イラク情勢Watch vol.62 07年2月7日

         発行:フォーラム平和・人権・環境  編集:志葉 玲



Topics
1)イラク関連報道Pick up

2)モスルでの爆発は米軍の仕業―Youtubeに証言動画
3)イラク兵に殺された米兵は妊婦を殴っていた〜現地では英雄扱い
4)イラク戦費1日分で何ができる? 米平和団体が動画を公開
5)日本イラク医療支援ネットワーク、今年もバレンタイン大作戦



1)イラク関連報道Pick up


【08.2.7 時事】イラクから近く撤退も=エルサルバドル

(【08.2.5 日経】イラク治安部隊の独り立ち長期化も・08年版ミリタリーバランス

【08.2.4 朝日】米軍空爆で民間人9人死亡 イラク

【08.2.4 CNN】イラク旧支配政党の公職追放緩和法が成立

【08.1.29 ロイター】米大統領、09会計年度に700億ドルのイラク関連戦費要求へ=国防総省

【08.1.26 東京】イラクに円借款1800億円 国際協力銀 石油安定確保狙う



2)モスルでの爆発は米軍の仕業―Youtubeに証言動画

 先月23日、イラク北部の都市モスルでビルが爆破され、少なくとも17人が死亡、134人が負傷した(AP通信などによる)事件は、当初「アルカイダ系武装勢力の仕業」と米軍や現地治安当局が発表していた。だが、その後、現地の証言などから、「むしろ、米軍がやったもの」との説がインターネット上で話題となっている。

 現地反占領サイト「イラキ・ラビタ」に寄せられた証言によれば、モスルでの爆発は、建物の中に大量のTNT火薬があるとの通報を受けた米軍が、その火薬を爆破処理した際のものであり、それが米軍の予想を上回る爆発規模となったため、多数の被害者が出たのだという。この事件を巡っては、動画投稿・視聴サイトYoutubeに、証言する現地住民の動画もアップされている。

    

 米軍が自らの汚点を「武装勢力の仕業」とする例では、2005年11月、イラク西部ハディーサで、米海兵隊が女性や子どもを含む24人を虐殺した事件が有名。当初、海兵隊員たちは「武装勢力と応戦し8人を射殺、武装勢力の使用した路肩爆弾で15人の市民が巻き添えで死亡した」と報告していたが、後にこれが嘘であることが判明。実際には、路肩爆弾による攻撃を受けた海兵隊員達が、腹いせとばかりに近所に住むイラク人家族らを一方的に攻撃し虐殺したものだった。

 また、当コーナー編集人が、かつてイラクの米軍と共に行動したというアラブ人の男性から聞いた話によると、米軍が現地住民を拘束した後、「5000ドルを受け取るか、アブグレイブのような拷問を受けるか」と、米軍のために働くことを迫り、自作自演のテロを行わす事例すらあるのだという。

 現在のイラクでのテロ報道は、多くの場合、情報源は米軍かイラク治安当局者の発表によるものであるが、これらの発表が必ずしもいつも正しいとは限らない。今回のモスルの一件は、発表頼みのテロ報道の危うさを改めて感じさせるものである。



3)イラク兵に殺された米兵は妊婦を殴っていた〜現地では英雄扱い

 先月5日、米軍は「イラク軍兵士が発砲、米兵2名が死亡、通訳含む4名が負傷した」と発表した。事件は昨年12月26日、イラク北部モスルで米・イラク軍の合同パトロール中に発生。発砲したイラク兵はイスラム教スンニ派のアラブ人で、発砲後に逃走したが、その後逮捕された。

 米軍は「犯人は武装勢力の協力者」とし、日本のメディアでもこの発表を踏襲、「アルカイダ系過激派か?」等と報道した。だが、現地団体による声明や、アラブ系メディアは全く異なる報道をしている。スンニ派宗教者による有力組織、イラク・イスラム法学者協会の声明によれば、「米兵達は、妊婦のイラク人女性を殴りつけていた。カエサル・サーディ・アルジュブーリ(米兵を殺害したイラク人兵士)は米兵達に女性へ暴行を止めようとしたが、彼らは『俺たちは俺たちがやりたいようにやる』と聞く耳をもたなかった」のだという。そして、カエサル容疑者は泣き叫ぶ妊婦の姿に耐え切れず、米兵達を銃殺したのだそうだ。

「俺たちは俺たちがやりたいようにやる」との言葉通りの米軍の横暴な振る舞いに、イラクの人々が憤らない訳はない。現地ではカエサル容疑者を英雄視する見方が広まっているという。アラブ系ニュースサイト「アル・バスラネット」は、「これから生まれてくるイラクの男の子の名前が、全てカエサルと名付けられても不思議ではない」と評し、レバノンの新聞「アル・アクバル」は、「モスルでは、あちこち壁に『カエサル、よくやった』と落書きが書かれた」と報じた。前出のイラク・イスラム法学者協会も、その声明の中で「カエサルは英雄」と称えた。

 この事件は、現在のイラク情勢を象徴しているだけでなく、米軍発表に頼る一方で、現地報道を軽視する日本のメディアの問題も浮き彫りにしている。なぜ、米兵達は撃たれたのか、カエサル容疑者が現地では英雄扱いされているのか、報じたのは主要メディアでは皆無だった。



4)イラク戦費1日分で何ができる? 米平和団体が動画を公開

    

 ブッシュ大統領が今月4日に議会に提出した2009年度の予算教書で、イラク戦費が累計で93兆円に達することが明らかになった。一方で、教育や福祉などの予算が削られ、公立高校などは「トイレットペーパーすら買えない」程、困窮している。

 この莫大な戦費のせめて一日分でも使えたら何ができるだろうか?米クウェーカー教徒系の平和団体「アメリカン・フレンズ・サービス」が公開した動画を観ると、いかにお金の使い方が間違っているか、よくわかる。その内容とは…
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6483戸の家族向け新築住宅が建設できます
84校の新しい小学校が建設できます
34904人に4年生大学の全額支給奨学金を与えることができます
12478人の小学校の先生を新たに雇用できます(アメリカは先生が不足)
95364箇所の幼児教育(Head Start)の場所を新設できます(保育園のようなもの)
1274336戸の家を再生可能エネルギー(自然エネルギー)にすることができます
1153846人の子どもに無料の給食を支給できます
423529人の子どもに無料のヘルスケア(健康保険)を支給できます

イラク戦争の1日のコスト 7億2千万ドル
これだけあれば、いろいろなことができます。
あなたの地域の選出議員に、わたしたちの税金を何に使ってほしいかを伝えましょう
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訳:きくちゆみさん

 元の動画は英語のみだが、英語が読めずとも観ているだけ、何となく伝わるものがある。



5)日本イラク医療支援ネットワーク、今年もバレンタイン大作戦

     

 がんや白血病を患うイラクの子ども達への医療支援を行っているNGO「日本イラク医療支援ネットワーク」(JIM-NET)は、今年もバレンタインデーに合わせたキャンペーン、「限りない義理の愛大作戦」を展開している。これは、JIM-NETから500円のバレンタインチョコを買うと、400円分がイラクへの医療支援に使われるというもの。この400円と言う額は白血病の治療を受けているイラクの子どもが寛解(体内から白血病細胞が消滅すること)するまでの医療費の一日の平均額であるそうだ。キャンペーンは好評で、既に2月14日までの発送は締め切られており、もし、チョコを買いたい場合は、15日以降の発送となる。

注文・問い合せはこちら042-496-7739 (平日 午前10時〜午後6時 受付中)

 なお、14日には、東京と長崎で関連イベントが行われる。
【東京】渋谷区代々木2−12−2 カタログハウス本社ビル地下2階 18:30〜 
話す人:佐藤 真紀 (事務局長)、西村 陽子 (アンマン駐在スタッフ)、
加藤 丈典 (アンマン駐在スタッフ)
聞き手:鎌仲ひとみ(映画監督)
【長崎】長崎市松が枝町4番27号 旧香港上海銀行長崎支店記念館ホール 18:30〜
    演奏と朗読 詳細はこちら http://www.095bay.com/ma/





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