イラク情勢Watch vol.24 06年1月27日
         発行:フォーラム平和・人権・環境  編集:志葉 玲

       毎週更新(予定)


Topics
1)週間イラク報道Pick up
2)イラク戦争/占領での民間人死者数を集計してきたウェブサイト、資金不足で存続の危機に
3)ますます深刻化するバグダッドの電気・水事情、燃料不足
4)拡大する貧困層人口〜行政サービスの低下が原因〜
5)バグダッドの病院、自爆攻撃で損壊 
6)逃げるに逃げられない事情



1)週間イラク報道Pick up

【06.1.26 共同】米軍、420人を釈放 拉致の女性記者救う目的?

【06.1.26 毎日】<米民主党>安保グループが米軍の抜本的改革求める報告書

【06.1.24 時事】治安情勢「大きな変化ない」=銃撃戦直後は活動自粛−陸自イラク業務支援隊長

【06.1.23 時事】テロ攻撃制圧と宣言=サマワ銃撃戦で英軍司令官

【06.1.22 共同】銃撃事件、サマワで拡大 「反占領」機運高まる

【06.1.20 共同】各会派別の獲得議席数 イラク連邦議会選挙



2)イラク戦争/占領での民間人死者数を集計してきたウェブサイト、資金不足で存続の危機に

 米英の研究者達が組織し、報道されたイラクでの民間人の死者数を集計し続けているウェブサイト「イラク・ボディー・カウント」が資金不足のため存続の危機に直面している。

   

 イラク・ボディー・カウントは、イラク戦争開戦以来、報道された死者数*を集計し、最小から最大の数をウェブ上で更新し続けている非営利組織。この数値はこれまで多くの報道機関や反戦団体に引用され、イラク戦争/占領の実態を知る上での重要な情報源の一つとなってきた。
*1月27日現在、最小で2万8198人、最大で3万1800人。

 だが、ここ最近寄付が減少しており、このままでは活動の継続が難しくなってきたのだという。イラク・ボディー・カウントは活動継続を望んでおり、そのための寄付をウェブ上で募っている。マスターやVISAなどのクレジットカードの他、銀行振り込みも可能のようだ。詳しくは、イラク・ボディー・カウントのウェブサイトをご参照。


3)ますます深刻化するバグダッドの電気・水事情、燃料不足

 サダム政権の崩壊から今年の4月で3年になるが、バグダッドの電気・水の配給の滞りはむしろ以前よりひどくなり、世界有数の石油大国でありながらガソリンや灯油も不足している。23日付けのIPS(インタープレス・サービス)は困窮するバグダッド市民の生活を伝えた。
 バグダッドでは、かつては1日12時間程だった電気の配給は2〜3時間になり、水も一週間くらい断水することはしばしば。さらにIMF(国際通貨基金)の指示により、イラク国内に流通する石油が値上げされ、ガソリンの値段は以前の3倍になった。
 悪化する一方の生活に加え、継続される掃討作戦や家宅捜索に悩まされる市民の怒りの矛先は、米国に向けられている。イラクの復興を怠っていると市民は観ているのである。 

4)拡大する貧困層人口〜行政サービスの低下が原因〜

 イラクでは、昨年1月末の選挙を受けて同5月に発足した移行政権では、大勝したシーア派政党の関係者が省庁の要職を占めたが、彼らの経験不足から行政が停滞するという問題が起きている。その被害者が、社会サービスを頼りにしている貧困層だ。
 25日付けの「ミドル・イースト・オンライン」の記事によると、イラクでの貧困人口は拡大し、約2537万人の国民の内、5人に一人が1日1米ドルで生活することを強いられているという。 

 同記事によると、イラク労働省の社会福祉部門の責任者ライラ・カセム氏は貧困の原因を「失業」「治安」の他、「行政事サービスの低下」をあげている。またカセム氏は「公的支援を必要とする貧困層の人口は公表されている数より多い。それに対して支援を受けているのは17万1000世帯だけだ」と語った。
 生活保護は、現在、一世帯に30〜35ドル支給されているが、社会保障法の改正により、月50〜85ドルに引き上げられる見込みで、生活保護の適用範囲の見直しも半年後に行われるという。


5)バグダッドの病院、自爆攻撃で損壊 
 
 先月、自爆攻撃の巻き添えとなったバグダッドの中央教育病院は、大きな損害を受け、今なお攻撃以前の3分の1程度しか機能していない模様だ。同病院は、バグダッドでも主要な病院であり、その損壊は、市民への医療活動において大変深刻な問題である。

 IRIN(国連地域統一ネットワーク)が伝えるところによると、12月19日、イラク警察を狙った自爆攻撃で、中央教育病院は外科棟や患者室、研究室等が損壊し、多くの医療機器が破壊されたという。そのため、攻撃以来、すべての外科手術が不可能になってしまい、利用できるベッド数も365から100になってしまった。
 イラク保健省によると、病院の再建には1000万ドルが必要とのことで、現在、スペイン政府がその一部の負担することを決めているという。


6)逃げるに逃げられない事情

 爆発や銃撃戦、さらには米軍やイラク治安部隊による家宅捜索などを嫌い、多くのバグダッド市民が住み慣れた家を離れている。新たな居住地は国外か、比較的状況がましな地方に移住するのだが、経済的に裕福な層を除き、多くの人々は移住のための資金不足に直面している。23日付けの記事で、独立系イラク紙アザマンが伝えた。

 移住を望む人々はその資金として、それまで住んでいた家を売ることを考えるが、バグダッドやモスル、ラマディ、ヒッラ、ディヤラ等の地域で家を売ることは非常に難しい。家を買い取るような裕福な層はとっくに移住しており、買手が見つからないからだ。
 外国へ移住するだけの資金のない人々は、比較的安全な地方の他の都市に移り住むことを考えるが、それも簡単ではない。すでに住む場所は不足しており、不動産の価格は先例がないまでに高騰している。例えば、クートでは不動産業者は入居希望者に3000ドルの前払いを要求してくるが、これを払えるのは一部の富裕層のみなのだ。


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