イラク情勢Watch vol.36 06年6月1日 発行:フォーラム平和・人権・環境 編集:志葉 玲 毎週更新(予定) Topics 1)週間イラク報道Pick up 2)ラマディ住民からの報告 その3 3)バグダッド南東マダインでスンニ派住民が大量移住〜シーア派民兵に脅され 4)米軍が女性や子どもを含む24人を虐殺〜米議会でも問題化〜 1) 週間イラク報道Pick up 【06.5.31共同】陸自車列近くで爆発 イラク、豪軍1台損傷 【06.5.31産経】イラク 治安閣僚めど立たず 各派対立、南部も不安定化 【06.5.30 時事】米軍、イラクに1500人増派=治安権限の移譲は停滞 【06.5.30 共同】イラク人殺害で公聴会も 米、政治問題に発展 【06.5.26 毎日】<米英首脳会談>両首脳ともイラク撤退スケジュール示さず 2)ラマディ住民からの報告 その3 前号で紹介した米軍によって攻撃を受けているラマディの住民から報告の続き。 翻訳は細井明美さん。 *************************************************************** 3)バグダッド南東マダインでスンニ派住民が大量移住〜シーア派民兵に脅され バグダッド南東に位置し、シーア派とスンニ派が混在するマダインでは、スンニ派住民の住む村々がシーア派民兵に包囲され孤立しているという。23日付けで、「イラク人権監視センター」が報告を送ってきた。
AL – NAHRAWAN地区は約60家族が住み、すべてスンニ派住民。攻撃がはじまったのは、今年2月27日で、黒と緑の旗を掲げるシーア派民兵が村を襲い、10歳の男の子も含む8人が処刑された。民兵らは家々を焼き、家畜を殺していった。 村人たちの話によると、これらの民兵はイラク政府の治安機関が使う車に乗っており、襲撃が始まる寸前まで警戒していなかったのだという。民兵らは若い男性の住民達に、村から出ることを強要、この村の全ての住民がバグダッドのほかの地域へ移動したのだそうだ。 同じようなことはマダインの他の地域でも起きており、最近まとめられた集計によると、以下の村々で住民が家を捨て、移住している。 ・AL - JBOOR村 50家族 ・JABIR AL - HUMMADI村 60家族。 ・SHAKHA村 NO.5 12家族 ・SHAKHA村 No.7 30家族 ・HUSSEIN AL - HUMMADI 70家族 ・AL - KHALISA村 50家族 ・AL - FURSAN村 60家族 ・JASIM IBRAHEEM AL - BATTAWI 33家族 ・BANI-ZAID村 100家族 ・AL - MUJAMMA村 100家族 米軍が女性や子どもを含む24人を虐殺〜米議会でも問題化〜 米海兵隊員がイラク西部ハディーサで昨年11月、女性や子供を含む民間人24人を虐殺した、と先月26日、米3大テレビネットワークなどが主要メディアが一斉に報道した。問題は米国議会にも波及、ブッシュ政権は対応に苦しんでいる。 事件は昨年11月19日、イラク西部アンバル州で米軍が掃討作戦を展開中に起きた。付近住民の証言によると、武装勢力の攻撃を受けた海兵隊員らは、近くの民家に突入。その家の男性は、英語で「わたしは友だち。わたしは悪者ではない」と命乞いしたが、射殺され、家にいた1歳から14歳の子どもも殺害された。
この事件について米軍は当初、「犠牲者は武装勢力の路肩爆弾に巻き込まれて死亡した」と発表していたが、この疑惑は米誌タイムが三月に報じたのがきっかけに、国防総省が射殺疑惑と、隠蔽疑惑と二つの調査を開始。海兵隊の組織的な隠蔽工作が疑われている。 27日付けロサンゼルス・タイムス紙には、現場に居合わせたロエル・リヤン・ブリオネス海兵隊上等兵が証言するなど、ブリオネス上等兵は、イラク人家族の死体をデジカメで撮影し、遺体を運びだすことを命令されたという。その際、殺された少女の脳漿がブーツにかかったことがトラウマとなり、現在もPTSD(心的外傷)の治療を受けているという。 事件の残虐さや海兵隊による組織的な隠蔽疑惑が明らかになるにつれて、ブッシュ政権に対し、身内の共和党でも批判が高まっている。ニューヨーク・タイムズ紙によると、海兵隊幹部から捜査経過の説明を受けたクライン下院議員は「虐殺にあたる」と話している。ワーナー上院軍事委員長も公聴会を開催し、調査に乗り出す構えだ。 米軍が女性や子供も無差別に殺害している、という点においては本コーナーで紹介してきたとおり、ハディーサの事例も特別なものではない。だが、この4月には退役将校らが相次いでラムズフェルド国防大臣の辞任を要求。さらに、世論調査でもブッシュ政権の支持率は30%前後までに下落している。米議会やメディアが、ハディーサ事件を大きく取り上げる背景には、イラク情勢がますます泥沼化し、米軍兵士の死傷者数が増加している中での、米軍内や世論のブッシュ政権への強い不満があると見られる。
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