イラク情勢Watch vol.36 06年6月1日
         発行:フォーラム平和・人権・環境  編集:志葉 玲

       毎週更新(予定)


Topics 

1)週間イラク報道Pick up

2)ラマディ住民からの報告 その3

3)バグダッド南東マダインでスンニ派住民が大量移住〜シーア派民兵に脅され

4)米軍が女性や子どもを含む24人を虐殺〜米議会でも問題化〜

 

 

1)  週間イラク報道Pick up

 

【06.6.1読売】バスラの治安、急速悪化

 

【06.5.31共同】陸自車列近くで爆発 イラク、豪軍1台損傷

 

【06.5.31産経】イラク 治安閣僚めど立たず 各派対立、南部も不安定化

 

【06.5.30 時事】米軍、イラクに1500人増派=治安権限の移譲は停滞

 

【06.5.30 共同】イラク人殺害で公聴会も 米、政治問題に発展

 

【06.5.26 毎日】<米英首脳会談>両首脳ともイラク撤退スケジュール示さず

 

 

 

2)ラマディ住民からの報告 その3

 

前号で紹介した米軍によって攻撃を受けているラマディの住民から報告の続き。

翻訳は細井明美さん

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我が家を占領された話の続き

僕たちが暑く暗い部屋に閉じ込められている間、家の上のほうから
銃撃の音が聞こえてきた(おそらく屋上から)….僕はイラク兵に聞いた
……
この銃撃の音について……イラク兵は数人のアメリカ狙撃兵が
僕の家の屋上にいると言った。おお、僕の家が狙撃兵の基地になる
なんて人々を殺すための…….過去1年間に何回もあったこと………
やつらは朝早く家を出てくるすべての人間を銃撃するだろう
そうとも….やつらは必ずやる。

僕たちは黙り続けていた。何人かが眠ろうとしたけど誰も寝ることは
出来なかった。
暑くて暑くて、汗びっしょりになってきた….さらに呼吸も苦しくなってきた
おそらく空気がまわっていないからだろう部屋は完全に密閉されていた
窓もドアも。

僕は喉が渇き、お腹が空いてきた……あぁフェアじゃない
自分の家の中でお腹が空き、喉が渇いている……しかも我が家が
殺人道具になるなんて最悪だ僕は罪の意識を感じた……午前11時、
家の近くで戦車の音がした…….しばらくして、米兵が階段を走り下りてきて、
家を出ていった

ドアの後ろにいたイラク兵が仲間に言った。
「何が起こったんだ???」
「わからない外で何か見つけたんじゃないか!!!」
他の兵士が答えた
「おお、彼ら戦車に乗ってる行っちゃうよ……後をついていかなきゃ
ここにいられないよ」 ひとりのイラク兵が言った。
僕は彼らに叫んだ
「すぐにドアを開けてくれ君らが行ったら、ドアを開ける人間がいないよ!!!」
「ははわかった、わかった….カギを渡すよ」イラク兵は答えた。
彼はカギをドアの下に置いて仲間を追いかけた。僕は戦車が去って、
米兵がいなくなるのを確信するまで待った….僕はドアを開けた。
そして、僕が戻るまで家族全員が部屋の中にいるように兄に頼んだ。
屋上、部屋、家の中をすべて回った……それから部屋に戻り、家族を部屋から出した。
部屋を出ると呼吸が楽になった……

あぁ、最悪の夜だった…….僕にとっても、そして父、母、兄弟、子どもたちにとっても。
つらい危険な夜だった。
アメリカ狙撃兵は、屋上の自分たちの居場所を守るために子どもたちのベッドを使い、
道路と庭を見るために正面の壁に穴をあけた。

とにかく僕たちは無事で、愛する我が家を取り戻した僕たちはこの経験を
みんなでああだこうだと言いながら朝食を食べている。
兄は、アメリカ兵がイラク兵をあわや忘れそうになった話が滑稽だとジョークのネタにしている。
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3)バグダッド南東マダインでスンニ派住民が大量移住〜シーア派民兵に脅され

 

 バグダッド南東に位置し、シーア派とスンニ派が混在するマダインでは、スンニ派住民の住む村々がシーア派民兵に包囲され孤立しているという。23日付けで、「イラク人権監視センター」が報告を送ってきた。

 

 襲撃で燃やされた車

 AL – NAHRAWAN地区は約60家族が住み、すべてスンニ派住民。攻撃がはじまったのは、今年227日で、黒と緑の旗を掲げるシーア派民兵が村を襲い、10歳の男の子も含む8人が処刑された。民兵らは家々を焼き、家畜を殺していった。

 

村人たちの話によると、これらの民兵はイラク政府の治安機関が使う車に乗っており、襲撃が始まる寸前まで警戒していなかったのだという。民兵らは若い男性の住民達に、村から出ることを強要、この村の全ての住民がバグダッドのほかの地域へ移動したのだそうだ。

 

同じようなことはマダインの他の地域でも起きており、最近まとめられた集計によると、以下の村々で住民が家を捨て、移住している。

 

AL - JBOOR  50家族

JABIR AL - HUMMADI  60家族。 

SHAKHA村 NO.5  12家族 

SHAKHA村 No.7  30家族 

HUSSEIN AL - HUMMADI  70家族 

AL - KHALISA  50家族 

AL - FURSAN  60家族 

JASIM IBRAHEEM AL - BATTAWI  33家族 

BANI-ZAID 100家族 

AL - MUJAMMA  100家族

 

 

 

米軍が女性や子どもを含む24人を虐殺〜米議会でも問題化〜

 

米海兵隊員がイラク西部ハディーサで昨年11月、女性や子供を含む民間人24人を虐殺した、と先月26日、米3大テレビネットワークなどが主要メディアが一斉に報道した。問題は米国議会にも波及、ブッシュ政権は対応に苦しんでいる。

 

事件は昨年1119日、イラク西部アンバル州で米軍が掃討作戦を展開中に起きた。付近住民の証言によると、武装勢力の攻撃を受けた海兵隊員らは、近くの民家に突入。その家の男性は、英語で「わたしは友だち。わたしは悪者ではない」と命乞いしたが、射殺され、家にいた1歳から14歳の子どもも殺害された。

 

 殺害されたハディーサの子ども

この事件について米軍は当初、「犠牲者は武装勢力の路肩爆弾に巻き込まれて死亡した」と発表していたが、この疑惑は米誌タイムが三月に報じたのがきっかけに、国防総省が射殺疑惑と、隠蔽疑惑と二つの調査を開始。海兵隊の組織的な隠蔽工作が疑われている。

 

 27日付けロサンゼルス・タイムス紙には、現場に居合わせたロエル・リヤン・ブリオネス海兵隊上等兵が証言するなど、ブリオネス上等兵は、イラク人家族の死体をデジカメで撮影し、遺体を運びだすことを命令されたという。その際、殺された少女の脳漿がブーツにかかったことがトラウマとなり、現在もPTSD(心的外傷)の治療を受けているという。

 

事件の残虐さや海兵隊による組織的な隠蔽疑惑が明らかになるにつれて、ブッシュ政権に対し、身内の共和党でも批判が高まっている。ニューヨーク・タイムズ紙によると、海兵隊幹部から捜査経過の説明を受けたクライン下院議員は「虐殺にあたる」と話している。ワーナー上院軍事委員長も公聴会を開催し、調査に乗り出す構えだ。

 

米軍が女性や子供も無差別に殺害している、という点においては本コーナーで紹介してきたとおり、ハディーサの事例も特別なものではない。だが、この4月には退役将校らが相次いでラムズフェルド国防大臣の辞任を要求。さらに、世論調査でもブッシュ政権の支持率は30%前後までに下落している。米議会やメディアが、ハディーサ事件を大きく取り上げる背景には、イラク情勢がますます泥沼化し、米軍兵士の死傷者数が増加している中での、米軍内や世論のブッシュ政権への強い不満があると見られる。

 

 


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