イラク情勢Watch vol.54 07年6月30日 発行:フォーラム平和・人権・環境 編集:志葉 玲 Topics 1)イラク関連報道Pick up 2)自衛隊情報保全隊に「監視対象」とされた5人が防衛省に申し入れ 3)【コラム】空自イラク派遣延長、付帯決議を忘れるな 4)【動画】イラク軍兵士&民兵達の戦闘シーン 5)【イベント】7月1日イラクに咲く花−千歳烏山 1)イラク関連報道Pick up 【07.6.29 時事】国連イラク査察委を廃止=「検証未完了」とロシアは棄権−安保理 【07.6.28 CNN】イラク軍、警察の訓練の成果は不満足 米下院小委が報告 【07.6.26 読売】イラク大統領、イラン最高指導者らと会談…関係強化を確認 【07.6.26 日経】「イラク米軍縮小を」共和党大物議員、異例の政権批判 【07.6.24 四国】イラク難民の子に教育を/NGOが「寺子屋」計画 【07.6.20 IPS/JANJAN】シーア派寺院攻撃後市民に広がる懐疑 2)自衛隊情報保全隊に「監視対象」とされた5人が防衛省に申し入れ “反自衛隊的”として、内部文書にその行動が記述されていた面々が、自衛隊情報保全隊と、“直接対決”の場を持った。人道支援を行うNPO法人PEACE ON代表の相澤恭行氏、イラクの芸術家達と相澤氏と共に交流した画家の増山麗奈氏、母親で元衆議員の川田悦子氏の名前がリストにあった龍平氏、そしてイラク現地を取材したジャーナリストの森住卓氏と、当コーナー編集人の志葉玲の5人は、今月20日、防衛省への申し入れを行い、これに防衛省の情報保全企画室調査課が応対した。 ●自分たちの作った文書が偽モノか本物か、わからない そもそも、何故、情報保全隊は「監視・調査」を行っていたのか?調査課は、「イラクへの自衛隊派遣に際して、隊員やその家族に不安が広がっていて、外部からの働きかけもあった」と久間防衛大臣の発言にそった答えだ。しかし、消費税や年金はイラク派遣と関係がないのでは、との問いには「そもそも共産党が出した“内部文書”の真贋はわからないし、調査する義務もない」と、とぼけた。当の調査課が調査活動自体は認めている上、久間防衛大臣すら、今回の内部文書について「ニセモノではないという感じは受ける」とコメントしている。しかも、自分達で作った文書が本物かニセモノかわからないとは…。 ●「調査方法は公表できない」 増山氏は「自分も盗聴されているんじゃないか、って思っちゃう。どういう基準や方法で調査をしているのか、情報公開してくれないと不安」と訴える。調査課は「盗聴などはしていないし、調査活動は合法的に行われています」と言うものの、調査方法については、「今後の調査に悪影響を及ぼすので、公表は差し控えている」という。合法的な調査であれば、隠す必要はないのではないか。 ●「調査対象」の基準の不明確さ 調査の「対象」についても不明確だ。調査課は「自衛隊の活動に支障を及ぼす恐れのあるような活動」と説明するが、“危険人物”扱いされた相澤氏は憤慨して抗議する。「イラク人画家達との文化交流が、なぜ自衛隊への脅威になるのですか?自衛隊の人に危害を加えるつもりがあって行動しているならともかく、私のケースでは全くスジが通らない」。調査課は、「イラクについて様々な意見を集める上で、それに付随する情報も必要に応じて集めている」と応えるものの、相澤氏の文化交流が「反自衛隊的」と監視された理由は結局説明されず。「それ言ったら、何でもアリじゃないですか。イラクだけじゃなくて、“必要”とあれば、何でも調査できちゃう。正に野放しじゃないですか?」と5人は憤る。しかも、調査は今回明らかになったものだけでないらしい。 ●今も調査は続けているし、今後も続ける 森住氏が「今も情報収拾は続けているのですか?」と聞くと、保全課は「一般論として、情報保全の収集・調査は、いろいろなかたちで継続的にやっています」と応えた。それにしても、調査課の役人達は全く悪びれる様子がない。川田氏が問いただす。「今回の内部文書には、個人名がたくさん出ていますよね?私の母親の川田悦子も“参議員”と間違えて載っていますけど。ここまで監視されているのか、ということで不安になる人もやっぱりいるんですよ。今後こういったことは止めてほしいし、今までのことも情報公開してもらいたい、という私達の要請については、どうお答えをしていただけるのでしょう?」。 ●国民の「安心・安全」を守るのが自衛隊ではないのか? しかし、調査課は「既にお答えしました」ので、と引き上げようとする。川田氏は「今、答えられないなら、文書で回答お願いできますか」と聞くが、「それはできません」と3名の役人はそそくさと部屋から去っていった。会談を終えて相澤氏は語る。「説明らしい説明がないので、以前よりもさらに不安度が増してしまった」。増山氏も「防衛省に都合のいい解釈で、好き勝手をやられるとしたら、怖い。内部文書の内容そのものよりも、防衛省の姿勢自体に薄気味悪さを感じた」と言う。“任務”のためとは言え、国民の「安心・安全」を守るはずの防衛省が、国民を不安にさせるのでは、本末転倒だろう。 *自衛隊情報保全隊の国民監視問題については、現在発売中の週刊SPA!(07年7月3日号)に特集記事が掲載されている。 3)【コラム】空自イラク派遣延長、付帯決議を忘れるな 2003年7月に4年間の時限立法として可決したイラク特措法によって自衛隊はイラクに派遣されてきたが、今月20日、改正イラク特措法が参院本会議で自公による賛成多数で可決された。改正による期限は、2年後の2009年となり、政府はまず1年延長する方針で、7月に閣議決定する予定だ。 航空自衛隊の活動範囲拡大を米空軍サイトは「自衛隊は多国籍軍の要」と報じた。 航空自衛隊の活動をめぐっては、その7〜8割が米軍などの多国籍軍の人員・物資の運搬だとされ、さらに共産党の追及で、今年1〜3月では9割が多国籍軍支援だということが明らかになっている。昨年、航空自衛隊の活動の継続・活動範囲の拡大について、政府は「国連などの人道復興支援に貢献するため」と説明してきたが、国民に対しウソをついてきたと批難されるべきではないのか。米軍はイラクでの内戦状態を抑えることができないばかりか、日常的に、イラク中部・西部での軍事作戦を続け、市民を殺し続けている。米軍の人員・物資を輸送することは「参戦行為」であり、憲法9条の禁じる集団的自衛権の行使だと言える。もはや目的が「イラク復興支援」でないことが明白になった以上、空自のイラク派遣は撤回されるべきである。 今回のイラク特措法の改正で注目すべき点は、「イラク戦争を支持した政府判断の検証」「空自の活動の情報公開」「空自撤退の出口戦略の策定」など、6項目の付帯決議が採択されたことだ。小泉前首相が根拠としていた大量破壊兵器はイラクになかったことが明らかになっているのに、安倍首相が頑として「イラク戦争支持はまちがっていなかった」と主張するのは、愚かなことだ。大量破壊兵器に関しては、米国ですら誤りを認めているのである。また、空自の活動の詳細は、議員にもメディアにもほとんど公開されない。米軍の物資や人員がどれだけ、またどのような目的で輸送されたのか、政府は説明責任を果たすべきだ。そして、いつ自衛隊はイラクから撤退するのか。本来ならば、昨年7月、陸上自衛隊が撤退した時点で撤退するべきだったのだが、今後、早めに撤退の道筋をつけるべきだ。何も期限ぎりぎりまで、イラク派遣を続けることはない。米国は恒久的にイラクに軍を駐留させることも検討しているだけに、下手をすると自衛隊もいつまでもずるずるとイラクへの派遣を続けなくてはいけなくなる。 改正イラク特措法が通ってしまったのは残念だが、野党、そして与党内の心ある議員達は、この付帯決議を飾りとするのではなく、政府を追及していくべきだろう。 4)【動画】イラク軍兵士&民兵達の戦闘シーン イラク人による人権団体「イラク人権監視ネット」提供の映像。シーア派民兵組織とイラク軍の関係の深さは現地ジャーナリストや人権活動家たちによって報告されてきたが、この映像では、イラク軍と民兵たちが共闘している。彼らが戦っているのはスン二派の武装勢力だろうと思われる。撮影日・場所は不明。 動画の視聴はこちらから。 5)【イベント】7月1日イラクに咲く花−千歳烏山 イラク戦争開戦以来、人道支援活動を行ってきた、10団体2個人によるネットワーク、 「イラクに咲く花」が7月1日、東京・千歳烏山でイベントを行う。ヨルダンやシリアといったイラク隣国で避難生活を送る難民たちの状況についての最新の報告や、ベリーダンス、アラブ風紅茶など、中近東の文化にも触れることができる。参加費は無料で、カンパ制。 ------------------------------------------------------------------------------------- ◆□□□□□□□□□■□□□■□□□■□□□□□□□□◆ ◆◇イラクに咲く花−見る、聞く、知る、イラクの今と私たち◇◆ ◆□□□□□□□□□■□□□■□□□■□□□□□□□□◆ ◆ たくさんの夢があり、生活がある。 ◆○◆ お母さんがいて、あかちゃんがいる。 ◆○◎○◆ 青空は広がり、花も咲く・・・ ◆○◆ そんな当たり前の生活が失われつつある国、イラク。 ◆ この国のことを、もっと見て、聞いて、知りませんか? 日 時:2007年7月1日(日)13:00〜19:00 会 場:すぺーす楽多 ≪らくだ&TUBO≫ (世田谷区南烏山6-8-7 楽多ビル2F 03-5313-8151) 京王線・新宿駅から特急・準特急以外の電車で17分、 千歳烏山駅西口改札・北側を出てまっすぐ進み、バス 通りを左へ、一つ目の信号のある所。駅から徒歩5分程。 ※1階に出ている「TUBO」という看板が目印です。 入場料:カンパ制(軽食もあります) ≪タイムスケジュール≫ ※若干変更の可能性もあります。 13:00〜 イラク民間支援実績データ2007版・発表 13:15〜 『TVニュースで見る“激動のイラク”』前編 ’03〜’05 14:00〜 リレートーク1『思い出のイラク』 思わず笑顔になったイラクの日々をイホネットメンバーが語ります。 15:00〜 舞踏『 エジプシャンダンス BY Reika 』 神聖さと妖艶さを合わせ持つ日本唯一のエジプト 舞踏家。イラクのバビロン音楽祭に出演予定だった Reikaさんが、なんとここに特別出演! さぁ、みなさん!ベリーダンスに魅了されたら、 一緒にイラク舞踏を踊ってみませんか!? ☆Reika World < http://reikaworld.com/ > 15:40〜 リレートーク2『思い出のイラク』 16:05〜 『TVニュースで見る“激動のイラク”』後編 ’06〜’07 17:10〜 報告『イラク避難民in シリア』BY 相澤恭行 17:30〜 報告『イラク避難民in ヨルダン』BY 佐藤真紀 17:55〜 ピアノ弾き語り『空にことりを 地に花を』 来日したカーシムのために作られた歌を イホネットメンバーが弾き語り。 18:10〜 トークセッション 『ワタシとセカイ〜目からウロコが落ちた時』 進 行:高遠菜穂子(イラク支援ボランティア) パネラー:相澤香緒里(NPO法人PEACE ON) :西方さやか(イラク支援ボランティア) :大嶋 愛 (イラク支援ボランティア) :志葉 玲 (ジャーナリスト) 〜19:00 終了予定 ★アラブを体感できる“イラクの甘〜いチャイ”や“アラブ衣装で イラク人になりきり!”撮影ブース、各種雑貨販売もあります。 ★予約不要・出入り自由のイベントですが、会場のスペースは限りが あるため、万一満席の際にはお入り頂けない・お座りになれない 可能性もあります。どうぞご了承くださいませ。 【問い合わせ先】 メールアドレス:iraq_hope_net@yahoo.co.jp 電話・FAX:03-3823-5508 【主 催】 イラクホープネットワーク http://www.iraq-hope.net/ 【出展団体・個人】 ◇イラクの子どもを救う会 http://www.nowiraq.com/ ◇日本イラク医療支援ネットワーク(JIM−NET) http://www.jim-net.net/ ◇セイブイラクチルドレン札幌 http://www16.ocn.ne.jp/~sics/index.html ◇セイブ・イラクチルドレン・名古屋 http://www.iraq-c.gr.jp/ ◇セイブ・ザ・イラクチルドレン広島 http://homepage.korinkan.co.jp/iraq-children/ ◇高遠菜穂子 http://iraqhope.exblog.jp ◇NPO法人 PEACE ON http://npopeaceon.org ◇日本国際ボランティアセンター(JVC) http://www.ngo-jvc.net/index.html ◇NO DU ヒロシマ・プロジェクト http://www.nodu-hiroshima.org/ ◇ピースボート http://www.peaceboat.org/ ◇BOOMERAN-NET http://www.boomerang-net.org/ ◇平和市民連絡会 http://www.jca.apc.org/heiwa-sr/jp/ ◇細井明美 http://www.jca.apc.org/~anneh/index.html ◇劣化ウラン廃絶キャンペーン http://www.cadu-jp.org/ ほか ●バックナンバー 第53号 2007年06月06日 第52号 2007年05月11日 第51号 2007年04月16日 第50号 2007年04月02日 第49号 2007年01月31日 第48号 2006年12月31日 第47号 2006年11月30日 第46号 2006年11月19日 第45号 2006年11月07日 第44号 2006年10月28日 第43号 2006年10月13日 第42号 2006年09月30日 第41号 2006年08月29日 第40号 2006年07月25日 第39号 2006年07月13日 第38号 2006年06月30日 第37号 2006年06月12日 第36号 2006年06月01日 第35号 2006年05月20日 第34号 2006年05月09日 第33号 2006年04月28日 第32号 2006年04月18日 第31号 2006年04月07日 第30号 2006年03月28日 第29号 2006年03月16日 第28号 2006年03月07日 第27号 2006年02月28日 第26号 2006年02月15日 第25号 2006年02月06日 第24号 2006年01月27日 第23号 2006年01月20日 第22号 2006年01月07日 第21号 2005年12月24日 第20号 2005年11月30日 第19号 2005年11月24日 第18号 2005年11月15日 第17号 2005年11月07日 第16号 2005年10月31日 第15号 2005年10月24日 第14号 2005年10月15日 第13号 2005年10月09日 第12号 2005年09月30日 第11号 2005年09月21日 第10号 2005年09月12日 第09号 2005年08月30日 第08号 2005年08月22日 第07号 2005年08月14日 第06号 2005年08月05日 第05号 2005年07月30日 第04号 2005年07月22日 第03号 2005年07月12日 第02号 2005年07月05日 第01号 2005年06月29日 |