを含むウクライナ全土に軍隊を展開しています。攻撃対象は学校や病院にまで及び、侵攻後1週間で民間人の犠牲者は死者2000人を超え、ポーランドやスロバキア、ルーマニアへの避難民は100万人を超えています。3月4日には、欧州最大級のザポリージャ原発でも戦闘があり、原発サイト内において火災が発生し、あわやという事態も起きています。
平和フォーラム・原水禁は、抗議声明を発出するとともに、抗議打電行動や戦争をさせない1000人委員会とともに、3度の街宣行動にとりくみました。また、総がかり行動実行委員会としても、3月11日に新宿中央公園で「ロシアのウクライナ侵略糾弾!即時撤退を求める3・11新宿大アクション」を開催し抗議の声を上げました。
このような状況を利用し、安倍晋三元首相や高市早苗自民党政調会長、日本維新の会などは、核武装なしに日本は守れないとして米国と核を共有する「核シェアリング」を実施し、非核三原則を見直すべきと主張しています。原水禁は、抗議声明を発出し、このような議論は憲法9条に違反し、世界を核の危機に陥れるもので、唯一の戦争被爆国の市民として決して許されるものではないとの見解を表明しています。
このような極めて危険な状況のなかで、戦争法の廃止と「立憲主義」を回復、「憲法改悪」を阻止するための多数派形成が改めて求められています。岸田政権の本質は、9年近くに及ぶ「安倍-菅政治」の継承にすぎないことをしつかりと指摘しながら、引き続き、立憲主義・民主主義を立て直すとりくみを進めていきましょう。

1.憲法理念を実現するとりくみ
(1)憲法理念の実現にむけて
日本国憲法は、前文で「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」し、第9条で「戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認」を、第3章「基本的人権」や第10章「最高法規」で「基本的人権の本質、普遍性、永久不可侵性」を定めています。平和フォーラムの基本的立場は、これらに示された憲法理念の擁護と実現をめざすとともに、人権や民主主義の国際的な確立にむけた世界の到達点に立って、さらに発展させることです。そしてこの間、東北アジアの平和に向けたとりくみや、人々の生命の尊厳を最重視した「人間の安全保障」の具体化をめざしてきました。
2021年10月31日投開票で行われた第49回衆議院選挙以降、自民党は改憲勢力が3分の2を超えたことを背景に、改憲にむけた世論喚起に躍起になっていることから、これまで以上に私たちの改憲阻止にむけたとりくみが重要となっています。
1月17日に開会した、第208回通常国会の施政方針演説で岸田首相は、改憲について、国民の機運醸成にむけ、積極的な議論が行われることを期待すると述べるとともに、「敵基地攻撃能力」を含め、あらゆる選択肢を排除せずに検討するとし、防衛力の強化についても言及したことから、国会の審議動向を注視していかなければなりません。

(2)憲法審査会を中心とした国会動向に対するとりくみ
昨年来の憲法課題をめぐる最大の攻防点は、改憲発議の前提となる「改憲手続法」(国民投票法)改正でした。しかし、第49回衆議院選挙以降、改憲にむけた動きが急激に進んでいます。昨年12月16日の臨時国会での憲法審査会の自由討議では、改憲勢力の自民・公明に加え、日本維新の会・国民民主党までもが「憲法審査会を毎週開催し議論を進めるべきだ」、「憲法審査会に分科会を設置すべきだ」と主張しました。また維新・国民は、年明けからは、与党側幹事懇談会に出席するなど、改憲に前向きな姿勢をより鮮明にしています。
自民党は2月1日、憲法改正推進本部から改組した憲法改正実現本部の国民運動委員会を開き、国会での憲法論議の推進を目的に、全国11ブロックの責任者らを集め5月の連休までに全都道府県で地方議員を対象にした集会を開催することを確認するなど、党内の改憲議論を加速させています。また、ブロック会議を足掛かりに自民党4項目の改憲素案の有識者への理解の拡大に加え、国民にむけての「改憲の草の根運動強化」を目論んでいることが明らかなことから、そうした動向にも注視しなければなりません。
通常国会初となる憲法審査会が2月10日に開催されました。当初、立憲民主党などは、新年度予算案の審議中の開催には否定的でしたが、維新、国民が開催を強く求めたことから、早期の開催に踏み切らざるを得ない状況になりました。審査会の開催日程については、与野党第一党同士の協議により決めるのが通例でしたが、野党内の足並みの乱れが顕著に表面化したことから、憲法審査会をめぐる状況は、今後も予断を許しません。立憲民主党を中心とする立憲野党にとっては、まさに今通常国会は正念場といえます。 
この間の「国民投票法(改憲手続法)」改正の議論を踏まえれば、私たちはまず、国民投票法の附則4条に定められた事項が解決されない限り、「憲法改正国民投票」は許されないとの認識を社会的に浸透させるとりくみが必要です。加えて、改憲に反対する政党、国会議員、法律家団体と協力しながら憲法審査会の傍聴行動や国会情勢の情報分析に努め、多くの問題点を広範な市民に訴えていくとりくみが重要になります。
私たちはこの間、衆議院での改憲勢力が3分の2を占める厳しい状況の中でも、立憲野党と市民との共闘により、改憲の流れを阻止してきました。引き続き、力を緩めることなく民主主義を取り戻すとりくみを展開しなければなりません。

(3)広範な市民の結集に向けたとりくみ
2015年9月19日の戦争法強行採決以降、私たちは「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」による全国的大衆行動を推進し、とりわけ、立憲野党との連携の下、国会議員会館前での月例行動(19日行動)の共同開催を継続してきました。その結果、改憲発議をさせることなく安倍・菅政権を退陣に追い込んできました。
私たちには、この間の立憲野党と市民との共闘を継続し、より広範な結集を果たすことが求められています。「平和憲法を、未来へ」をスローガンにリニューアルされた「憲法改悪を許さない全国署名」や中央・地方での街宣行動、学習会などを通じ、民意は、改憲を望んでいないことや、改憲による危険性を強くアピールしていかなければなりません。
5月3日の憲法(施行)記念日集会については、2015年以来広範な市民の結集の下で大集会を実現してきました。しかし、2020・2021年については、新型コロナウイルス感染症の影響により東京・有明防災公園での開催を取りやめ、国会正門前ステージからのインターネット中継に切り替えての開催となりました。今年は、「祝!施行75年『改憲発議許さない!守ろう平和といのちとくらし2022憲法大集会』」を、東京・有明防災公園で開催する方向で現在準備が進められています。
改憲発議阻止にあたっては、反対派にも、賛成派にも、そして組織されていない大多数の市民に、改憲の危険性について知ってもらうことが重要です。そうした意味においても、これまで憲法に関心を持っていなかった人びとに対して訴えかけるツールとして、インターネットの重要性は明らかです。ウェブサイトやSNS、動画配信などを活用した情報発信能力の強化をめざします。これらを活用して、より一層改憲反対の世論醸成にとりくんでいきます。
平和フォーラムは、この間全国的なネットワークを持つ「戦争をさせない1000人委員会」運動をとおして、憲法破壊・人権破壊・生活破壊をすすめる安倍・菅政権と対決する多くの人びととのつながりを構築してきました。「総がかり行動実行委員会」「市民アクション」による改憲阻止のたたかいに継続的にとりくむとともに、沖縄・辺野古新基地建設に反対するたたかいや、原発再稼働に反対し脱原発を求めるたたかいなど、さまざまなとりくみを各地の平和運動センターとも連携し進めてきました。引き続き、重層的な展開を推進しながら、全国各地での改憲阻止の運動と連携させ、改憲阻止の実現をめざさなければなりません。

(4)改憲阻止にむけた、参議院選挙のとりくみ
7月に行われる参議院選挙は、改憲勢力が圧倒的多数を占める衆議院での現実を直視したとりくみが必要になります。参議院選挙後、3年間は国政選挙が行われない可能性もあることから、選挙で改憲勢力が3分の2以上を占めるような結果となれば、「国民投票法(改憲手続法)」改正から、一気に憲法改正をも含めた流れに直結しかねません。
憲法改悪を強引に推し進める巨大与党に対峙するには、立憲野党による共闘の構築が必要だとの基本スタンスで、これまでの相互の信頼関係や経過を踏まえ、立憲野党、市民連合と連携しながら、選挙戦にむけた態勢づくりを全国的にすすめることが必要です。
昨年秋の衆議院総選挙で投票に足を運ばなかった約5割の市民に、どのように私たちの運動に理解と共感を持ってもらうのか、そして、実際に立憲野党への「投票行動」につなげていくかが重要です。そのためにも、立憲民主党をはじめとする立憲野党には、先の衆議院選挙の反省・教訓を踏まえ、市民・有権者に理解されやすい「立憲野党」の枠組みと共感される政策づくりを、早急にまとめることが求められています。

(5)護憲大会のとりくみ
第59回を数える「憲法理念の実現をめざす大会」(護憲大会)については、11月12日から14日にかけて、愛媛県・松山市で開催を予定しています。
しかし、一昨年の滋賀県・大津市、昨年の宮城県・仙台市での大会と同様、新型コロナウイルス感染症の状況によっては、やむなく開催期間・方法(開会総会・分科会・閉会総会)を再検討する必要もあります。今後、地元実行委員会、護憲大会実行委員会での協議を進め、インターネット配信の活用など、この間の経験を生かした大会づくりにむけた準備をすすめていきます。

(6)安保法制違憲訴訟のとりくみ
2015年9月に強行採決された安保法制は違憲だとする裁判が、法曹・学者・市民により多数提訴されています。現在、戦争法の違憲性を問う「安保法制違憲訴訟」が、全国22の地方裁判所に25件の裁判を提起しており、「安保法制違憲訴訟の会」として、全国の弁護団とのネットワークを形成し、この間とりくみを進めてきました。
しかし、これまでに出された判決は全て国の主張を追認し、いずれも違憲性を認めない不当なものであり、判で押したようによく似た判断を繰り返すものとなっています。2022年1月27日に安保法制違憲訴訟の会による原告集会が日本教育会館で開かれ、違憲判決を勝ちとるために全国での原告・弁護団・支援者が一丸となったとりくみを通して、三権分立のもとで司法の独立した判断による立憲主義を取り戻す必要性を確認しました。平和フォーラムとしても引き続き、「安保法制は違憲である」との判決を求めるとりくみを推進します。

【とりくみ】
①改憲勢力が台頭した現実を直視し、そうした勢力に対抗する全国的運動として「戦争をさせない1000人委員会」のとりくみをすすめます。また、「持続可能で平和な社会(脱原発社会)」を求める「さようなら原発1000万人アクション」のとりくみと連携します。
②「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」「9条改憲NO!全国市民アクション」主催の共同行動にとりくむとともに、「戦争をさせない1000人委員会」独自の諸集会・行動、宣伝活動を展開します。
③戦争法の廃止・憲法改悪の阻止のとりくみを引き続き全力でとりくみます。米軍再編、自衛隊増強などを許さないとりくみと連携して、日米軍事同盟・自衛隊縮小、「平和基本法」の確立、日米安保条約を平和友好条約に変えるとりくみをすすめます。
④自民党などによる改憲攻撃に対抗するとりくみを強め、立憲フォーラムと協力し、院内外での学習会などを行います。中央での開催に加え、ブロックでの開催を奨励し協力します。また、機関紙「ニュースペーパー」での連載企画や冊子発行、ホームページなどへの掲載など適宜情報の発信をします。
⑤新しい時代の安全保障のあり方や、アメリカや東アジア諸国との新たな友好関係についての大衆的議論を巻きおこすとりくみを引き続きすすめます。
⑥5月3日に開催される「祝!施行75年『改憲発議許さない!守ろう平和といのちとくらし2022憲法大集会』」(東京・有明防災公園予定)をとおして、現行憲法の持つ平和理念を広くアピールします。あわせて、全国各地での多様なとりくみを推進します。
⑦「平和憲法を、未来へ。」をスローガンにリニューアルされた「憲法改悪を許さない全国署名」にとりくみます。なお、具体的なとりくみスケジュールについては、国会情勢などを踏まえ、改めて発文書などで周知します。
⑧参議院選挙の重要性を広く訴える行動を推進します。また、「市民連合」などと連携しつつ立憲野党議員の議席拡大をめざします。
⑨「憲法理念の実現をめざす第59回大会」(護憲大会)については、11月12~14日の日程で愛媛県・松山市で開催します。今後、地元実行委員会、護憲大会実行委員会で具体的な協議をすすめます。
⑩安保法制違憲訴訟を支える会と連携し、安保法制の違憲判決を求める諸行動にとりくみます。

2.日本の防衛政策に対するとりくみ
(1)東アジアの安全保障環境
米国の東アジアにおける安全保障戦略は、2021年1月に民主党のバイデン政権発足以降も、基本的に前トランプ政権を継承しています。一帯一路政策で経済規模を拡大する中国に対抗して、米国は日・インド・オーストラリアと経済・外交・安全保障の協議体=クアッド(Quad)を結成し、さらに英国、豪の2か国と軍事同盟といえるオーカス(AUKUS)を発足させ、中国への軍事的圧力を強化しています。ロシアに対しても、NATOの軍事力強化に加え、オーカスによりロシアを東西でブロックする体制を整えています。ミサイル技術の向上を図り、試射を繰り返す朝鮮に対しては、日韓と協調して非核化を求め、対話に応じるように促すレベルにとどめています。 
しかしながら台湾有事や朝鮮の核開発再開が言及され、米国とその同盟国による軍事演習が頻繁に行われている現状は、東アジアにおける軍事的緊張を高める結果となります。米中のパワーバランスが均衡を保っているとはいえ、不測の事態で軍事的衝突が起きかねない現状に留意する必要があります。
そうした中2022年2月24日、ロシアのプーチン大統領がウクライナへの軍事侵略に踏み切りました。侵略の口実には、プーチン大統領が再三指摘していたように、軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)の拡大があります。軍事同盟や武力による威嚇で平和的な社会を築くことはできないことはあきらかです。この機に及んで日本社会で巻き起こりつつある軍備増強、核の共有に向けた議論に対抗していかねばなりません。

(2)専守防衛を逸脱する日本の防衛施策
ⅰ)敵基地攻撃能力の保有を許さない
2021年11月に発足した岸田政権は、「敵基地攻撃能力」を検討すると明言しています。そもそも「敵基地攻撃論」については、「わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段として、誘導弾等による攻撃が行われた場合、攻撃を防ぐのに必要最小限度措置、攻撃を防御するのに他に手段がない限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的に自衛の範囲に含まれる」(1956年2月29日 衆議院内閣委員会 政府答弁)と当時の鳩山一郎内閣が見解を示し、つづいて翌月の委員会で「攻撃的な兵器を持つことは憲法の趣旨とするところでない」(1956年3月19日 衆議院内閣委員会 政府答弁)と述べ、憲法9条の平和主義の下で先制攻撃は憲法に反するとの政府の統一見解が確定しました。そして、日本の防衛政策の基本方針として「専守防衛」が本旨とされるに至ったものです。
しかし安倍政権下で、閣議決定によるこれまで違憲としてきた集団的自衛権の行使容認と、そのことを基本とした安保法制(戦争法)が成立したことにより、この「専守防衛」のあり方は全く形骸化してしまいました。また、護衛艦「いずも」と「かが」の空母化、高速滑空弾やスタンドオフミサイル(巡航ミサイル)の技術開発、12式地対艦誘導弾の長射程化と多様なプラットフォームからの発射能力(地発型・艦発型・空発型)の確保などが具体的にすすめられ、航続距離の長い航空機、空中給油機、強襲揚陸機能を持つ艦船の保有など「専守防衛」とはいいがたい装備を導入してきています。自衛隊の装備・技術全般に改めて批判的に目を向ける必要があります。

ⅱ)軍事拡大を導く防衛大綱の改定
岸田首相は2022年1月の施政方針演説で、おおむね1年をかけ「国家安全保障戦略」、「防衛計画の大綱」、「中期防衛力整備計画」を策定していくとしました。
これらの策定にあたっては、米国のリチャード・アーミテージ(アーミテージ・インターナショナル代表)、ジョン・ハムレ(戦略国際問題研究所CSIS所長)、ジョセフ・ナイ(ハーバード大学ケネディースクール教授)、マイケル・グリーン(戦略国際問題研究所CSIS上級副所長)など、いわゆるジャパン・ハンドラーの提言が踏襲されていくものと考えられます。これまでにも日本の安全保障政策に大きな影響を与えてきた「アーミテージ・ナイレポート」の第5版が2020年12月に公表され、同文書は、中国と朝鮮を最大の安全保障上の課題として、軍事情報や諜報情報を共有する「ファイブ・アイズ」(米・英・豪・加・ニュージーランド)に日本を含めることを提起し、さらに、日米の指揮統制や役割、任務などを議論し、反撃能力やミサイル防衛を構築していく重要性を訴えていました。
2022年1月7日に開催された日米安全保障協議委員会(2+2)の共同発表では、日米同盟のより一層の強化をめざすとされ、敵基地攻撃能力の保有をめざす日本の新たな安全保障戦略に日米が緊密に連携することがうたわれています。台湾有事などの緊急事態に関する共同計画の進展や、南西諸島を含め日米施設共同使用の拡大、さらに陸、海、空、宇宙、サイバーなど領域横断的な能力の強化と、防護、情報収集、偵察、演習などでの日米協力の深化を打ち出しています。
中国や朝鮮の軍事拡大や脅威をことさら喧伝し、対抗して必要な防衛力を整備しようとする考えでは、際限のない軍拡競争に陥り、軍事的緊張を高めるだけです。ともすれば偶発的な衝突から戦争へと発展する危険性も高まることとなります。

ⅲ)青天井の防衛費増大に歯止めを
2021年度補正予算での防衛関連予算は、2022年度概算要求に盛り込んでいる内容を前倒しで補正予算に取り込む離れ業を繰り出し、過去最大の7738億円が計上されました。本来補正予算は財政法29条で、予算作成後に生じた事由に基づき、特に緊要となった経費の支出のために組むことが目的であり、許される行為ではありません。岸田政権は、「防衛力強化加速パッケージ」と称し、2022年度予算を2021年度補正予算と一体として編成し、軍事力の強化にまい進しています。その結果2022年度の防衛予算は、10年連続増大、過去最大の5兆4005億円を計上しました。
米国は同盟国にGDP2%の防衛費を要求しており、自民党も昨年の選挙政策においてもGDP2%をめざすことを明記しています。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると2020年の日本の防衛費は世界9位でした。仮に軍事費をGDP比2%に増額すれば、日本は米国、中国に次ぐ世界3位の軍事大国となります。
 病院・保健所など人々のいのちと健康にかかわる領域を削減してきた新自由主義政策のつけが、コロナ禍で明白になっています。軍事ではなく人々のいのちとくらしを守る社会的基盤の整備に予算を回すべきです。
(3)日米軍事統合を許さず、戦争をする体制からの転換を
ⅰ)集団的安保体制に反対し、戦争法を廃止しよう
集団的自衛権行使容認の閣議決定(2014年7月)、日米防衛力強化のための指針(日米ガイドライン)の改定(2015年4月)、そして2015年9月の安保法制(戦争法)の強行採決をへて、日米軍事一体化が拡大しています。
安保法制により、自衛隊は外国の艦艇や航空機を「武器等防護」の名目で護衛することが可能となっていますが、2017年5月に初めて海自護衛艦が米補給艦を防護して以降、「米艦防護」については、防衛省のホームページで大枠の活動類型ごとに年間の件数が報告されるだけで、その内容は知らされることはありません。国会での事前承認、事後承認の手続きを不要としたことによりますが、シビリアンコントロールを形骸化させないために、国会の関与は必要であり、参議院付帯決議に基づいて事後検証を行う協議機関の創設は最低限行うべきです。2021年11月には、「武器等防護」がオーストラリアにも適用され、日豪共同訓練(日豪トライデント)で、豪艦船の防護を自衛艦が実施している状況です。2022年1月6日には、日米地位協定に類する「日豪円滑化協定」の署名も両国で取り交わされ、他国との集団的自衛の枠組みが広がりつつあります。
他国と共に「戦争をする国」にまい進する政府の姿勢を批判し、戦争法廃止に向けた世論をつくりあげることが求められます。

ⅱ)南西諸島の軍事化、琉球弧を戦場とすることを許さない
米国は対中国を念頭に、九州・沖縄からフィリピンを結ぶ「第1列島線」に、射程500km以上の地上配備型ミサイル網を構築する方針のほか、部隊の小規模、分散展開を骨格とする海兵隊のあらたな運用方針「遠征前方基地作戦(EABO)」を策定しています。これに基づき、米軍と自衛隊は、九州から南西諸島に軍事用の攻撃拠点を置く「日米共同作戦計画」を策定していたことが明らかになっています。
与那国島、石垣島、宮古島、沖縄本島、奄美大島、馬毛島・種子島、そして九州各県の自衛隊基地では、ミサイル部隊や電子戦部隊が編成され、佐世保の水陸機動団(日本版海兵隊)が日米共同で上陸訓練などの軍事演習を頻繁に行うようになっています。馬毛島には自衛隊の兵站施設の他、米艦載機離発着訓練(FCLP)用の滑走路も作る計画が進み、基地の日米共同使用がすすめられています。
 沖縄・普天間基地の返還合意(1996年)から25年が経過し、2014年2月に日本政府が沖縄県に「5年以内の運用停止」を約束してから8年が過ぎています。「沖縄の負担軽減」と言いながら、日

米共同訓練等の増加に伴い、事故、事件は相変わらず多発しており、普天間基地における米空軍の離発着回数も2021年度は過去最多(18017回)を記録しています。
政府は、尖閣諸島などの「島嶼防衛力向上」、防衛の空白地をなくし、島民を守るとして「南西諸島への備えを強化」していくと述べていますが、その実は戦争のための前線基地を日米と共につくり上げようとしていることに他なりません。
辺野古新基地建設は、大浦湾の軟弱地盤を埋め立てる政府の計画に対して沖縄県が不承認の判断を下していますが、この判断を支持し、これ以上の基地建設を進めることを許さず、裁判等の行方を注視していかなくてはいけません。また辺野古崎を挟んで大浦湾の南側の海域で進行する工事の中止を求め、米軍への供用や自衛隊使用を許さないとりくみが求められます。
また、重要土地調査規制法について、2022年6月に基本方針の策定や政令などが交付され、9月に全面的に施行される予定です。政府内では「高所からの監視」も同法にある「機能阻害行為」にあたるとの意見も出ており、あきらかにメディアの取材制限、反基地運動への弾圧を意図するものであると考えられます。これまでの反基地運動の歴史を踏襲し、米軍基地及び自衛隊基地前の集会や監視行動に積極的にとりくむとともに、自治体及び議会に要請や陳情などの申入れをするなど、各都道府県の運動団体組織が可能な限り実施して抵抗の姿勢を示していくことが重要です。

ⅲ)日米地位協定の抜本的改定を
新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大のなか、沖縄、山口、神奈川、東京、青森など米軍基地が所在する都県で、検疫も行動制限もない米軍関係者によるコロナ感染の拡大が問題視されました。また、沖縄、東京、青森の米軍基地などで、有機フッ素化合物(PFOS、PFOA)の環境への漏えいにより、地域住民の飲料水が汚染されるなど、在日米軍による被害が頻発しています。
日米軍事一体化の中で、米軍の動きがより活発になってきていますが、それに伴って米軍機の墜落、部品落下、騒音被害など事件、事故も多発し、基地周辺住民のみならず日本の市民社会に対するいのちとくらしへの重大な脅威となっています。
にもかかわらず、在日米軍への規制は極めて限定的なものでしかないのが現状です。
戦後の占領期と同じように自由に行動することを望んだ米国は、1951年の旧安保条約と行政協定、1960年に日米間で調印した新安保条約と日米地位協定を通じて米軍の特権を維持しつづけました。日米地位協定3条で合同委員会での日米両政府の協議が明文化され、一見日米対等であるかのように装っていますが、秘密協定ともいえる「日米地位協定合意議事録」で、かつての行政協定と変わらない米軍の特権的権利が保障されるようになっています。
平和フォーラムは、オスプレイと低空飛行に反対する東日本連絡会と連携して、外務省・防衛省に対して米軍機の飛行問題について交渉を重ねてきました。政府の姿勢は、安保条約を当然の前提として米軍機の自由な飛行を認める立場で一貫しています。米軍機への大幅な航空法適用除外をやめさせるよう粘り強い交渉とそれを支える大衆的な運動が必要です。
私たちのいのちとくらしを守るためには、平和憲法の理念に立ち返って、日米間の「秘密協定」や議事録も公開されない日米合同委員会への批判を強めながら、日米安全保障条約のあり方を問い直し、日米地位協定の抜本的見直しを追求していかなくてはなりません。

【とりくみ】
①「戦争をさせない1000人委員会」とともに、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」(総がかり行動実行委員会)に協力し、安保法制(戦争法)の廃止を求めるとりくみを行っていきます。
②専守防衛から逸脱する装備や技術などを検証し、敵基地攻撃能力の保有に反対するリーフレットの発行を追求します。国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の策定の動きを注視し、機関紙やホームページ等に反映するほか、防衛費の拡大に反対するとりくみをすすめます。
③軍事研究や武器輸出の動向を注視し、市民社会に軍事が浸透していくことに監視の目を光らせていきます。
④全国基地問題ネットワークおよび全国の運動組織と連携して、米軍基地のみならず自衛隊基地の軍事強化、米軍等との共同訓練の動きを監視し、その動きを情報発信するとともに、抗議するとりくみをすすめていきます。
⑤普天間基地の即時運用停止および辺野古新基地建設反対など、沖縄平和運動センターと連携したとりくみを進めていきます。また、戦争をさせない1000人委員会と協力して「総がかり行動実行委員会」や「止めよう辺野古埋立て!国会包囲実行委員会」(国会包囲実行委員会)等との共同行動を追求します。
  ●辺野古新基地建設を許さず、憲法が生きる沖縄と日本を―「復帰」50年 5.26東京集会―
   日 時:2022年5月26日(木)18:00~19:30 19:45デモ出発(予定)
   場 所:日比谷野外音楽堂
   共 催:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会
「止めよう辺野古埋立て」国会包囲実行委員会
●復帰50年 第45回 5.15平和行進(沖縄平和行進)
   日 時:2022年5月13~15日
⑥日米地位協定や日米合同委員会にかかわる課題について、学習会等を行うなど大衆運動を強化していきます。また、オスプレイと低空飛行に反対する東日本連絡会と連携し、米軍機の飛行にかかわる課題について、外務省・防衛省に要請行動を引き続き行っていきます。
⑦超党派の国会議員で構成されている沖縄等米軍基地問題議員懇談会の政府ヒアリング等の活動を注視していくとともに、政府要請の窓口として協力関係を引き続き保持していきます。
 
3.東アジアの非核・平和のとりくみ
(1)バイデン政権の対中政策と日本
米国バイデン新大統領は、トランプ前政権の「単独主義」を改め、「同盟重視」の姿勢で東アジア外交に臨むとし、2021年4月16日の日米首脳会談では、米中の対立を反映し、日米同盟の強化と「自由で開かれたインド太平洋」の実現への日米連携・結束を約束しました。日本政府は、「同盟および地域の安全保障を一層強化するために自らの能力を強化することを決意した」として、専守防衛の枠を超えて安全保障上の活動を強める意図を明確にしました。中距離核をめぐる米中露3か国間の現状を反映し、米国の第一列島線(マリアナ諸島から琉球列島)への中距離ミサイル配備が現実化しています。一方、一帯一路政策に基づく中国の西進路線は、欧州各国の懸念も呼び込み、英国の核戦力強化の宣言や東アジアへの空母派遣、宮崎県えびの高原での日米合同演習へのフランス陸軍の参加など、新たな動きが生まれています。52年ぶりとも言われる台湾問題への日米共同宣言での言及、3月13日の日米豪印の4カ国首脳による宣言に明記された「ルールに基づく海洋秩序に対する挑戦に対応すべく海洋安全保障を含む協力の促進」など、経済発展を続ける中国を意識した状況は、東アジアの緊張を高めています。 2021年6月11日から2年ぶりに英国で開催された先進7か国首脳会議(G7サミット)の首脳声明においても、米中2大大国の対立を反映し、新疆ウイグル問題や香港問題へ民主主義陣営としての団結を示すとともに「台湾海峡の安定」を求める内容となっています。
2021年7月5日の麻生副首相、12月1日の安倍元首相の「台湾有事」に関する発言は、台湾有事が重要影響事態であり、米艦に攻撃があれば集団的自衛権の行使も可能な存立危機事態の可能性もあるとするもので、政府は2021年度当初から台湾有事への自衛隊の関わり方を検討していると報道されています。また自衛隊は、ARC21、マラバール2021、Pacific Crown21など、米軍などと共に南シナ海において頻繁に共同軍事演習を繰り返しています。中国外務省は安倍発言に即座に反応し、「安倍元総理は台湾問題で公然とでたらめを言い、中国の内政について勝手な批判をした」「強烈な不満を示し、断固反対する」と強い反発を示しました。
2021年3月7日、中国の王毅外相は、尖閣諸島付近で活動する海警局の武器使用を認めた「海警法」について「特定の国を対象にしたものではない」とした上で、日中関係の改善は地域の平和と安定にプラスであり、「紛争を武力によらず対話で解決するのが中国の一貫した立場」と述べています。日本政府は、日米同盟強化の方針に拘泥することなく、日中の信頼醸成と課題の解決にむけ、話し合いの扉を開くべきです。 
2022年1月7日、日米両政府は安全保障協議委員会(2+2)がテレビ会議形式で開催されました。冒頭、米国から「自由で開かれたインド太平洋実現のために、強固な日米同盟の一層の強化に強くコミットする」と、西進政策を進める中国を意識した発言があり、日米四閣僚は、「南シナ海における中国の海洋権益に関する主張、軍事化と威圧的活動への強い反対、地域の安定を損なう行動をともに抑止し、必要であれば対処することで一致した」とし、また、台湾問題についてもその平和と安定の重要性を強調しています。バイデン政権の「同盟重視」の政策では、米国の対中政策の先頭に日本を置くこととなっています。岸田首相は、「ミサイル防衛を含め、あらゆる選択肢を排除せず、防衛力を速やかに、抜本的に強化するために、新たな国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防の策定にとりくむ」と述べ、敵基地攻撃能力の保有も視野に入れています。米国は、日本の一部政治家の主張する「防衛費のGDP2%枠」を支持・要求していると伝えられ、米中対立の行方が不透明な中で、日本の防衛費の更なる拡大が見えています。
中国をめぐる日米の姿勢は、中国を「敵国」として軍事的威圧を含めた挑発を繰り返すもので、東アジアの安定に向けた外交的努力、対話への道を塞ぐものと言えます。
東アジアの現状と中国の今を分析し、日中関係において日本の処すべき姿勢はどうなのかを考えるために、平和フォーラムは、2022年2月11日、フリージャーナリストの富坂聰さん、防衛ジャーナリストの半田滋さんを迎え「建国記念の日を考える集会-日中関係!これでいいのか」を、オンラインを中心として開催しました。また、それに先だつ1月26日には、「中国人民平和軍縮協会」とオンラインでのミーティングを開き、今後の日中関係及び東アジアの平和について意見交換を行ってきました。

(2)バイデン政権の朝鮮半島政策と日本
米国のサキ大統領報道官は、2021年4月30日に、朝鮮の核問題解決に向けたバイデン政権の政策見直しが完了したことを明らかにしました。同日、ワシントン・ポスト(電子版)は、バイデン政権による朝鮮政策が「オバマ、トランプ両政権が進めた政策のバランスを取り、段階的な合意をめざす」ものになるとして「非核化という最終目標の下で、特定の措置に対し(制裁を)緩和する用意がある」との米国政府関係者の話を掲載しています。米国政府高官は、新政策を「キャリブレーテッド(調整された)・プラクティカル(現実的)・アプローチ」と説明していますが、政策の内容については明らかにしていません。
朝鮮においては、2021年1月に5年ぶりに朝鮮労働党大会が開催され、金正恩国務委員長は、父金正日が就いていた「総書記」の立場を継承することとしました。金正恩委員長は、これまでの経済政策の失敗を認めるとともに、米国が朝鮮敵視政策を放棄しない限り対話に応じない姿勢を明らかにしました。「自力更生」の経済政策と「核戦力強化」を掲げ新たな国家建設に向かうとしていますが、韓国や米国との対話への道は残すこととしています。金正恩朝鮮労働党総書記・国務委員会委員長は、2021年6月17日に開催された党中央委員会総会において、「対話にも対決にも準備しなければならず、特に対決にはさらに抜かりなく準備しなくてはならない」と発言しました。一方で、金与正党副部長は「誤った期待は、さらに大きな失望を呼ぶ」とも述べています。朝鮮政府は一貫して、米韓軍事演習などの朝鮮敵視政策を放棄することが対話の条件としてきています。しかし、米韓合同軍事演習は強行され、バイデン政権下においてこれまで米朝会談の進展はありません。米朝の協議に関しては5月3日、G7外相会議に出席したブリンケン米国務長官は、「外交的関与を期待する」として、決定権は朝鮮にあるとしています。しかし、これはオバマ政権の「戦略的忍耐」と何ら変わるものではなく、接触も交渉もない状況で米国内においても批判は強まっています。この間、日米韓の高官級協議も複数回開催されていますが、動きのないのが現状です。
平和フォーラムは、朝鮮半島での米国及び米軍の関与に反対し、米韓軍事演習の停止、朝鮮戦争終結と平和条約の締結を求め、朝鮮半島の将来を朝鮮民族が主体性を持ってすすめることのできる状況を求め、韓国の市民団体などと連携し、「WARAmerica NO」の運動にとりくんできました。今夏は、米国大使館、領事館など5施設に、米韓合同軍事演習を中止して米朝対話を進めるよう要請文を送っています。
2022年に入って、朝鮮は短距離・中距離の弾道ミサイルの発射実験を7回繰り返しました。また、大陸間弾道ミサイルや核実験の再開も示唆しています。朝鮮は2018年に核実験と大陸間弾道ミサイルの発射実験を一時停止する「モラトリウム宣言」を行いました。しかし、制裁措置など朝鮮を取り巻く情勢に変化はありません。現在の朝鮮の動向が何を意味するものか、国際社会は真剣に考えなくてはなりません。
2021年9月21日、文在寅韓国大統領は国連で演説し「朝鮮戦争の終戦宣言に向け、改めて国際社会の協力を要請したい。韓国・北朝鮮・米国の3か国、あるいはそれに中国を加えた4か国が共同で、朝鮮戦争の終戦を宣言することを提案する」と述べました。朝鮮労働党の金与正副部長は、「終戦宣言は興味のある提案であり、良い発想である」と述べ、韓国が敵対的な態度を改めるならば「互いに対座して意義のある終戦も宣言することができ、北南関係、朝鮮半島の前途問題についても相談することができる」と南北対話にも前向きな姿勢を示しました。2021年12月13日、訪問先のキャンベラで記者会見に応じた文大統領は、朝鮮戦争終結宣言について「アメリカ、中国、韓国、北朝鮮は“原則的に”朝鮮戦争終結宣言に合意していると私は信じている」と、曖昧ながらも肯定的な発言をしています。しかし、一方で朝鮮戦争の当事者ではない日本政府が、宣言は「時期尚早」と難色を示していると報道されました。平和フォーラムは、朝鮮半島の課題に対して当事国政府は、何らかの積極的提案と対話を生み出すことを、粘り強く求めていきます。

(3)日韓関係の改善へ
2021年4月27日、菅内閣は、日本維新の会の馬場伸幸幹事長の「『従軍慰安婦』という用語は、軍により強制連行されたかのようなイメージがある」「『従軍慰安婦』の文言は不適切だ」とする質問趣意書に対して、今後政府として「従軍慰安婦」や「いわゆる従軍慰安婦」との文言は使用せず単に「慰安婦」とするとの答弁書を決定しました。同時に朝鮮人労働者の半島からの移入に関して、「強制連行」や「連行」は使用せず「徴用」とするとも決定しました。
日本軍慰安婦問題に関しては、1993年の河野談話において「いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる」として以降、教科書にも使用されてきました。今回の答弁書の閣議決定は、日韓両国の間に新たな溝をつくることとなります。そもそも、徴用とは権力が強制的に労働に就かせることを意味し、強制連行と何ら変わることはありません。戦時において国民徴用令に基づいて徴用したのだから強制連行ではないとの理屈が、日本人ならいざ知らず植民地支配下の朝鮮人に通用するものではありません。日韓両国において歴史認識、戦後補償などの課題が解決できないのは、日本の保守勢力がこれまで行ってきた侵略戦争や植民地支配を美化・正当化するためのプロパガンダにあることは明らかです。日本社会が、歴史事実を認め向き合うことが求められています。平和フォーラムは、歴史教科書問題や在日朝鮮人社会への差別に抗し、正しい歴史認識の下で日本と朝鮮半島の間に横たわる歴史課題の解決にとりくみ、日韓関係の悪化を市民社会から克服するようとりくみをすすめます。
2021年1月、ソウル中央地裁は、元日本軍慰安婦の損害賠償訴訟に関して日本政府が主張してきた「主権免除」を認めず日本政府に賠償を求める原告勝訴の判決を下しました。一方で4月に出された同様の裁判の判決では、同地裁は一転して「主権免除」を認め原告敗訴の判決を言い渡しました。4月の判決は、日韓関係の打開を模索する文在寅政権への配慮と伝えられます。しかし、5月5日の日韓外相会談では、日韓請求権協定によって解決済みであり韓国側での措置を求める茂木外相に対して、韓国チョン・ウィヨン外相は、日本側の正しい歴史認識なくして解決は困難との認識を示しています。
 ソウル中央地裁での元徴用工裁判の判決では、2018年の大法院(最高裁)判決を覆し、「徴用工問題は日韓請求権協定で解決済み」としました。日韓両政府の対立が、きわめて複雑な状況を作り出していますが、歴史事実を覆すことはできません。平和フォーラムは、1993年の「河野官房長官談話」、1995年の「村山首相談話」を基本に、市民レベルでの日韓連帯を追求しながら、歴史認識の共有化をめざしてとりくみます。
2021年7月6日には、「朝鮮半島の平和をめざす学習会」を開催し、廉文成(リョン・ムンソン) 朝鮮大学校外国語学部准教授、李泳采(イ・ヨンチェ) 恵泉女学園大学教授、韓忠穆(ハン・チュンモク) 韓国進歩連帯常任代表(ズームにて参加)、などの発言をいただきました。
「従軍慰安婦」の文言は不適切とする閣議決定、ユネスコやイコモスによる、「明治日本の産業革命遺産」について、徴用された朝鮮人労働者をめぐる説明などが十分ではないとする決議、韓国大法院での日本企業に対して元徴用工への賠償を命じた判決をめぐって、水原地裁安養支部による韓国企業「LSエムトロン」が三菱重工に支払うべき物品代金約7900万円の差し押さえ命令など、問題は山積しています。
このような中、戦前に強制連行による朝鮮人労働者が過酷な労働を強いられたとして、韓国政府が反発していた佐渡金山の世界遺産推薦を、2022年2月1日、日本政府が決定しました。韓国政府は2月4日に、日本政府の試みを阻止するための官民合同タスクフォース(TF)第1回会議を開いています。世界遺産が何も「負の歴史」を否定するものではありません。環大西洋奴隷貿易の世界遺産‐ケープ・コースト城塞は、366年にわたって1200万人以上のアフリカ系黒人を奴隷として移送した拠点でもあります。要は、その歴史をどのように伝えるかにあります。明治日本の産業遺産において、軍艦島などでの強制労働の事実を全く扱わない日本が、韓国から非難されるのは当然です。私たち平和フォーラムは、ユネスコ・イコモスの勧告に従って、正しい歴史を記載するように求めます。

【とりくみ】
①東アジア市民連帯として参加する国際平和機構「コリア国際平和フォーラム」との国際的な連携の強化に努めます。当面、コロナ禍の中にあって交流・会合がかなわないため、情報交換を目的にZoom会議の開催にとりくみます。
②韓国平和NGO「アジアの平和と歴史教育連帯」と連携し、歴史認識の一致をめざしてとりくみます。また、歴史教科書の採択や記述に関する問題にとりくみます。
③植民地支配責任・戦後責任問題の解決のために、日韓連帯を基本に、「強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」とともにとりくみます。また、正しい歴史認識のもと、「明治日本の産業革命遺産」や「『記憶・反省・そして友好』の追悼碑」の課題にとりくみます。
④戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会に結集するとりくみの一環として、「朝鮮半島と日本に非核・平和の確立を!」市民連帯行動実行委員会とともに日朝・日韓の市民連帯を基本にとりくみをすすめます。
⑤在日朝鮮人社会、韓国市民社会などと連携し、東アジアの平和と朝鮮半島の自主的統一をめざすとりくみをすすめていきます。

4.さまざまな人権課題へのとりくみ
(1)朝鮮学園をめぐる課題へのとりくみ 
2010年度から実施された高校授業料無償化措置(2014年改正され「高等学校等就学支援金制度」)は、第2次安倍政権が成立した直後に文部科学省令が改正され、適用への申請がなされていた朝鮮高校を、制度から除外しました。その後、今日まで10年以上にわたって朝鮮高校生には適用されることなく、全国で適用を求める訴訟が行われてきました。平和フォーラムは、2013年3月に、朝鮮学園関係者や支援団体、在日朝鮮人社会とともに、日比谷野外音楽堂において適用を求める集会を開催し、以来「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク」を中心に差別撤廃にとりくんできました。全国5ヶ所の訴訟は最高裁において、差別を当然とするきわめて不当な決定がなされました。どの不当判決も不適用とした文科大臣の決定を支持し、文科省令の改正の是非には触れないこととなっています。
このような中で、2019年10月1日からの幼保無償化からも朝鮮幼稚園やブラジル人学校などの外国人幼稚園が排除されました。また、コロナ対策の一環である「学生支援緊急給付金」の制度からも朝鮮大学校が排除されました。平和フォーラムは、「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク」に結集して、適用を求める署名活動や省庁交渉にとりくんできましたが、現在適用をかちとるに至っていません。幼保無償化については、様々な批判と要求から、文科省が「地域における小学校就学前の子どもを対象とした多様な集団活動事業の利用支援」の制度を設けましたが、適用の可否の決定や支援内容に問題があり、再考が求められます。
過去の植民地支配から、日本社会には朝鮮人社会に対する根強い差別意識がはびこり、日韓・日朝の関係に大きな影を落としています。また、そのことが日本社会に求められる「多文化・多民族共生社会」構築に大きな障害となっています。東北アジアの平和にむけて、日朝国交正常化にむけても、国内における差別撤廃と植民地支配から引き起こされてきた差別意識の払拭が求められます。

(2)部落差別解消に向けたとりくみ
 2016年12月に施行された「部落差別解消推進法」をふまえ、条例の制定や改定が各地で進んでいます。また、法を管轄する法務省は2018年12月に「特定の地域が同和地区である、またはあったと指摘する情報を公にすることは、差別の助長・誘発目的かどうかにかかわらず、人権擁護上許容し得ない」「原則として削除要請などの措置の対象とすべきだ」と明記し、インターネット上での差別を助長する記載内容について、プロバイダーへの削除要請について従来の運用を見直しする通知を地方法務局に通知していますが、効果は限定的になっています。
 2021年9月27日、「全国部落調査」復刻版出版差し止め裁判の判決が東京地裁で言い渡されました。判決は、①被差別部落の一覧表の公表が身元調査を容易にし、部落差別を助長することを認め、②「復刻版 全国部落調査」に関し、出版の差し止めに加えインターネット上でのデータ配布禁止や二次利用の禁止も認め、③原告らの大部分に対して「復刻版 全国部落調査」のデータ配布や「部落解放同盟関係人物一覧」のデータ配布を理由とする賠償を認めたことなど、基本的に評価できる内容でした。
 しかし、④原告らが主張し、仮処分段階で様々な裁判官が認めていた「差別されない権利」の侵害を否定したこと、⑤プライバシー権侵害に関し、一度情報を公開した者は、本件の被告らの上記行為に対する承諾を与えていないにもかかわらずプライバシー権侵害の成立を認めない旨の判断を行ったこと、⑥プライバシー権侵害に関し、「復刻版 全国部落調査」に現在の住所地・本籍地が掲載された原告のみ救済し、親族の住所地・本籍地や過去の住所地・本籍地が記載された原告の救済を否定したこと、⑦原告解放同盟に関する「業務を円滑に行う権利」の侵害を認めなかったこと、⑧差止めの範囲につき、「復刻版 全国部落調査」の全ての記載に対する差し止めを認めず、一部の都道府県につき差し止めの効力を及ぼさなかった点は、極めて問題であり、控訴することになりました。
 引き続きYouTubeなどに対して違反報告をするとともに、法務局などに対して削除要請などを強化し、アウティング(暴露)と差別は社会悪であるという世論を高めるとともに、人権侵害救済法と差別禁止法の早期制定にむけたとりくみが求められています。
 狭山事件の再審を求めるたたかいは事件発生から半世紀以上が経過し、第3次再審請求してから14年以上が経過しています。この間、191点の証拠開示が行われ、弁護団によって246点の新証拠が提出されています。特に2018年1月に提出された福江鑑定は、コンピュータを使用して筆跡のズレ量を計測する科学的鑑定方法によって、脅迫状は石川一雄さんが書いたものではないことを明らかにしています。また、2018年8月には、蛍光X線分析によって、インクに含まれる元素を調べ、「自白」通りに発見され、有罪の証拠とされた万年筆が被害者のものではないことを明らかにした下山鑑定も提出されています。弁護団はこれらの新証拠の提出を踏まえて鑑定人尋問の請求をすることにしています。
 1922年3月3日、京都において「水平社」の結成大会が開かれました。それから100年、しかし未だ差別は尽きていません。沖縄へ、アイヌ民族へ、在日コリアンへ、外国人へ、様々な差別の要諦は変わるものではありません。「人の世に熱あれ、人間に光あれ」とした水平社宣言に学び、その理念を共有してさらなるとりくみを進めなくてはなりません。

(3)水俣病問題の早期解決にむけたとりくみ
1956年5月1日に熊本水俣病の発生が公式に確認され、1965年6月12日には第二の水俣病である新潟水俣病が公表されました。
以来、被害者の救済を求め加害企業、国、県に対する裁判闘争をはじめとしたさまざまなとりくみが熊本、新潟両平和運動センターなどを中心に進められてきました。
熊本では、加害企業チッソ、国、熊本県に対して補償を求め、熊本地方裁判所(原告:1,384名)、東京地方裁判所(原告:86名)、大阪地方裁判所(原告:130名)において訴訟を提起し、現在審理が続いています。また、新潟においても被害者が加害企業昭和電工と国に対して補償を求め新潟地方裁判所(原告:150名)において訴訟の審理中です。新型コロナの感染症の影響などにより、弁論期日が取りやめになるなど裁判は大きな遅れをみせておりましたが、提訴から8年が過ぎ各地裁の裁判はいよいよ結審、判決を見通せる段階を迎えつつあります。
この間平和フォーラムは、「ノーモア・ミナマタ第2次訴訟公正な判決を求める要請署名」をはじめ「すべての水俣病被害者救済を求める電子署名」にとりくんできました。第1回署名提出行動を3月2日に実施し、全国から寄せられた41万5千筆(2月末現在)の要請署名のうち、2万筆を大阪地裁に提出しました。今後、各地裁の審理状況を見据えながら随時各地裁に提出することにしています。
最高裁は、2004年と2013年、二度にわたって国の認定基準で棄却された被害者を水俣病と認める判決を言い渡しています。しかし、政府・環境省は、「司法の判断と行政の判断は違っていい」と居直り、認定基準を見直そうとしていません。
平和フォーラムは、引き続き熊本、新潟両平和運動センターと連携し、補償を受けられずに取り残されている加害者救済のとりくみを進めるとともに、民主主義と憲法を守る立場からも水俣病全被害者の救済と公害根絶にとりくんでいきます。


(4)外国人の人権確立に向けたとりくみ
日本国内では労働力が不足し、多くの産業において外国人労働者に頼らざるを得ない状況が続いており、「外国人技能実習制度」や外国人留学生の就労拡大など、単に外国人を労働力としか見ない政策が横行しています。日本政府の姿勢は、基本的には移民は認めないというもので、重労働・低賃金の仕事をさせるために朝鮮人労働力の確保を図ってきた戦前の政策と根本は変わらないものです。このことから、外国人労働者への人権無視、低賃金や不当な搾取、劣悪な労働環境など様々な問題が生じており、また定住し長く日本に暮らす外国人に対しても教育、医療、福祉など基本的な行政サービスも不十分なままです。世界的に見ても突出して低い難民認定や、昨年、収容中にスリランカ人女性が亡くなったことによって関心が高まった出入国在留管理官署の収容施設(入管)の問題も、外国人全般に対する排他的、差別的な政策が背景にあるといえます。
移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)は、2022年3月18日「外国人技能実習制度の速やかなる廃止を求めます」との声明を発出し、現代の奴隷制との悪名高い技能実習生制度の廃止にとりくむことを確認しています。
ロシアのウクライナ侵攻によって、多数のウクライナ市民が他国への避難を余儀なくされています。日本政府も、いち早く受け入れを表明しましたが、首相官邸のホームページでは、「ウクライナから日本への避難民の受入れの推進」と書かれています。英文では「evacuees(避難民)」と訳され「refugees(難民)」とは異なる表記となっており、政府はあくまでも短期の避難民であると考えているようです。2020年度の日本における難民受け入れは、申請者の0.5%、47人となっています。ドイツ、41.97%で63,456人、カナダ、55.2%で19,596人、米国、25.7%で18,177人となっており、いかに日本の難民認定率が低いかが分かります。きびしい審査基準、通訳の不在や立証責任を本人に負わせるなどの手続き上の問題、加えてそもそも難民問題を人間の命の問題とする認識に乏しいことなど、様々な要因が挙げられます。自民党の小野田紀美参院議員(前法務大臣政務官)は「ウクライナから避難された方々は一時的な『避難民』であり難民ではない」との旨をツイッター上に投稿しました。日本も、国連難民条約に批准している以上、きちんとした対応が国際的にも求められます。戦火を逃れるウクライナ人を避難民とせず、難民としてきちんと受け入れなくてはなりません。
平和フォーラムは、外国人も含めてともに暮らすすべての人々が等しく基本的人権を保障されなければならないという立場から、出入国管理、労働問題、生活全般に関わる諸問題について苦闘する外国人およびこれを支援する「移住者と連帯する全国ネットワーク」など多くの人々と固く連携し、「多文化・多民族共生社会」の実現をめざします。

(5)ミャンマー民主化および人道的支援のとりくみ
昨年の2月1日に国軍がクーデターで実権を握り、国家非常事態宣言が発令されてから1年以上が経過しました。国連の安全保障理事会は2月に「あらゆる暴力行為を直ちにやめ、市民の安全を確保するよう求める」声明を発表、ASEANも外相会議にミャンマーを招待しないなど国際社会の軍政府に対する非難は続いていますが、民主化を求める市民の抵抗とこれに対する暴力的な弾圧が繰り返されています。
日本政府は多くの市民が殺害されたことなどに対し「強く非難する」との声明を出してはいますが、「ミャンマー国軍とのパイプを絶たずに影響力を行使する」として何ら有効な対策を打てていません。防衛省による軍幹部への教育訓練も継続しており、軍の暴力を後押しするものとして断じて容認できません。
平和フォーラムは、「在日ビルマ市民労働組合」や「民主化を支援する労組会議」など連帯する多くの組織とともに、カンパ行動などにとりくんできました。今後も帰国できない在日ミャンマー人への支援、本国で抵抗を続ける市民への支援にとりくみます。

(6)アイヌ遺骨などの返還問題へのとりくみ
2021年7月6日、平和フォーラムは、「先住民族アイヌの声実現!実行委員会」(多原良子代表[アイヌ文化伝承者、札幌アイヌ協会事務局次長])および「日本人類学会のアイヌ遺骨研究を考える会」(木村二三夫代表[平取アイヌ協会副会長])とともに、盗掘され全国の大学に保管されているアイヌ人遺骨の返還に関わる3回目の省庁交渉を、参議院議員会館で行いました。文部科学省は、これまでの主張を繰り返すばかりで、問題解決への進展を見ることはできませんでした。
文科省は、「遺骨の返還・集約をすすめるにあたっては、アイヌの人々の意向を最大限尊重する」としながらも、「出土地域のアイヌ関係団体からの求めに応じて、アイヌ遺骨等を出土地域に返還する」「返還を受けたアイヌ関係団体は、出土地域等において、確実な慰霊等を行う」など、アイヌ関係団体の求めや慰霊などの条件をつけており、その出土地域への埋葬は進んでいません。また、返還予定のない遺骨は、白老町につくられた「ウポポイ」(民族共生象徴空間)への合葬を行うとしています。先祖が北海道開拓の裏で強制移住させられ、遺骨も盗掘されて大学など研究機関へ持ち去られ、今回は「ウポポイ」へ合葬される。このような権力の都合による強制に、木村さんらの団体は、「ウポポイ」への合葬は強制移住だとして、アイヌ民族の「死ねば土に還る」という考え方に従って、申請の有無にかかわらず遺骨は地域に返還すべきと主張しています。アイヌ遺骨を保管する各大学は責任を取らず、盗掘の事実も「法的に問題があるとする記録が見つかってはいない」などと主張しています。
昨年の12月17日、「先住民族アイヌの声実現!実行委員会」と「日本人類学会のアイヌ遺骨研究を考える会」および平和フォーラムは、再び文科省、文化庁を相手に「チャランケ(=問題解決のための徹底議論)」を行ってきました。この中では遺骨返還対象団体の選定にあたり政府の「地域返還ガイドライン」が実態に合わず「確実な慰霊」を行うには不十分であること、政府の調査は「アイヌ遺骨」の定義が定められていない杜撰なものであり返還対象がさらに広がる可能性があること、文化庁の返還方針が曖昧であることなどを指摘してきました。文科省等の回答はとても十分なものとはいえず、今後もさらにチャランケを行っていくことが確認されました。
一方で、2018年に提訴された、名護市今帰仁の百按司(むむじゃな)墓から京都大学が持ち去った琉球人26体の遺骨の返還を求める訴訟が、2022年4月21日に判決を迎えます。人間の尊厳を踏まえた判決が待たれます。
日本政府は多文化・多民族共生を主張し、2020東京五輪は「Unity in Diversity」(多様性でつながろう)をメインのスローガンとして開催されました。しかし、「旧土人保護法」が廃止され「アイヌ新法」が制定されてもなおアイヌ民族の先住権が否定されている現状、琉球処分や戦後の米軍施政下で困苦を極め、復帰してなお基地の現状に怯えなくてはならない沖縄県民、植民地支配の歴史を負ってなお高校や幼稚園の無償化からも外される在日朝鮮人の民族的権利剥奪など、日本政府が率先して差別を行っている現状は、「Unity in Diversity」からほど遠いものです。五輪開催前、様々な差別発言から責任者の引責辞任が発生しました。このことこそ、日本政府の姿勢を象徴したものと言えます。平和フォーラムは、アイヌ民族など様々なマイノリティと共に、差別撤廃のとりくみをすすめていきます。
 
(7)性差別を許さず、女性の社会進出、地位向上をはかるとりくみ
 1898年に制定された明治民法は、天皇制の国家体制と軍国主義を基本に、長男である家長が戸主として家族を支配する「家父長制」が導入されました。近世からつながる封建制度を基調に、「爾臣民父母に孝に」と教える教育勅語によって、「家父長制」は国民に深く浸透することとなりました。戦後、新憲法の下の民法改正によって、「家父長制」は廃止されましたが、「家」への国民的意識は根強く、「両性の平等」による家族のあり方は定着していません。高度経済成長期には、両性の役割分業が固定化し、女性の経済的自立が阻まれました。現在においても、セクハラ・パワハラが横行し、女性の地位向上が社会的課題とされる状況には、「家」というものの誤った観念が背景にあります。
2021年3月30日に世界経済フォーラム(WEF)が発表した「世界ジェンダー・ギャップ報告書」によると、日本は前年より1つ順位を上げたものの120位で、G7各国では圧倒的な最下位となっています。隣国の韓国の102位、中国の107位より下位に位置づけられています。評価指標のうち日本は、読み書き能力、初等教育(小学校)、出生率の分野では不平等は見られないとして世界1位のランクですが、中・高等教育(中学・高校・大学)、労働所得、政治家・経営管理職、教授・専門職、国会議員数では、男女差が大きいとしていずれも100位以下のランクで、特に国会議員数では140位です。日本の女性の社会的地位の低さ、労働所得の低さが、ひとり親世帯の相対的貧困率の高さにつながっていると考えられます。 
 新型コロナウイルス感染症の拡大が深刻な中で、女性の自殺が深刻な社会問題となっています。2020年の自殺者数は前年の912人増で2万1081人となりました。特に女性は935人増と過去の数値を大きく上回りました。2021年の自殺者数は251人の減となりましたが、男性の1.7%減に対して女性は0.2%減で、高止まりの状況となっています。その背景には、非正規労働を強いられる女性の労働環境があって、コロナ禍で職を失ったことや、コロナ禍によって在宅勤務が増加する中でDV被害も増加したことなどがあげられます。日本に住む子どもの相対的貧困率は13.5%、約280万人の子どもたちが、貧困状態にあるとされています。特にひとり親家族の貧困率は48.1%で極めて深刻です。日本のひとり親家族は、圧倒的に母子家庭が多く約90%を占めています(2015年調査)。女性の働き先が主に非正規労働にあることが、ひとり親世帯の高い貧困率に表れています。早急な対策が求められます。
 2017年6月、110年ぶりに刑法の性犯罪規定が改正になりました。暴行や脅迫を用いて性行為をする「強姦罪」は「強制性交等罪」と名称が変わり、刑期も5年に引き上げられました。被害者の性別を問わないこととなり、監護者・保護者などによる「監護者わいせつ罪」と「監護者性交等罪」も新設されました。しかし、公訴時効が10年またはわいせつ罪は7年と短期であることや、性的同意年齢が13歳と低年齢であること、また、強制性交等罪が暴行や脅迫などの要件がつき不同意のみでは罪を問えないことなど、極めて不十分なものでした。
 2019年には、名古屋地裁岡崎支部、静岡地裁、同浜松支部、福岡地裁久留米支部で、相次いで性犯罪の無罪判決がありました。これをきっかけに、全国で性犯罪に抗議する「フラワーデモ」が開催されました。♯MeTooなどの運動も広がり、性犯罪を許さない世論は広がっています。
 2017年の改正時に、3年後の見直しとの付帯決議があったことから、2021年5月21日、法務省の「性犯罪に関する刑事法検討会」が、上川陽子法務大臣に「性犯罪に関する刑事法検討会取りまとめ報告書」を提出しました。「報告書」は、現行の強制性交等罪における「暴行・脅迫」要件について、「不同意」のみを要件とすれば、処罰範囲を判断する上で課題があるとして、加害者が用いる手段として暴行・脅迫のほか、威迫や偽計、監禁などを列挙することが提起されています。NGOの調査によれば、性被害者のうち83.8%(4944件/5899件)が警察に被害を相談せず、相談した人(894件)のうち、約半数が被害届を受理されなかったと答えています。被害者にも問題があるとする社会的偏見や制裁、暴行・脅迫などの立証の困難性などが影響していると考えられます。公訴時効や暴行・脅迫などの要件の廃止、同意年齢の引き上げなどの要求実現にとりくまなくてはなりません。
 選択的夫婦別姓制度については、6月23日、最高裁大法廷の家事審判の決定で、夫婦同姓を定めた民法や戸籍法の規定が、憲法24条の「婚姻の自由」に違反しないと判断されました。社会情勢が変化し、多くの世論が選択的夫婦別姓制度を求めている中で、2015年の合憲判決を踏襲した判決が今回も出されたことはきわめて残念です。しかし、夫婦の姓についてどのような制度を取るべきかという立法政策については、「次元を異にする」として、「この種の制度の在り方は国会で論ぜられ、判断されるべき事柄」とされました。今後は、国会で、選択的夫婦別姓制度の実現にむけて民法・戸籍法の改正を求めるとりくみをすすめなくてはなりません。
 同時に多様な性のあり方が受け止められる社会の実現も大きな課題です。議員立法の「LGBT理解増進法案」について、法案審議をする自民党の委員会で、「LGBTは道徳上許せない」「生物学上、種の保存に背く」「行き過ぎた差別禁止の運動につながる」などの異論が相次いだことが報道されています。このような発言自体が、まさにLGBTQ(Lesbian、Gay、Bisexual、Transgender、Questioning)に対する理解不足であり、明確な差別です。平和フォーラムは、2015年に東京都渋谷区と世田谷区で始まった「パートナーシップ制度」と同様の制度の導入を求めるとともに、国に対しては、「同性婚を禁じる民法や戸籍法の規定は、憲法14条1項に違反する」とした札幌地裁判決(2021年3月17日)を踏まえた法制度の導入を求めていきます。

(8)働く者の権利破壊を許さないとりくみ
ⅰ)関西生コン事件
2府2県の警察・検察による全日建関西生コン支部に対する不当弾圧はやむことがありません。裁判維持も困難に思われる不当な逮捕・起訴は、そのことに意味があるのではなく、むしろ組合潰しそのものを意図したものであり、警察・検察権力は、正当な労働組合活動を威力業務妨害、恐喝、強要にすり替え、耳を疑うような不法な人権侵害や働く者の基本権の侵害が当たり前のように繰り返されてきました。
こうしたなか、生コン業者団体が主導した様々な不当労働行為事件では、労働委員会で16件中10件において各業者の不当労働行為が認定されてきましたが、刑事事件では、8つの裁判に分けられ、大阪ストライキ第2次事件や加茂生コン第1事件で組合員らに対し懲役8月から2年という不当判決が下されてきました。
平和フォーラムは、関西生コンを支援する会と連携し、この間、裁判闘争支援と合わせ、平和フォーラム各都道府県組織や加盟単産を中心に全国的な支援体制づくりを進めるとともに、大阪高裁に対し、大阪スト1次、大阪スト2次(威力業務妨害事件)、加茂生コン第1(強要未遂被告事件)の3件の控訴審の労働基本権保障を踏まえた公正判決を求める団体及び個人署名にとりくんできました。また、第3回検証シンポジウムを2021年11月12日に開催し、全日建関西地区生コン支部に対する不当な弾圧を内外に明らかにしてきました。2022年2月3日には、国家賠償請求訴訟(国賠訴訟)の第2回口頭弁論に連動させ、検察庁前での街宣行動や国賠訴訟の傍聴行動、大阪スト2次事件・控訴審判決報告集会(2月24日)などに主体的に参画してきました。
全日建関西地区生コン支部武前委員長のスト事件、コンプライアンス事件などを含めた3つの裁判を併合した裁判では、2021年7月大阪地裁は、威力業務妨害・恐喝未遂・恐喝被告事件について、懲役8年の求刑に対して恐喝事件を無罪としたうえ、懲役3年、執行猶予5年としました。12月には加茂生コン事件控訴審判決で大阪高裁は、被告人とされた組合員2人のうち1人に逆転無罪、もう1人についても罰金刑に減刑するという実質勝訴の判決を出しました。恐喝事件が無罪とされたことは当然のことであり、この無罪判決はこれまで労働条件の改善や企業に法令順守を求める一般的な労働組合の活動が、威力業務妨害や恐喝未遂、強要などとして事件化されてきたことの一角が崩れたことを物語っています。また、フェイクニュースに対する名誉棄損訴訟で12月16日に大阪地裁が、瀬戸弘幸氏に対し、関生支部に30万円、武前委員長に10万円を支払え、当該ブログを削除せよと命じる判決を出すなど、検察によって作り上げられた事件の構造が明らかになりつつあります。
2020年3月に全日建、関生支部、組合員3人が原告となって、恣意的な長期勾留や検察による組合脱退勧奨などの違法行為について、国と京都府など3府県に対し国家賠償を求めてきた国賠訴訟の第2回の口頭弁論が2月3日、東京地裁で開かれました。原告を代表して湯川関生支部委員長は、「1月17日大津地裁であきらかにされた検察官の組合脱退勧奨は、氷山の一角だ。警察や検察の言い分を鵜呑みにして、逮捕状や勾留状を乱発した裁判官の責任も重大」と批判したうえで、「警察や地検の誤った思い上がりを正すという気概を持って、審理をすすめていただくことを希望する」と意見陳述しました。私たちは、国賠訴訟のなかでも脱退勧奨は、一検事個人の暴走ではなく、組織的・国家的な弾圧事件であったことが明らかになるよう、引き続きとりくみをすすめる必要があります。
この一年間で、関西生コンをめぐる国家権力による組合弾圧の姿が明らかになってきました。平和フォーラムは、引き続き「関西生コンを支援する会」と連携し、労働委員会闘争や裁判闘争の支援をするとともに、各県組織や加盟単産に対し、「支援する会」への加入拡大を求めるとりくみをすすめます。また、関西生コン事件の真相を明らかにするための学習会やオルグ活動にもとりくんでいきます。

ⅱ)韓国サンケン労組支援弾圧
関東においては韓国サンケン労組支援運動に刑事弾圧が加えられています。5月10日、支援する会事務局次長・尾澤孝司さんに「暴行」「威力業務妨害」容疑の逮捕・起訴が行われました。長時間の家宅捜索と起訴後も7ヵ月もの期間警察留置場に留置する不当な扱いが行われました。
韓国サンケン労組支援運動への刑事弾圧である支援する会事務局次長・尾澤孝司さんの逮捕・起訴に対して「韓国サンケン労組を支援する会」が呼びかけた「尾澤孝司さんの早期釈放を求める署名」(団体署名)に協力し、支援する会全体で団体644筆、個人9181筆の署名が集まりました。

【とりくみ】
①「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク」や「日朝学術教育交流協会」「朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会」「朝鮮幼稚園幼保無償化中央対策委員会」「朝鮮幼稚園保護者全国連絡会」「朝鮮学校オモニ会全国連絡会」「朝鮮学園理事会全国連絡会」「朝鮮大学国際交流委員会」などと連帯し、幼保無償化、高校就学支援金制度、また、コロナウイルス対策を目的としたさまざまな支援制度からの在日朝鮮人社会の除外を許さず、すべての制度の適用を求めてとりくみを強化します。
②実効あるヘイトスピーチ解消のための条例を求めて、とりくみを強化します。
③鳥取ループ・示現舎の被差別部落の所在地暴露を許さないとりくみを進めます。
④インターネット上の差別を扇動、助長する情報について、法務局などに対する削除要請を強化します。
⑤人権侵害救済法、差別禁止法の制定にむけた、国会対策を強化します。
⑥狭山事件の再審を求め、世論形成を進めるとともに、再審の実現をもとめてとりくみます。
⑦外国人労働者の人権侵害、入出国管理業務における人権侵害に抗して、真の「多文化・多民族共生社会」の実現にとりくみます。
⑧「先住民族の権利に関する国際連合宣言」に基づき、アイヌ民族など先住民の権利確立にとりくみます。
⑨裁判支援など、水俣病問題の早期解決にむけてとりくみます。
⑩性差別の撤廃にむけて、I女性会議や性差別とたたかう様々な組織と連帯してとりくみます。
⑪性暴力犯罪を規定する刑法について、暴行・脅迫の要件を撤廃し、不同意性交罪を新設することなどを求めます。
⑫選択的夫婦別姓制度の実現に向けて、民法・戸籍法の改正を求めるとりくみを強化するとともに、さらなる世論喚起を進めます。
⑬同性婚については、日本国憲法に保障された基本的人権を実現する観点から、国に対して、民法改正と札幌地裁判決(2021年3月17日)を基本とした制度の導入を求めていきます。
⑭死刑制度の問題点を共有し、世論喚起にとりくみます。
⑮関西生コン事件や韓国サンケン労組支援弾圧事件などの状況と課題について、広く世論喚起を行います。権力による不当弾圧を許さず連帯してとりくみます。

5.民主教育を進めるとりくみ
(1)教科書展示会裁判へのとりくみ
2014年、大阪府岸和田市の企業「フジ住宅」は、中国人や韓国人などを「野生動物」「在日は死ねよ」などと差別的な記事が掲載された文書を、職場で従業員に配布などしました。2020年7月2日、このヘイトスピーチ文書を配布された在日韓国人3世の女性が訴えた裁判が開始され、大阪地裁堺支部は違法と判断し、同社と会長に対し、原告の同女性に110万円の損害賠償を支払うよう命じました。しかし判決内容を不服として、双方が控訴し、2021年11月18日、大阪高裁は、「『在日は死ね』『韓国人はうそつき』など他国を侮辱する言葉はヘイトスピーチに当たるほか、会社側に差別する目的がなかったとしても女性の民族的出自に関わる差別的思想を職場で生み出す行為に該当する」などとして、132万円の支払いと侮辱や誹謗中傷の内容を含む文書を配らないよう命じ、1審に続き2審も原告勝訴の判決が出されました。しかし、判決内容を不服として、同日、「フジ住宅」側は上告し、裁判は継続中です。今後も裁判審議を注視していきます。

(2)教科書採択に対するとりくみ
2021年4月27日、政府は、衆議院議員馬場伸幸(維新)提出「従軍慰安婦」等の表現に関する質問に対する答弁書について、「従軍慰安婦」ではなく「慰安婦」、「強制連行」ではなく「徴用」を用いることが適切とする答弁書を閣議決定しました。これを受け5月18日、文部科学省は、中学校社会科、高等学校地理歴史科・公民科の図書を発行する教科書会社に対して、政府の統一的な見解の内容等に関する、異例の教科書関係臨時説明会を開催し、6月末までの訂正申請を求めました。説明会では、教科書会社15社が参加し、「従軍慰安婦」等の表現に関する質問主意書・政府の答弁書、関連する国会議事録が示され、今回の政府の統一的な見解を受けて教科書会社が訂正申請を行う場合のスケジュールが示されました。出席した教科書会社関係者は、「訂正しろとの圧力を感じた、訂正しない会社はないと感じた」と述べています。文科省は、訂正申請はあくまでも教科書会社の判断であり、圧力をかけるとの意図はなく、申請があるならばスムーズに反映されるようあくまでもスケジュールの目安を示したと説明しました。
6月14日、平和フォーラムは、5月18日に文科省が行った説明は、①訂正申請を強要する可能性がある、②萩生田文科大臣の国会発言資料は、閣議決定通りの記載をしなくてはならないとの誤解を与えるなどを指摘し、まずはその誤解を解くよう要請しました。文科省は指摘を受けて、教科書記述に関しては「政府の統一的な見解や確定した判例がある場合には、それらに基づいた記述も取り上げられていること」との検定基準の主旨も合わせて教科書会社へ通達しました。
同月22日、萩生田文科大臣は、文科省が教科書会社を対象に開いた説明会について、「訂正を行うように圧力をかけた説明会ではない」と述べ、「閣議決定の内容などを発行者が確実に把握し、必要に応じて訂正申請することが可能になるよう、必要な情報提供をすることを意図した」と説明しました。
9月8日、文部科学省は、「従軍慰安婦」や「強制連行」という表現は不適切だとする閣議決定を受け、教科書会社5社(山川出版社、東京書籍、実教出版、清水書院、帝国書院)が6月末までに、高校の歴史教科書など計29点について、記述を削除するなどの訂正を申請し、文科省は承認したことを発表しました。
高等学校では、2022年度入学生から、領土問題など現代の諸課題を形づくった近現代史を学ぶ「歴史総合」、法律や政治制度を理解したうえで模擬裁判や模擬選挙などにとりくむ「公共」など、「改訂学習指導要領」に沿った教育内容が順次実施されます。「公共」は、道徳教育の中核的な役割を担うことが、「改訂学習指導要領」に明記されています。全員が履修する必修科目を道徳の中心に据えるとなると、評価の問題に加え、入試への影響も気がかりです。

【とりくみ】
①育鵬社や教育再生機構が大阪府岸和田市の企業と結託した、教科書展示会での不正アンケート問題では、大阪の運動団体と連携し、大阪市議会での追及にとりくむとともに、公正取引委員会への資料提供などを通じて不当採択の問題として排除勧告などを引き出すようとりくみをすすめます。
②政権の意図に偏った恣意的な教科書検定の実態を明確にし、全国の市民団体および韓国のNGO「アジアの平和と歴史教育連帯」とともに、バランスのとれた教科書の記述内容を求めてとりくみをすすめます。
③憲法改悪反対のとりくみと連動し、「修身」などの復活を許さず、復古的家族主義、国家主義的教育を許さないとりくみを展開します。
④人に優しい社会へのとりくみを様々な方向から強化し、貧困格差を許さない方向からも、教育の無償化へのとりくみを強化します。
⑤歴史教育課題・道徳教育課題に対応するため、問題・課題を共有し授業実践の還流を目的としたホームページを市民等の協力のもと、人権を大切にする道徳教育研究会として「道徳教科書/もうひとつの指導案―ここが問題・こうしてみたら?」(https://www.doutoku.info)を運営していきます。

6.核兵器廃絶にむけたとりくみ
(1)核廃絶の実現に向けて
ⅰ)原水禁運動の基本に
原水禁は広島・長崎での被爆の実相を出発点として、加害と被害の歴史と向き合いながら、「核と人類は共存できない」を基本理念に据え、国内外の市民、諸団体と連帯し核廃絶に向けたとりくみをすすめてきました。
広島・長崎に次ぐ三度目の核兵器使用には至っていませんが、これまで何度も人類は核戦争直前の危機に直面してきました。また、繰り返されてきた核開発と核実験によって世界各地に多くの核被害を生み出しました。核廃絶と世界平和の実現は世界の人びとにとっての切実な願いであり、20世紀中期以降、国際的反核運動のうねりとして結実し、原水禁もその一翼を担ってきました。
しかしながら、いまなお核廃絶は実現しておらず、日本においても核抑止論の壁を打ち崩すことはできていません。被爆から77年が経過し、被爆者もいっそう高齢化しつつあるいま、あらためて原水禁として核廃絶に向けた決意を打ち固め、いかに運動をすすめていくのかが問われています。
冷戦期をピークとして核兵器の保有数自体は減少してはいますが、この間、保有国においては兵器の小型化と技術の向上がさかんに行われていることから、核軍縮に向かっているとは到底言うことができません。また、インド・パキスタン・朝鮮がすでに公然と核兵器保有に至り、イスラエルも核兵器保有が確実視されています。さらにイランの核開発に向けた動きが注視されています。
こうしたなかで核拡散防止条約(NPT)と核兵器禁止条約(TPNW)が、核軍縮・廃絶をめぐる国際的な動向の中心的な軸となっています。

ⅱ)核廃絶に向けた世界の動き
新型コロナウイルス感染症の世界的再拡大を受け、この間核軍縮にかかわる国際会議なども延期に次ぐ延期を余儀なくされ、NGOなどのとりくみもこれら再三の延期によって大きく影響され、オンライン企画などを中心に組み立てが行われてきました。
今年に入り再度の日程調整がすすめられ、核兵器禁止条約(TPNW)の第1回締結国会議は6月21日から23日にかけてオーストリア・ウィーンで、核拡散防止条約(NPT)再検討会議は8月1日から26日までアメリカ・ニューヨークで、それぞれ開催の合意に至っています。
これらの会合へのNGO団体などの参加の可否についてなどは不確定ですが、今後の動向に注視し、これらの国際会議に対する原水禁としてのとりくみについても引き続き検討していきます。
また、2017年7月に採択された核兵器禁止条約(TPNW)は、人道的立場からNPT条約を補完するものとして2021年1月に発効しており、3月23日現在で署名86か国・批准60か国となりましたが、条約に参加する各国、NGO、国連は、引き続き締約国を増やすべく働きかけを行っています。条約では発効から1年以内に今後の運用を話し合う締約国会議を招集することが定められており、3月にオーストリアの首都ウィーンで開催される予定でしたが、こちらも再度の延期が決定し、7月開催での調整が行われています。
以上のように、コロナ禍によって国際的会合のスケジュールは大きく乱れ、なかなか先行きが見通せる状況にはなっていません。核軍縮に向けた議論全体の停滞も危惧される状況が続いていますが、いっぽうで核兵器禁止条約の前進に期待を寄せる声も高まってきています。
核兵器禁止条約の発効などにみられるように、核廃絶・軍縮を求める世界の市民・NGOなどの弛まぬとりくみは一定の成果を得ていますが、核保有国がこうした努力に対し誠実な態度をとっているとは言えません。米中ロの対立などを背景に、むしろ核兵器の増強へ向けた動きが続いてきました。
こうしたなか、1月3日、アメリカ・ロシア・イギリス・フランス・中国の核保有5か国によって核戦争回避と軍縮に関する共同声明が発表されました。声明は①核戦争を回避し戦略的リスクを低減することが最も重要な責務、②核戦争をしてはならないことを確認する、③核兵器は、防衛目的、侵略抑止、戦争回避のために存在する、④NPT第6条の義務を果たす、⑤我々の核兵器は、互いの国、あるいは他の国を標的にしたものではない、⑥「核なき世界」への建設的対話を追求する、といった内容で構成されています。
具体的な核軍縮の筋道が示されておらず、また各国の現実の動きと大きく乖離したものであり、そのまま全面的に評価はできません。核兵器禁止条約に対するけん制であるせよ、地域紛争により核兵器国間の対立する中でも核保有国もこうした声明を発表せざるをえないところに至ったことは国際世論の動きによる影響は大きいと言えます。
しかし、2月24日に開始されたロシアによるウクライナ侵攻は、平和を願う多くの人びとにたいへんな衝撃を与えました。とりわけ、そのなかで行われている核兵器使用の威嚇や原発への攻撃・占拠は、この間、核軍縮に向けた積み重ねを踏みにじる暴挙です。
軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)の拡大や、ウクライナ東部のロシア系住民に対する迫害を口実にしていますが、いかなる理由があろうとも、断じて許すことができない蛮行であり、抗議と即時撤退の声をあげ続けていかねばなりません。
今回の戦争で明らかなことは、武力による抑止力、軍事同盟に加わることでの地域の安全保障を得ることが、いかに危ういものであるかという点と、意図的、偶発的であろうと原子力発電所に対する攻撃は、大規模な惨禍をもたらし、さながら核戦争の様相ともなる危険性をはらむことがあらためて認識されたことです。
原水禁は2月25日にロシアのウクライナ侵攻に抗議する声明を発表し、さらにロシアの核による威嚇に対する声明(2月28日)、原発への攻撃・占拠に対する声明(3月13日)を発表しました。まずは即時撤退と対話への復帰が求められることは言うまでもありませんが、ロシア自身も参加し公表したはずの「共同声明」の内容の遵守が当然行われるべきです。
核戦争の危険性が現実性を帯びる緊迫した情勢にありますが、だからこそ核保有国を正当化するような核抑止の論理がつくりだした現状として捉え、今回の対立軸のひとつとなった北大西洋条約機構(NATO)も含めて、全面的な批判・検証が必要です。そして、これらに対抗する国際的な世論形成をもって核軍拡への道を阻みつつ、「核なき世界」へと踏み出す人類史的な契機とすべきです。
アメリカのボニー・ジェンキンス国務次官は12月26日、共同通信の書面インタビューに応じ、「核態勢の見直し(NPR)」で、核兵器の役割縮小に向けた宣言を検討していることを明らかにしました。これは「先制不使用」へとつながる可能性があるもので、注目されます。
2016年にオバマ大統領(当時)が「先制不使用」の採用を検討した際は、日本の強い反対も影響し、断念したとされています。今回、バイデン・アメリカ大統領が意欲を示している核兵器の役割を限定する「唯一の目的」宣言について、日本などの同盟諸国から断念を求める働きかけが行われるなかで断念したと報道されています。
「被爆国」である日本がふたたび核廃絶に向けた動きを妨害することは許されることではありません。「核抑止」への依存といえる日本政府の基本方針それ自体の転換を求めるとともに、「先制不使用」採用を妨害しないよう、国内外から声を上げていかなくてはなりません。
イラン核合意をめぐっては、昨年来アメリカも間接的に含むかたちで核合意再建協議が行われています。アメリカやフランスから合意までにはまだ距離が大きいものの一定の進展があったことが示唆されていますが、一方、イギリスのジョンソン首相は協議の時間がなくなりつつあるとし、またイスラエルのベネット首相は合意が成立しても合意内容による拘束を受けることはなく、独自の判断で行動すると発言するなど、先行きは不透明です。核合意の行方は、バイデン米政権の対北朝鮮交渉にも影響すると見られ、注意しなくてはなりません。

ⅲ)日本政府の動向について
こうした状況にあって大きく問われなくてはならないのは、戦争被爆国である日本の役割です。10月4日に就任した岸田文雄首相は広島県選出であり、これまで「核軍縮はライフワーク」と語ってきた人物であることもあり、とくに核兵器禁止条約への日本政府の姿勢の変化を期待する向きもありますが、首相就任後の会見では条約そのものの重要性は認めたものの、オブザーバー参加については明確な言及をさけました。10月27日には国連総会第一委員会に提出された日本の核兵器廃絶決議が賛成多数で採択されましたが、核兵器禁止条約についてはいっさい言及しない内容でした。一方、核兵器禁止条約促進決議も採択されましたが、日本政府はこれに反対票を投じています。
また、1月17日の施政方針演説で、岸田首相は「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」を2022年中に開催することを表明しました。しかし、日本はこの間、核保有国と非保有国の「橋渡し役」を自称しながら、一貫して核兵器禁止条約への不参加の態度を変えることがありませんでした。しかしすでに発効し締結国会議も予定される今、少なくともオブザーバー参加へと早急に方針転換することが必須です。そして、それにとどまらず条約への署名・批准へ向けて、核兵器廃絶の議論に参加すべきです。
ロシアのウクライナ侵攻をむしろ奇貨として軍拡や改憲の機運へとつなげようとする勢力が跋扈しています。岸田政権においてもさらなる軍備増強や防衛装備品(武器)輸出の拡大をめざそうとしています。
とりわけ許しがたいことに、安倍晋三元首相が、アメリカの核兵器を国内に配備し共同運用する「核シェアリング」の導入を検討すべきなどと発言し、自民党や維新の会などの国会議員が呼応する事態にあります。
これに対し岸田首相は政府として検討は否定したものの、「国民的議論があるべきだ。我が国の安全保障に資する議論は行われるべきだと一般論として考えている」などと答弁し、自民党内での議論を容認しています。非核三原則を「国是」と言いながら、実質的にこれを破壊する動きを制御できない政府は戦争被爆国として果たすべき役割と努力を放棄していると言わざるを得ません。

岸田首相や政府、外務省に対しては引き続き、これまでの日本政府の核兵器禁止条約への消極的かつ硬直的な態度をあらためるよう働きかけを行っていきます。この間、原水禁はピースデポなどとともに「北東アジア非核地帯構想」実現に向け、日本政府が真剣に検討することを求めてきました。朝鮮半島情勢がふたたび硬直化している現状だからこそ、戦争被爆国として具体的な行動が必要になっています。
原水禁として、核廃絶に向けた世界の情勢を分析しつつ、日本が果たすべき責任について明らかにすることを目的として、2月7日、「日米英国際シンポジウム―日本に求められる貢献―」をオンライン開催しました。また、核兵器廃絶NGO連絡会をはじめとする諸団体やキャンペーンと共同しつつ、核廃絶に向けたいっそうの前進をつくりだすべく、とりくみをすすめています。

(2)高校生平和大使の活動
2020年度の第23代と同様、本年度の「第24代高校生平和大使」についても、新型コロナウイルス感染症が終息しないことから、活動全体を大きく縮小せざるを得ない状況が続いてきました。例年行ってきた欧州訪問など海外での活動は断念せざるを得ず、それぞれの選出地域でのとりくみ中心に転換し、また、オンライン会議やSNSを活用しながら活動を行っていきました。
広島での平和大使結団式もこれまで延期を重ねてきましたが、感染症の状況がいったん落ち着いてきた12月18・19日の日程で開催し、ようやく全国の高校生が一堂に会することができました。また、「高校生平和カレンダー2022」についても作成し、全国の支援者に配布、活用をお願いしています。
オンライン中心の連絡・交流という制約下ですが、核兵器禁止条約発効1周年に向け、平和大使と1万人署名活動に参加する全国の高校生が主体となってメッセージ動画を作成し、配信しています( https://www.youtube.com/watch?v=Tdjl-QYpfp0 )。
「高校生1万人署名活動・東京支部」ではこの間、街頭署名活動の展開は控えてきましたが、オンラインを中心にミーティングを重ねながら、現在、昨年好評を得た「オンライン修学旅行」や「講演会」などの企画を検討しています。
原水禁は、高校生平和大使を支援する会を通じ、若者のとりくみ、被爆体験の継承課題にかかわるとりくみをすすめていきます。なお、2022年で平和大使のとりくみが25周年を迎えることから、記念事業の実施についても検討します。

(3)「原水爆禁止世界大会」と「3.1ビキニデー」の開催について
原水禁世界大会はこの間、福島・広島・長崎の各開催地に、全国から結集するかたちで行われてきました。開会・閉会総会や分科会、フィールドワークを通して被爆の実相を学び、議論するなかで反核平和に向けた思いを共有し、次代へと継承するうえで大きな役割を果たしてきました。
しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大が繰り返されるなか、2020年はそれぞれ現地での開催を断念せざるを得ず、オンラインのみでの開催となりました。2021年についても感染症の拡大する厳しい状況ではありましたが、現地のご尽力もあり、参加人数制限などの対策を講じながら、オンラインを併用しつつ、現地結集のかたちでも大会を実施することができました。
この2年間、オンライン配信の実施を行ってきましたが、映像を活用したあらたな試みとしての成果もある一方、視聴回数の伸び悩みや参加者同士の議論や交流の機会を保証できていないことなどの課題も浮き彫りになっています。
1954年3月1日、ビキニ環礁でのアメリカによる水爆実験によって、「第五福竜丸」をはじめとする日本の漁船が被爆しました。このことをきっかけに日本における原水爆禁止運動が大きく拡がりました。私たちはこの被害の実相を継承し、核廃絶の決意を確認するため、毎年3月1日に静岡での集会を行ってきました。

【とりくみ】
①核兵器廃絶にとりくむ国内外のNGO・市民団体との国際的な連携強化をはかり、日本国内の核兵器廃絶にむけた機運を高めるため、核兵器廃絶にむけたとりくみを進めます。
②米国の中距離核ミサイル再配備に反対し、「非核三原則」の法制化を含めたとりくみを強化します。
③原水禁・連合・KAKKIN3団体での核兵器廃絶にむけた運動の強化をはかります。2021年NPT再検討会議をはじめ、核保有国大使館への要請行動などに協力してとりくみます。
④東北アジア非核地帯化構想の実現のために、日本政府やNGOへの働きかけを強化し、具体的な行動にとりくみます。さらにアメリカや中国、韓国などのNGOとの協議を深めます。
⑤非核自治体決議を促進します。自治体の非核政策の充実を求めます。さらに非核宣言自治体協議会や平和首長会議への加盟・参加の拡大を促進させます。
⑥政府・政党への核軍縮にむけた働きかけを強化します。そのためにも核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)や国会議員と連携したとりくみをすすめます。
⑦日本政府に対し、「核兵器禁止条約」への署名・批准を求め、被爆国として核兵器廃絶にむけた積極的な役割を果たすよう追求します。
⑧日本のプルトニウム増産への国際的警戒感が高まる中、再処理問題は核拡散・核兵器課題として、プルトニウム削減へのとりくみをすすめます。
⑨「高校生平和大使を支援する全国連絡会」を通して、高校生平和大使、高校生1万人署名活動のサポートなど、運動の強化をはかります。また、SNSなどを使い若者へむけた情報発信を強めます。
⑩核軍縮具体策としての核役割低減、先制不使用、警戒態勢解除、核物質最小化等の内容を広く情報発信します。

7.原発再稼働を許さず、脱原発を実現するとりくみ
(1)想定外の稼働原発の攻撃・占拠の衝撃
 ロシアのウクライナ侵攻で、史上初めて稼働中の原発が武力攻撃に遭いました。原発が武力攻撃されるとは、もともと想定されていません。武力攻撃を受ければ、制御不能に陥り放射性物質の環境放出に至る過酷事故が懸念される事態となります。送電線の切断による電源喪失や周辺の配管の損傷は、福島第一原発事故同様の事態を誘発するものです。平和時においても事故による環境破壊が懸念される原発は、戦時には当事国に留まらない世界的な環境破壊と生命の危機を誘発するものです。
原子力施設に対する武力攻撃は、戦時下で文民保護を定めたジュネーブ条約の第1追加議定書第55条で禁じられており、ロシアもそれを批准しています。現在、チェルノブイリ原発、ザポリージャ原発が攻撃・占拠され、さらに核技術研究所が攻撃されるなど原子力関連施設が標的になりました。核惨事につながる可能性は、世界に大きな衝撃を与えるもので許されません。
 原発立地地帯での初めての戦争に、私たちは脱原発がいかに重要かを再認識しました。
 ロシアの暴挙に抗議するとともに、軍の撤退と脱原発社会の実現の重要性を改めて確認しなければなりません。

(2)原子力規制委員会の限界と不祥事が続く電力会社
原子力規制委員会(規制委)は、福島原発事故から11年が経過する中で、組織の独立性、原発の安全審査基準・方法、管理体制など様々な問題点が明らかになってきました。既存原発が規制委の適合審査を通っても、司法の場において審査基準そのものが問題と指摘される場合があります。
2020年12月4日、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の耐震性を巡り、審査基準に適合するとした規制委の判断は誤りだとして、大阪地裁は、設置許可を取り消しました。また、日本原子力発電の東海第二原発(茨城県東海村)は、3月18日に水戸地裁によって防災体制・避難計画が十分に整えられていないことを理由に、運転を差止める判決が下されました。このことは他の原発でも同様の措置が求められることを意味します。推進派は、「世界一厳しい基準」と豪語して原発の安全性を確保したかのように語っています。しかし、司法の場から規制基準の問題が指摘され、避難計画の実効性が何ら検証もないまま進められる原発の再稼働は、あらたな「安全神話」を生み出す無責任なものと言えます。
さらに2021年1月8日には、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)において、所員が原発中央制御室に複数回にわたって不正入室した問題が明らかになりました。規制委は2021年3月16日、原発内の監視装置が2020年3月から故障していたと発表しました。結果、4段階あるセキュリティー対策のうち「最悪レベル」の評価を下し、その後事実上の運転禁止ともいえる改善命令を出すにいたりました。一方で、6、7号機のずさんな溶接不良や工事未完了も明らかになりました。7号機だけでも約1600箇所の溶接不良、未完了工事も76箇所もありました。東京電力柏崎刈羽原発では、不祥事が相次いでいます。
四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)でも、2017~19年に社員が宿直勤務中に計5回無断外出したことが、2021年7月に発覚しました。
相次ぐ原発での不祥事は、「安全基準」の適否以前の問題で、原子力業界に蔓延する危機意識の欠如と隠ぺい体質を表すものです。
関西電力では、幹部を中心に3億6千万円を超える原発マネーを裏金として受け取っていたことが明らかにされ、大きな社会問題ともなりました。原発をめぐる裏金の問題は、関西電力に限らず、様々な形でこれまで問題となってきました。今回、「原発マネーの不正還流を告発する会」が結成され、告発状が大阪地検に提出・受理されました。しかし、2021年11月9日に不起訴となってしまいました。2022年1月7日にあらためて検察審査会に申し立てを行い、関西電力の不正を追及しています。今後の行方が注視されます。引き続き「告発する会」の運動と連携し、原発と金の問題をめぐる不透明な関係を追及していくことが必要です。

(3)山積する福島第一原発をめぐる課題へのとりくみ
ⅰ)困難な廃炉作業と巨額な廃炉費用
福島第一原発では、依然として事故の収束作業は難航しています。廃炉にむけて最も難関といわれる溶融核燃料(デブリ)の取り出し作業は極端に高い放射線に阻まれ、今に至ってもデブリの全容を把握できず、取り出し技術の確立の目処も立っていません。2019年に政府・東京電力は、5回目の改訂となる廃炉工程(ロードマップ)を明らかにしましたが、当初の事故から30~40年後に廃止措置を終えるとの目標は変えませんでした。今後の手順は示すものの、使用済み核燃料の取り出しはすでに遅れ、最難関のデブリの取り出しなど具体スケジュールを書き込めませんでした。工程表通りにいかないことは、これまでの作業をみれば明らかで、廃炉作業は長期化することが予想されます。
さらに廃炉に関わる費用も21.5兆円と見積もられていますが、膨らみ続け東電の経営を圧迫するものとなっています。工事の長期化にともなって、人材確保、廃炉にむけた研究開発など様々なコストが膨らみ、廃炉費用は、巨額になることが予想されます。
トリチウム汚染水(汚染水)の問題は喫緊の課題です。政府は関係閣僚会議で海洋放出を決定し、来春には放出しようとしています。国・東電は、放出に際して丁寧に説明するとしていますが、漁協や生産団体、県民の強い反対の姿勢は変わっていません。原水禁は、汚染水の海洋放出に関して、海外の様々な団体から意見を集約し、政府に提出・交渉を行ってきました。韓国、台湾、中国などの周辺国からは強い反対の声があがっています。再び福島の海を放射能で汚染させることは、これまでの福島県民の復興に向けた努力を水泡に帰すことになりかねません。環境破壊、生活破壊、経済破壊などをさらに拡大しかねない汚染水問題について、現地や生産者そして国内外の人々との連携が重要です。
2021年12月17日、文部科学省、経産省、復興庁は、全国の小学校、義務教育学校、特別支援学校に対して、「『放射線副読本』(学校保管用)に同梱するチラシの配布について」とする通知を発出し、「アルプス処理水について知ってほしい3つのこと」「復興のあと押しはまず知ることから」の2枚のチラシを、問題が多い「放射線読本」とセットで全国配布しました。この通知は、根拠を示さず「トリチウム汚染水」は安全であるとするもので、トリチウム汚染水を飲んでいる人の絵が大きく記載され、「人間が食べたり飲んだりしても健康に問題がない」と記載しています。しかし、カナダの重水炉ピッカリング原発、仏のラアーグ再処理施設、青森県の六ヶ所再処理施設などトリチウムが多い施設の周辺においては、がん発生率の上昇が報告され、特に小児白血病が多いとされています。動物実験でもトリチウムは造血組織を中心に障害を生じるとされ、過去には夜光塗料に使用され、それにより長期間摂取した人の健康被害も報告されています。子どもたちに対して、このような一方的で不確かな情報を流すことは絶対に許されません。関係自治体からは、教育委員会を通さない直接配布に疑問の声が上がり、トリチウム汚染水の海洋放出に反対する漁業関係者からは不信の声が上がっています。放射線読本も含めて教材使用に反対し、子どもや家庭に届くことのないよう監視していかなくてはなりません。

ⅱ)避難生活と政府支援の打ち切りを許さないとりくみ
被災地福島では、2022年1月現在で、県内に6,710人、県外に27,000人、避難先不明5人の合計33,715人の方々が、今なお長期の避難生活を余儀なくされています。さらに自主避難者などこの数字に含まれない被害者も多数おり、福島県・復興庁の調査では十分に避難の実態が反映されていないのが現状です。
復興庁が発表した、2021年9月30日現在の震災関連死と認定された人の数は、福島県内で2,329人と、昨年よりも17人増え、その多くは高齢者で占められています。1都9県の震災関連死者総数3,784人の中で福島県が占める割合が非常に大きいことは、福島原発事故の影響による長期避難に伴うふるさとの喪失や、生業を奪われたこと、将来への不安など様々な要因があげられます。原発震災から11年目を迎えた現在でも、避難などに伴う心労が被害者を苦しめている現状を、これ以上放置しておくわけにはいきません。
一方、事故から11年を過ぎても福島では「原子力緊急事態宣言」がいまだ継続しています。その中で帰還困難区域を除いた居住制限区域・避難指示解除準備区域では、これまでの国内基準の20倍もの年間被曝量20mSvを基準に除染作業が行われ、基準を下回る地域から避難指示解除が行われています。しかし、20mSv/年とは、国際放射能防護委員会(ICRP)が、あくまでも緊急時の基準として示しているもので、帰還ありきで住民に無用な被曝を強いることは許されるものではありません。
また、避難指示解除に合わせて、帰還を強要するかのように住宅支援などの補償が打ち切られ(県内の災害公営住宅からの退去など)、避難者は、補償が打ち切られても避難し続けるのかのきびしい選択を迫られています。
政府や行政には被害者に寄り添う姿勢が全くないばかりか、原発事故の早期幕引きと被害の矮小化をはかろうとすることは、原発事故被害者への棄民政策としか考えられません。原水禁は、原発事故被害者と連帯して、補償の継続、生活の確保にとりくんでいきます。

ⅲ)国や東電の加害者としての責任を明確化するとりくみ
福島原発事故の刑事責任を求めて被害者らが訴えた「福島原発刑事訴訟」は、2019年9月19日に東電経営陣を無罪とする判決が下りました。現在、東京高裁において控訴審がはじまっています。2021年2月9日の第2回公判では、原告が要求した新たな証人尋問や現場検証を裁判所が認めませんでした。東京地裁の旧東電経営陣の全員無罪とした判決を覆すには、極めてきびしい状況です。引き続き裁判を支援し、東電の経営責任をきびしく追及していかなくてはなりません。
東京電力への損害賠償請求をめぐって、裁判外ADRセンターは、「原子力損害賠償紛争審査会による中間指針等」に明記されていない損害でも個別事情に応じて認められるとして受諾を勧告してきましたが、東電は指針を超えるものには応じられないとして拒否を続けています。東電は賠償への姿勢を2014年に示した「三つの誓い」で「和解案を尊重する」と表明したにもかかわらず、誓いを実行していないことは問題です。国や東電が、被災者を切り捨てようとしていることに対して、当事者や支援者と協力しながら補償の充実を求める必要があります。
これまでの裁判の中で、国や東電が「事故の原因は予想を超えた津波による自然災害にある」として、事故責任から逃げていることが、被害者に対する不誠実な態度となって補償問題を複雑にする一因となっています。しかし、2020年9月30日、仙台高裁の国、東電に対する損害賠償訴訟で、高裁判決として初めて国の責任を明確にしました。地裁判決では、全国で起こされた同様の訴訟で、国の責任を否定したのは8件、ほか8件では国の責任を認めており、判断が割れていますが、東電の責任については16件すべてで認めている現状にあります。引き続き国や東電の加害者としての責任について、裁判闘争などを通じて明らかにし、その責任を追及していかなければなりません。

ⅳ)子どもや住民の「いのち」を守るとりくみ
福島県は、福島原発事故当時、概ね18歳以下であった約38万人の子どもたちを対象に「県民健康調査」において甲状腺(超音波)検査を実施してきました。2021年10月の報告で265人が甲状腺がんまたはがんの疑いと診断されました。日本における甲状腺がんの発症率は、15歳~19歳では100万人に女性で約20人、男性は約5人で、年を経るごとに高くなります。福島での県民健康調査の検査対象者は約38万人とされ、甲状腺がんの罹患率はきわめて高いものです。しかし、県民健康調査検討委員会は、甲状腺がんへの放射能の影響について「証拠はない」とし、あくまでもスクリーニング効果の結果だとしています。
しかし、原発事故によって放射性ヨウ素が放出され、福島県をはじめ広範囲の住民、特に子どもたちが放射性プルーム(放射性雲)の正確な情報も知らされずに被曝し、甲状腺がんを始めとする健康リスクに曝されました。国は事故を起こし人々を被曝させた責任を認め、少なくとも「県民健康調査」で甲状腺がん・疑いと診断された全ての人々を「事故による健康被害者」として認め、生涯にわたる医療支援、精神的ケア、生活・経済支援等を行うべきです。
2022年1月19日には、東京電力を相手に甲状腺がんを発症した事故当時6~16歳の6人が、東京地裁に対して損害賠償請求訴訟を提訴しました。事故によって肉体的にも、精神的にも追い詰められている被害者の健康被害を認め、国はその責任を果たすべきです。勇気を持って提訴した被害者に寄り添い裁判を支援していきます。

(4)核燃料サイクルに対するとりくみ
原子力規制委員会は、日本原燃の六ヶ所再処理工場(青森県)について、「安全対策」が新規制基準に適合しているとしましたが、再処理工場の稼働に必要な設備の設計をまとめた「工事計画」にかかわる審査は続けています。審査資料の不備で日本原燃は、たびたび再検討を求められており、2022年上期としていた工場完成は困難であり、26回目の完工延期となりそうです。まして、本格稼働の見通しは全く立っていません。
また2016年に高速増殖炉原型炉「もんじゅ」が廃炉となり、フランスとの共同研究の計画があった高速炉開発計画(アストリッド計画)も、2019年8月にフランス政府が計画を放棄しました。核燃料サイクルを進めるうえで必要な施設や計画が次々と破綻しています。高速炉開発をアメリカの企業と共同開発する計画について、2022年1月に新聞報道がありましたが、先行きは不透明です。
軽水炉でプルトニウムを利用するプルサーマル計画は、当初16~18基の原発で実施する計画でしたが、「2030年までに少なくとも12基の原子炉」と目標を切り下げました。現在再稼働した10基の原発のうちプルサーマル発電を実施した原発は4基(関西電力高浜3、4号機、四国電力伊方3号機、九州電力玄海3号機)にとどまっています。福島原発事故以降、原発の廃炉が続き、原発の再稼働や新規原発の建設が厳しい状況下では、新たな計画数値を達成することは困難といえます。原発の再稼働が計画通り進まず、プルサーマル計画も進まなければ、作り出されたプルトニウムの使い道が失なわれます。「余剰プルトニウムを持たない」との国際公約を守ることは難しくなっています。2022年2月18日、電気事業連合会は、電力会社が英(約21.8トン)仏(約15.4トン)で保管しているプルトニウムを各社間で交換可能とする方針を発表しました。現在、英国では燃料加工を行っておらず、プルサーマル発電を行っていない東電などのフランス保管分を、英国分と帳簿上交換して、フランス分を燃料としてプルサーマルを実施している電力会社が使用するというものです。背景には、核兵器の材料となる大量に保有するプルトニウムに対して国際社会からの削減要求があります。再処理工場を稼働させ、これ以上のプルトニウム(現在約46トン)を増やす訳にはいきません。今後、原発の廃炉が増え、さらにプルトニウムの行き先が失われていけば、再処理する意味すら失われます。
プルサーマル計画を支えるMOX燃料加工工場(六ヶ所村)もその存在意義が問われています。2020年10月に原子力規制委員会の新規制基準の適合審査を通りましたが、工場の完成時期は7回も延期が繰り返され、2022年上期としていたものが、2024年上期と2年延期しました。さらにMOX燃料加工工場の建設費も当初の約1,200億円から約3,900億円と3倍以上に跳ね上がっています。六ヶ所再処理工場も当初約7,600億円だった建設費が約2兆9,000億円と4倍近くに膨れ上がっており、杜撰な建設計画で、核燃料サイクル計画にかかる費用は、歯止めなく膨らんでいます。
核燃料サイクル計画の破綻は明らかですが、岸田政権は、核燃料サイクル推進の方針を放棄していません。このままでは、計画破綻による多額の負債を背負うこととなり、そのツケは市民社会に跳ね返ってきます。核燃料サイクル計画からの撤退は喫緊の課題です。
現在、原水禁や青森県反核実行委員会などが「再処理工場の建設中止を求める100万人署名」を展開しています。さらに「4・9反核燃の日行動」や裁判など様々なとりくみを行い、核燃料サイクルの根本的転換をはかっていかなくてはなりません。


(5)原発再稼働・新規建設に反対するとりくみ
福島原発事故以降、これまで再稼働をした原発は10基(九州電力川内原発1号機、2号機、玄海3号機、4号機、関西電力大飯原発3号機、4号機、高浜原発3号機、4号機、美浜原発3号機、四国電力伊方原発3号機)となっています。政府が掲げる2030年度の電源構成に占める原発割合20~22%の目標を達成するには、30基程度の原発再稼働が必要とされています。国内の原発33基(建設中を除く)のうち、30年までに11基の原発が原則40年の運転期間を満了します。多くの老朽原発の運転延期を前提にしない限り、政府目標を達成することは不可能です。
また政府は、「2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロ」を掲げています。EUで、脱炭素の代替エネルギーとして原発活用を位置付けたことを追い風に、さらなる原発再稼働や新増設をすすめようとする動きが業界や自民党内に出始めており、警戒が必要です。
関西電力美浜原発3号機は、運転開始から44年を数える老朽原発です。さらに関西電力高浜原発1号機(46年)、2号機(45年)がすでに新規制基準に適合しており、それに続こうとしています。老朽原発は、事故の危険性や労働者の被曝の増大など様々な問題を抱えています。40年ルールからも廃炉を求めることが必要です。現地や関西圏での運動と連携することが重要です。
同じく老朽原発である日本原子力発電(日本原電)の東海第二原発(42年)をめぐっては、30キロ圏内に94万人もの人々が暮らす中で実効性ある避難計画の不備を理由に水戸地裁が運転の差し止めを認めました。その後、東京高裁に控訴され、引き続き裁判で争われます。東海村議会は、再稼働に向けて避難計画の策定を急ぐよう動き出しました。しかし30キロ圏内の周辺自治体の多くは再稼働に強い反対を示しており、今後、地方自治体への働きかけや裁判闘争の支援が重要となっています。
同じく日本原電の敦賀原発2号機では、2020年2月に原子炉建屋直下の活断層のデータを80か所も書き換えたことが明らかになるなど、悪質なデータ改ざんは許せません。敦賀原発2号機の再稼働をさせず、廃炉を求めていくことも必要です。
柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働については、相次ぐ不祥事で、東電に原発を再稼働させる資格があるのかが厳しく問われています。今年は県知事選も控え、選挙の争点の一つとしていかなければなりません。それらも踏まえ「中越沖地震16周年の集会」など、これまで積み上げてきた地元の集会などと連携し、運動を展開していくことが必要です。
四国電力の伊方原発1、2号機が廃炉となりましたが、3号機は2020年1月17日の広島高裁で自然災害のリスクを評価し、運転差し止めを認めましたが、2021年3月18日の広島高裁の異議審において、運転禁止の仮処分は取り消され、原発は再稼働しました。自然災害のリスクを過小評価した今回の判決は問題です。引き続き地元や四国ブロックを中心に再稼働を許さないたたかいをつくりあげていきます。
中国電力・島根原発2号機に対して、2021年9月15日、原子力規制委員会は新規制基準適合審査を合格させました。今後は再稼働に関わる事前了解権を有する松江市は、再稼働を容認する方向で動いています。早ければ2022年3月にも正式な判断を示す可能性もあり、情勢は予断を許しません。現地との連携をはかり、運動を進めていくことが必要です。
九州電力の川内原発や玄海原発や停止中の北海道電力泊原発、東北電力東通原発、女川原発、北陸電力志賀原発、中部電力浜岡原発など稼働中・停止中の原発に対して、各地の原発立地地域のとりくみと協力し、再稼働を許さないとりくみを強化していくことが必要です。
昨年から始めたオンラインを使った原発・原子力施設立地県の情報の共有化を、今年はさらにすすめていくことが重要です。各地の動きを素早く全国化して、運動の強化をはかっていきます。

(6)高レベル放射性廃棄物の誘致問題に対するとりくみ
北海道寿都町と神恵内村は、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査を受け入れ、実施主体の原子力発電環境整備機構(NUMO)は文献調査(2年間)をスタートさせ、1年を待たずしてすでに調査は終了したと発表しました。スタートから1年となる今年11月までに、地元説明会を繰り返しながら「丁寧に説明」したというアリバイづくりを重ね、次の「概要調査」受け入れの下地づくりを行っています。
北海道は、幌延深地層研究センター設置時に、高レベル放射性廃棄物受け入れしないことを道条例として表明しており、両町村周辺の自治体においても、受け入れ拒否条例の制定の動きがでています。すでに寿都町の隣の島牧村では高レベル放射性廃棄物の持ち込みを禁じる「核抜き条例」を制定しました。地元の北海道平和運動フォーラムが中心になって、条例制定の動きを道内に作り出しています。両町村を反対の声で包囲し、これ以上北海道から応募をさせない動きをつくろうとしています。
今後、道外の自治体への誘致の動きにも警戒しなければなりません。引き続き北海道平和運動フォーラムと協力し、文献調査の白紙撤回と幌延深地層研究センターの撤去の運動をすすめます。また、各地の誘致の動きに素早く察知し、動きを封じることが大切です。運動を立地地域の問題にせず、全国の課題としてとらえ、原発立地県との協力を強化していきます。

(7)エネルギー政策の転換を求めるとりくみ
原水禁は、福島第一原発事故以降のエネルギーを取り巻く環境の変化に対応したエネルギー政策の「提言」をまとめた「2021年原水禁エネルギー・シナリオ」を3月に発表しました。概要版を全国会議員へ配布するとともに、提言全文を経済産業委員や関係議員、調査会委員に配布しました。また、より多くの人びとにこの提言の内容を届け、エネルギー政策転換に向けた議論を進める目的で、8月6日に書籍として刊行しています。
これまで続いてきた人類の経済活動の結果、地球環境についてはさまざまなかたちで破壊や汚染が進行してきました。そのなかでも温室効果ガスの排出がもたらした気候変動は、もはや「気候危機」というべき状況です。この日本においてもすでに影響は現れており、他人事ではすまされません。このまま気候変動が進行するならば、生活する場所を破壊し多くの「気候難民」を生み出すことになります。
異常気象や海面上昇などがもたらす壊滅的事態を食い止めるために平均気温上昇を1.5度以内に抑えるという「パリ協定」で合意された目標の達成には、2030年までに温室効果ガスを2010年比で半減させることが最低限必要とされ、とりわけ世界第5位の排出国である日本については2013年比で60%以上の削減が必要と指摘されています。
しかし、小泉環境相(当時)が掲げた日本の削減目標は「46%」にすぎません。そして今夏改定が行われた「エネルギー基本計画」原案にいたってはこの「46%」も達成できない内容になっていました。また、「COP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)」に出席した岸田首相は46%削減をめざすとしたうえで、さらに50%に向けて「挑戦する」と発言しています。このように不十分なとりくみしか行おうとしない日本政府に対し、環境NGOや市民がさまざまなキャンペーンを行い、削減目標の引き上げを訴えています。とくに大学生を中心とした若者グループなどは経済産業省前でのハンガーストライキやデモ行進などにとりくんでおり、原水禁もこれらの活動のサポートを行いました。
前述の「エネルギー基本計画」は、経済産業省の資源エネルギーに関する調査会で昨年より議論され、7月21日に素案が提示、8月4日の経済産業省の審議会で「エネルギー基本計画」原案が了承されました。原案では、エネルギー構成について再生可能エネルギー36~38%、火力発電41%、原子力発電20~22%としていますが、二酸化炭素削減を口実に原子力維持を図ることは許されません。そして、再生可能エネルギーについては主要電源と位置付けた第5次エネルギー政策に比べさらに割合を2倍としたものの、欧州の水準にはなお及びません。日本政府は「エネルギーのベストミックス」論を放棄し、原子力ではなく、省エネや再生可能エネルギー技術の進展を見据えたエネルギー戦略に舵を切り、一刻も早く再生可能エネルギー100%の電源構成計画を実現すべきです。
COP26は11月13日閉幕しましたが、成果文書採択にあたって温室効果ガス排出削減対策が講じられていない石炭火力について「段階的廃止」から「段階的に減らす」へと表現が後退したうえで合意に至りました。また、フランスが原発建設再開を表明するなど、「脱炭素」を名分とした原子力回帰をすすめようという動きもあり、今回の会議の成果は不十分なものと言わざるを得ません。
EU欧州委員会は2月2日、原発及び天然ガスを気候変動対策に寄与するものとして投資を促進する「EUタクソノミー」に盛り込む方針を発表しました。フランスなどが賛成、ドイツなどが反対とEU内部で意見が対立するなかすすめられたこの決定に対し、原水禁は2月3日抗議する声明を発表しました。また、FoE Japanが呼びかけの方針撤回を求めるオンラインでのEU欧州委員会への要請行動についても協力し、個人署名は約2万に到達しています。
このような原子力回帰をめぐる国際的動向を奇貨として、日本国内においても原発をクリーンなエネルギーとして再度拡大しようとする宣伝が行われています。私たちは脱炭素だけではなく脱原発を同時に推進することを以てのみ持続可能で公平な社会がつくられるのだということを基本において、原子力回帰を目論む反動的な動きに対抗し、運動を展開しなくてはなりません。こうした立場を共有する「 e-shift 」をはじめとする市民団体・NGO・市民と連携しとりくみをすすめていきます。
2021年1月に電力市場の取引価格が高騰し、再生可能エネルギーを扱う新電力会社の経営が打撃をうけました。新電力会社は、再生可能エネルギーによる発電では足りない分を市場取引で調達しますが、大手電力会社による売り控えにより、買い争いが起き、ピーク時には25倍という価格高騰が起こりました。原発温存を念頭にした旧大手一般電力に有利な電力市場構造が、再生可能エネルギーの普及を阻害しており、早急な制度整備が必要です。

(8)重要性を増す「さようなら原発1000万人アクション」のとりくみ
「さようなら原発1000万人アクション実行委員会」は、2011年6月15日に大江健三郎さん、鎌田慧さん、落合恵子さん、坂本龍一さんなど8人の呼びかけで、「さようなら原発『1000万人署名』市民の会」とともに、運動をすすめる実行主体として結成されました。原水禁は、多くの市民とともに運動の中心を担い、17万人を集めた2012年7月の「さようなら原発大集会」の成功など、毎年2回の集会を中心に「脱原発」の世論形成を進めてきました。この間、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、屋内外での集会など運動展開が困難となる中で、オンラインの活用など様々な工夫をしながら、停滞することなく運動を進めてきました。
また、ロシアのウクライナ侵攻で、原発への武力攻撃や占拠という事態を受けて、さようなら原発として3月5日、3月21日にウクライナの平和と原発攻撃・占拠に抗議する集会を開催してきました。引き続き事態の推移を見ながら反戦と脱原発の運動を結び付けながら進めていくことが必要です。
さらに原発ゼロ基本法案を提出した立憲野党との共闘を深め、「脱原発」の声を国会内に届けるとりくみも進めなくてはなりません。

【とりくみ】
①福島原発事故に関する様々な課題について、現地と協力しながら運動を進めます。被災者問題や被曝問題等について、政府や行政への要請や交渉を進めます。特に、汚染水の海洋放出に反対していきます。
②福島原発事故にかかわる各種裁判を支援します。
③原水禁世界大会、「さようなら原発」の運動を通じ、福島原発課題を明らかにしていきます。
④原発の再稼働阻止にむけて、現地と協力しながら、課題を全国化していきます。合わせて自治体や政府への交渉を進めます。
⑤老朽原発の危険性を訴え、廃炉に向けた運動を進めます。
⑥関西電力の「原発マネーの不正還流問題」について「告発する会」に協力していきます。
⑦「さようなら原発1000万人アクション実行委員会」の運動に協力し、事務局の中心を担い、とりくみの強化をはかります。また、ウクライナ問題についても引き続き原発問題を課題として、運動を進めます。
⑧核燃料サイクル政策の破綻を明らかにし、六ヶ所再処理工場の建設中止を求めます。また、「4.9反核燃の日」全国集会や全国交流会を開催(オンライン集会)します。現地のとりくみを支援するとともに、国・事業者などへも要請や提言を行います。
⑨フルMOX燃料の大間原発や上関原発などの新規原発の建設中止を求めていきます。
⑩中越沖地震の集会、JCO 臨界事故の集会など各地の集会に協力します。
⑪高レベル放射性廃棄物の地層処分に反対し、北海道寿都町や神恵内村の文献調査の白紙撤回を求め、北海道平和運動フォーラムと協力します。また、高レベル放射性廃棄物の問題点を明らかにし、各地でのとりくみの支援とネットワークの強化を図ります。
⑫原水禁エネルギープロジェクトとしてとりくんできたエネルギーの提言を活用し、第6次エネルギー基本計画策定へ向けて、関係省庁などへ働きかけます。
⑬電力システム改革に伴う弊害を点検し、再生可能エネルギー100%を実現させるようなとりくみを行います。
⑭eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)キャンペーンの運営団体として、リーフレットなどを活用し、再生可能エネルギーへの転換を進めます。
⑮パワーシフトキャンペーン運営団体として、大手電力から、消費者の側から購入電力を選ぶことを推進し、再生可能エネルギー中心の新電力への切り替えをすすめるとりくみを強化します。
⑯各地の自然エネルギー利用のとりくみに協力します。また、各地の再生可能エネルギーを知るためのフィールドワークを企画します。地域から再生可能エネルギーのとりくみをつくり上げることに協力します。
⑰「脱炭素」を口実に原子力に回帰しようとする動きを許さず、それらに対抗するためのとりくみをすすめます。

8.ヒバクシャ援護・連帯にむけてのとりくみ
(1)急がれる被爆者課題の解決
広島・長崎への原爆の投下から76年が過ぎ、被爆者健康手帳を持つ全国の被爆者は2021年3月末で12万7755人となり、その平均年齢は83.94歳となりました。高齢化が進み、医療や介護の支援拡充が喫緊の課題となっています。原爆症認定訴訟、被爆体験者、在外被爆者、被爆二世・三世など課題の解決も急がれています。被爆76年を超えて、今もなお被爆者のたたかいは続いています。原水禁・平和フォーラムは、被爆者との連帯を基本に、課題解決へとりくんでいきます。
 
(2)在外被爆者への差別を許さず援護を実現するとりくみ
戦後、祖国へ帰還した在外被爆者への援護は、日本の戦争責任・戦後責任と重なる重要な課題です。これまで在外被爆者の援護の水準は、国内に居住する被爆者の水準と比べて大きな格差がありました。原水禁・平和フォーラムは、在外被爆者自身の裁判闘争を支援し、「被爆者はどこにいても被爆者」であるとして、差別のない援護の実現にむけてとりくんできました。在外被爆者の権利を制限していた厚生労働省公衆衛生局長の402号通達(被爆者手帳を交付されていても、外国に出国や居住した場合は、健康管理手当の受給権が失効する)は、その違法性が最高裁でも認められ、制度上の不平等は大幅に改善しました。
しかし、年月の経過の中で、在外被爆者が本人の被爆を証明する証人を見つけることが困難となり、被爆者援護を受けられないケースが出来しています。また、在朝被爆者は国交がないことで被爆者援護の外に置かれているなど、いまだ多くの課題が残されています。
在朝被爆者は、2007年段階で384人が確認され、原水禁は、幾度となく訪問・協議を重ね、被爆者支援の道を探ってきましたが、緊迫する日朝関係の中で困難な状況が続いています。しかし、外交ルートがないことを理由に在朝被爆者を放置しておくことは、人道的にも、日本の戦争責任・戦後責任の視点からも問題です。在朝被爆者の実態把握と人道的援護などを求め、政府・厚労省との交渉や国会で議論を促進することが必要です。

(3)「被爆体験者」に援護法の適用を求めるとりくみ
長崎では、爆心地から12キロ圏内において、放射能を含んだ雨(黒い雨)や粉塵を浴びたり、放射能汚染された空気や水、食物を体内に摂取し被爆した人たちが多数存在しますが、旧長崎市内ではないことを理由に、被爆者援護法の枠外に置かれ、「被爆体験者」と位置づけられています。被爆体験者は、被爆者援護法の適用を求め、裁判闘争を続けてきましたが、これまで第一陣訴訟、第二陣訴訟と、最高裁まで闘いましたが敗訴してきました。現在、再提訴(第二次被爆体験者訴訟)が行われ、新たな裁判闘争を展開しています。
2021年7月14日、広島の「黒い雨」訴訟では、広島高裁が、原告全員を被爆者と認定した一審判決を支持し、被爆者健康手帳の交付を命じました。判決では、「放射能による健康被害が否定できないことを立証すれば足りる」と指摘し、原告らは、雨に打たれた外部被曝と、雨に含まれる放射性物質が混入した井戸水や野菜を摂取した内部被曝により健康被害を受けた可能性があるとして被爆者に該当すると結論付けました。これは、「影響が分からないから予防的に広く救うのではなく、分からないから救わないとする国の論理」を覆すもので、画期的な判断でした。その後国は、原告全員を救済することとなり、黒い雨地域の見直しをすすめることとなりました。判決では、内部被曝の評価が大きな争点となり、そのことは長崎の被爆体験者訴訟にもつながるものです。
原水禁は、「黒い雨」訴訟に対する広島県・市と、「被爆体験者」訴訟に対する長崎県・市の姿勢の違いを重要視し、長崎県・市に対して「被爆体験者」の早期救済を求める団体署名を展開し、1,263団体からの署名をもって、12月22日、「被爆体験者」の早期救済を国に働き掛けるよう要請しました。国(厚生労働省)・広島県・広島市・長崎県・長崎市による第3回の5者協議では、国は、広島の「黒い雨が降った地域で、菅前首相が発言した同様の事情の人々を救済する」としましたが、「長崎の『被爆体験者』は、今回は救済の対象外とする」としました。広島県・市は、国提案を受け入れましたが、原水禁の要請を受けた長崎県・市は、「被爆体験者」が対象外とされたことに納得できないとして、救済に向けて別途継続協議することになりました。
これを受け、原水禁を含む4団体(原水禁、第二次全国被爆体験者協議会、多長被爆体験者協議会、被爆体験者訴訟を支援する会)は、「被爆体験者」の早期救済を求める全国署名(個人署名)を提起し、国へ直接働きかけることとしました。この間、「被爆体験者」のリーフレットを作成し、署名の拡大を図り、署名299,182筆を集め、3月28日に政府へ署名提出と要請を行いました。今後も被爆体験者の権利拡大に向け、裁判支援と共に行政への働きかけをさらに強化していくことが必要です。

(4)被爆二世・三世の人権確立を求めるとりくみ
父母や祖父母の被爆体験を家族として身近に受け継ぎ、自ら核被害者としての権利を求め、核廃絶を訴えている被爆二世協の運動は、今後の原水禁運動の継承・発展にとっても重要です。
被爆二世・三世は、被爆者援護法の枠外に置かれています。原爆被爆による放射線の遺伝的影響を否定できないなか、健康不安や健康被害、社会的偏見や差別などの人権侵害の状態に置かれてきました。被爆二世の全国組織である「全国被爆二世団体連絡協議会(全国被爆二世協)」は、国家補償と被爆二世への適用を明記した「被爆者援護法」の改正を国(厚生労働省)や国会に対して要求してきました。
しかし、課題解決への進展が進まない状況に対して、2017年2月17日に広島地裁、2月20日には長崎地裁に「原爆被爆二世の援護を求める集団訴訟」を起こしました。裁判は、広島地裁、長崎地裁とも、今年中には最終弁論・結審へ向かうことになりそうです。引き続き被爆二世の裁判を支援し、被爆二世の課題解決に向け全国被爆二世協の運動と連携していくことが重要です。

(5)被曝労働者の権利確立を求めるとりくみ
福島原発事故の収束作業や除染作業にあたる労働者の被曝問題が大きな課題となっています。高線量の中での作業や劣悪な労働環境がもたらす被曝は、労働者の健康に多くの有害な影響を与えるもので、福島原発事故の収束作業にかかわらず、原発労働者が「安心・安全」に働くための労働者の権利の確立は、全ての原子力施設での労働の基本に据えなければなりません。
原発労働は、従来から工事の下請け企業による雇用が中心で、雇用や労働環境の問題はなおざりにされてきました。被曝問題だけでなく、危険手当てのピン撥ね、パワハラ等、労働者の基本的な権利が侵害される事例が日常的に起きています。
この間、被ばく労働者ネットワークや全国労働安全センター、「さようなら原発」の運動、ヒバク反対キャンペーンなどと政府交渉や裁判支援などを行ってきました。引き続き運動の連携を深め、被曝労働者の命と権利を守るとりくみを強化していきます。
なお原水禁世界大会・福島大会分科会で報告された「過労死裁判」については、一審で直接雇用会社の責任を認めましたが、元請け会社・「宇徳」と東電の責任は認めませんでした。現在、仙台高裁で審議が続いていますが、医療体制の不備を認め和解提案がだされています。引き続き裁判の行方を注視し、支援の強化をはかることが必要です。

(6)世界の核被害者との連帯を
原水禁運動は、国内の核被害者の支援・連帯はもとより、世界の核被害者との連帯を重要な課題として受け止めとりくんできました。核の「軍事利用」や「商業利用」では、とりわけ核のレイシズムともいわれる差別と人種的偏見による人権抑圧の下で、先住民に核被害が押しつけられ続けてきました。原子力利用は、ウラン採掘の最初から放射性廃棄物処分の最後まで、放射能汚染と被曝をもたらします。原水禁は、米・仏などの核実験による被害者、特に近年では、ビキニの被災者、ウラン採掘現場での被害者、チェルノブイリの原発事故での被害者など、これまで多くの核被害者との連帯を深めてきました。
原水禁は、今後とも、差別と抑圧の厳しい現実の中で闘っている世界中のヒバクシャ=核被害者と連帯し、ヒバクシャの人権と補償を確立し、核時代を終わらせるために運動の強化が求められています。原水禁世界大会などを通して、核被害者との連帯をはかっていきます。

【とりくみ】
①原爆症認定制度の改善を求めます。被爆者の実態に則した制度と審査体制の構築に向けて、運動をすすめます。
②在外被爆者の支援や交流、制度・政策の改善・強化にとりくみます。
③在朝被爆者支援連絡会などと協力し、在朝被爆者問題の解決に向けてとりくみます。
④被爆体験者の再提訴裁判を支援します。
⑤健康不安の解消として現在実施されている健康診断に、ガン検診の追加など二世対策の充実をはかり、被爆二世を援護法の対象とするよう法制化に向けたとりくみを強化します。さらに健康診断などを被爆三世へ拡大するよう求めていきます。また、被爆者二世裁判を支援します。
⑥被爆認定地域の拡大と被爆者行政の充実・拡大をめざし、国への働きかけを強化します。
⑦被曝線量の規制強化を求めます。被曝労働者の被曝線量の引き上げに反対し、労働者への援護連帯を強化します。
⑧被爆の実相を継承するとりくみをすすめます。「メッセージ from ヒロシマ」や「高校生1万人署名」、高校生平和大使などの若者による運動のとりくみに協力します。またDVD「君たちはゲンバクを見たか」のリニューアル版「核と人類は共存できない」の普及をはかります。
⑨世界のあらゆる核開発過程で生み出される核被害者との連携・連帯を強化します。

9.食・水・みどりをめぐるとりくみ
(1)通商交渉に対するとりくみ
2018年12月に環太平洋経済連携協定(TPP11)が発効して以降、日本とヨーロッパ連合(EU)との経済連携協定(19年2月発効)、日米二国間の貿易協定(20年1月発効)と続き、さらに、今年1月に中国や韓国も含む、東アジアを中心とした地域包括的経済連携協定(RCEP)が発効しました。これら「メガFTA」と呼ばれる巨大な経済圏の貿易協定により、日本は一挙に大規模な総自由化時代に突入しました。
この間、牛・豚肉をはじめ、輸入農畜産物は増加し、中長期的にも国内農業に大きな打撃を与えようとしています。しかし政府は、対策によって国内生産は減少せず、自給率も維持されると強弁しています。
今後、アメリカとの間で、第2段階の本格的な貿易交渉を進めることになるか、あるいは米国のTPP復帰も模索されています。いずれにしても、コメを含む農産品についての交渉が再燃する可能性は高く、食の安全や医療・医薬品、公共分野などでも規制緩和やルール化等の本格的な交渉が行われる可能性が高くなっています。また、既存の協定の見直し協議も行われることが想定されます。
こうした通商交渉は、国会での野党の追及にもかかわらず、交渉経過や内容が明らかにされてきませんでした。特に今後、どのように再協議がなされるのかなどは明確ではありません。こうしたことから、今後、徹底した情報公開や市民との意見交換を求めていく必要があります。また、世界的にも行き過ぎたグローバリズムによる格差の拡大、新自由主義経済に対する市民の反対の声も広がっていることから、グローバリズムの問題も検討していく必要があります。
平和フォーラムは「TPP プラスを許さない!全国共同行動」など、関係団体と連携をはかり学習会・集会、シンポジウムの開催や政府交渉などを進めます。

(2)食をめぐるとりくみ
通商交渉の動きは食に関しても大きな影響を与えるものです。2023年度から遺伝子組換え(GM)食品の表示制度が改定されます。また、新しい遺伝子操作であるゲノム編集技術を用いた食品の流通が可能になっています。すでにアメリカではゲノム編集された大豆が出回り、日本でもトマトやマダイ、トラフグでの開発が行われ、一部流通しようとしています。消費者団体ではゲノム編集食品の表示を求める活動を行っています。
一方、農薬の残留基準値も徐々に緩和され、輸入農産物の検査体制にも影響を与えています。日本は単位面積当たりの農薬の使用量が世界的にも多く、発がん性や環境への影響も指摘されています。消費者団体などからは有機農産物の拡大や学校給食への導入を求める運動も起きています。
また、いわゆる「健康食品」については、誇大・虚偽・「ほのめかし」などの不確実な宣伝・広告があふれています。テレビや新聞に加え、最近はネットでの拡散も増えています。平和フォーラムも参加する「食の安全・監視市民委員会」では、広告の規制などを求めています。
さらに、中国産アサリを熊本産と偽って販売するなど、産地偽装も後を絶ちません。今年4月から全ての加工食品の重量割合1位の原材料の原産地表示が義務化されます。消費者の権利として正しくわかりやすい表示が求められています。
(3)水・森林・化学物質などのとりくみ
水問題については、合成洗剤などの化学物質の排出・移動量届出制度(PRTR 制度)を活用した規制・削減や、化学的香料による健康被害の「香害」問題への早急な対策など、化学物質の総合的な管理・規制にむけた法制度や、有害物質に対する国際的な共通絵表示制度(GHS)の合成洗剤への適用などを求めて運動を展開していく必要があります。
特に昨年、PRTR制度の指定物質に石けん成分が含まれようとして、反対運動の結果、その方針を撤回させました。長年の運動の成果であり、改めて制度の意義を問い直す必要があります。また、沖縄の米軍基地などを発生源とする有機フッ素化合物による水汚染問題もとりくみを進めていく必要があります。
水の公共性と安全確保のため、今後も水循環基本法の理念の具体化や、「水道法改正」による水道事業民営化の動きを注視し、水道・下水道事業の公共・公営原則を守り発展させることが、引き続き重要な課題となっています。
世界的な森林の減少と劣化が進み、砂漠化や温暖化を加速させています。日本は世界有数の森林国でありながら、大量の木材輸入により、国内の木材自給率は低迷してきましたが、最近は、国産材の使用拡大施策などが図られています。
政府は昨年6月に、20年後を見通した新たな「森林・林業基本計画」を決定しました。木材供給量を4割増とすることや、森林の二酸化炭素の吸収機能強化、公共建築物への木材活用促進などが明記されています。また、「森林環境譲与税」を活用した森林整備、担い手育成なども重要になっています。一方、様々な通商協定による木材貿易への影響を注視する必要があります。
今後も、温暖化防止の森林吸収源対策を含めた、森林・林業政策の推進にむけて、「森林・林業基本計画」の推進、林業労働力確保、地域材の利用対策、山村における定住の促進などを求めていくことが必要です。

(4)食料・農業政策のとりくみ
2020年の農林業センサスによると、農業経営体や農業従事者は、5年前に比べて2割以上も減少し、農作物の作付面積、耕地利用率とも過去最低を更新しました。耕作放棄地も増加し、急速に農業生産の基盤が崩壊しつつあります。
一方、食料自給率(カロリーベース)は、2020年度に史上最低の37%に低下しました。これはコメの大凶作に見舞われた1993年度を下回る異常事態です。政府が掲げる30年度の自給率目標の45%との隔たりはますます広がっています。
世界の小麦輸出量の30%を占めるロシアおよびウクライナから、ロシアのウクライナ軍事侵攻にともない小麦の供給が途絶えたことにより、世界の小麦価格が急騰しています。また、原油価格の高騰によって食品コストが上昇しています。その影響は世界中に及び、米国では2月の食品価格が1%上昇し、仏のマクロン大統領は、中・低所得世帯の食費を支えるために、食料クーポンの発行を検討するとして、現状を「世界的な食糧危機」と位置付けています。日本への影響も同様で、今後物価の急騰が予測されます。流通の規模が世界全体に拡大している今日、一地域での戦争が世界経済に影響を及ぼすことは必至です。自給率の向上はもとより、平和が生活の安定に欠かせないことは明らかになっています。
コロナ禍で外食や学校給食などの需要が減少し、農畜産業にも大きな影響をもたらしました。特に生産者米価は大きく下落し、大規模層も含めて経営の維持が困難になっています。
世界的には、コロナ禍で、農業労働力の減少や物流の混乱などにより、国際的な食料価格は急上昇し、特に発展途上国を中心に食料危機が深刻になっています。国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)や、「国連家族農業の10年」(2019年~)でも、食料安全保障、生物多様性、環境持続可能性の実現のために、持続可能な農業推進がすべての国の目標とされています。
これまでの規模拡大・効率化一辺倒の新自由主義的農政ではなく、食の安全や環境問題などに配慮した政策への転換が重要となっています。農民・消費者団体と協力し、食料自給率向上や所得補償制度の拡充、食品の安全性向上などの法制度確立と着実な実施を求めていく必要があります。また、各地域でも、食の安全や農林水産業の振興にむけた自治体の条例作りや、学校給食等を通じた食育も重要です。

【とりくみ】
①様々な通商交渉に対し、その情報開示を求め、問題点を明らかにするとともに、幅広い団体と連携を図り、集会や学習会などを開催していきます。
②輸入食品の安全性対策の徹底とともに、食品の安全規制緩和の動きに反対して、消費者団体などと必要な運動を進めます。
③「食品表示制度」に対し、消費者のためになる表示のあり方を求めていきます。
④「きれいな水といのちを守る全国連絡会」の事務局団体として活動を推進します。特に、今秋開かれる予定の「第36回きれいな水といのちを守る全国集会」(於・岐阜県内)に協力します。また、水汚染問題や「水循環基本法」にむけたとりくみを進めます。
⑤関係団体と協力して、「森林・林業基本計画」で定めた森林整備の確実な推進、地産地消による国産材の利用拡大、木質バイオマスの推進などにとりくみます。
⑥温暖化防止の国内対策の推進を求め、企業などへの排出削減の義務づけや森林の整備など、削減効果のある具体的な政策を求めます。
⑦農林業政策に対し、食料自給率向上対策、直接所得補償制度の確立、地産地消の推進、環境保全対策、再生可能エネルギーを含む地域産業支援策などの政策実現を求めます。
⑧各地域で食品安全条例や食育(食農教育)推進条例づくり、学校給食に地場の農産物や米を使う運動、子どもや市民を中心としたアフリカ支援米作付け運動や森林・林業の視察・体験、農林産品フェスティバルなどを通じ、食料問題や農林水産業の多面的機能を訴える機会をつくっていきます。
⑨「第54回食とみどり、水を守る全国活動者会議」の実行委員会に参画して、開催にむけてとりくみます。

10.平和フォーラムの運動と組織の強化にむけたとりくみ
(1)平和フォーラムの運動の到達点と今後の課題
平和フォーラムの運動は、総評労働運動の歴史的な運動方針を継承し、共闘の基礎を担う産別中央組織と中央団体、そして、各都道府県組織の活動によって支えられてきました。また、戦争法の廃止を求める運動の過程で、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」、「さようなら原発1000万人アクション」、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」、「戦争をさせない1000人委員会」などの運動にとりくみ、運動の幅を広げてきました。これらの運動は、広範な運動展開と社会の多数派形成を展望するうえで、従来の枠組みを超えた運動の展開を可能とし、大きな役割を果たしています。
しかし、この間のとりくみの中でも、中央・地方間のとりくみの温度差があることが明らかになっています。「総がかり行動実行委員会」のとりくみが中心となっている地域から、平和フォーラムの運動の枠内で活動している地域まで様々ありますが、このことは、各県の地域事情、すなわち連合との関係性、立憲民主党や社民党との関係性や、さらには日本共産党やその影響下の運動組織との共闘のあり方に規定されているのが実情です。
また、全国共通した課題として、次代を担う人材の育成が大きな課題として浮上しています。平和フォーラムを構成する中央団体・各都道府県組織を担う人材は、総じて高齢化が進んでおり、平和フォーラムの運動の継承を可能とするために、とりくんできた諸課題について、若い世代に丁寧に伝えながら、意識的に若い世代の活動家づくりを進めていくことが必要です。
こうした中、昨年の衆議院選挙に続き、今年は7月に参議院選挙が行われる予定です。
先の衆議院選挙では、政権与党の自民・公明に加え、大きく議席数を伸ばした日本維新の会やこれまで立憲野党と対応をともにしてきた国民民主党までが改憲に前のめりとなるなど、改憲勢力が衆議院で大きく3分の2を超えている現状を踏まえれば、参議院選挙の結果次第では、大きく改憲発議へと進むことは明らかであり、平和フォーラムの運動にとっても、その帰趨がもたらす意味は重大です。
また、新型コロナウイルス感染拡大やその対応で平和フォーラムのとりくみが制約される中でも、平和や人権、環境をめぐる諸政策の実現を可能とする政治を実現しなければなりません。これを可能とするためには、平和フォーラムとして、具体的で効果的な運動の再構築と、それを支える平和フォーラム組織の強化が必要です。
このため、以下の課題について、組織検討委員会や同作業委員会での討議をはじめとして、組織強化の具体化について中央・地方の機関会議などで討論を進めていきます。

(2)運動と組織の強化にむけたとりくみ
ⅰ)より広範な運動展開と社会の多数派をめざす活動
平和フォーラムのとりくんできた諸課題の運動の到達点を踏まえ、政策実現のとりくみを進めるためには、新しい政策実現への展望を切り開きつつある運動体との連携を進めるなかで、政府との対抗関係を構築する必要があります。とりわけ、ナショナルセンターとしての連合にその役割を果たすことを期待し連携を強化するとともに、広範な運動の構築をめざします。
そのうえで、中央では、政府との対抗関係を構築するために、この間とりくみを進めてきた、「戦争をさせない1000人委員会」、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」について、引き続き、とりくみを進めます。また、立憲民主党、社民党などと連携し、よりきめ細かな政府・各省・自治体等への対策を強化します。
また、こうしたとりくみ全体を促進するため、研究者・研究団体、NPO・NGO、青年や女性団体などとの連携も強化します。一方、平和フォーラムの地方組織においては、地域事情や様々な歴史が存在します。より広範な運動展開をめざすなかでも、自らの基礎を固めるとりくみも重要です。このため、地方組織においては、それぞれの現在のとりくみを基礎として、地域事情に合った運動の展開をはかるとともに、ブロックごとのとりくみを重視し、より広範な運動展開を展望します。

ⅱ)平和フォーラム組織の強化・拡大
運動の継承を可能とするために、大きな課題として浮上している、次代を担う人材の育成については、平和フォーラムの課題を若い世代に丁寧に伝えるなかで、意識的に若い世代の活動家づくりを進めます。このため、共闘の基礎を担う産別中央組織と中央団体とともに、次代を担う人材の育成にむけて、10年後を展望して対応を議論していきます。また、平和フォーラムの運動を担う、新たな仲間の獲得も重要です。運動でのつながりの中から、さらなる組織拡大を追求していきます。
新型コロナウイルス感染症に対する対応が引き続き求められる中で、これまでのように集会等への参加を通じて、運動への新たな参加者を確保することが困難となっています。当面は、Zoomやユーチューブなどの様々な情報通信技術を併用する形でのとりくみとならざるを得ませんが、その際にも、新しい運動の担い手の結集の機会となるよう、意識しながらとりくみをすすめなければなりません。このために、運動の情報発信をより広く行い、とりくみの意義と目的が明確なものとなるよう努めます。
また、地域によっては、「人を集める」ことが可能な地域もあります。このため、この間2回にわたってとりくんできた「ピーススクール」のとりくみなどについても、ブロック単位、あるいは都道府県単位での開催は可能です。今年については、これら、次代を担う人材の育成を意識的に進めていきます。

【とりくみ】
①機関運営について
ア.平和フォーラムの運動の課題と目標を具現化するために、Zoom等も活用しながら、常任幹事会、運営委員会、原水禁常任執行委員会を開催します。また、各地方組織の課題、平和フォーラムの活動の共通目標の確認のため、各都道府県・中央団体責任者会議、全国活動者会議を開催し、討議を進めます。組織体制や運動づくりを進める際に、男女共同参画の視点は必須です。常にジェンダーバランスに意識した運営を心がけます。
イ.首都圏における対面での会議の開催が困難ななかで、平和フォーラムの各都道府県組織との連携をはかるため、可能な限り平和フォーラムから、各地方ブロック会議に参加し情報交換を進めます。
②運動の拡大をめざすとりくみ
ア.「戦争をさせない1000人委員会」、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」、「さようなら原発1000万人アクション」などを軸として、平和団体、市民団体、人権団体との連携を強化します。研究者、文化人との連携も強化します。
イ.制度・政策活動の充実にむけて、他団体、政党・議員との連携を強化し、政府・各省・地方自      治体・関係企業などとの交渉力を強めます。また、政策課題に対応した立憲フォーラムをはじめとする議員団会議、議員懇談会との連携を強化します。
ウ.国際的平和団体、反核団体、市民団体、労働団体などと連帯し、国連や関係政府に働きかけると同時に運動の国際連帯を強化します。とりわけ東アジアを重点とした関係強化を図ります。
エ.若い世代の活動家づくりを重点的に進めます。そのため、11月を目途に「ピーススクール」を開催します。
③情報の発信と集中、共有化について
ア.コロナウイルス感染症による活動の制約が続く中で、インターネットやその他の通信手段で平和フォーラム・原水禁のとりくみに参加する市民が増えており、インターネット等による発信力の強化が求められています。今後は、それぞれの機能を有効に活用し、一方的な情報発信にならないような工夫、情報の整理と蓄積などを行います。
イ.政策提言の発信や、パンフレットやブックレット、記録集の発行などをすすめます。
④集会の開催、声明などの発信
中央、地方の大衆的な集会の開催、署名活動、社会状況や政治的動向に対する見解や声明などの発信などは、平和フォーラムの運動目標を具現化し、社会的な役割を拡大するために重要なとりくみです。政治情勢の変化によって起きるもろもろの事態に対応するため、運動の重点化、年中行事型運動の見直し、運動スタイルの見直しなどが必要です。参加しやすい環境づくりを念頭に置いて、見直しにとりくみます。
⑤財政基盤の確立・強化
運動の前進と継続のため、引き続き財政基盤の確立と効率的な執行に努めます。
以上

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